トレントの開示請求・示談を無視したらどうなる?訴訟リスクや損害賠償の可能性を解説

「トレントで映画や音楽をダウンロードしたら、突然『損害賠償請求』の通知が届いた」

近年、このような相談が増えています。

ビットトレント(BitTorrent)(以下「トレント」といいます。)は便利なファイル共有ネットワークですが、著作権侵害があった場合、権利者から発信者情報開示請求を受け、損害賠償請求をされることがあります。
権利侵害をしていた場合には賠償金を支払う義務がありますが、示談により解決することができれば、訴訟や刑事告訴を回避することが可能です。

違法ダウンロードによる著作権侵害の示談金は、1作品あたり20〜30万円程度が一般的ですが、複数作品や悪質性が高い場合は50〜100万円程度を請求されることもあります。示談を無視すると、損害賠償請求訴訟の提起、示談より高額な賠償金の確定判決、強制執行(給与差押え等)、刑事告訴といったリスクが生じます。

今回は、トレント利用者が損害賠償を請求される理由、示談で解決しなかった場合のリスクなどについて解説します。

目次

トレント利用者が損害賠償請求されるのはなぜ?トレントの基本的な仕組み

トレントを利用して映画ファイルをダウンロードする場合、当該映画ファイルを細分化して分割されたデータ(以下「ピース」といいます。)を保有する他の多数のトレントユーザーからピースをダウンロードし、元の一つの完全なファイルを完成させます。

この際に、ダウンロードが完成する前にも当該映画ファイルをダウンロードしている他のユーザーの求めに応じて、ピースをアップロードします。

このように、トレントは、ダウンロードするのみでなく、他のユーザーの求めに応じて、自身が保有するピースをアップロードし得る状態に置かれることから、著作権を侵害していることがあります。
この場合、権利者はトレントのユーザーに対し、発信者情報開示請求を行って特定し、損害賠償請求、刑事告訴といった法的措置を取ることが可能です。

トレント利用で損害賠償請求をされたときに示談で解決すべき理由

トレント利用により損害賠償請求を受けた場合、示談で解決する方法も取り得る手段の一つです。

訴訟よりも負担が少ない

著作権侵害を理由とする損害賠償請求訴訟を提起されると、被告として訴訟に対応しなければなりません。 訴訟になれば解決するまでに半年から1年程度の期間が掛かることが多く、その間の精神的負担は非常に大きなものとなります。

また、自分で対応するのが難しいケースでは、弁護士に対応を依頼することになりますが、弁護士費用の支払いが必要になりますので経済的な負担も増加するでしょう。

これに対して示談であれば訴訟よりも早期解決が可能であり、弁護士に依頼したとしても訴訟よりも費用負担を抑えることができます。
少しでも負担を軽減したいという場合は、示談での解決を進めるべきでしょう。

示談なら損害賠償額を抑えられる可能性がある

示談交渉であれば、権利者側も時間やコストをかけずに解決したい意向があるため、ある程度の減額や柔軟な金額設定が期待できます。

柔軟な解決方法が可能

示談交渉では、賠償金(示談金)を一括で支払うのが難しい場合、分割払いを提案することも可能です。示談はお互いの合意により解決する手段ですので、訴訟に比べて柔軟な解決ができるというメリットがあります。

トレントの示談を無視するとどのようなリスクがある?

トレントによる権利侵害を理由に開示請求や賠償請求をされたとしても、「示談金を払わず無視すればいい」と考える方もいますが、それには以下のようなリスクが伴います。

損害賠償請求訴訟を提起されるリスク

示談交渉を無視した場合、交渉による解決が不可能であるとして、損害賠償請求訴訟を提起されるかもしれません。
訴訟に発展すると、最終的に敗訴した場合は、裁判所が認めた賠償金を負担しなければなりません。

また、訴訟は短期間で終わるものではなく、半年から1年以上かかるケースも多いため、その間の精神的負担も軽視できません。

結果的に、示談で解決した場合よりも支払い総額が高額になる可能性がある上、裁判所へ出廷するための時間的コストや社会的信用への影響も生じるリスクがあります。

示談よりも高額な賠償金の支払いが命じられるリスク

示談交渉の段階であれば、損害賠償金の額について権利者側と減額交渉や分割払いの相談が可能です。
しかし、一度訴訟に発展して支払いを命ずる判決が確定すると、原則としてその額を減額してもらうことはできません。

