ファイル共有ソフトとは?違法性と損害賠償リスクを弁護士が解説

9_ファイル共有ソフト 損害賠償

【結論】

・ソフト自体:合法(Winny、BitTorrent等も使用自体は違法ではない)
・違法となるケース:著作権保護コンテンツの無断共有(P2P型は自動アップロードで知らずに侵害)
・損害賠償額:数十万~数百万円(著作権法第114条の3方式で算定、2024年改正で増額傾向) 
監修:弁護士法人アークレスト法律事務所(著作権法・ネットトラブル専門)

本記事では、ファイル共有ソフト利用による損害賠償請求の法的根拠、著作権侵害の損害賠償額の算定方法(著作権法第114条の3つの方式)、実際の賠償額の相場、そして損害賠償請求を受けた場合の対処法まで網羅的に解説します。2024年1月施行の改正著作権法により損害賠償額の算定方法が見直され、賠償額が増額される方向での改正が行われています。

目次

ファイル共有ソフトの利用で損害賠償請求をされるのはどんなとき?

ファイル共有ソフトの利用で損害賠償請求をされるのはどんなとき?

ファイル共有ソフトを利用した際、どのような場合に著作権侵害となり、損害賠償請求をされる可能性があるのでしょうか。考えられる場面を説明します。

ファイル共有ソフトとは

ファイル共有ソフトとは、インターネットを通じて複数のユーザー間でファイルをやり取りするソフトウェアです。主にP2P型とクラウド型の2種類に分類されます。 

Winny

P2P型
現在の利用状況 開発終了(利用者減少)
違法性のリスク 高(自動アップロード)

Share

P2P型
現在の利用状況 開発終了(利用者減少)
違法性のリスク 高(自動アップロード)

Bit Torrent

P2P型
現在の利用状況 現在も利用されている
違法性のリスク 高(自動アップロード)

eMule

P2P型
現在の利用状況 海外で利用されている
違法性のリスク 高(自動アップロード)

Dropbox

クラウド型
現在の利用状況 広く利用されている
違法性のリスク 低(適切な利用で安全)

Google Drive

クラウド型
現在の利用状況 広く利用されている
違法性のリスク 低(適切な利用で安全)

 P2P型ソフトは、ダウンロードと同時に自動的にアップロードを行うため、著作権侵害のリスクが高くなります。一方、クラウド型は中央サーバーを経由するため、適切に利用すれば安全です。

ファイル共有ソフトの違法性

ファイル共有ソフト自体は違法なものではありません。しかし、P2P型のファイル共有ソフトはダウンロードを行うと自動的にアップロードを行うという仕組みに注意を払う必要があります。つまり、著作権のあるアニメや漫画、音楽ファイルなどを違法にダウンロードした場合、同時に違法アップロードも行っていることになるのです。

違法ファイルのやり取りは、アップロードもダウンロードも違法ですが、違法アップロードの方が厳しい罰則が規定されていて、損害賠償を求められる可能性が高くなります

具体的には、著作権・出版権・著作隣接権の侵害(違法アップロード等)の場合、著作権法第119条第1項により10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります。違法ダウンロードの場合は同法第119条第3項により2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金です。

ファイル共有ソフトと損害賠償の関係性

近年、発信者情報開示請求により利用者の特定が可能になり、損害賠償請求事例が急増しています。  ファイル共有ソフトを利用しても利用者の住所や氏名は表示されませんが、法律や技術環境の整備により、IPアドレスを元にプロバイダを特定し、そこから発信者を特定(発信者情報開示請求)することが可能になりました。そのため、ファイル共有ソフト利用者の一斉摘発や損害賠償請求、差止請求の事例が増加しています。そのため、最近ではファイル共有ソフト利用者の一斉摘発や損害賠償請求、差止請求の事例が増えてきつつあります。

ファイル共有ソフトで著作権を侵害した場合どうなる?

ファイル共有ソフトで著作権を侵害した場合どうなる?

