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IPアドレス開示にかかる費用は30万~70万円!相場と内訳を公開
2020.09.05インターネット上で誹謗中傷を受けて投稿者を特定したい場合、投稿に係るIPアドレスの開示を受ける必要があります。
IPアドレスとは、投稿の発信元であるパソコンや携帯電話等に対して個別に割り当てられた識別符号であり、インターネット上の住所といわれるものです。IPアドレスがわかれば、これを手掛かりに投稿者を特定できるのです。
今回は、IPアドレス開示から投稿者の特定に至るまでにかかる弁護士費用やその他の費用について、相場や内訳を解説します。
1.IPアドレスの開示請求にかかる費用・内訳
IPアドレスの開示請求をするにあたり必要な費用としては、開示請求の手続を弁護士に依頼する場合の弁護士費用があります。このほか、裁判所による仮処分手続を利用してIPアドレス開示を求める場合には、法務局に供託金を納付する必要があります。
1-1.IPアドレスの開示請求にかかる弁護士費用
投稿された掲示板等に対してIPアドレスの開示請求をするためには、プロバイダ責任制限法に基づき掲示板等の管理者から直接開示してもらう方法と、裁判所に仮処分申し立てを行う方法の2つがあります。いずれを選択するかによって弁護士費用は大差ないことが通常です。
これは、請求すれば確実にIPアドレスを開示してもらえる掲示板等でない限り、最初から仮処分申し立てを行うことも多いためです。
また、誹謗中傷を書き込まれた掲示板等の運営者が海外の業者である場合には、IPアドレス開示請求の仮処分申し立てのために翻訳をすることや特別の書類を用意する必要があります。このため、管理者が日本法人である場合と比較して弁護士費用が割高になることがあります。
IPアドレス開示請求に係る弁護士費用の相場は、着手金として20万円~30万円です。これに加えて、開示に成功した場合には別途報酬金が5万円から10万円程度発生することがありますので、事前によく確認する必要があります。
1-2.IPアドレスの開示請求にかかる供託金
盲点となりがちな費用ですが、IPアドレスの開示を求める仮処分が認められた場合には、供託金として約10万円から30万円を用意する必要があります。
したがって、弁護士費用と合算した場合、IPアドレス開示請求のために依頼者が用意すべき費用は約30万~70万円となります。
仮処分申し立てはあくまでも簡略化された訴訟手続に過ぎないため、通常の訴訟手続ほど慎重な審理がされません。この結果、通常の訴訟より早く結論が出る反面、万が一仮処分の結論が誤っていた場合には相手方に損害が生じる可能性があります。
このため、損害賠償金の担保として供託金を納付する必要があるのです。もっとも、この供託金は事件が完了すれば取り戻すことが可能です。
2.その他にかかる費用の種類
最終的に投稿者を特定するためには、IPアドレス開示請求に必要な弁護士費用以外にも以下の費用が発生します。
2-1.IPアドレス開示後に必要となる弁護士費用
そもそも投稿者を特定するためには、IPアドレスの開示だけでは足りません。最終的に投稿者を特定するためには、開示を受けたIPアドレスを手掛かりに投稿者が利用しているインターネットサービスプロバイダ(携帯電話会社等)を割り出したうえで、プロバイダに対して契約者情報の開示を求める必要があるのです。
このプロバイダに対する契約者情報の開示請求についても、別途弁護士費用が発生することが一般的です。相場としては着手金が20万円~30万円であり、これとは別に報酬金が発生することがあります。
3.IPアドレスの開示請求にかかる期間
インターネットサービスプロバイダのログ保存期間との関係で、IPアドレスの開示請求についてはできるだけ早期に手続に着手する必要があります。
3-1.IPアドレス開示請求の期間制限
IPアドレスの開示を経て実際に投稿者を特定するためには、迅速に手続を進める必要があります。なぜなら、インターネットサービスプロバイダが投稿者を特定するために必要となる接続ログは、保存する期間が限られているためです。
一般的に、接続ログの保存期間は、固定回線の場合は約1年、携帯電話回線の場合は約3か月程度といわれています。したがって、IPアドレスの開示からインターネットサービスプロバイダに対する契約者情報の保全請求までの一連の手続を、投稿日から3か月以内に完了させなければならないのです。
4.まとめ
4-1.IPアドレス開示請求に必要な期間を考慮して早めに弁護士へ相談
投稿された掲示板によっては、弁護士から正式にIPアドレス開示請求を行えばすぐに開示に応じてくれることもあります。この場合には、弁護士への依頼からIPアドレス開示まで1か月以内に完了することも珍しくありません。
しかし、掲示板等の管理者側がIPアドレスの開示に応じない場合には、仮処分手続によりIPアドレス開示請求をする必要があります。仮処分手続によってIPアドレスの開示が認められるのは申立てから約1~2か月です。
仮処分手続の申立ては弁護士に依頼したら直ちにできるわけではなく、申立てに必要な書面の準備にもある程度の時間が必要となります。このため、掲示板等がすぐにIPアドレスの開示に応じてくれると明らかにわかっている場合でない限り、自分でIPアドレスの開示請求をすると時間のロスとなり接続ログの保存期間に間に合わなくなるリスクがあります。
もし誹謗中傷の投稿をされた場合には、できるだけ早いうちに弁護士への依頼を検討しましょう。
監修者
野口 明男(代表弁護士)
開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。
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