【結論】犯罪歴があっても就職は可能
賞罰欄のない履歴書では申告義務がなく、企業が前科を照会する法的手段もありません(犯歴事務規程により検察官等のみ照会可能)。 ただし、実名報道による「デジタルタトゥー」や資格の欠格事由で発覚するリスクがあります。更生保護就労支援・コレワーク・刑務所出所者等就労支援など公的支援制度の活用が有効です。
犯罪に対する悪いイメージは、就職に大きな影響を与えます。犯罪歴を隠して就職することもできますが、ばれると就業を続けるのが難しくなるかもしれません。
そのリスクを避けるため、犯罪歴をオープンにして就職活動をする方法もあります。 ここでは、犯罪歴が就職にどんな影響を与えるか、就職するときにどのような支援制度を受けられるのかを解説します。
【前提知識】逮捕歴・前科・前歴の違い
「犯罪歴」「逮捕歴」「前科」「前歴」は混同されがちですが、法的な意味は異なります。就職活動への影響を考えるうえで、まず用語の違いを正確に押さえておくことが重要です。
| 用語 | 意味 | 消える/残るの扱い |
|---|---|---|
| 前科 | 刑事裁判で有罪判決が確定し、刑罰(罰金以上)の対象となった経歴 | 判決確定後も記録は残る。本人の死亡まで検察庁の犯歴票に記録 |
| 前歴 | 警察・検察に逮捕や取り調べを受けたが、起訴猶予・不起訴・微罪処分などで刑事手続が終了した経歴 | 起訴に至らなかったケース。検察庁・警察に記録は残るが「前科」ではない |
| 逮捕歴 | 警察に身柄を拘束された(逮捕された)経歴 | 無罪・不起訴であっても「逮捕された事実」は消えない(特に実名報道された場合はネット上に残存) |
逮捕歴は無罪であっても消えない
逮捕後に不起訴処分や無罪判決を受けても、「逮捕された」という事実そのものは消えません。特に実名で報道された場合、ネット上にニュース記事やまとめサイトの記録が残り続け、長期にわたり影響を及ぼすことがあります。これがいわゆる「デジタルタトゥー」と呼ばれる現象です。
犯罪歴が就職に及ぼす影響とは
刑期を終え、新しい仕事に就くときに壁として立ちはだかるのが「犯罪歴」です。ここでは、犯罪歴が就職に及ぼす影響のうち、とくに知っておきたい2つのポイントについて説明します。
犯罪歴が就職で不利になる理由は、大きく以下の3つに分けられます。
就職先が見つかりにくい
犯罪歴があることを申告して就職をする場合、就職先が見つかりにくいことがあります。とくに求職者が多いときは、犯罪歴のある人よりもない人を選びたいというのが、企業の本音でしょう。
しかし、犯罪歴を申告していれば、就職後に「ばれるのではないか」と不安になることもありません。
隠して就職すると解雇のリスクもある
実は、犯罪歴を隠していても就職はできます。 犯罪歴の申告義務(法的な義務ではなく、あくまで採用側との関係で経歴詐称による内定取り消し等のリスクを避けるための事実状の義務のことをいいます。)があるのは、履歴書に賞罰欄があるときと面接などで犯罪歴を問われたとき です。賞罰欄のない履歴書に犯罪歴を書く必要はなく、就職先から犯罪歴を聞かれなければ自己申告する必要はありません。そのため、犯罪歴を隠して就職することは可能です。
しかし、犯罪歴がないと嘘を吐いた場合は、申告義務違反や経歴詐称に当たります。 就職後に経歴詐称がばれると、懲戒解雇になる可能性もあります。犯罪歴を聞かれたら、正直に答えましょう。また、申告義務のない場合でも、就職時に犯罪歴を申告しておく方が後々のトラブルを防げるかもしれません。
※ なお、厚生労働省は 「公正な採用選考の基本」(採用選考時の基本的な考え方) において、本人に責任のない事項や本来自由であるべき事項を採用基準にしないよう企業に求めています。厚労省が推奨する履歴書様式には賞罰欄がなく、犯罪歴の記載欄は設けられていません。
実名報道によるデジタルタトゥーで隠せない
