風評被害・誹謗中傷

風評被害対策はどこに相談すればいい?主な窓口とサポート内容を解説

2021.12.06
風評被害対策はどこに相談すればいい?主な窓口とサポート内容を解説

風評被害に遭った際に、そのまま放置してしまうと企業は大きな損害を被ってしまいます。しかし、いざ被害を受けても、「どの時点で何をしたらいいのか分からない」という企業も多いのではないでしょうか。本記事では、風評被害に遭った際に活用できる相談窓口と受けられるサポート内容について解説します。

風評被害とは?

風評被害とはどのようなものなのでしょうか。以下では、風評被害の内容とその事例をわかりやすく説明します。

風評被害とは

風評被害とは、根拠のない噂や誤った事実が世間に広まることにより、企業の社会的信用性やブランド価値が低下し、経済的な損失を被ることをいいます。

近年では、インターネットやSNSなどによる風評被害が増えてきています。インターネットやSNSによる風評被害は、あっという間に情報が拡散し、被害が拡大するリスクがありますので、企業としては、早期に適切な対処を行うとともに、そのような風評被害の発生を防ぐための対策が重要となります。

風評被害の事例

風評被害の代表的な事例としては、以下の3つが挙げられます。

原子力発電所事故の事例

東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故により、福島県産の海産物や農産物を取り扱う業者に風評被害がもたらされました。
県や政府では、食品中の放射性物質の検査を実施し、安全上問題がないことを確認した上で、出荷をしている旨公表しています。しかし、根拠のない噂や誤った事実などがインターネットやSNSなどを通じて広がってしまったため、放射能汚染があるからという理由で購入をためらう人が多く存在します。
厳しいモニタリング検査などにより徐々に信頼を回復してきていますが、風評被害による失われた信頼を取り戻すのは容易ではありません。

アサリの産地偽装によるハマグリの事例

外国産のアサリであるにもかかわらず、国産アサリとして市場に流通させていた産地偽装問題が発生したときに、ハマグリが風評被害を受けました。
アサリとハマグリは、まったくの別物であるにもかかわらず、正真正銘の国産品を流通させていたハマグリ業者も大量の返品を受けるなどの損害が発生してしまいました。
これは、自分には非がないにもかかわらず風評被害により損害が生じた事例の一つです。

コロナ禍におけるコロナビールの事例

コロナビールは、メキシコビールの銘柄で日本でも人気のあるお酒の一つです。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、新型コロナウイルスと名前が似ているというだけで、コロナビールの買い控えが発生し、コロナビールは大きな損失が生じたとのことです。
これは、イメージのよくないものと同じ商品名というだけで生じた風評被害の事例です。

風評被害対策の相談先

風評被害対策の相談先

企業が実際に風評被害に遭った場合、どのような相談窓口があるのでしょうか。相談窓口ごとのサポート内容を解説していきます。

警察署

ネット掲示板やSNS上で受けた風評被害が犯罪に当たる可能性が高い場合は、警察で対応してもらうことができます

しかし、書き込みの内容が単なる悪口などの場合は、自力で解決するよう促されるでしょう。というのも、警察が事件として扱うかどうかは、「事件性の有無」が判断基準となるからです。「従業員を殺してやる」などと書き込まれたような場合は、脅迫罪に当たる可能性がありますので、警察で被害届を出しましょう。

違法・有害情報相談センター

ネット上で誹謗中傷や風評被害に遭った場合の相談窓口として、総務省支援事業である「違法・有害情報相談センター」があります。こちらに相談すれば、専門的な知識と経験を持った相談員から適切なアドバイスを受けることができます。

ただし、具体的な手続きはアドバイスに基づいて自分の力でこなす必要があります。突然のことで何から手を付ければ良いかわからないというときは、まずこちらに相談するのも良いでしょう。

違法・有害情報相談センター

誹謗中傷ホットライン

誹謗中傷ホットラインは、2020年6月に一般社団法人セーファーインターネット協会(SIA)が開設したホットラインです。誹謗中傷や風評被害に遭ったことを伝えれば、問題のサイトに対し、削除等の対応を取るよう要請してくれます。

