開示請求

爆サイの書き込みで開示請求された!? 投稿者側がとるべき対応とリスクを弁護士が解説

2025.05.30
爆サイの書き込みで開示請求された!? 投稿者側がとるべき対応とリスクを弁護士が解説

「爆サイ」とは、地域密着型のインターネット掲示板です。匿名で投稿できるため、誹謗中傷やプライバシー侵害の投稿がされることもあります。
爆サイに誹謗中傷などの投稿をすると、権利を侵害された被害者から発信者情報開示請求をされることがあります。これは、爆サイに権利侵害の投稿をした人を特定する手続きで、特定後は損害賠償請求や刑事告訴などが予定されています。

爆サイの書き込みで開示請求された場合、法的な責任追及をされるリスクがありますので適切な対応をとることが重要です。

今回は、爆サイの書き込みで開示請求されたときに投稿者側がとるべき対応とリスクについて解説します。

爆サイに誹謗中傷の投稿をした場合に生じるリスク

風評被害が個人にもたらす影響

爆サイに誹謗中傷の投稿をした場合、以下のようなリスクが生じますので注意が必要です。

発信者情報開示請求により投稿者が特定される

爆サイは、匿名の掲示板であるため安易な気持ちで誹謗中傷の投稿をしてしまう方も少なくありません。しかし、「匿名=特定されない」というわけではなく、発信者情報開示請求という手続きを行うことで、匿名で書き込みをした人の住所や名前などを特定することが可能です。

すべての投稿が特定されるわけではありませんが、誹謗中傷による権利侵害があった場合は、発信者情報開示請求により投稿者が特定される可能性が高いでしょう。

被害者から損害賠償請求をされる

発信者情報開示請求により投稿者が特定されると、爆サイの書き込みで権利を侵害された被害者は、投稿者に対して損害賠償請求をする可能性があります。

個人に対する誹謗中傷であれば10~50万円程度、法人に対する誹謗中傷であれば数十万円~100万円程度が慰謝料(法人の場合、無形損害という言い方をします。)の相場になりますので、具体的な投稿内容や権利侵害の程度に応じた慰謝料の支払いに応じなければなりません。

刑事告訴により刑事罰を受ける

爆サイへの誹謗中傷の書き込みは、内容によっては刑法上の名誉毀損罪や侮辱罪に該当する可能性があります。このような書き込みをしてしまうと、被害者から刑事告訴をされて、刑事罰を受けるリスクがあります。

なお、名誉毀損罪の法定刑は、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金と定められており、侮辱罪の法定刑は、1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料と定められています。

爆サイの投稿で開示請求されたときは「発信者情報開示に係る意見照会書」への対応が必要

爆サイの投稿で開示請求をされたときは、プロバイダから「発信者情報開示に係る意見照会書」が届きます。これは、被害者から開示請求をされたプロバイダが投稿者の情報を開示してもよいかどうかを確認するために送付する書面です。このような書面が届いたときは、以下のような対応が必要になります。

爆サイへの投稿に身に覚えがない場合

意見照会書に記載されている爆サイの投稿に関して身に覚えがない場合でも、同居しているご家族の中に投稿した方がいる場合があります。まずは、同居家族などに投稿者がいないか、確認をするべきでしょう。

発信者情報の開示に同意しないという対応をすると、裁判手続において発信者情報の開示の可否が審理され(開示請求者が裁判手続をとった場合)、権利侵害等が認められれば、裁判所の判断により発信者情報の開示が命じられます。

そのため、発信者情報の開示を拒否すれば絶対に開示されないというわけではありませんので注意が必要です。

爆サイに投稿したものの権利侵害には該当しない場合

意見照会書に記載されている爆サイの投稿に身に覚えがあるものの、当該投稿が権利侵害には該当しないという場合、「発信者情報の開示に同意しない」という対応になります。

その際には、なぜ権利侵害に該当しないのかという詳細な理由を回答書に記載するようにしてください。法的根拠に基づいて反論するには専門家である弁護士のサポートが必要になりますので、回答書の作成は弁護士に任せるのがおすすめです。

爆サイに投稿した内容が権利侵害に該当する場合

意見照会書に記載されている爆サイの投稿に身に覚えがあり、投稿内容が権利侵害に該当する場合には「発信者情報の開示に同意する」という対応をとることが考えられます。

発信者情報の開示に同意すると、プロバイダから請求者(被害者)に対して、任意に発信者情報の開示がなされますので、その後は、後述するように被害者との間で示談交渉などを進めていくことになります。

