悪徳業者から被害に遭ったら?具体的な対処法や相談窓口を解説
ネット上でプライバシー権を侵害された場合の削除方法や対処法
2019.12.26自分の住所や電話番号、学校名、勤務先などの個人情報や私生活のことなどプライバシーにかかわることをネット上に晒されたら、自分だけでなく周りの家族や同僚にまで被害が及んでしまう可能性があります。そのため、一刻も早く削除しなければなりません。
本記事では、インターネット上でプライバシー権を侵害された場合に投稿を削除してもらう方法やその他の対処方法について解説します。
目次
目次
1.プライバシー権の侵害とは
プライバシー権を侵害されたときの対処法を考える前に、まずプライバシー権とは何なのか、プライバシー権の侵害をどのように判断するのかについて見ていきましょう。
1-1.プライバシー権とは
プライバシー権とは、憲法13条の幸福追求権に由来する、私生活上のことがらをみだりに公表されない権利のことを言います。具体的には、以下のような情報がプライバシーにあたるとされています。
- 個人の住所・電話番号
- 逮捕歴・前科
- 持病・病歴
- 身体的特徴
- 日常生活
- 結婚・離婚
- 指紋
など
1-2.プライバシー権の侵害の判断基準
ネット上の投稿がプライバシー権の侵害にあたるかどうかについては、以下の3つの要素が考慮されます。
①私事性 | 私生活上のこと、または私生活上のことらしく受け取られること |
②秘匿性 | 一般的に他人に知られたくないと考えられること |
③非公知性 | まだ他人に知られていないこと |
これら3つの要素があてはまる事実につき、公表されない法的利益と公表される理由を比較して法的利益のほうが上と判断されれば、プライバシー侵害が成立するとされています。
ただし、政治家や政府要人などの公人については、プライバシー保護よりも情報公開のほうが優先されるため、プライバシー権の侵害が否定されます。タレントやインフルエンサーなどの有名人についても、一般人の多くがその居場所や私生活に興味を持つのは当然とされ、同様にプライバシー権の侵害が否定される傾向にあります。
※名誉毀損に該当するネット書き込みと削除方法については、下記の記事にて詳しく解説しておりますので、あわせてご覧ください。1-3.名誉毀損とプライバシー侵害の違いとは
プライバシー侵害とよく混同しやすいのが、名誉毀損です。名誉毀損とプライバシー権の侵害の違いは、「刑事罰が科されるかどうか」の点もありますが、もうひとつ「社会的評価をおとしめるものかどうか」の点もあります。
名誉毀損とは、具体的事実を摘示しながら不特定多数から見られる場所で人の社会的評価をおとしめる行為のことを指します。一方、プライバシー侵害は、必ずしも人の社会的評価をおとしめるものとは限りません。
たとえば、ある特定の人物の住所や電話番号をネット上にさらす行為はプライバシー侵害にあたります。一方、住所や電話番号を公表すること自体はその人の社会的評価をおとしめるものではないので、名誉毀損にはあたらないことになります。
2.ネット上でのプライバシー権侵害で問える責任
ネット上でプライバシー権を侵害されたら、「相手方を訴えたい」と考える方も多いのではないでしょうか。相手方にはどのような責任を問えるのか、刑事・民事の両面から考えてみたいと思います。
2-1.刑事責任
刑法には、「プライバシー侵害罪」のようなものはありません。そのため、プライバシー侵害による罪で罰せられることはないと言えるでしょう。ただし、ネット上でプライバシー権を侵害することで、以下のような違反や犯罪が成立することがあります。
名誉毀損罪 | SNSで特定の人物の誹謗中傷を書き込んだ場合など |
窃盗罪 | プライバシー情報が記載された紙媒体が盗まれた場合など |
個人情報データベース提供罪 | 不正な利益を図る目的で、個人情報データベースを提供したり盗用したりした場合 |
リベンジポルノ防止法違反 | 相手方の同意なく性行為などの写真を、インターネット掲示板など不特定多数の人に見られる場所にばらまいた場合 |
2-2.民事責任
プライバシー権の侵害は、民法上の不法行為にあたります。そのため、不法行為責任に基づき、精神的苦痛を受けた場合は慰謝料を請求することができます。
また、プライバシー権の侵害をきっかけにうつ病と診断され通院を余儀なくされたなど、実損害を受けた場合は、損害賠償も請求が可能です。損害賠償は弁護士費用や調査費用も対象となりますが、調査費用について損害賠償請求が認められるかどうかはケースバイケースとされています。
3.ネット上でのプライバシー権侵害の事例
では、実際にインターネット上でプライバシー権を侵害され、裁判になった事例について見ていきましょう。