犯罪歴を隠して就職したい場合でも、過去の犯罪が実名報道されていると、ネット上に情報が半永久的に残る「デジタルタトゥー」により、隠すこと自体が困難になります。採用担当者が応募者の名前を検索するケースも増えており、実名報道が残っていれば書類選考や面接の段階で犯罪歴が発覚する可能性があります。
逮捕歴のみの場合に押さえておくべき3つの原則
前科ではなく「逮捕歴のみ(不起訴・無罪等で刑罰確定なし)」の場合、就職活動上の取扱いには以下の3つの原則があります。これらを正しく理解することで、不要な不安や誤った対応を避けることができます。
| 原則 | 内容 |
|---|---|
| ① 推定無罪の原則 | 刑事裁判で有罪が確定するまでは、被疑者・被告人は無罪と推定される(憲法31条・刑事訴訟法の基本原則)。逮捕されたという事実だけで「罪を犯した」と扱うことはできない。 |
| ② 履歴書への記載義務がない | 履歴書の賞罰欄に記載が求められるのは、原則として確定した「前科(罰金以上の刑)」のみ。逮捕されたが不起訴・無罪となった「逮捕歴のみ」は記載義務はないとされる。 |
| ③ 面接で質問されなければ申告不要 | 応募者から積極的に申告する法的義務はない。ただし、面接で直接質問されたうえで虚偽の回答をした場合は、後日「経歴詐称」として懲戒解雇等の理由とされるリスクがある。 |
前科や逮捕歴は就職先にバレる?企業が犯罪歴を調べる方法とは
前科持ちの人は、それを隠して就職活動をしたいと考えるでしょう。賞罰欄のない履歴書を利用し、採用面接でも犯罪歴の有無を聞かれなければ、隠して就職することも可能です。
しかし、就職後に犯罪歴がバレてしまっては意味がありません。そこで、以下では、企業が従業員の犯罪歴を調べることができるのかについて説明します。
企業が従業員の犯罪歴を照会することはできない
前科は、検察庁のデータベースと市区町村の犯罪人名簿に登録されます。 しかし、前科の紹介は、犯歴事務規程により検察官または検察事務官しかすることができませんので、一般人や民間企業が従業員の前科を照会することはできません。そのため、従業員から積極的に犯罪歴を申告しない限りは、就職先に犯罪歴があることを知られる可能性は低いでしょう。
※ また、 個人情報保護法2条3項(要配慮個人情報の定義) により、犯罪の経歴は「要配慮個人情報」に該当します。企業が本人の同意なく犯罪歴を取得・第三者提供することは原則禁止されており、興信所等を通じた調査も法的に制限されています。
就職後に犯罪歴がバレる可能性があるケース
企業が従業員の犯罪歴を照会することはできませんので、犯罪歴を隠したまま働き続けることも可能です。しかし、以下のようなケースに該当する場合には、犯罪歴がバレてしまう可能性もありますので注意が必要です。
▶ 過去の犯罪について実名報道されたケース
ネットニュースなどで過去の犯罪が実名報道されると、その内容は、インターネット上に半永久的に残ってしまう可能性があります。これを「デジタルタトゥー」といいます。 採用時には過去の犯罪歴がバレなかったとしても、その後、何らかのきっかけで自分の名前がネット検索されてしまうと、過去の犯罪歴が会社にばれてしまうことがあります。 すべての犯罪が実名報道されるわけではありませんが、重大な犯罪や社会的関心の高い犯罪だと、実名報道されるリスクが高いといえます。
▶ 一定の資格を要求される仕事に就いているケース
就職先によっては、業務を行うにあたって一定の資格や免許を要求されることがあります。 資格や免許の種類によっては、前科があることが欠格事由として定められているものがあるため、資格や免許を取得できないことが理由で犯罪歴があることがバレてしまうケースもあります。
将来、前科が欠格事由として定められている業務に就く予定がある場合には、採用面接時に前科があることを伝えておいた方がよいでしょう。
以下は、前科が欠格事由となる主な資格・免許の一覧です。
