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投稿者に訴訟で慰謝料・損害賠償を請求したい!金額はどのように決まる?|弁護士監修記事
2019.11.01ネット上での誹謗中傷に対して、発信者情報開示請求を行い投稿者が特定できれば、その投稿者に対してさらに慰謝料や損害賠償金を請求したり、刑事告訴したりすることが可能となります。本記事では、前者の慰謝料や損害賠償金を請求する場合、その金額がどのように決まるのかについて解説します。
目次
目次
1.誹謗中傷の投稿者に問うことのできる法的責任とは
インターネットで個人や企業等を誹謗中傷した投稿者には、民事上の責任と刑事上の責任の2つの責任を問うことができます。
1-1.民事上の責任
インターネットでの誹謗中傷や風評被害は、自分の社会的評価に直結します。それにより、場合によっては通院が必要なくらい精神的苦痛を受けることもあります。また、誹謗中傷や風評被害の対象が企業やお店であれば、売上や信用にも影響するでしょう。そのため、投稿者には慰謝料や損害賠償を請求することが可能となります。
1-2.刑事上の責任
投稿内容が名誉毀損罪や不正競争防止法違反、リベンジポルノ法違反、ストーカー規制法違反などに該当する場合、刑事上の責任を追及することもできます。そうなった場合、投稿者は逮捕・起訴され、罰金を支払ったり、懲役刑に服さなければならないケースもあり得るでしょう。ただし、名誉毀損罪については親告罪(告訴しなければ公訴提起ができない)なので、被害者が刑事告訴しない限り罪に問われることはありません。
2.民事訴訟を起こすことのできる要件とは
ネット上で誹謗中傷した投稿者に対し、慰謝料や損害賠償を求めて民事訴訟を起こすためには、ある要件をクリアしなければなりません。要件を満たしていなければ、いくら投稿内容がひどいものであっても、相手方を訴えることはできないのです。
2-1.不法行為があることが大前提
民事訴訟を起こすには、投稿者の書き込みが不法行為にあたることが大前提となります。不法行為とは、相手の権利を侵害する行為のことです。不法行為があった場合、被害を受けた側が不法行為を行った者に対し、損害賠償を請求することができると法律で定められています。
2-2.不法行為責任が成立するための4つの要件
不法行為責任を成立させるには、以下の要件をすべて満たすことが必要です。
- 権利や法律上保護される利益の侵害があること
- 何らかの損害を受けたこと
- 故意または過失があったこと
- 行為(誹謗中傷の投稿)と結果の間に因果関係があること
- 違法行為であること
- 責任能力があること
2-3.どのような権利侵害があれば訴訟を起こせるのか
具体的に、侵害される権利が以下のような権利であれば民事訴訟を起こせると考えられます。
- 名誉権
- プライバシー権(私生活をみだりに公開されない権利)
- 肖像権(自分や家族などの容姿を勝手に撮影されたり、写真を公開されない権利)
- その他人格権・人格的利益(氏名や出身・国籍などを第三者に正しく認識してもらう利益、思想信条を理由に差別されない利益、静謐な宗教的環境の中で信仰生活を送るための宗教的人格権など)
3.慰謝料や損害賠償金額はどのように決まるのか
ネット上で誹謗中傷を受けた場合、具体的に慰謝料や損害賠償金額はどれくらいになるのか、誰もが気になるところではないでしょうか。ここでは、慰謝料額や損害賠償額を決めるにあたりどのような要素が影響してくるのか、見ていきましょう。
3-1.慰謝料・損害賠償金額を決める要素
インターネット上の誹謗中傷を理由とする慰謝料や損害賠償の金額は、以下のような要素が考慮されると言われています。
- どんな内容の投稿であるか(分量や過激さの程度、具体性・匿名性の有無など)
- 誹謗中傷の投稿が掲載された期間
- 投稿の掲載箇所
- 投稿内容の信用性
- 投稿の目的
- 反論の有無・反論しやすいか
- 実害の発生の有無 など
3-2.インターネット投稿による損害賠償額は30万円〜50万円程度
投稿者に対する損害賠償請求訴訟を提起し、判決で権利侵害性が認められた場合の請求認容額は、30万円〜50万円程度と定められることが多いと言えます。もっとも、上記要素に照らして悪質と認められるような案件では、この範囲を超える金額が認容される例も少なくありません。ただし、判決で損害賠償請求が認容されても、相手が判決に従って支払わない場合には、強制執行の手続が別途必要になることに注意が必要です。
3-3.判決よりも和解による解決のほうが高額となりやすい
投稿者の交渉姿勢や資産状態にもよりますが、一般的には、判決ではなく和解(裁判上の和解と裁判外の和解の両方があります)での解決のほうが、損害賠償額も高額になることが多く、また損害賠償金の回収可能性も高いことが通常です。したがって、投稿者が反省の姿勢を示すようなら、和解打診には積極的に応じて可能な限り和解解決を目指すことが、結果的には高額の損害賠償を得ることに繋がるでしょう。
3-4.実害が生じていると高額になりやすい
低額に抑えられがちな誹謗中傷の慰謝料・損害賠償金ですが、被害者の身に何らかの実害が生じている場合は高額になりやすい傾向があります。
3-5.被害者に非がある場合は過失相殺されることも
ただし、被害者に何らかの落ち度がある場合は、過失相殺されて、慰謝料・損害賠償の金額が減額されてしまうこともあるため注意が必要です。過去の事例では、以下のようなケースがあります。
投稿者がメールで被害者に対し謝罪をして争いを終了させる旨を伝えたにもかかわらず、被害者がメールの内容を無断でブログに掲載した上に争いをエスカレートさせるような内容の投稿をしたため、裁判所が3割の過失相殺を認めました。
(東京地裁平成20年10月16日判決)
4.弁護士費用や記事削除費用の請求
損害賠償請求の前提として、投稿者特定のために行った発信者情報開示請求や、損害賠償請求の弁護士費用、投稿記事の削除費用を請求したいと考える方も多いと思います。
4-1.調査費用・削除費用の請求も認められる
過去の事例では、以下のようなケースがあります。
投稿者特定のための発信者情報開示請求や、記事削除の費用も、投稿者による誹謗中傷から生じた損害の一項目として、損害賠償請求が認められるのが一般的です。
(東京地裁平成28年2月9日判決)
ただし、かかった費用の全額を認めてもらえることは必ずしも多くはなく、損害の一部のみの賠償に限定されてしまうことも少なくありません。また、複数投稿を対象にして費用を支出した場合、損害賠償が認められるのは、発信者情報開示手続によって投稿者が判明した投稿についての費用に限られることに注意が必要です。
4-2.損害賠償請求訴訟の弁護士費用は、認容額の1割程度
損害賠償請求訴訟のために弁護士に支払った着手金や成功報酬も、損害の上乗せ項目として認められ、その金額は判決で認容された金額の1割程度とされることが一般的です。損害賠償請求の弁護士費用は1割の金額を超えることが通常であるめ、弁護士費用の全額を請求できるわけではありません。
5.誹謗中傷による慰謝料・損害賠償請求は弁護士法人アークレスト法律事務所に相談を
投稿内容があまりに悪質であり、なおかつ実際に何かの損害が出ている場合は、慰謝料や損害賠償請求のための民事訴訟を検討すると良いでしょう。ネット上で誹謗中傷の被害を受けたことを理由に慰謝料や損害賠償請求をお考えの場合は、弁護士法人アークレスト法律事務所までご相談ください。
監修者
野口 明男(代表弁護士)
開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。
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