3-1.Twitterに氏名や学校名、顔写真が晒された事件
従軍慰安婦に関する記事を書いた新聞記者の高校生になる長女に対し、ある男が長女の氏名や学校名、顔写真をさらして「超反日サラブレッド」「将来必ず日本に仇なす存在になるだろう」などと書き込んだ事件がありました。この事件で、長女は米国Twitter社へのIPアドレス開示請求、プロバイダへの発信者情報開示請求を経て投稿者を特定。裁判所は、投稿者に対し、170万円の損害賠償の支払いを命じました。
(東京地裁平成28年8月3日判決)
3-2.ベネッセ個人情報流出事件
大手通信教育会社ベネッセコーポレーションが顧客情報を流出させたことに対し、兵庫県に住む男性が精神的苦痛を受けたとして慰謝料10万円を請求しました。第1審・第2審では男性側の請求は棄却されましたが、最高裁では「精神的損害の有無や程度を十分検討していない」とされ大阪高裁に審理を差し戻しました。大阪高裁は、プライバシー侵害を認めたものの、すでに同社がおわびとして500円の金券を発送していたことから、慰謝料として1000円の支払いを命じました。
(大阪高裁令和元年11月20日判決)
3-3.Googleに検索結果の削除を命じた判決
平成24年に強姦容疑で逮捕された男性がその後、嫌疑不十分で不起訴となりましたが、インターネット検索エンジンのGoogleに逮捕歴に関する検索結果が長期間残ったままになっていました。男性は7年が経過しても勤務先等で逮捕歴について訊かれるなどの不利益を受けていたため、Google社に対し検索結果の削除を求めていました。札幌地裁は、「私生活上の不利益が、検索結果を表示する社会的必要性に優越する」として、米国のGoogle社に対し、検索結果の削除を命じる判決を下しました。
(札幌地裁令和元年12月12日判決)
4.ネット上でプライバシー権を侵害された場合の対処法
ネット上でプライバシー権を侵害された場合、まず投稿の削除を求め、何らかの実害を被っているときは発信者情報開示請求して投稿者を特定し、訴訟を提起することになります。
4-1.削除請求する
投稿者が判明している場合は投稿者に、投稿者がわからない場合はサイト管理者や運営会社(以下「サイト管理者等」)に対し、投稿を削除してもらえるよう交渉します。
弁護士に依頼をすれば、任意交渉の時点で削除請求が実現する可能性が高くなります。また、プロバイダ責任制限法ガイドラインに基づいて削除請求をすることも可能です。任意で削除に応じてもらえない場合でも、弁護士であれば、裁判所に仮処分の申し立てを行い、裁判所からサイト管理者等に削除命令を下してもらうという法的措置も取れます。
4-2.発信者情報開示請求をする
投稿者を刑事裁判や民事裁判で訴えたい場合は、発信者情報開示請求を行います。投稿者を特定するためには、まずサイト管理者等にアクセスプロバイダのIPアドレス開示請求を行い、アクセスプロバイダが特定できれば、アクセスログなどの情報を利用して発信者情報開示請求を行います。
IPアドレス開示請求でも裁判所の仮処分申請が必要になることが多いので、弁護士に依頼することで、IPアドレス開示請求から発信者情報開示請求までスムーズに行うことができるでしょう。
※発信者情報開示請求の詳しい流れについては、下記の記事にて詳しく解説しておりますので、あわせてご覧ください。4-3.相手方を刑事告訴する
投稿内容が悪質な場合は、投稿者の特定後に相手方を刑事告訴します。相手方の行為が名誉毀損罪など刑法や特別法上の犯罪と認められれば、相手方が懲役刑や罰金刑に処せられる可能性があります。
4-4.相手方を民事裁判で訴える
投稿内容によって精神的苦痛を受けたり、売上が落ちた・病気になって通院が必要になったなど何らかの実害を受けた場合は、相手方を民事裁判でも訴えることが可能です。ただし、相手方から自発的に何らかの謝罪があった場合には、ある程度被害が慰謝されたとして損害賠償金や慰謝料の金額が多少減額される可能性もあります。
5.ネット上でのプライバシー権侵害にあたる投稿削除はおまかせください
ネット上でプライバシー情報を晒されたら、元の投稿を削除してもさまざまな場所に拡散され、収集がつかなくなってしまいます。そのため、プライバシーに関する投稿はすみやかに削除することが必要です。インターネットで自分のプライバシー権を侵害する投稿を見つけたら、1日でも早く弁護士法人アークレスト法律事務所までご相談ください。
監修者
野口 明男(代表弁護士)
開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。
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