| 資格・免許 | 根拠法令 | 制限内容 | 制限期間 |
|---|---|---|---|
| 弁護士 | 弁護士法7条 | 以上の刑に処せられた者は欠格 | 刑の執行終了後 |
| 医師 | 医師法4条 | 罰金以上の刑に処せられた者(医事に関する犯罪等) | 相対的欠格(個別判断) |
| 教員免許 | 教育職員免許法5条 | 以上の刑に処せられた者 | 刑の執行終了後10年 |
| 看護師 | 保健師助産師看護師法9条 | 罰金以上の刑に処せられた者 | 相対的欠格(個別判断) |
| 宅地建物取引士 | 宅建業法18条 | 以上の刑に処せられた者 | 刑の執行終了後5年 |
| 警備員 | 警備業法14条 | 以上の刑に処せられた者等 | 刑の執行終了後5年 |
| 公認会計士 | 公認会計士法4条 | 以上の刑に処せられた者 | 刑の執行終了後3年 |
▶ 就職先に過去の犯罪歴を知っている人がいたケース
実名報道がされていなければ、企業に過去の犯罪歴がバレるおそれはほとんどありません。 しかし、実名報道をされなかったとしても、事件の内容によってはその地域の人々には誰が犯人であるのかわかってしまうケースもあります。
就職先にたまたま過去の犯罪歴を知っている人がいると、その人からの申告で自分の犯罪歴がバレてしまう可能性があります。このようなリスクを避けるには、事件を起こした地域から離れた場所で就職した方がよいでしょう。
犯罪歴の影響は属性・状況によって異なる
犯罪歴が就職に与える影響の程度は、個人の状況によって大きく異なります。以下の表で自分の状況を確認してください。
| 区分 | 就職への影響が比較的小さいケース | 就職への影響が大きいケース |
|---|---|---|
| 刑の種類 | 執行猶予付き判決・罰金刑 | 実刑() |
| 犯罪歴の回数 | 初犯 | 累犯・再犯 |
| 報道の有無 | 実名報道なし | 実名報道あり(デジタルタトゥー) |
| 経過年数 | 刑の消滅後(10年超経過等) | 刑の執行終了から間もない |
犯罪歴がある人の就職支援制度
犯罪歴があることによって就職先が見つかりにくい点は、法務省も問題視しているようです。法務省や厚生労働省では、犯罪歴のある人を対象とした就労支援制度を展開しています。法務省が管轄している支援制度を2つご紹介します。[注1]
[注1]法務省:更生保護における就労支援 法務省のホームページです。
更生保護就労支援
更生保護就労支援は、保護観察所が実施する就職支援制度です。協力雇用主を募集し、犯罪歴のある人に理解のある企業への就職ができます。 更生保護就労支援の特徴は就職活動の支援だけでなく、就職後に職場に定着できるかまでを支援する ことです。勤務・生活状況もフォローアップしてくれるので、就職後にトラブルがあったときも支援を仰げます。
刑務所出所者等就労支援
刑務所出所者等就労支援は、法務省が厚生労働省と連携して実施している支援制度です。ハローワークが実施するセミナーや職場体験講習の受講、職場体験見学会やトライアル雇用などの支援を受けられます。
刑務所出所者等就労支援では、出所前からハローワークの職員に相談する機会が得られたり、職業案内を受けたりすることが可能です。 出所前から出所後までをハローワークが一貫して支援することで、犯罪歴があっても就職しやすい環境を得られます。
犯罪歴がある人の就職活動の方法
犯罪歴があっても、支援制度を使わずに就職活動をする方法もあります。支援制度を利用しないときは、ハローワークやエージェントに登録して就職活動を進めます。
しかし、犯罪歴をオープンにして支援なく就職活動をするのは、孤独な活動です。
ここでは、支援を利用した就職活動の方法について解説します。
コレワークを利用する
コレワークとは、矯正就労支援情報センターのことで、犯罪歴のある人の就職を支援する施設です。 犯罪歴のある人と、それに理解のある企業とをマッチングさせる役割をします。