民間のインターネット企業有志によって運営される無料のボランティアサービスということもあり、立場の弱い個人に対する支援を優先するスタンスをとっています。規模の大きな企業の場合、対応できない可能性もあるため注意してください。

誹謗中傷ホットライン

風評被害対策業者

風評被害対策業者に相談することも方法のひとつです。風評被害・誹謗中傷対策に特化した業者は具体的な対策を知っているため、迅速に対応してくれます。

例えば、検索順位を下げて目立たないようにする「逆SEO」なども、このような業者が取り組む対策です。ただし、風評被害の原因となった記事・投稿の削除や投稿者本人の特定といった根本的な解決ができるわけではありません

弁護士

風評被害に遭った際の相談窓口として、弁護士も選択肢のひとつとなります。特にネットトラブルを扱っている事務所であれば、スピーディーな対応を期待できるでしょう。

具体的には、原因となっている投稿の削除や投稿者本人の特定などの対応が可能です。このような手続きは被害者が自らの力でできないわけではありませんが、法的な観点が求められ、手続きも煩雑です。訴訟などに発展する可能性も考慮するなら、最初から弁護士に相談しておくことが早期解決につながるでしょう。弁護士は手続きに慣れているというだけでなく、問題点を正確に認識し、具体的な解決策の見通しを立ててもくれます。

風評被害が発生したときに弁護士ができる主なサポート内容

弁護士に相談した場合の主なサポート内容

弁護士は個別のケースに応じた対応が可能です。ここでは風評被害に遭ったとき、弁護士に相談するとどのようなサポートが受けられるのかを解説していきます。

口コミや記事の削除請求

風評被害の原因となっている投稿や記事の削除要請は、本人もしくは弁護士にしかできない対策方法です。
サイトが利用規約を定めている場合は、それに従いまず削除依頼フォームなどから削除申請します。そこで削除依頼を断られた場合は、「プロバイダ責任制限法」に基づき削除を要請することも可能です。

それでも応じてもらえない場合にとる方法が裁判手続きです。削除を命じる仮処分命令を出すよう訴えることになりますが、弁護士であればこうした一連の手続きを一任することができます。

サジェストの削除

検索エンジンでキーワードを入力した際に、候補となるキーワードが自動で出てきます。この2語目や3語目のキーワードはサジェストと呼ばれるもので、検索エンジン側が提案するキーワードです。

たとえば企業名を検索したときのサジェストに「炎上」「事故」などネガティブな情報が含まれる場合、企業のイメージを悪くしてしまうことがあります。弁護士はそのサジェストが権利を侵害していることを検索エンジンの運営者に伝え、削除要請を行うことができます。

投稿者の特定

加害者責任を追及する場合、まず風評被害の原因となる書き込みをした人物の特定が必要となります。投稿者を特定できなければ、謝罪や損害賠償の請求、刑事告訴といった手段がとれないためです。

まずサイト運営者に対する発信者情報開示請求によって、IPアドレスを開示してもらい、そこから投稿者が利用したプロバイダを特定します。そして次に、プロバイダに対し発信者情報開示請求して個人情報を開示してもらうというのが一般的な流れです。

2回にわたる開示請求で任意に開示してくれれば良いのですが、サイト運営者かプロバイダが開示を拒否した場合は、裁判手続きに進むことになります。

こちらも法的手段をとる可能性を考慮すると、弁護士にあらかじめ相談しておくのがスムーズです。また、特定から示談や訴訟までは数か月以上かかるため、弁護士に依頼することで通常業務に差し障りが出ることも防げます。

損害賠償請求

加害者の特定後、損害賠償を請求することも可能です。再犯防止にもなり、損害の補填にもなります。
損害賠償はまず内容証明郵便によって請求し、応じてもらえない場合、協議の場を設けて交渉を始めるという流れが一般的です。それでも合意に達しないときには民事裁判を提起することになります。交渉・法律を弁護士に相談していれば、迅速に対応できるでしょう。

