トレントの違法ダウンロードで開示請求されたら?対処法と示談金相場を弁護士が解説
身に覚えがないのにAVのトレント利用で開示請求が届いた!?原因と正しい対処法を弁護士が解説
2025.06.03
他人の著作物を違法にインターネット上にアップロードすると著作権侵害にあたります。よくあるのがトレントを利用してAV(アダルトビデオ)をダウンロードした際に、同時にAVをアップロードしてしまい著作権侵害で訴えられるケースです。
このようなケースでは権利侵害をした人を特定するために権利者から発信者法上開示請求をされることがあります。ほとんどの場合は身に覚えがあるケースですので、示談などに応じる必要がありますが、ごくまれに身に覚えがないのに開示請求が届くことがあります。このような場面に直面した場合、どう対処したらよいのでしょうか。
今回は、身に覚えがないのにAVのトレント利用で開示請求が届いたときの対処法について解説します。
目次
発信者情報開示請求とは?
発信者情報開示請求とは、インターネット上で誹謗中傷の投稿をした場合や他人の権利を侵害した場合などに被疑者が違法な投稿をした人物を特定するための手続きです。
・誰かがSNSや掲示板に自分に関する悪い噂を書き込んだ
・ネット上に自分の写真を無断でアップされた
・口コミサイトに根拠のないデマを書かれた
などのケースでは、基本的に匿名で投稿がなされるため誰が投稿したのかがわかりません。投稿者に対して法的な責任追及をするには、投稿者の名前と住所がわからなければなりませんので、インターネット上の権利侵害ではその点がネックになります。
しかし、発信者情報開示請求の手続きを利用すれば匿名での投稿だったとしても、プロバイダなどから契約者情報の開示を得ることで投稿者を特定することが可能です。
身に覚えがないトレント利用で発信者情報開示請求がなされる理由

トレントの利用自体は違法ではありませんが、トレントを利用してダウンロードをすると同時にアップロードも行うため、著作権で保護された作品をアップロードした場合、権利者から発信者情報開示請求がなされることがあります。
もっとも、ごくまれに身に覚えがないトレント利用でプロバイダから「発信者情報開示に係る意見照会書」が届くことがありますが、それには主に以下のような理由があります。
同居する家族がトレントを利用していた
身に覚えがないトレント利用で開示請求されるケースの1つ目は、同居する家族がトレントを利用していたケースです。
自宅のインターネット回線を利用して家族がトレントで違法なアップロードをしていた場合、プロバイダからの意見照会書は、トレントを利用した家族ではなくプロバイダの契約者に対して届きますので、身に覚えがない開示請求だと感じるはずです。この場合、まずは同居の家族にトレント理由の有無を確認してみるとよいでしょう。
友人が自宅のWi-Fiを使用してトレントを利用していた
身に覚えがないトレント利用で開示請求されるケースの2つ目は、友人が自宅のWi-Fiを使用してトレントを利用していたケースです。
友人と自宅でレポートの作成やネットゲームなどをする際に自宅のWi-Fiのパスワードを教えてネット回線を利用させることがありますが、最初のケースと同様に、友人がトレントを利用しているとプロバイダの契約者であるあなたのもとに意見照会書が届きます。
これも身に覚えがない開示請求がなされる理由の一つとなります。
不正アクセスによりネット回線の乗っ取り被害に遭った
身に覚えがないトレント利用で開示請求されるケースの3つ目は、不正アクセスによりネット回線の乗っ取り被害に遭ったケースです。
自宅のWi-Fiにパスワードが設定されていないまたは設定されているパスワードが簡単なものだった場合、近隣住民によりWi-Fiの無断使用がなされることがあります。また、パソコンがウイルスに感染した場合、侵害情報の中継地点として利用されることもあります。
このようなケースでは、あなたにトレント利用の身に覚えがなかったとしても、自宅のネット回線を利用してトレントが利用されているため、プロバイダから意見照会書が届くことになります。
よくわからずトレントを利用していた
身に覚えがないトレント利用で開示請求されるケースの4つ目は、よくわからずトレントを利用していたケースです。
友人から便利なソフトとしてトレントを勧められたような場合、トレントの仕組みをよく理解せずに利用していることがあります。これは、自分では権利侵害の認識がないものの、実際には権利侵害を行っているケースで、これまでの3つのケースとは異なり、あなたが権利侵害の主体になります。
身に覚えがないトレント利用で発信者情報開示請求がされたときの対処法