ハローワークを通じて登録し、希望職種や就業条件が合う企業へ紹介してくれます。事前に犯罪歴のある人への理解を深めるセミナーなどが行われており、就職後も安心して就労できる仕組みです。[注2]
[注2]法務省:コレワーク(矯正就労支援情報センター)について
民間の就労支援サービスを利用する
民間団体や企業でも、就労支援サービスを展開しています。 NPO法人による支援サービスだけでなく、日本財団の「職親プロジェクト」[注3]など、犯罪歴のある人専用の求人サイトや求人誌、支援プログラムもあります。
民間企業の支援サービスでは、利用料金がかかることがデメリットです。しかし、犯罪歴を隠さずに働くことのできる場を探す手伝いをしてくれるので、1つの選択肢として覚えておくとよいでしょう。
[注3]日本財団:職親プロジェクトとは 職親プロジェクトとは — 日本財団職親プロジェクト
日本保釈支援協会の職業紹介サービス
日本保釈支援協会では、保釈保証金の立替サービスに加えて、前科・前歴がある人に特化した職業紹介サービス[注4]も提供しています。日本保釈支援協会の職業紹介サービスは、日本保釈支援協会の保釈支援を受けた被告人が利用できる制度で、大手派遣会社と提携し、保釈後や判決後の職業紹介を受けることができます。 就業先に前科・前歴があることが伝わることはなく、本名ではなく通称名(希望名)で勤務することも可能です。 利用できる人が限定されていますが、対象となる方は、同制度を利用して職業紹介をしてもらうとよいでしょう。
犯罪歴がある人の就職活動 ─ 状況別アクションフロー
STEP 1: 実名報道の有無を確認する
→ 自分の氏名でGoogle検索し、逮捕記事・犯罪報道の有無を確認
STEP 2: 実名報道がある場合 → 削除可能性を検討
→ 事件から相当期間が経過している場合、記事削除やGoogle検索結果の削除請求が可能な場合がある
→ 弁護士(ネット削除に強い事務所)に相談 → 削除依頼・仮処分申立て
STEP 3: 資格制限の有無を確認する
→ 希望する職種に必要な資格が欠格事由に該当するか確認(上記の表を参照)
→ 該当する場合は、制限期間の経過を待つか、欠格事由のない職種を検討
STEP 4: 就職支援制度を選択する
→ 公的支援: 更生保護就労支援、刑務所出所者等就労支援、コレワーク
→ 民間支援: NPO法人、職親プロジェクト、日本保釈支援協会
→ 自力: ハローワーク、転職エージェント(犯罪歴の申告は任意だが虚偽申告は不可)
犯罪歴で就職しにくいと感じたら支援制度を利用しよう
犯罪歴があると、就職先が見つかりにくいのが現実です。だからといって、犯罪歴を隠して就職すると、ばれたときに周囲の目が気になってそのまま就業を続けるのが難しくなるかもしれません。また、犯罪歴はないと嘘をついた場合は、経歴詐称として解雇される可能性もあります。
犯罪歴をオープンにして就職するときは、支援制度を利用する方法もあります。犯罪歴が原因で就職先が決まらない場合も、一度関連施設に相談をしてみるとよいでしょう。
【結論】犯罪歴があっても就職は可能
賞罰欄のない履歴書では申告義務がなく、企業が前科を照会する法的手段もありません(犯歴事務規程により検察官等のみ照会可能)。 ただし、実名報道による「デジタルタトゥー」や資格の欠格事由で発覚するリスクがあります。更生保護就労支援・コレワーク・刑務所出所者等就労支援など公的支援制度の活用が有効です。
犯罪に対する悪いイメージは、就職に大きな影響を与えます。犯罪歴を隠して就職することもできますが、ばれると就業を続けるのが難しくなるかもしれません。
そのリスクを避けるため、犯罪歴をオープンにして就職活動をする方法もあります。 ここでは、犯罪歴が就職にどんな影響を与えるか、就職するときにどのような支援制度を受けられるのかを解説します。
【前提知識】逮捕歴・前科・前歴の違い
