今はネット社会であり、老若男女問わず、ほとんどの人がネットを使って情報収集しています。そこで、ネット上で誹謗中傷されると、企業にとっても非常に大きな悪影響が及び、売り上げに深刻な被害が発生してしまうおそれが高まります。
ネット上の投稿であっても、悪質な場合には犯罪となるので、被害を受けた場合には、投稿者を刑事告訴して処罰を与えてもらうことができます。
今回は、ネット誹謗中傷によって成立する犯罪について、解説します。
企業がネット上で誹謗中傷被害を受けたとき、成立する可能性のある犯罪は、主に以下の4種類です。
順番に確認していきましょう。
偽計業務妨害罪とは、虚偽の風税を流したり、人を騙したり誘惑したりすることによって、他人の業務を妨害する犯罪です。
ネット上の投稿では、「虚偽」の嫌がらせの投稿をして売り上げ低下を狙った場合などには偽計業務妨害罪となります。
法定刑は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金刑です。
具体的には、以下のような「虚偽の」内容の投稿が、偽計業務妨害罪に該当します。
威力業務妨害罪は、力などの威勢を示すことにより、他人の業務を妨害するときに成立する犯罪です。
ネット上でも、直接的に力や威勢を示して企業を脅した場合などには、威力業務妨害罪が成立します。
威力業務妨害罪の法定刑は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金刑です。
たとえば、以下のような投稿が行われると、威力業務妨害罪が成立します。
信用毀損罪は、虚偽の風税を広めることによって、他人の「経済的な信用」を失わせる犯罪です。
偽計業務妨害罪との違いは、被害を受ける対象が「経済的な信用」であることです。
経済的な信用とは、主には財務状況や買掛金の支払い、給料の支払いなど「お金に関する信用」のことです。
偽計業務妨害罪の場合は「業務」が保護されますが、信用毀損罪の場合には「経済的な信用」が保護の対象です。
法定刑は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金刑です。
信用毀損罪が成立するケースは、以下のような投稿が行われた場合です。
名誉毀損罪は、事実を摘示することにより、他人の社会的評価を低下させる犯罪です。
名誉毀損罪と他の犯罪(偽計業務妨害罪や信用毀損罪)との大きな違いは、名誉毀損罪の場合「内容が真実でも犯罪が成立する」ことです。たとえば、「あの会社の社長は不倫している」と書き込んだ場合、それが真実であっても名誉毀損になる可能性があります。ただし、公共に関する事実で公益目的があり、真実であることが立証された場合には、違法性が阻却されるという例外はあります。
また、名誉毀損罪は「親告罪」なので、被害者が刑事告訴しない限り、投稿者が起訴されることがありません。この点も、他の3つの罪と大きく異なるところです。
名誉毀損罪が成立する投稿内容は、以下のようなものです。
近年はTwitterやFacebookなどのSNSやブログ、掲示板などのように、インターネット上のコミュニケーションツールが誰でも手軽に使えるようになりました。そして残念なことに、そのようなツールの書き込みの中には、特定の個人や団体の名誉毀損にあたるようなものも散... 【弁護士監修】名誉毀損に該当するネット書き込みと削除を依頼する方法 - 弁護士法人アークレスト法律事務所 |
企業が上記のような誹謗中傷被害を受けた場合、警察で「刑事告訴」することによって、投稿者を逮捕・起訴して刑事罰を与えてもらえる可能性があります。
特に、名誉毀損罪は親告罪なので、相手を処罰してもらいたければ、必ず刑事告訴が必要です。刑事告訴をするときには、「告訴状」を作成し、その他の証拠を用意して、まとめて警察署に提出します。
企業がネット上で誹謗中傷被害を受けたとき、投稿者の処罰を求めたり損害賠償請求したりすることができますが、そのためには、まずは投稿者を特定する作業が必要です。
※IPアドレスを開示する方法については、下記の記事にて詳しく解説しておりますので、あわせてご覧ください。 インターネットで自分のことを誹謗中傷する投稿を見つけた場合、「投稿者を特定して名誉毀損で訴えたい」「損害賠償請求したい」と考える方もいるでしょう。投稿者を特定するためには、まずIPアドレスを開示してもらうことから始めなければなりません。... IPアドレス開示~投稿者特定の第一歩~|弁護士監修記事 - 弁護士法人アークレスト法律事務所 |
前回の記事では、ネット上で誹謗中傷の書き込みをした投稿者を特定するために、サイト管理者等を特定してIPアドレスの開示を受けるところまでをお話しました。本記事では、IPアドレスの開示を受けた後に投稿者を実際に突き止めるまでの流れやその方法に... 書き込みした投稿者を特定~発信者情報開示請求の流れ~|弁護士監修記事 - 弁護士法人アークレスト法律事務所 |
また、投稿者特定後も、告訴状や内容証明郵便の作成、訴訟提起などの専門的な対応が必要となります。
一般の企業が独力で対応することは困難となりますので、ネット問題に長けた弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士であれば、不当な投稿を「削除」し、「刑事告訴」「損害賠償請求(訴訟対応を含む)」にすべて対応することが可能ですので、被害が広まる前に、お早めにご相談ください。