著作権侵害

著作権侵害で逮捕される可能性は?事例と著作物を無断で使用するリスクを解説

2022.02.22
著作権侵害で逮捕される可能性は?事例と著作物を無断で使用するリスクを解説

著作物には、それぞれ著作権を持つ著作権者がいます。著作権を持たない人が著作権者に無断で漫画や映像、音楽、イラストなどの著作物を使用すると権利侵害となり、刑事責任を問われて逮捕される可能性もあります。著作権者の許諾なく著作物を使用することはできないということです。

著作権法の違反は、加害者に悪意がないまま行われてしまうこともあります。今回は、実際にあった5つの事例を元に著作物を無断で使用するリスクについて解説します。

著作権侵害に該当する行為とは?

著作権侵害に該当する行為

著作権侵害とは、著作権を持つ権利者(著作権者)の許諾を得ずに著作物を利用することです。著作権は著作権法に定められており、著作権侵害は違法行為に該当します。

例えば、以下のような行為は、すべて著作権侵害に該当します。

  • SNSに投稿された他人のイラストを無断で自分のSNSに再投稿する
  • 雑誌の紙面を撮影してインターネット上にアップロードする
  • 他人のイラストを無断で印刷し商品として販売する
  • 他人が制作した動画を無断で加工してインターネット上で公開する

一方、好きなイラストを個人的に写真に撮って待ち受け画像にするなど、あくまでも個人的に利用する限りは著作権の侵害にはなりません。個人的利用を超えて、権利者の許可なしにそのイラストをグッズ化して販売したり、インターネット上にアップロードしたりするのは、引用とみなせる場合を除いて違法です。

著作権侵害によって逮捕・書類送検された事例

著作権侵害によって逮捕・書類送検

実際に逮捕・書類送検された事例も複数あります。どのようなケースで逮捕者が出ているのか、5つの事例を紹介します。

1.ファスト映画をYouTubeに投稿し逮捕

ファスト映画とは、映画のストーリーを結末まですべてまとめた10分程度の短時間映像のことです。2021年6月、ファスト映画をアップロードした疑いで逮捕者が出ました。

ファスト映画は、他人の著作物を再編集し、ナレーションなどを付けたものです。このように、「他者の著作物を無断で改変したもの」についても著作権法が適用されます。「編集したのは自分だから、自分に著作権がある」と思ってしまわないように気を付けなければいけません

2.人気漫画を動画投稿サイトに無断掲載し逮捕

複数の人気漫画を動画共有サイトに投稿し、著作権者の権利を侵害したとして、2010年に14歳の中学生が逮捕されています。たとえ未成年であっても、著作権法違反の疑いで逮捕される可能性があるのです。

動画共有サイトに投稿された動画は、誰でも無料で閲覧できます。違法アップロードにより、著作権者が本来得られるはずだった作品の売上、放送料、使用料などが損害となります。この事件の被害総額は19億2,000万円にも上りました。

3.アニメ映画を違法アップロードし書類送検

2021年、アニメ映画をインターネット上にアップロードしたとして、30代~40代の3人が書類送検されました。3人に面識はなく、同じファイル共有ソフトを使って個別に違法アップロードされた新作映画を視聴したということです。

この事件では、「映像を保存すると同時にアップロードする」ファイル共有ソフトが利用されていたために、動画の視聴だけのつもりが違法アップロードに加担したことになってしまい書類送検されるという事態に発展しました。

4.コンピュータソフトウェアの海賊版を販売し書類送検

他人が著作権を持つソフトを無許可で複製したり販売したりすると、著作権法に抵触する可能性があります。ファイル共有ソフトを介して手に入れたコンピュータソフトウェアを複製・販売したことで書類送検された事例もあります。

この事例では、ファイル共有ソフトで手に入れたソフトを販売していました。これが仮に自分で購入したソフトであったとしても、無断で複製・販売すると罪になります。例えば「自分の持っている音楽データを複製して販売する」といった行為も著作権法違反行為です。

5.人気漫画のキャラクターを描いたケーキを無許可販売し書類送検

漫画のキャラクターを描いたりモチーフにしたりしたケーキやパンは数多くあります。その中で、2021年11月、人気漫画のキャラクターを描いたケーキを無許可で販売したとして、自営業者が書類送検される事件がありました。SNSを通じて顧客の指定したシーンを描いてケーキにしていたということです。