「犯罪歴」「逮捕歴」「前科」「前歴」は混同されがちですが、法的な意味は異なります。就職活動への影響を考えるうえで、まず用語の違いを正確に押さえておくことが重要です。
| 用語 | 意味 | 消える/残るの扱い |
|---|---|---|
| 前科 | 刑事裁判で有罪判決が確定し、刑罰(罰金以上)の対象となった経歴 | 判決確定後も記録は残る。本人の死亡まで検察庁の犯歴票に記録 |
| 前歴 | 警察・検察に逮捕や取り調べを受けたが、起訴猶予・不起訴・微罪処分などで刑事手続が終了した経歴 | 起訴に至らなかったケース。検察庁・警察に記録は残るが「前科」ではない |
| 逮捕歴 | 警察に身柄を拘束された(逮捕された)経歴 | 無罪・不起訴であっても「逮捕された事実」は消えない(特に実名報道された場合はネット上に残存) |
逮捕歴は無罪であっても消えない
逮捕後に不起訴処分や無罪判決を受けても、「逮捕された」という事実そのものは消えません。特に実名で報道された場合、ネット上にニュース記事やまとめサイトの記録が残り続け、長期にわたり影響を及ぼすことがあります。これがいわゆる「デジタルタトゥー」と呼ばれる現象です。
犯罪歴が就職に及ぼす影響とは
刑期を終え、新しい仕事に就くときに壁として立ちはだかるのが「犯罪歴」です。ここでは、犯罪歴が就職に及ぼす影響のうち、とくに知っておきたい2つのポイントについて説明します。
犯罪歴が就職で不利になる理由は、大きく以下の3つに分けられます。
就職先が見つかりにくい
犯罪歴があることを申告して就職をする場合、就職先が見つかりにくいことがあります。とくに求職者が多いときは、犯罪歴のある人よりもない人を選びたいというのが、企業の本音でしょう。
しかし、犯罪歴を申告していれば、就職後に「ばれるのではないか」と不安になることもありません。
隠して就職すると解雇のリスクもある
実は、犯罪歴を隠していても就職はできます。 犯罪歴の申告義務(法的な義務ではなく、あくまで採用側との関係で経歴詐称による内定取り消し等のリスクを避けるための事実状の義務のことをいいます。)があるのは、履歴書に賞罰欄があるときと面接などで犯罪歴を問われたとき です。賞罰欄のない履歴書に犯罪歴を書く必要はなく、就職先から犯罪歴を聞かれなければ自己申告する必要はありません。そのため、犯罪歴を隠して就職することは可能です。
しかし、犯罪歴がないと嘘を吐いた場合は、申告義務違反や経歴詐称に当たります。 就職後に経歴詐称がばれると、懲戒解雇になる可能性もあります。犯罪歴を聞かれたら、正直に答えましょう。また、申告義務のない場合でも、就職時に犯罪歴を申告しておく方が後々のトラブルを防げるかもしれません。
※ なお、厚生労働省は 「公正な採用選考の基本」(採用選考時の基本的な考え方) において、本人に責任のない事項や本来自由であるべき事項を採用基準にしないよう企業に求めています。厚労省が推奨する履歴書様式には賞罰欄がなく、犯罪歴の記載欄は設けられていません。
実名報道によるデジタルタトゥーで隠せない
犯罪歴を隠して就職したい場合でも、過去の犯罪が実名報道されていると、ネット上に情報が半永久的に残る「デジタルタトゥー」により、隠すこと自体が困難になります。採用担当者が応募者の名前を検索するケースも増えており、実名報道が残っていれば書類選考や面接の段階で犯罪歴が発覚する可能性があります。
逮捕歴のみの場合に押さえておくべき3つの原則
前科ではなく「逮捕歴のみ(不起訴・無罪等で刑罰確定なし)」の場合、就職活動上の取扱いには以下の3つの原則があります。これらを正しく理解することで、不要な不安や誤った対応を避けることができます。
| 原則 | 内容 |
|---|---|
| ① 推定無罪の原則 | 刑事裁判で有罪が確定するまでは、被疑者・被告人は無罪と推定される(憲法31条・刑事訴訟法の基本原則)。逮捕されたという事実だけで「罪を犯した」と扱うことはできない。 |