ファイル共有ソフトを利用することで著作権を侵害した場合、利用者はどのような法的リスクを負うのでしょうか。それは、以下の2点に集約できます。

民事訴訟

まず考えられるのが、ファイル共有ソフトを利用して著作権を侵害した場合に著作者から求められる損害賠償のリスクです。民事訴訟において著作権侵害が認められた場合、損害賠償を求められたり、アップロードしたコンテンツの削除や謝罪を求められたりすることになります。

特に近年、大手の出版社は海賊版に対して断固とした態度で裁判に臨んでいくことを表明しており、損害賠償金額が跳ね上がる事例も見られるようになっています。

刑事訴訟

著作権を侵害されたと考えた著作者が、損害賠償請求だけでなく刑事訴訟のために告訴する可能性も考えられます。

著作権・出版権・著作隣接権侵害の場合、著作権法119条1項により、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方と規定されています。また、違法ダウンロードの場合は著作権法119条3項により、2年以下の懲役または200万円以下の罰金、またはその両方と規定されており、重罰が科される可能性もあるでしょう。

民事訴訟の項でも述べたとおり、出版社側が厳しい態度で臨むことを公表していることを考え合わせると、刑事訴訟に発展するケースが増えてもおかしくない状況です。

著作権侵害の損害賠償額はどのように算定されるか

著作権侵害の損害賠償額は、著作権法第114条に定められた3つの算定方式に基づいて計算されます。2024年1月施行の改正著作権法により、これらの算定方式が見直され、著作権者への賠償額が増額される方向での改正が行われました。

第1方式:譲渡数量ベース(著作権法第114条第1項)

 侵害者が販売した海賊版の数量に、著作権者が正規品を販売できていた場合の1個あたりの利益額を乗じた金額を損害額とする方式です。2024年改正により、著作権者の販売能力を超える部分についてもライセンス料相当額を損害額として請求できるようになりました。

第2方式:侵害者利益ベース(著作権法第114条第2項)

侵害者が著作権侵害行為によって得た利益の額を、著作権者の損害額と推定する方式です。ただし推定規定のため、侵害者が実際の損害額がより少ないことを立証した場合は減額される可能性があります。

第3方式:ライセンス料相当額(著作権法第114条第3項)

著作権者が著作権の使用許諾によって受けるべき金銭の額(ライセンス料相当額)を損害額として請求できる方式です。この方式は損害額の最低限を法定したものと考えられており、侵害者がこれより少額であることを立証して減額させることはできません。2024年改正により、侵害があったことを前提としたライセンス料を考慮できる旨が明記され、平時のライセンス料より高い金額が算定される方向での改正が行われました。

以下の表は、3つの算定方式を整理したものです。

第1方式(114条1項)

計算方法

侵害品の譲渡数量 × 著作権者の1個あたりの利益額

特徴

著作権者の販売能力の範囲内。改正により超過分もライセンス料相当額で請求可能に

第2方式(114条2項)

計算方法

侵害者が侵害行為によって得た利益額

特徴

推定規定。侵害者が反証可能

第3方式(114条3項)

計算方法

ライセンス料相当額

特徴

損害額の最低限。侵害者による減額不可。改正により侵害前提の料率を考慮可能に

ファイル共有ソフトのユーザーが損害賠償請求を受けた事例

ファイル共有ソフトのユーザーが損害賠償請求を受けた事例

実際にファイル共有ソフトの利用によって著作権侵害を問われ、損害賠償や事訴訟に発展した事例を見ていきましょう。

事例1:大量の音源ファイルをビットトレントで公開

2020年10月、東京地方裁判所はインターネットサービスプロバイダのソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社に対し、トレントを利用して大量の音楽ファイルを違法アップロードしていた利用者のIPアドレスの公開を命じる判決を命じました。同年11月には、ソフトバンク株式会社に対しても同様の判決が出ています。

この事例は、許可なく音楽を違法にアップロードしていた45のIPアドレスについて、日本レコード協会が発信者情報の公開を求め、ログが保存されていなかった2つを除く43のIPアドレスが開示されました。このうち31人は、今後著作権を侵害しない旨誓約し、損害賠償金を支払うことで合意したということです。

事例2:ゲームソフトをShareで違法アップロード

ファイル共有ソフトの「Share」を利用し、ゲームと漫画作品を権利者に無断でアップロードしていた広島県在住の男性を、愛媛県警サイバー犯罪対策課と今治署が著作権法違反の疑いで松山地検今治支部に送致しています。

また、Shareを利用してゲームメーカーに無断でアップロードし、著作権侵害の刑事訴訟で有罪判決を受けていた被告らに対して、そのゲームメーカーが損害賠償を求めるケースもありました。被告らはゲームメーカー側に損害賠償を支払うことに合意したということです。