このように「類似の事例が多く見られる」案件や、「イラストをイラストにしたわけではなく、イラストを立体化した」案件でも、著作権の侵害とみなされることがあるのです。

著作権法に抵触した場合の量刑

著作権法に抵触した場合の量刑

著作権・出版権・著作隣接権を侵害すると、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、あるいはその両方が科せられます。(著作権法119条1項)

また、著作者人格権や実演家人格権などを侵害した場合は、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、あるいはその両方が科せられます。(同条2項)

著作権関連の権利にはさまざまなものがありますが、著作権は複製や上映、販売等に関する権利です。一方、著作者人格権には、氏名表示権や同一性保持権(著作者の意思に反する改変を許さない権利)などが該当します。

なお、違法アップロードされたものであることを知りながら、インターネット上の動画やコンテンツ等を私的使用の目的でダウンロード・保存すると、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、あるいはその両方が科せられます。ただし、該当のコンテンツが有償で提供されている作品と知っている場合のみです。(同条3項)

著作権侵害で逮捕される以外のリスク

著作権侵害で逮捕される以外のリスク

著作権侵害で逮捕された場合、刑事責任が追及され、罰金や懲役が科せられる可能性があります。しかし、著作権を侵害した際のリスクはそれだけではありません。著作権者等から損害賠償請求をされたり、社会的な責任を追及されたりといった可能性もあります。

民事責任を負うリスク

民事責任とは、被害者に対して加害者が負うことになる民法上の責任です。権利者(被害者)が民事裁判を起こし、判決が出た場合、加害者はそれに従わなければなりません。

損害賠償請求

損害賠償請求とは、著作権を侵害されたことによって著作権者等が被った被害に対する損害賠償の請求のことです。損害賠償の必要の有無や具体的な損害賠償額は、民事裁判の判決によって決まります。

損害賠償請求が認められる判決が出た場合、結果に応じた損害賠償額を加害者に支払わなければなりません。損害賠償額が高額で支払えない場合や、支払いに応じない場合は、財産が差し押さえられます。また、このような損害賠償責任は自己破産をしても免責されないことがあります

著作権侵害行為の差止

著作権侵害行為の差止請求が行われ、民事裁判で認められたときは、著作権の侵害行為を取りやめる義務が生じます。なお、差止請求と損害賠償請求は両方同時に行うことができます。差止請求を受けてすぐに応じたとしても、必ずしも損害賠償請求が取り下げられるわけではありません

謝罪広告

著作者人格権侵害によって著作者の名誉を毀損すると、著作権法115条に基づき、回復のための謝罪広告を出稿するよう求められることがあります。民事裁判で名誉回復措置請求が認められた場合、新聞やHPなどに謝罪文などを掲載することになります。

社会的責任を負うリスク

著作権を侵害したことで裁判を起こされたり、逮捕・書類送検されたりすると、社会的な信用を失うことにもなりかねません。

企業や団体が著作権を侵害して報道されれば、取引先やユーザーからの信頼が損なわれてしまうでしょう。また、個人であっても、逮捕・書類送検ということになれば、周囲からの信用を失います。状況によっては、仕事や人間関係に支障をきたす可能性も十分あります。

著作権侵害のトラブルは早期に弁護士へ相談を

弁護士へ相談を

著作権侵害で逮捕された場合や、著作権侵害に関する警告を受け取ったときは、早急に弁護士に相談をしましょう。早い段階で弁護士が介入することで、示談などの対応を取りやすくなります。

なお、民事での示談と、刑事事件としての逮捕・書類送検はそれぞれ個別に判断されます。しかし、民事で示談が成立している場合、刑事でも考慮されるため、執行猶予が付いたり、不起訴になったりする可能性が高くなるでしょう。

アークレスト法律事務所は、インターネット上のトラブルに強い法律事務所です。著作権を侵害する行為を行ってしまった方や、行ってしまったかもしれないと不安な方、第三者に自身の著作物を悪用されて困っている方は、アークレスト法律事務所までご相談ください。問題のある投稿の削除や損害賠償請求対応等、スピーディな問題解決をサポートします。

野口 明男 弁護士

監修者

野口 明男(代表弁護士)

開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。