| ② 履歴書への記載義務がない | 履歴書の賞罰欄に記載が求められるのは、原則として確定した「前科(罰金以上の刑)」のみ。逮捕されたが不起訴・無罪となった「逮捕歴のみ」は記載義務はないとされる。 |
| ③ 面接で質問されなければ申告不要 | 応募者から積極的に申告する法的義務はない。ただし、面接で直接質問されたうえで虚偽の回答をした場合は、後日「経歴詐称」として懲戒解雇等の理由とされるリスクがある。 |
前科や逮捕歴は就職先にバレる?企業が犯罪歴を調べる方法とは
前科持ちの人は、それを隠して就職活動をしたいと考えるでしょう。賞罰欄のない履歴書を利用し、採用面接でも犯罪歴の有無を聞かれなければ、隠して就職することも可能です。
しかし、就職後に犯罪歴がバレてしまっては意味がありません。そこで、以下では、企業が従業員の犯罪歴を調べることができるのかについて説明します。
企業が従業員の犯罪歴を照会することはできない
前科は、検察庁のデータベースと市区町村の犯罪人名簿に登録されます。 しかし、前科の紹介は、犯歴事務規程により検察官または検察事務官しかすることができませんので、一般人や民間企業が従業員の前科を照会することはできません。そのため、従業員から積極的に犯罪歴を申告しない限りは、就職先に犯罪歴があることを知られる可能性は低いでしょう。
※ また、 個人情報保護法2条3項(要配慮個人情報の定義) により、犯罪の経歴は「要配慮個人情報」に該当します。企業が本人の同意なく犯罪歴を取得・第三者提供することは原則禁止されており、興信所等を通じた調査も法的に制限されています。
就職後に犯罪歴がバレる可能性があるケース
企業が従業員の犯罪歴を照会することはできませんので、犯罪歴を隠したまま働き続けることも可能です。しかし、以下のようなケースに該当する場合には、犯罪歴がバレてしまう可能性もありますので注意が必要です。
▶ 過去の犯罪について実名報道されたケース
ネットニュースなどで過去の犯罪が実名報道されると、その内容は、インターネット上に半永久的に残ってしまう可能性があります。これを「デジタルタトゥー」といいます。 採用時には過去の犯罪歴がバレなかったとしても、その後、何らかのきっかけで自分の名前がネット検索されてしまうと、過去の犯罪歴が会社にばれてしまうことがあります。 すべての犯罪が実名報道されるわけではありませんが、重大な犯罪や社会的関心の高い犯罪だと、実名報道されるリスクが高いといえます。
▶ 一定の資格を要求される仕事に就いているケース
就職先によっては、業務を行うにあたって一定の資格や免許を要求されることがあります。 資格や免許の種類によっては、前科があることが欠格事由として定められているものがあるため、資格や免許を取得できないことが理由で犯罪歴があることがバレてしまうケースもあります。
将来、前科が欠格事由として定められている業務に就く予定がある場合には、採用面接時に前科があることを伝えておいた方がよいでしょう。
以下は、前科が欠格事由となる主な資格・免許の一覧です。
| 資格・免許 | 根拠法令 | 制限内容 | 制限期間 |
|---|---|---|---|
| 弁護士 | 弁護士法7条 | 以上の刑に処せられた者は欠格 | 刑の執行終了後 |
| 医師 | 医師法4条 | 罰金以上の刑に処せられた者(医事に関する犯罪等) | 相対的欠格(個別判断) |
| 教員免許 | 教育職員免許法5条 | 以上の刑に処せられた者 | 刑の執行終了後10年 |
| 看護師 | 保健師助産師看護師法9条 | 罰金以上の刑に処せられた者 | 相対的欠格(個別判断) |
| 宅地建物取引士 | 宅建業法18条 | 以上の刑に処せられた者 | 刑の執行終了後5年 |
| 警備員 | 警備業法14条 | 以上の刑に処せられた者等 | 刑の執行終了後5年 |