特に、著作権侵害の場合、権利者が専門家に依頼して調査や証拠収集を行っていることが多く、裁判所がその主張を全面的に認めた場合、以下のような結果になるリスクがあります。

・示談金額よりも高額の損害賠償金が認定される
・強制執行(差押え等)が行われる

確定判決を得た権利者は、給料や預金、場合によっては自宅や車などの資産に対して差押えを行うことができます。
給与差押えが行われた場合、勤務先に知られる可能性もあるため、仕事上の信用失墜などのリスクも否定できません。

著作権侵害を理由に刑事告訴されるリスク

著作権侵害は民事上の損害賠償責任にとどまらず、刑事罰の対象にもなりますので、示談を無視すると権利者が刑事告訴に踏み切る可能性があります。

起訴されて有罪になれば前科がつくため、将来の人生設計に大きな支障が生じるおそれがあります。

示談で解決

解決期間 1〜3ヶ月程度
賠償金額 減額交渉が可能
支払い方法 分割払い交渉が可能
刑事告訴 示談成立で回避可能
強制執行 なし
弁護士費用 比較的低額

示談を無視(訴訟に発展)

解決期間 半年〜1年以上
賠償金額 裁判所認定額(減額不可)
支払い方法 一括支払いが原則
刑事告訴 告訴リスクが高まる
強制執行 給与・預金の差押えの可能性
弁護士費用 訴訟対応で高額に

トレント利用で権利侵害があったときの示談交渉の進め方

【ケース別】遺産分割協議における注意点

トレント利用による権利侵害があった場合の示談交渉は、以下のような流れで進みます。

プロバイダから「発信者情報開示に係る意見照会書」が届く

まず、権利者が裁判所に対して発信者情報開示請求を行うと、プロバイダから利用者(契約者)に「意見照会書」が届きます。

これは「発信者情報開示請求がなされているが、情報開示に同意しますか。同意しない場合にはその理由を回答してください。」という内容で、開示請求の是非について意見を述べる機会が与えられます。

意見照会書に対する回答を行う

プロバイダから意見照会書が届いたときは、開示請求に応じるか、拒否するかの意見を記載した回答書を作成します。

トレント利用により権利侵害をしていたという認識があれば、開示請求に応じる旨の意見を提出した上で、後述する示談交渉を行う解決方法もあります。

著作権者から賠償金の支払いを求める通知書が届く

発信者情報が開示されると、通常は発信者情報開示請求者から損害賠償請求の通知書が送られます。

通常は通知書には賠償金額や支払い期限、連絡先などが記載されていますので、内容を精査した上で、今後の示談交渉の方針を決めていきます。

著作権者と示談交渉を行う

示談交渉では、賠償額の減額交渉や分割払いの提案をすることが考えられます。

ただし、不用意な発言や認め方によっては不利になる場合もあるため、弁護士に相談して進めることをおすすめします。

合意が成立したときは示談書を作成する

示談が成立したら、トラブル回避のために示談書を作成することが大切です。これにより、将来的に二重請求されるリスクや刑事告訴をされるリスクを防ぐことができます。

トレント利用による示談金

トレント利用で著作権侵害が発覚した場合、請求者からは、以下のような金額を請求されることがあります。
・1作品あたり20~30万円程度

ただし、複数の作品をアップロードしていた場合や悪質性が高いと判断された場合、
・50~100万円程度

を請求される可能性があります。

なお、複数の作品の著作権侵害があった場合には、まとめて示談交渉をすることで示談金を減額できる可能性もあります。

【参考データ】知財高裁2022年4月20日判決では、トレントを利用したアダルト動画の著作権侵害について、裁判所が認容した損害賠償額は1人あたり約1.6万〜6万円台でした。権利者から提示される示談金額と裁判所が認容する金額には大きな開きがあることが多く、弁護士を通じた交渉で示談金を減額できる可能性があります。

ネット上の権利侵害における損害賠償の相場

ネット上の権利侵害による損害賠償の相場は、侵害された権利の種類によって大きく異なります。以下の表は、主な権利侵害の類型別に損害賠償の相場を整理したものです。

名誉毀損

個人の場合の相場 10万〜100万円
法人の場合の相場 50万〜100万円超
備考 事実を摘示して社会的評価を低下させた場合

侮辱(名誉感情侵害)