刑事告訴

風評被害により企業の社会的評価や信用性を低下させたり、業務に支障を生じさせた場合には、以下のような犯罪が成立する可能性があります。

・名誉毀損罪
・信用毀損罪
・偽計業務妨害罪

風評被害がこのような犯罪にあたる場合には、風評被害の原因となる投稿をした加害者を刑事告訴することができます。刑事告訴をすることで、企業が被った損害を回復できるわけではありませんが、加害者が逮捕・処罰されたことが明らかになられば、誤った情報により被害を受けたということを世間に知らせることができるため、一定程度信用性の回復が期待できるでしょう。

また、企業が風評被害に対して厳格な姿勢で取り組むことを示すことで、同様の風評被害が発生することを防ぐことも期待できます。
刑事告訴は、警察署に告訴状を提出する方法により行うのが一般的ですが、簡単には受理してもらうことはできません。弁護士であれば、告訴上の作成や警察署への同行などのサポートができますので、よりスムーズに告訴上を受理してもらえるでしょう。

風評被害を防ぐために弁護士ができること

風評被害に遭ったときだけでなく、風評被害を防ぐという観点からも弁護士への依頼は有効な手段となります。以下では、風評被害を防ぐために弁護士ができる主なサポート内容を紹介します。

従業員への研修の実施

風評被害は、いわゆる「バイトテロ」と呼ばれる従業員による不祥事によって生じることもあります。このような従業員による不祥事を防ぐためには、従業員への教育が不可欠となります。

弁護士であれば、実際の事例に基づいて風評被害のリスクを説明することができますので、従業員自身もより身近な問題として捉えやすく、より効果的な研修を実施することができます。

SNSに関するソーシャルメディアポリシーやガイドラインの策定

風評被害の原因の一つとしてSNSが挙げられます。企業のアカウントでSNSを運用することは、商品やサービスに関する情報を気軽に発信できるという利点がある一方で、不適切な投稿をしてしまうと炎上によるリスクも伴います。

また、従業員がプライベートでSNSを利用する場合でも、不適切な投稿をすると従業員を雇用する企業も責任を問われる事態になることがあります。

このようなリスクを回避するには、あらかじめSNSの利用方法や注意点などをまとめたソーシャルメディアポリシーやガイドラインを策定することが有効な対策となります。弁護士であれば、企業の実情に応じて最適なガイドラインなどの策定を行うことが可能です。

顧問弁護士によるリスクの排除

顧問弁護士を利用することで風評被害のリスクをより軽減することができます。

顧問弁護士がいれば、面談相談だけでなく、電話やメールなどでいつでも気軽に相談することができますので、風評被害が顕在化する前にリスクを排除することが可能です。
風評被害によりブランドイメージや企業の信用に傷がつくと、取り返すのに大きな労力と時間がかかります。予防的な取り組みとして、モニタリングによって炎上しそうな投稿を早期に発見し、すぐに対処できる体制を構築しておくことも有効です。
継続的な対策として、弁護士と顧問契約を結んでおくことも検討してみましょう。

違法な風評被害対策業者に注意

違法な風評被害対策業者に注意

風評被害対策を請け負う業者のなかには、法律に違反している業者もあるので注意が必要です。弁護士法により、弁護士の資格がない人は、弁護士のみに認められている行為をして報酬を得てはいけないことになっています。

弁護士でない人がそのような行為をすることを非弁行為といいますが、風評被害対策業者がサイト管理者等と交渉することも非弁行為に当たる可能性があります
業者が弁護士と提携している場合でも、非弁提携行為という違法行為になる可能性があるので、注意が必要です。このような業者に依頼した場合、法律に反する行為をする企業としてさらに悪評が広まり、致命的なダメージを負うことになりかねません。

風評被害対策のご相談はアークレスト法律事務所へ

風評被害対策のご相談はアークレスト法律事務所へ

アークレスト法律事務所は、様々なネットトラブルに対して鋭意取り組んできた事務所です。各種サイトやSNS上の風評被害につながる投稿の削除はもちろん、検索エンジンに関する検索ワードの削除にも対応可能です。
また、IPアドレスの開示から投稿者の特定、その後の損害賠償請求や刑事告訴にも丁寧、迅速に対応いたします。ネット上の誹謗中傷や風評被害にお悩みの方は、当事務所までお気軽にご相談ください。

野口 明男 弁護士

監修者

野口 明男(代表弁護士)

開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。