| 公認会計士 | 公認会計士法4条 | 以上の刑に処せられた者 | 刑の執行終了後3年 |
▶ 就職先に過去の犯罪歴を知っている人がいたケース
実名報道がされていなければ、企業に過去の犯罪歴がバレるおそれはほとんどありません。 しかし、実名報道をされなかったとしても、事件の内容によってはその地域の人々には誰が犯人であるのかわかってしまうケースもあります。
就職先にたまたま過去の犯罪歴を知っている人がいると、その人からの申告で自分の犯罪歴がバレてしまう可能性があります。このようなリスクを避けるには、事件を起こした地域から離れた場所で就職した方がよいでしょう。
犯罪歴の影響は属性・状況によって異なる
犯罪歴が就職に与える影響の程度は、個人の状況によって大きく異なります。以下の表で自分の状況を確認してください。
| 区分 | 就職への影響が比較的小さいケース | 就職への影響が大きいケース |
|---|---|---|
| 刑の種類 | 執行猶予付き判決・罰金刑 | 実刑() |
| 犯罪歴の回数 | 初犯 | 累犯・再犯 |
| 報道の有無 | 実名報道なし | 実名報道あり(デジタルタトゥー) |
| 経過年数 | 刑の消滅後(10年超経過等) | 刑の執行終了から間もない |
犯罪歴がある人の就職支援制度
犯罪歴があることによって就職先が見つかりにくい点は、法務省も問題視しているようです。法務省や厚生労働省では、犯罪歴のある人を対象とした就労支援制度を展開しています。法務省が管轄している支援制度を2つご紹介します。[注1]
[注1]法務省:更生保護における就労支援 法務省のホームページです。
更生保護就労支援
更生保護就労支援は、保護観察所が実施する就職支援制度です。協力雇用主を募集し、犯罪歴のある人に理解のある企業への就職ができます。 更生保護就労支援の特徴は就職活動の支援だけでなく、就職後に職場に定着できるかまでを支援する ことです。勤務・生活状況もフォローアップしてくれるので、就職後にトラブルがあったときも支援を仰げます。
刑務所出所者等就労支援
刑務所出所者等就労支援は、法務省が厚生労働省と連携して実施している支援制度です。ハローワークが実施するセミナーや職場体験講習の受講、職場体験見学会やトライアル雇用などの支援を受けられます。
刑務所出所者等就労支援では、出所前からハローワークの職員に相談する機会が得られたり、職業案内を受けたりすることが可能です。 出所前から出所後までをハローワークが一貫して支援することで、犯罪歴があっても就職しやすい環境を得られます。
犯罪歴がある人の就職活動の方法
犯罪歴があっても、支援制度を使わずに就職活動をする方法もあります。支援制度を利用しないときは、ハローワークやエージェントに登録して就職活動を進めます。
しかし、犯罪歴をオープンにして支援なく就職活動をするのは、孤独な活動です。
ここでは、支援を利用した就職活動の方法について解説します。
コレワークを利用する
コレワークとは、矯正就労支援情報センターのことで、犯罪歴のある人の就職を支援する施設です。 犯罪歴のある人と、それに理解のある企業とをマッチングさせる役割をします。
ハローワークを通じて登録し、希望職種や就業条件が合う企業へ紹介してくれます。事前に犯罪歴のある人への理解を深めるセミナーなどが行われており、就職後も安心して就労できる仕組みです。[注2]
[注2]法務省:コレワーク(矯正就労支援情報センター)について
民間の就労支援サービスを利用する
民間団体や企業でも、就労支援サービスを展開しています。 NPO法人による支援サービスだけでなく、日本財団の「職親プロジェクト」[注3]など、犯罪歴のある人専用の求人サイトや求人誌、支援プログラムもあります。
民間企業の支援サービスでは、利用料金がかかることがデメリットです。しかし、犯罪歴を隠さずに働くことのできる場を探す手伝いをしてくれるので、1つの選択肢として覚えておくとよいでしょう。