個人の場合の相場 数万〜10万円
法人の場合の相場 (法人には適用なし)
備考 具体的事実の摘示なく人格を否定する場合

プライバシー侵害

個人の場合の相場 10万〜50万円
法人の場合の相場
備考 個人情報・私生活の公開

著作権侵害(トレント)

個人の場合の相場 1作品20万〜100万円(示談金)
法人の場合の相場
備考 裁判所認容額は1.6万〜6万円台の判例あり

著作権侵害(114条算定)

個人の場合の相場 数百万〜数千万円
法人の場合の相場 数百万〜数千万円
備考 DL数×単位利益額で算定。大量侵害の場合

上記はあくまで目安であり、投稿の拡散状況、悪質性、被害の深刻さ、侵害の規模によって金額は大きく変動します。特に著作権侵害の場合、2024年改正著作権法により損害賠償額の算定方法が見直され、賠償額が増額される方向での改正が行われています。

示談交渉においては、弁護士の交渉力次第で権利者の請求額から大幅に減額できるケースも少なくありません。まずは専門家に相談し、自身のケースにおける適正な金額の見通しを立てることが重要です。

まとめ

トレント利用による違法ダウンロード・違法アップロードの示談金は、1作品あたり20〜30万円程度が相場ですが、複数作品や悪質性が高い場合は50〜100万円程度を請求されることもあります。一方、裁判所が認容する損害賠償額は知財高裁判例で1人あたり約1.6万〜6万円台と、権利者の請求額より低額になる傾向があります。

示談を無視した場合、損害賠償請求訴訟の提起、示談より高額な賠償金の確定判決、強制執行(給与・預金の差押え)、刑事告訴といったリスクが生じます。損害賠償の相場は、名誉毀損で10万〜100万円、プライバシー侵害で10万〜50万円、著作権侵害では侵害規模に応じて数百万〜数千万円に達するケースもあります。

開示請求や損害賠償請求の通知書が届いた場合は、速やかに弁護士法人アークレスト法律事務所にご相談ください。示談交渉で賠償額の減額、分割払い、刑事告訴の回避を目指すことが可能です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 違法ダウンロードの示談金の相場はいくら?

A. トレントによる著作権侵害の示談金は、1作品あたり20〜30万円程度が一般的です。複数作品や悪質性が高い場合は50〜100万円程度を請求されることもあります。ただし、知財高裁判例では裁判所認容額が1人あたり約1.6万〜6万円台のケースもあり、弁護士を通じた交渉で減額できる可能性があります。

Q2. トレントの示談を無視したらどうなる?

A. 示談を無視すると、損害賠償請求訴訟を提起されるリスクがあります。訴訟に発展すると解決まで半年〜1年以上かかり、示談より高額な賠償金の支払いが命じられる可能性があります。さらに、確定判決に基づく強制執行(給与・預金の差押え)や、著作権者からの刑事告訴(10年以下の拘禁刑又は1,000万円以下の罰金)のリスクも生じます。

Q3. ネット誹謗中傷の損害賠償の相場はいくら?

A. ネット誹謗中傷の損害賠償の相場は、侵害された権利の種類によって異なります。名誉毀損の場合は個人で10万〜100万円、法人で50万〜100万円超が目安です。侮辱(名誉感情侵害)は数万〜10万円程度、プライバシー侵害は10万〜50万円程度です。投稿の悪質性や被害の深刻さにより増減します。

Q4. 示談と訴訟ではどちらが負担が少ない?

A. 一般的に示談の方が負担は少なくなります。示談であれば1〜3ヶ月程度で解決でき、賠償額の減額交渉や分割払いの提案も可能です。訴訟になると半年〜1年以上かかり、弁護士費用も高額になるうえ、裁判所が認定した賠償額は減額できません。

Q5. 示談交渉は自分でできる?弁護士に依頼すべき?

A. 弁護士に依頼することを強くおすすめします。示談交渉では不用意な発言が不利な証拠として使われるリスクがあるほか、適正な賠償額の見極めや清算条項(将来の追加請求を断つ条項)を含む示談書の作成には法的知識が不可欠です。弁護士を通じた交渉で、請求額から大幅に減額できるケースも少なくありません。

野口 明男 弁護士

監修者

野口 明男(代表弁護士)

開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。