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名誉毀損で慰謝料を請求できる場合とは?事例や手順を紹介
2020.09.19SNSや掲示板等における誹謗中傷が名誉毀損に当たるとして慰謝料請求をする事例が増えてきました。報道される事例は芸能人や有名人が被害にあったものが多いですが、一般の人でも同様の被害にあえば名誉毀損による慰謝料請求ができます。
実際にどのようなケースであれば、名誉毀損で慰謝料請求ができるのか、慰謝料請求の相場や手順などを紹介します。
1.名誉毀損で慰謝料を請求できる事例
SNSや掲示板等における誹謗中傷で慰謝料請求ができる事例としては「逮捕された」「横領している」など事実無根の具体的な事実を書き込まれたものが典型的です。
このほか、「死ね」などという中傷については名誉毀損にはあたらない可能性がありますが、程度によっては名誉感情の侵害として慰謝料請求の対象となることがあります。
ホステスが匿名掲示板で「死ね」「自殺しろ」といった内容を執拗に書き込まれた事例において慰謝料請求が認められています。
(東京地判平成28年8月25日)
もっとも、この事例では被害者が犯罪をしているかのような書き込みをしたり、個人情報を晒したりといった行為もあり、行為態様が執拗かつ悪質でした。
したがって、ある投稿が慰謝料の対象となるかは、個々の誹謗中傷の文言だけでなく前後の文脈や経緯など全体的な状況により判断される点に注意が必要です。
2.そもそも名誉毀損とは?請求できる額は?
誹謗中傷の被害を受けて実際に名誉毀損として慰謝料請求をする場合には、相手の誹謗中傷が法的に名誉毀損として認められるものであるかを確認しておきましょう。名誉毀損が成立する要件と名誉毀損の慰謝料相場をご紹介します。
2-1.名誉毀損が成立するための4つの要件
- 公然と行われたこと
- 事実を適示したこと
- 人の名誉が毀損されたこと
- 同定可能性があること
「公然と」という要件は、不特定又は多数の人が誹謗中傷を目にしている状況であれば満たします。一対一のメールなどでの誹謗中傷は公然と行われたとはいえませんが、SNS等で特定の人だけが見られる設定であったとして数十人程度が誹謗中傷の投稿を見られる状況であれば、不特定ではないものの多数の人が目にしたといえるため公然と行われたといえます。
「事実の適示」とは、単なる評価や感想ではなく証拠などによって真偽の判断が可能となるような事実の書き込みであることを指します。たとえば「Aさんは夫婦仲が悪い」といった誹謗中傷は評価に過ぎず事実の適示にあたりませんが、「Aさんは奥さんが病気なのに飲み歩いている」という誹謗中傷は真偽の判断が可能であるため事実の適示といえます。なお、具体的な事実の適示がないものの名誉毀損として慰謝料請求の対象となるものとして意見論評型の名誉毀損といわれる類型があります。もっとも、意見論評型の名誉毀損となるのは、人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱しているような誹謗中傷に限られます。
また、適示された事実については虚偽であることも必要です。仮に、真実であるのならこれを公にすべき公益的な必要性があるためです。慰謝料請求をするためには誹謗中傷によって、「人(被害者)の名誉」が実際に毀損されたことが必要です。具体的には、誹謗中傷を受けた人の社会的な評価が低下したことです。たとえば、「Aさんが逮捕された」という事実が拡散されるとAさんは職場や家族からの評価を失うことになります。
「同定可能性」とは、誹謗中傷の書き込みが、被害者本人を指していることが第三者からもわかることをいいます。実名で名指しされている場合はもちろん、伏せ字、源氏名、ペンネーム、芸名などであっても文脈から誰のことか推定できれば同定可能性ありと判断されることがあります。
2-2.名誉毀損による慰謝料相場は50~100万円
誹謗中傷の被害を受けた場合の慰謝料相場は、50~100万円程度です。被害者が芸能人や事業者である場合にはこれ以上の慰謝料が認められることもあります。慰謝料の金額は、被害者の社会的立場、被害の程度、加害者の悪質性などさまざまな要素により上下します。
3.名誉毀損で慰謝料を請求するための手順
名誉毀損により慰謝料請求をする場合には、まず証拠を保存しておくことが重要です。WEB上の書き込みであればURLと投稿日がわかる形式でスクリーンショットを保存します。
その後、発信者情報開示請求などにより投稿者を特定し、投稿者に対して慰謝料請求をするという手順になります。投稿者が交渉での請求に応じない場合には、民事訴訟を提起して慰謝料請求をする必要があります。
4.名誉毀損による慰謝料請求は弁護士に依頼を
ここまでの手順は専門性が高く、本人が適切に手続を進めることは簡単ではありません。したがって、名誉毀損による慰謝料請求については弁護士に依頼したほうが安心でしょう。
監修者
野口 明男(代表弁護士)
開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。
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