トレントを利用していると意図せず違法アップロードに加担してしまう可能性があります。トレントはダウンロードを行うと同時にファイルのアップロードも行うことになるためです。過去にトレントで著作物をダウンロードしたことがある場合、ある日突然、著作権者から損害賠償請求されるかもしれません。
本記事では、トレント利用の問題点とトレント利用から損害賠償に発展する可能性、またその場合の対策について解説します。
著作権侵害の損害賠償金額の相場
著作権侵害による損害賠償金額は、一律に決まっているわけではありません。著作権法第114条に基づき、以下の3つの方法で算定されます。
| 条項 | 算定方法 | 概要 |
|---|---|---|
| 114条1項 | 侵害者の譲渡数量×権利者の単位利益 | 侵害者が販売した数量に、権利者が本来得られたはずの1個あたりの利益を掛けた額。販売能力を超える分は控除 |
| 114条2項 | 侵害者の利益額を損害額と推定 | 侵害者が侵害行為によって得た利益の額が、権利者の損害と推定される |
| 114条3項 | ライセンス料相当額 | 正規にライセンスを受けた場合に支払うべき使用料相当額。損害額の最低限を定めた規定 |
トレントによる違法アップロードの場合、示談金として1作品あたり10万円〜40万円程度を請求されるケースが多いです。ただし、大量アップロードや商用コンテンツの場合は数百万円〜数千万円に達する判例もあります。
また、違法アップロードの刑事罰は10年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金またはこれらの併科とされています(著作権法第119条第1項)。違法ダウンロードは2年以下の拘禁刑もしくは200万円以下の罰金です(同条第3項)。
著作権侵害の損害賠償金額の目安
| 侵害の類型 | 損害賠償金額の目安 | 根拠・備考 |
|---|---|---|
| トレントでの個人利用(少数作品) | 10万円〜40万円/作品 | 示談金として請求されるケースが多い |
| トレントでの大量アップロード | 数百万円〜数千万円 | DL回数×単価で算定(114条1項) |
| 漫画の違法アップロード | 約219万円(判例) | 請求額約1.9億円に対し因果関係認定分 |
| 格闘技動画の違法アップロード | 1,000万円(満額認容) | 配信料×再生回数×60%で算定 |
| 画像・イラストの無断転載 | 数万円〜数百万円 | ライセンス料相当額(114条3項) |
トレントの利用で損害賠償請求を受ける可能性はある?

トレントが違法ということではありませんが、トレントを利用したために、損害賠償請求を受けることはあり得ます。トレントなどのP2Pファイル共有サービスを利用すると、ダウンロードと同時にweb上にアップロードを行うことになるためです。
もし、トレントを利用してダウンロードしたファイルが著作権のあるアニメや漫画、テレビ番組、音楽ファイルなどであれば、違法アップロード(著作権法上の「公衆送信権」及び「送信可能化権」の侵害)に加担したことになります。
著作者から損害賠償請求されるまでの流れ

それでは、違法アップロードをしてしまうことによって、著作権者から損害賠償請求を受けた場合の流れを解説します。
1.違法アップロードにより著作者に実害が発生
そもそも著作物は著作権によって保護されており、著作物を使用する場合には著作権者や権利を管理する団体へ許可を申請しなくてはなりません。
しかし、トレントを使用した場合、インターネットなどの電子媒体へ、その許可を得ることなく違法アップロードしてしまうことになります。これは著作者の有する著作権を侵害する行為です。
2.違法アップロードをした人のIPアドレス調査・開示請求
違法アップロードにより著作権の侵害を受けた著作者は、ネットワーク監視システムを利用して、違法アップロードがどのIPアドレスからなされたかを突き止めます。あわせてアップロードされたファイルのタイトルなど、後々必要となる証拠を収集します。
3.プロバイダへの発信者情報開示請求
次は特定されたIPアドレスから違法アップロードした人を特定する段階です。まず取得したIPアドレスを元に、Web上で公開されているプロバイダ特定サイトで、投稿者が違法アップロード時に使用していたプロバイダを特定します。そして、特定したプロバイダに対して発信者情報開示請求を行い、違法アップロードした人の個人情報(住所や氏名など)を開示するように求めていきます。
4.プロバイダから違法アップロードをした人に意見照会書の送付
プロバイダから「発信者情報開示に係る意見照会書」が送られてくるのは、この発信者情報開示請求のタイミングです。開示請求を受けたプロバイダは、プロバイダ責任制限法第4条第2項に基づき、違法アップロードを行った発信者に意見照会書を送付します。その目的は発信者の個人情報を開示することについて、本人の意見を聴取することです。
プロバイダは意見照会書の回答等を加味して発信者情報の開示を判断します。プロバイダが開示を拒否した場合、著作権者は発信者情報開示請求訴訟を提起して開示を求めることになります。
5.情報開示後、著作者が損害賠償請求
ここまでのプロセスは違法アップロードをした人の責任を追及するための準備にすぎません。プロバイダが発信者情報を開示し、違法行為に及んだ人が特定できたら、著作権者は著作権侵害を理由として損害賠償請求訴訟を提起します。また、著作権法違反で告訴して、違法アップロードした人の刑事上の責任を問う可能性もあります。
損害賠償金の相場と金額の目安