事例3:25名の違法アップローダーに損害賠償請求

日本レコード協会と同協会会員レコード会社は、著作権侵害撲滅のためにファイル共有ソフト等を利用した権利侵害行為に対して、積極的な対応を行うことを明言しています。2018年には、違法アップロードを行った26のIPアドレスに対して、発信者情報開示請求し違法アップローダーを特定。弁護士を通じて「今後著作権を侵害しない旨の誓約」と「損害賠償金の支払い」に関する協議を進めたとのことです。

同協会によれば、発信者情報が開示された25人の違法アップローダーのうち16人と損害賠償の支払いについて和解が成立。賠償額の平均は42万円でした。

賠償額の相場と判例

著作権侵害の損害賠償額は、侵害の規模やコンテンツの種類によって大きく異なります。ファイル共有ソフトによる著作権侵害の場合、権利者から提示される示談金は1作品あたり数十万円〜150万円程度が多いとされています。一方、裁判所が認容する金額はこれより低額になる傾向があり、知財高裁2022年4月20日判決ではトレント利用による著作権侵害について1人あたり約1.6万〜6万円台が認容されています。ただし、大量の著作物を継続的に違法アップロードしていた場合は、損害額が数百万円〜数千万円に達するケースもあります。

損害賠償請求を受けた場合の対処法

著作権侵害の損害賠償額はいくら?

請求を受けた場合は、以下の5ステップで対応してください。

1.請求書受領後24時間以内

請求内容を確認し、証拠(ログ、通信記録等)を保全する

2.弁護士への相談

請求書、プロバイダからの通知、使用していたソフト名等を持参して相談

3.事実関係の確認

弁護士と共に侵害の有無、範囲、時期を精査

4.示談交渉

弁護士を通じて権利者側と損害賠償額や支払条件を協議

5.訴訟対応

示談が成立しない場合、訴訟に備えた証拠準備と法廷対応 特に、請求を無視すると訴訟に発展し賠償額が増額される可能性があるため、早期の弁護士相談が重要です。

ファイル共有ソフトを使ったことがある方は弁護士に相談を

ファイル共有ソフトを使ったことがある方は弁護士に相談を

ファイル共有ソフトを利用していた場合、知らないうちに権利侵害を行っていて、様々な責任を問われる可能性があります。過去にファイル共有ソフトを使ったことがあって、損害賠償請求をされないかと不安な方や、プロバイダから意見照会書が手元に届いた方は、速やかに弁護士に相談することをおすすめします。

アークレスト法律事務所は、ネットトラブルの解決に鋭意取り組んできました。様々なケースにおいて、適切な対応が可能となっていますので、ファイル共有ソフトを利用したことがあって不安な場合は、どうぞお気軽にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. Winnyは今も使うと違法ですか?

A. Winny自体の使用は違法ではありません。ただし、著作権で保護されたコンテンツを無断で共有すると著作権法違反となり、10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金が科される可能性があります。

Q2. 知らずにダウンロードした場合も罰則がありますか?

A. はい。違法にアップロードされたコンテンツと知りながらダウンロードした場合、2年以下の懲役または200万円以下の罰金が科される可能性があります(著作権法第119条第3項)。

Q3. P2P型ソフトで自動アップロードされた場合も責任を問われますか?

A. はい。P2P型ソフトはダウンロードと同時に自動的にアップロードを行うため、利用者が意図していなくても著作権侵害の責任を問われる可能性があります。 

Q4. 損害賠償額の相場はいくらですか?

A. 判例では数十万円から数百万円の範囲です。侵害したコンテンツの種類や数量、侵害期間により異なりますが、著作権法第114条の3方式で算定されます。

Q5. BitTorrentやShareも違法ですか?

A. ソフト自体は違法ではありません。しかし、これらのP2P型ソフトで著作権保護コンテンツを共有すると違法となり、損害賠償請求や刑事罰の対象となります。

Q6. プロバイダから発信者情報開示請求の通知が来たらどうすればよいですか?

A. 直ちに弁護士に相談してください。開示に同意するか否かの判断、同意した場合の損害賠償交渉など、専門的な対応が必要です。 

Q7. 過去にファイル共有ソフトを使っていた場合、今から請求される可能性はありますか?

A. 著作権侵害の損害賠償請求権は侵害行為から3年で時効となります(民法第724条)。ただし、侵害を知った時点から起算されるため、発見が遅れた場合は過去の行為でも請求される可能性があります。

野口 明男 弁護士

監修者

野口 明男(代表弁護士)

開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。