悪徳業者から被害に遭ったら?具体的な対処法や相談窓口を解説
ネット誹謗中傷で成立する犯罪とは?刑事告訴できるケースについて
2018.08.19今はネット社会であり、老若男女問わず、ほとんどの人がネットを使って情報収集しています。そこで、ネット上で誹謗中傷されると、企業にとっても非常に大きな悪影響が及び、売り上げに深刻な被害が発生してしまうおそれが高まります。
ネット上の投稿であっても、悪質な場合には犯罪となるので、被害を受けた場合には、投稿者を刑事告訴して処罰を与えてもらうことができます。
今回は、ネット誹謗中傷によって成立する犯罪について、解説します。
1.ネット誹謗中傷で成立する犯罪と具体例
企業がネット上で誹謗中傷被害を受けたとき、成立する可能性のある犯罪は、主に以下の4種類です。
- 偽計業務妨害罪
- 威力業務妨害罪
- 信用毀損罪
- 名誉毀損罪
順番に確認していきましょう。
- 偽計業務妨害罪(刑法233条1項後段)
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偽計業務妨害罪とは
偽計業務妨害罪とは、虚偽の風税を流したり、人を騙したり誘惑したりすることによって、他人の業務を妨害する犯罪です。
ネット上の投稿では、「虚偽」の嫌がらせの投稿をして売り上げ低下を狙った場合などには偽計業務妨害罪となります。 法定刑は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金刑です。偽計業務妨害罪の具体例
具体的には、以下のような「虚偽の」内容の投稿が、偽計業務妨害罪に該当します。
- 「あの店の食材は、産地偽装している」
- 「あの店の衛生状態は最低だから、行かない方が良い」
- 「美容院でパーマをしたら、やけどをさせられて謝罪もなかった」
- 「悪徳業者で、高齢者を騙している企業だ」
- 威力業務妨害罪(刑法234条)
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威力業務妨害罪とは
威力業務妨害罪は、力などの威勢を示すことにより、他人の業務を妨害するときに成立する犯罪です。
ネット上でも、直接的に力や威勢を示して企業を脅した場合などには、威力業務妨害罪が成立します。
威力業務妨害罪の法定刑は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金刑です。威力業務妨害罪の具体例
たとえば、以下のような投稿が行われると、威力業務妨害罪が成立します。
- 「〇月〇日に行われるイベントに爆弾を仕掛ける」
- 「これ以上〇〇を売るなら、本社に火をつけてやる」
- 「〇〇社の主催するコンサート会場に、トラックで突っ込む予定」
- 信用毀損罪(刑法233条1項前段)
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信用毀損罪とは
信用毀損罪は、虚偽の風税を広めることによって、他人の「経済的な信用」を失わせる犯罪です。
偽計業務妨害罪との違いは、被害を受ける対象が「経済的な信用」であることです。
経済的な信用とは、主には財務状況や買掛金の支払い、給料の支払いなど「お金に関する信用」のことです。
偽計業務妨害罪の場合は「業務」が保護されますが、信用毀損罪の場合には「経済的な信用」が保護の対象です。
法定刑は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金刑です。信用毀損罪の具体例
信用毀損罪が成立するケースは、以下のような投稿が行われた場合です。
- 「あの会社は倒産寸前」
- 「給料や残業代を支払っていない」
- 「買掛金を支払わず。取引先に迷惑をかけている」
- 「顧客からのキャンセル返金に応じていない」
- 名誉毀損罪
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名誉毀損罪とは
名誉毀損罪は、事実を摘示することにより、他人の社会的評価を低下させる犯罪です。
名誉毀損罪と他の犯罪(偽計業務妨害罪や信用毀損罪)との大きな違いは、名誉毀損罪の場合「内容が真実でも犯罪が成立する」ことです。たとえば、「あの会社の社長は不倫している」と書き込んだ場合、それが真実であっても名誉毀損になる可能性があります。ただし、公共に関する事実で公益目的があり、真実であることが立証された場合には、違法性が阻却されるという例外はあります。また、名誉毀損罪は「親告罪」なので、被害者が刑事告訴しない限り、投稿者が起訴されることがありません。この点も、他の3つの罪と大きく異なるところです。
名誉毀損罪の具体例
名誉毀損罪が成立する投稿内容は、以下のようなものです。
- 「あの企業はパワハラ、残業代不払いが横行しているブラック企業」
- 「あの会社は、粗悪品を低コストで販売している悪徳業者」
- 「私の周りにも、あの企業の悪質な販売方法で被害を被った人がたくさんいる」
2.投稿者を処罰してもらう方法
企業が上記のような誹謗中傷被害を受けた場合、警察で「刑事告訴」することによって、投稿者を逮捕・起訴して刑事罰を与えてもらえる可能性があります。
特に、名誉毀損罪は親告罪なので、相手を処罰してもらいたければ、必ず刑事告訴が必要です。刑事告訴をするときには、「告訴状」を作成し、その他の証拠を用意して、まとめて警察署に提出します。
3.企業がネット誹謗中傷されたら、弁護士までご相談ください
企業がネット上で誹謗中傷被害を受けたとき、投稿者の処罰を求めたり損害賠償請求したりすることができますが、そのためには、まずは投稿者を特定する作業が必要です。
※IPアドレスを開示する方法については、下記の記事にて詳しく解説しておりますので、あわせてご覧ください。 ※投稿者の個人情報を特定する方法については、下記の記事にて詳しく解説しておりますので、あわせてご覧ください。また、投稿者特定後も、告訴状や内容証明郵便の作成、訴訟提起などの専門的な対応が必要となります。
一般の企業が独力で対応することは困難となりますので、ネット問題に長けた弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士であれば、不当な投稿を「削除」し、「刑事告訴」「損害賠償請求(訴訟対応を含む)」にすべて対応することが可能ですので、被害が広まる前に、お早めにご相談ください。
監修者
野口 明男(代表弁護士)
開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。
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