悪徳業者から被害に遭ったら?具体的な対処法や相談窓口を解説
スレッドの削除や発信者情報開示請求・誉毀損された場合の対処法
2021.07.09匿名掲示板に悪口や名誉毀損にあたる投稿をされてしまった場合、個人が特定できる内容だと、日常生活に支障をきたす可能性があります。インターネット上に書かれた投稿は、何年何十年と残ってしまいます。
就職に影響がでたり、家族へ影響がでたりする前に削除しましょう。
しかし、掲示板のスレッドは簡単に削除できないケースもあります。掲示板の運営者に削除依頼をしても、相手にしてもらえない場合もあるでしょう。
この記事では、スレッドを削除できるのか、どのような投稿が名誉毀損にあたるのかを解説します。そのうえで、投稿の削除方法や投稿者の特定方法も詳しく説明していきます。
目次
目次
1.スレッドの削除は原則できないが例外的に認められる場合も
匿名掲示板では、一般的にスレッドの削除はできません。
基本的には、投稿ごとに削除依頼をする仕組みです。つまり、1つのスレッドに複数の名誉毀損にあたる投稿がある場合でも、投稿1つひとつに対して削除依頼をおこなう必要があります。
ただし、削除依頼を受けた運営者が、「スレッドごと削除が必要」と判断した場合は、例外的に認められる可能性もあります。スレッド名に個人名が入っているケースや、立てられた目的が個人を特定した誹謗中傷であるケースで、該当すると考えてよいでしょう。
2.スレッド内で名誉毀損にあたる投稿例
一般に悪口といっても、その内容によって名誉毀損にあたるケースと、名誉毀損ではないケースがあります。その違いは、刑法230条に書かれている「名誉毀損罪」に該当するかどうかです。[注1]
スレッド内で誹謗中傷を受けた場合は、刑法230条にある「公然性」に該当します。公然性とは、投稿が不特定多数の人の目に触れることです。
ここでは、「公然性」以外の名誉毀損にあたる要件を、投稿例をもとに説明していきます。
2-1.個人が特定されている投稿
例「〇〇で働いている〇〇は不倫をしている」
個人名や職場を記載しての誹謗中傷は、名誉毀損にあたります。
名誉毀損罪(刑法230条)には、「人の名誉を毀損した者に刑事罰を処する」とあります。つまり、個人が特定できない投稿(例「Aは不倫している」)は、名誉毀損にあたりません。
ただし、イニシャルやハンドルネームであったとしても、個人が特定できる場合は名誉毀損として認められるケースもあります。
たとえば、「〇〇で働いているH.I」や「株式会社〇〇の営業部課長」などです。対象者を知る人物が見たときに、特定できてしまう内容とともに書き込まれているスレッドや投稿は、名誉毀損にあたります。
2-2.社会的評価を下げる内容
社会的評価を下げる内容も名誉毀損です。
具体的には、「〇〇は不倫をしている」「〇〇会社は不良品を販売している」など、投稿によって日常生活や社会活動に影響を及ぼす恐れのある場合にあてはまります。
ただし、社会的利益のために投稿されたものは、名誉毀損にあたらない可能性があります。政治家の収賄事件や、企業の不正などです。個人的な恨みではなく、社会的利益を守るために周知させる必要のある情報については、名誉毀損にあたりません。
2-3.事実を摘示している投稿
名誉毀損にあたる投稿は、事実を摘示している必要があります。 事実の摘示とは、具体的な事実のことです。たとえば、「バカ」「ブス」などの悪口は具体的とはいえないため、名誉毀損ではなく侮辱罪にあたります。
「不倫している」「不良品を販売している」など、具体的な内容の投稿が名誉毀損に該当します。ただし、投稿内容が事実であるかは問われません。虚偽の内容であっても、名誉毀損にあたります。
3.スレッド内の悪口・名誉毀損にあたる投稿の削除方法
一度インターネット上に書き込まれた投稿は、半永久的に残ります。現在は影響がなくても、将来的に就職や転職に大きな影響を与える可能性があることを理解しておきましょう。
そのため、スレッドの悪口や名誉毀損にあたる投稿を、そのままにしておくことはおすすめできません。ここでは、スレッド内の悪口や、誹謗中傷を削除する3つの方法について解説します。
3-1.サイト内の削除依頼フォームから依頼する
スレッドに書き込まれた投稿を削除したい場合は、まずサイト内にある削除依頼フォームから削除依頼をしましょう。
大手の匿名掲示板には、誹謗中傷や名誉毀損にあたる投稿に対して、投稿者以外の依頼でも削除が可能です。
ただし、削除されるかはサイトの運営者の判断に任されるため、確実に削除される保証はありません。削除依頼フォームで依頼しても、該当の投稿が削除されない場合は、後述する「送信防止措置手続」が必要です。
3-2.送信防止措置手続をおこなう