[注3]日本財団:職親プロジェクトとは 職親プロジェクトとは — 日本財団職親プロジェクト
日本保釈支援協会の職業紹介サービス
日本保釈支援協会では、保釈保証金の立替サービスに加えて、前科・前歴がある人に特化した職業紹介サービス[注4]も提供しています。日本保釈支援協会の職業紹介サービスは、日本保釈支援協会の保釈支援を受けた被告人が利用できる制度で、大手派遣会社と提携し、保釈後や判決後の職業紹介を受けることができます。 就業先に前科・前歴があることが伝わることはなく、本名ではなく通称名(希望名)で勤務することも可能です。 利用できる人が限定されていますが、対象となる方は、同制度を利用して職業紹介をしてもらうとよいでしょう。
犯罪歴がある人の就職活動 ─ 状況別アクションフロー
STEP 1: 実名報道の有無を確認する
→ 自分の氏名でGoogle検索し、逮捕記事・犯罪報道の有無を確認
STEP 2: 実名報道がある場合 → 削除可能性を検討
→ 事件から相当期間が経過している場合、記事削除やGoogle検索結果の削除請求が可能な場合がある
→ 弁護士(ネット削除に強い事務所)に相談 → 削除依頼・仮処分申立て
STEP 3: 資格制限の有無を確認する
→ 希望する職種に必要な資格が欠格事由に該当するか確認(上記の表を参照)
→ 該当する場合は、制限期間の経過を待つか、欠格事由のない職種を検討
STEP 4: 就職支援制度を選択する
→ 公的支援: 更生保護就労支援、刑務所出所者等就労支援、コレワーク
→ 民間支援: NPO法人、職親プロジェクト、日本保釈支援協会
→ 自力: ハローワーク、転職エージェント(犯罪歴の申告は任意だが虚偽申告は不可)
犯罪歴で就職しにくいと感じたら支援制度を利用しよう
犯罪歴があると、就職先が見つかりにくいのが現実です。だからといって、犯罪歴を隠して就職すると、ばれたときに周囲の目が気になってそのまま就業を続けるのが難しくなるかもしれません。また、犯罪歴はないと嘘をついた場合は、経歴詐称として解雇される可能性もあります。
犯罪歴をオープンにして就職するときは、支援制度を利用する方法もあります。犯罪歴が原因で就職先が決まらない場合も、一度関連施設に相談をしてみるとよいでしょう。
よくある質問(FAQ)
犯罪歴があっても就職できますか?
はい、犯罪歴があっても就職は可能です。賞罰欄のない履歴書では犯罪歴の記載義務はなく、企業から直接聞かれない限り自己申告の必要もありません。
ただし、 虚偽の申告をした場合は経歴詐称として懲戒解雇のリスク があります。
前科は就職先にバレますか?
企業が従業員の前科を照会する法的手段はありません(犯歴事務規程により検察官等のみ照会可能)。
ただし、実名報道がネット上に残っている場合や、資格の欠格事由に該当する場合、 知人からの情報提供などで発覚するリスク はあります。
前科と逮捕歴の違いは何ですか?
前科は有罪判決を受けた記録で、検察庁と市区町村に登録されます。逮捕歴は逮捕された事実の記録で、起訴・不起訴に関わらず残ります。
前科は 刑法34条の2(刑の消滅) により、以上の刑は執行終了後10年、罰金以下は5年で効力が消滅しますが、逮捕歴は消滅しません。
犯罪歴がある人向けの支援制度はありますか?
主な支援制度として、以下のようなものがあります。
・更生保護就労支援(保護観察所)
・刑務所出所者等就労支援(法務省・厚労省連携)
・コレワーク(矯正就労支援情報センター)
・民間のNPO法人や日本財団の職親プロジェクト
・日本保釈支援協会の職業紹介サービス
ネット上の犯罪歴は削除できますか?
事件から相当期間が経過し、公益性が低下している場合には、サイト管理者への削除依頼や裁判所への仮処分申立てにより削除が認められるケースがあります。
削除の可否は個別判断となるため、ネット削除に詳しい弁護士への相談をお勧めします。