著作権法違反によって損害賠償請求訴訟を提起された場合、どれくらいの金額を請求されることになるのでしょうか。著作権法第114条には、損害額を算定するための3つの方法が規定されています。第1項は「侵害者の譲渡数量×権利者の単位利益」、第2項は「侵害者の利益額を損害額と推定」、第3項は「ライセンス料相当額」です。なお、2024年1月施行の改正著作権法により、第3項のライセンス料相当額の算定において、侵害の態様を考慮した増額(いわゆる「侵害プレミアム」)が認められるようになりました。
アップロードされたファイルが無料でダウンロードされたとしても、実際に販売されたこととは違います。そのため、実際にどれほどの損害があったのかを立証することは非常に難しいのですが、上記計算式に当てはめて損害額を計算することは容易です。人気コンテンツをアップロードした場合、莫大な損害賠償金を請求されることになる可能性があります。
著作権侵害の損害賠償の裁判例
ここから、違法アップロードを行ってしまったために損害賠償請求にまで発展した実例を紹介します。
漫画の違法アップロード
自社サイトに同人誌漫画をアップロードしていることが著作権侵害(公衆送信権)に当たるとして、原作者数名がサイトを運営していた会社に対し、損害賠償金1億9,324万3,288円を求める裁判を提起しました。判決は、219万2,215円についてのみ因果関係を認め、支払いを命じています。
格闘技動画の違法アップロード
アメリカの総合格闘技団体UFC(Ultimate Fighting Championship)の試合の様子を無断で計84回に渡って動画サイト「ニコニコ動画」にアップロードしていた事案があります。アップロード実行者に対し、大会の模様を撮影・編集した映像の著作権を持つ会社が1,000万円の損害賠償請求を求めて裁判を提起しました。2013年に出された判決は、1,000万円満額の支払いを命じるものとなりました。
もしも発信者情報開示に係る意見照会書が届いたら

手元に「発信者情報開示係る意見照会書」が届いた場合、それは著作権を侵害された著作権者が対策に着手したことを示します。もし、プロバイダから意見照会書が届いた場合はどう対処すれば良いのでしょうか。
拒否または同意の回答をする
意見照会書が届いたら、必ず拒否または同意の回答をします。拒否する場合は、「著作物性が認められない」、「著作権法の許容範囲である」などと理由を記載します。ここで注意すべきなのは、無視してはいけないということです。無視したからといって罰則があるわけではありませんが、一定の期間(2週間)を経過するとプロバイダは、反論や主張がないものと判断し、発信者情報を開示してしまう可能性があります。
弁護士に相談する
発信者情報に係る意見照会書が届いたということは、著作者は権利侵害を侵害されたと考えている状態だということを意味します。つまり、発信者情報の開示を受けた後に、民事においては損害賠償請求を求めて裁判を提起することを考えているかもしれないということです。また、その権利侵害を重大に受け止めて、刑事告訴も考えている可能性もあります。そのようなことも見据えて、意見照会書が届いた場合には、同意するにしても、拒否するにしても一度弁護士に相談することをおすすめします。
よくある質問(FAQ)
Q: 著作権侵害の損害賠償金額の相場はいくらですか?
A: トレントでの個人利用の場合、示談金として1作品あたり10万円〜40万円程度が請求されるケースが多いです。ただし、大量アップロードや商用コンテンツの場合は数百万円〜数千万円に達することもあります。著作権法第114条に基づく3つの算定方法(侵害者の譲渡数量×単位利益、侵害者の利益額、ライセンス料相当額)のいずれかで計算されます。
Q: 違法アップロードの賠償金はどのくらいですか?
A: 違法アップロードの損害賠償金は、コンテンツの種類・ダウンロード回数・販売価格等により大きく異なります。過去の判例では、格闘技動画84回のアップロードで1,000万円の満額認容、漫画の違法アップロードで約219万円の認定例があります。
Q: 著作権侵害の損害賠償額はどのように計算されますか?
A: 著作権法第114条に3つの算定方法が規定されています。(1)侵害者の譲渡数量×権利者の単位利益(第1項)、(2)侵害者の利益額を損害額と推定(第2項)、(3)ライセンス料相当額(第3項)です。2024年施行の改正法により、第3項では侵害態様を考慮した増額も認められるようになりました。
Q: トレントで違法ダウンロードした場合も損害賠償請求されますか?
A: トレントではダウンロードと同時にアップロードも行われるため、違法アップロード(公衆送信権・送信可能化権の侵害)として損害賠償請求される可能性があります。
Q: 意見照会書が届いたらどうすればいいですか?
A: 必ず回答期限(通常2週間)内に拒否または同意の回答をしてください。無視すると、プロバイダが発信者情報を開示してしまう可能性があります。弁護士への早急な相談をおすすめします。
まとめ
著作権侵害による損害賠償金額は、著作権法第114条に基づき算定されます。トレントでの個人利用の場合は1作品あたり10万円〜40万円程度の示談金が相場ですが、大量の違法アップロードでは数百万円〜数千万円に達する可能性があります。
もし、意見照会書が手元に届いたのであれば早急に対策を考えなければなりません。弁護士に相談することで、適切な対応を検討することが可能です。
アークレスト法律事務所は、ネットトラブルの解決に真摯に取り組んできました。ファイル共有サービスを利用したことで心配なことがある方は、ぜひお気軽にご相談ください。