爆サイの投稿で開示請求された後に投稿者側がとるべき対応とその流れ

名誉毀損罪(刑法230条)の成立条件

爆サイに権利侵害の投稿をして、発信者情報が開示請求されてしまった場合、投稿者側は以下のような対応を取る必要があります。

プロバイダから被害者に発信者情報の開示がなされる

発信者情報開示に係る意見照会書に対して、発信者情報の開示に同意する旨の回答をした場合、または裁判手続で発信者情報の開示を命じる裁判所の判断が確定した場合には、プロバイダから被害者に発信者情報の開示がなされます。

これにより被害者は、爆サイに誹謗中傷の投稿をした人の住所や氏名を知ることになります。

被害者から損害賠償の支払いを求める書面が届く

爆サイに誹謗中傷の投稿をした人が特定されると、多くの場合、被害者から損害賠償の支払いを求める書面が届きます。

一般的には、発信者情報開示請求の手続きを弁護士に依頼するケースが多く、投稿者特定後も依頼を継続することが多いため、損害賠償請求の通知書は、代理人弁護士名義で内容証明郵便の形式で送られてきます。このような書面が届いたら、すぐに被害者の請求内容を確認するようにしてください。

被害者との示談交渉

被害者から損害賠償の支払いを求める書面が届いたら、投稿者側は、被害者との示談交渉を行います。

爆サイの投稿に身に覚えがあり、それが権利侵害にあたる場合、投稿者には被害者に対する賠償義務がありますので、慰謝料などの支払いをしなければなりません。もっとも、被害者の請求額が適正な金額であるとは限りませんので、示談交渉では、減額交渉や支払い方法(一括、分割など)の交渉を行っていきます。

交渉がまとまれば示談書を作成して示談成立となります。

示談交渉が決裂すると被害者から訴訟提起

被害者との示談交渉が決裂した場合、被害者から損害賠償請求訴訟の提起がなされることが考えられます。
訴訟が提起されると裁判所から訴状が届きますので、すぐに弁護士に連絡してその後の対応を任せるべきでしょう。

和解または判決に基づく慰謝料の支払いをする

訴訟での解決方法には、和解または判決の2種類があります。

和解とは、裁判所が関与して当事者同士の譲歩により紛争を解決する方法です。裁判所から和解案が提示される場合もあります。裁判所から提示された和解案に当事者双方が合意すれば、和解成立により訴訟終了となります。

和解が成立しない場合、最終的に判決が言い渡されます。 判決確定後も慰謝料の支払いをしないままだと強制執行を申し立てられ給料や預貯金などを差し押さえられるリスクがありますので注意が必要です。

爆サイの投稿で発信者情報開示請求をされたときは弁護士に相談を

爆サイの投稿で発信者情報開示請求されてしまったときは、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。

意見照会書への対応をアドバイスできる

被害者から発信者情報開示請求をされると、プロバイダから「発信者情報開示に係る意見照会書」が送られてきます。

意見照会書が届いたら、同意または不同意、いずれの回答をするか検討します。どのような理由で回答をするのかについては法的観点からの検討が必要になりますので、まずは弁護士に相談するとよいでしょう。
弁護士に相談すれば意見照会書への対応方法をアドバイスしてもらうことができ、依頼すれば回答書の作成などを任せることが可能です。

被害者との示談交渉を任せられる

権利侵害性のある投稿を行った場合、被害者の受けた損害を賠償する義務が生じます。開示請求後、被害者から損害賠償請求が行われれば、被害者との示談交渉に対応していかなければなりません。

もっとも、示談交渉の知識や経験に乏しい一般の方では、どのように対応すればよいかわからず誤った対応をしてしまうリスクもあるため、示談交渉は弁護士に任せるべきでしょう。弁護士であれば適正な示談金相場を踏まえて示談交渉をすすめてくれます。

訴訟に発展した場合も対応可能

被害者との示談交渉が決裂した場合、被害者から訴訟を提起されることが考えられますが、その際も弁護士がいれば訴訟手続きまで対応してもらうことができます。

訴訟手続きは、専門的かつ複雑な手続きですので一般の方では対応が困難です。適切に対応するためにも専門家である弁護士に任せるのが安心でしょう。

まとめ

爆サイに誹謗中傷の投稿をすると、被害者から発信者情報開示請求をされることがあります。発信者情報開示請求された場合、プロバイダから「発信者情報開示に係る意見照会書」が届きますので、それが届いたらすぐに弁護士に相談するようにしてください。

爆サイの投稿で開示請求されたときは、インターネットトラブルに強い弁護士法人アークレスト法律事務所までお気軽にご相談ください。

野口 明男 弁護士

監修者

野口 明男(代表弁護士)

開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。