スレッド内の投稿が削除されない場合は、プロバイダ責任制限法にのっとり、「名誉毀損・プライバシー関係送信防止措置手続」をおこないます。
プロバイダ責任制限法とは、名誉毀損やプライバシー侵害などの権利侵害にあたるインターネット上の投稿において、プロバイダの対応を規定した法律です。主に次の対応を規定しています。
- 送信防止措置請求権
- 発信者情報の開示請求権
このうち送信防止措置の申立をすることで、スレッドの投稿削除を依頼できます。注意したいのは、送信防止措置請求をしてもプロバイダやサイト運営者には、削除の義務がないことです。
3-3.裁判所に仮処分を申し立てる
スレッドの削除が認められない場合は、裁判所に削除の仮処分を申し立てることも可能です。
仮処分とは、裁判前に暫定的な措置をとることです。名誉毀損にあたる投稿が、裁判中に拡散されることを防ぐために認められています。
仮処分を申し立てるには、申立書と名誉毀損の証拠が必要です。投稿のスクリーンショットやプリントアウトしたものを準備します。
仮処分の決定までは、1~2ヶ月程度を要するといわれています。しかし、仮処分が決まると正式な裁判をおこさなくても、スレッドの削除に応じてもらえる可能性が高いでしょう。
4.スレッド内の悪質な発信者の情報開示請求方法
スレッド内で名誉毀損をおこなった人物を特定し、損害賠償請求をしたいときは、発信者の特定が必要です。発信者を特定は、次の手順でおこないます。
- 1.サイト運営者へ発信者情報の開示請求
- 2.IPアドレスしかわからない場合は経由プロバイダへ情報開示請求
匿名掲示板のスレッドに書き込まれている場合は、発信者の詳細情報が不明なケースも多々あります。そのため、サイト運営者への開示請求のあと、経由プロバイダへ発信者情報開示請求をおこなう必要があるでしょう。
また、請求書による開示請求に応じてもらえない場合は、仮処分や訴訟へと進みます。ここでは、スレッド内で悪質な投稿をした発信者の情報開示請求の方法を解説します。
4-1.発信者情報開示請求書を送付する
まずは、問題のスレッドがあるサイトの運営者宛に、発信者情報開示請求書を送付します。書式は、テレコムサービス協会が公開しているものを使用しましょう。[注2]
発信者情報開示請求書には、「掲載された情報」「侵害された権利と理由」などの項目があります。名誉毀損にあたる投稿の内容と、なぜ名誉毀損になるのかを詳しく記載しましょう。証拠の添付も必要です。
請求書によって、サイト運営者が発信者の情報を開示してくれれば、経由プロバイダにも同じように開示を求めます。
4-2.発信者情報開示請求の仮処分をおこなう
発信者情報開示請求書を送付しても、投稿の削除がおこなわれない場合は、仮処分の申し立てができます。仮処分は、裁判所からサイト運営者あるいは経由プロバイダに対して、発信者情報の開示を命令してもらう手続きです。
仮処分で開示命令をだしてもらうには、名誉毀損があった事実を証明できる 証拠が必要です。スレッドのスクリーンショットだけでなく、プリントアウトして紙面でも残しておきましょう。
仮処分の判断には1~2か月かかり、場合によってはサイト運営者と経由プロバイダの2回おこなう必要があります。
また仮処分には開示の義務がないため、仮処分がでても発信者情報が開示されない可能性もあり、その場合は訴訟に移ります。ただし、仮処分がくだると訴訟で勝てない可能性が高く、この段階で開示するプロバイダがほとんどです。
4-3.発信者情報開示請求訴訟を起こす
最終手段として、発信者情報開示請求訴訟を起こすことも可能です。
一般的な民事裁判と同様の流れで進み、スレッドに投稿された内容が名誉毀損にあたるかが焦点となります。
5.名誉毀損にあたるスレッドの削除や情報開示請求はまず弁護士に相談しよう
名誉毀損にあたるスレッドや投稿は、削除できます。
ただし、サイト内の削除依頼フォームでは、投稿ごとの削除依頼のため、スレッドを丸ごと削除するのは手間がかかることを理解しておきましょう。
もし削除が認められないときは、送信防止措置手続によって正式に削除を依頼できます。名誉毀損で相手を訴えたい場合は、スレッドや投稿を削除してしまうと証拠がなくなってしまうため、削除前に弁護士に相談しましょう。
投稿した人を特定したいときは、発信者情報開示請求をおこないます。こちらも削除請求のように自分でおこなえますが、確実に開示してもらうためには弁護士へ依頼するのがおすすめです。証拠集めのアドバイスや請求書の作成代行もしてもらえます。
[注1]e-GOV:刑法 [注2]発信者情報開示請求標準書式監修者
野口 明男(代表弁護士)
開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。
- 最新記事