以下では、身に覚えがないトレント利用で発信者情報開示請求がされた場合の対処法について説明します。
開示請求の意見照会書に不同意の回答をする
自分でトレントを利用したことがなく開示請求に身に覚えがないなら、プロバイダから届いた「発信者情報開示に係る意見照会書」に不同意の回答をしましょう。
不同意の回答をすればプロバイダから請求者に対して任意に契約者情報が開示されることはありませんが、発信者情報開示請求訴訟において契約者情報の開示を命じる判決が確定すると不同意の回答をしてもあなたの情報が開示されてしまう点に注意が必要です。
開示請求の意見照会書に同意の回答をする
トレントを利用していた場合、身に覚えがなくても違法行為をしていますので、プロバイダから届いた「発信者情報開示に係る意見照会書」に同意の回答をするべきでしょう。
同意の回答をするとプロバイダから請求者に対して契約者情報が開示されますので、後述するようにトレントで権利侵害された被害者との間で示談交渉を進めていきましょう。
意見照会書を無視するのはNG
開示請求に身に覚えがないからといって意見照会書を無視するのはやめた方がよいでしょう。
なぜなら、意見照会書を無視して何も回答をしないと、発信者情報の開示をプロバイダに委ねることになりますので、権利侵害が明白な事案では任意に開示がなされてしまうリスクがあるからです。
また、後々の示談交渉や裁判でも無視したことが不利になることもあるため、必ず同意または不同意の回答をするようにしてください。
【ケース別】身に覚えがないのに開示請求が認められてしまったときの対処法

以下では、具体的なケース別に身に覚えがない開示請求が認められてしまったときの対処法を説明します。
同居の家族が権利侵害をしていたケース|被害者との示談交渉を行う
同居の家族がトレントを利用して権利侵害をしていた場合、被害者に対する賠償義務を負うのは開示請求により特定されたプロバイダの契約者ではなく、同居の家族になります。
そのため、被害者に対しては同居の家族による権利侵害であった旨を伝えて、同居の家族と被害者との間で示談交渉をしてもらうようにしましょう。
友人が権利侵害をしていたケース|友人に被害者との対応をしてもらう
友人がトレントを利用して権利侵害をしていた場合、上記と同様に賠償義務を負うのはプロバイダの契約者ではなく、トレントを利用した友人です。
そのため、被害者に対して友人がトレントを利用して権利侵害をしていた旨を伝えて、友人と被害者との間で示談交渉をしてもらうようにしましょう。
不正アクセスがあったケース|不正アクセスがあったことを立証する
不正アクセスにより権利侵害がなされた場合、被害者にはその旨を説明して、損害賠償請求を取り下げてもらうよう交渉していきます。
しかし、被害者が納得しないときは、訴訟提起されてしまいますので、訴訟の対応が必要になります。
訴訟において不正アクセスがあったことを立証できれば損害賠償の支払い義務を免れることができますが、そのような立証は容易ではありませんので早めに専門家に相談するべきです。
自分でトレントを利用していたケース|被害者との示談交渉を行う
自分でトレントを利用していた場合、被害者との示談交渉を行うようにしましょう。
被害者から権利侵害により生じた損害の請求がなされますので、被害者の請求内容を精査した上で、金額や支払い方法について交渉をしていきます。被害者との交渉で合意が成立したときは、合意書を作成し、合意内容に従って示談金の支払いを行います。
身に覚えがないトレント利用で発信者情報開示請求をされたときはすぐに弁護士に相談を

身に覚えがないトレント利用で発信者情報開示請求をされた場合、本当にトレントを利用したことがないのであれば、被害者から賠償請求を拒否できる可能性があります。
しかし、それには法的観点から適切な主張・立証をしていかなければなりませんので、専門家である弁護士のサポートが不可欠となります。プロバイダから「発信者情報開示に係る意見照会書」が届いたときは、ご自身で対応する前に一度弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談すれば今後の対応についてアドバイスしてもらうことができ、依頼すれば意見照会書への回答や被害者との交渉、訴訟手続きなど一連の対応をすべて任せることができます。
トレント利用に身に覚えがなかったとしても具体的な状況によっては、法的責任が生じるケースもありますので、早めに弁護士に相談するようにしましょう。
まとめ
身に覚えのないトレント利用で開示請求をされたからといって、意見照会書を無視してはいけません。意見照会書が届いたときは、同意または不同意の回答をする必要がありますが、身に覚えがない理由に応じて記載内容や今後の対応方針が変わってきます。
適切な対応をするためには専門家である弁護士のサポートが不可欠ですので、プロバイダから「発信者情報開示に係る意見照会書」が届いたという方は、すぐに弁護士法人アークレスト法律事務所までご相談ください。

監修者
野口 明男(代表弁護士)
開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。
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