トレントの違法ダウンロードで開示請求されたら?対処法と示談金相場を弁護士が解説
トレントの違法ダウンロードで開示請求されたら?対処法と示談金相場を弁護士が解説
2025.06.03
トレントとは、インターネット上でファイルを共有できるソフトウェアです。トレントを使用するとファイルをダウンロードしながら、同時にアップロードも行っているため、知らずに著作権などの権利侵害をしていることがあります。
このようなトレントの違法ダウンロードをしてしまうと、権利を侵害された著作権者から開示請求されるリスクがあります。「トレントで違法なアップロードをしているとは知らなかった」との言い分は基本的には認められませんので、発信者情報開示に係る意見照会書が届いたときは、ほとんどのケースであなたの契約者情報が開示されてしまうでしょう。
そのため、トレントの違法ダウンロードで開示請求をされたときは、すぐに著作権者との間で示談交渉を行うことが重要です。
今回は、トレントの違法ダウンロードで開示請求されたときの対処法と示談金相場について解説します。
目次
ビットトレントとは

ビットトレント(トレント)とは、P2Pという技術を用いてインターネット上でファイルを共有できるソフトウェアです。
ファイルをダウンロードする場合、通常であれば1つのサーバーからみんなが順番にファイルをもらうことになりますが、これではサーバーに負荷がかかって遅くなってしまいます。
トレントは、
・ファイルを小さなかけらに分けて配布する
・ダウンロードしている人がお互いにそのかけらを交換し合う
という特徴があるため高速でファイルのダウンロードが可能になります。つまり、トレントは「もらいながら配る」という形式のファイル共有ソフトといえます。
トレントを利用すると著作権者から発信者情報開示請求される可能性がある

トレントを利用すること自体は違法ではありませんので、トレントを利用しただけで直ちに法的責任を追及されることはありません。
しかし、トレントは、ファイルのダウンロードと同時にアップロードをしていますので、トレントの利用方法によっては違法なダウンロード・アップロードに該当する可能性があります。
たとえば、映画・音楽・小説・漫画などはそれを創作した人に著作権があり、原則として著作権者の許諾がなければ利用することはできません。これらの著作物をトレントを利用してダウンロードすれば著作権法違反となります。また、知らないうちパソコン内のファイルがアップロードされて著作権法違反になる可能性があります。
このような違法ダウンロード・アップロードをすると、著作権者には当該コンテンツで得られたはずの利益を失うという損害が発生します。著作権者は、違法ダウンロード・アップロードした人に対して損害賠償請求をすることになりますが、それには行為者を特定しなければなりません。そこで、発信者情報開示請求という手続きを利用して、行為者の情報開示を行うのです。
トレントの違法な利用をして発信者情報開示請求されたときの流れ

トレントを利用して違法なダウンロード・アップロードをしてしまった場合、著作権者から発信者情報開示請求がされる可能性があります。以下では、トレントを利用したときの発信者情報開示請求の流れを説明します。
プロバイダから発信者情報開示請求に係る意見照会書が届く
著作権者は、トレントの違法な利用により権利を侵害された場合、行為者を特定するために発信者情報開示請求を行います。
著作権者からプロバイダに対して契約者情報に関する発信者情報開示請求訴訟が提起されると、プロバイダから契約者に対して「発信者情報開示に係る意見照会書」が送られてきます。
意見照会に対しては、「同意する」または「同意しない」のいずれかの回答をします。
なお、トレントによる権利侵害が明白なケースでは、開示請求に同意しない旨の回答をしたとしても、裁判所の判決により契約者情報の開示が認められる可能性が高いです。
発信者情報開示請求が認容されると住所や氏名などが開示される
意見照会に対して「同意する」旨の回答をすれば、プロバイダから著作権者に契約者情報(住所、氏名など)が開示されます。
他方、「同意しない」旨の回答をしても裁判で発信者情報開示請求が認容されると契約者情報が開示されてしまいます。
著作権者から民事責任・刑事責任を追及される
著作権者は、トレントによる違法行為をした人を特定すると、以下のような法的責任追及の手続きに移行します。
・違法アップロードの停止の要求
・損害賠償請求
・著作権法違反を理由とする刑事告訴
著作権者との示談が成立すれば刑事告訴を回避できる可能性がありますので、早期に示談交渉に着手するようにしましょう。
プロバイダから発信者情報開示請求に係る意見照会書が届いたときの対処法

プロバイダから発信者情報開示請求に係る意見照会書が届いたときは、以下のように対処します。
開示請求に同意する
トレントを利用して違法なダウンロードやアップロードをしたのが事実であれば、開示請求を拒否しても契約者情報が開示されてしまいます。
そのため、意見照会書が届いたときは「開示請求に同意する」旨の回答をして、早めに示談の手続きを進めていくべきでしょう。
開示請求を拒否する
トレントの利用に身に覚えがないという場合は、その旨の理由を付して「開示請求に同意しない」旨の回答をします。
自分がトレントを利用していなくても同居の家族がトレントを利用している可能性もありますので、意見照会書が届いたときは家族にもトレント利用の有無を確認してみるとよいでしょう。
なお、「開示請求に同意しない」旨の回答をしたとしても、契約者情報の開示を命じる判決が確定すれば、あなたの住所や氏名などの情報が著作権者に開示されてしまいます。
無視する
意見照会書が届いたときにやってはならない行動は、意見照会書を無視して何も回答しないということです。
意見照会書への回答義務はありませんので、無視したとしても罰則が適用されることはありませんが、被害者の心証が悪化するため今後の示談交渉や訴訟において不利になる可能性があります。
そのため、意見照会書が届いたら期限内に同意または不同意の回答をするようにしてください。
トレントの利用で発信者情報開示請求をされたときはすぐに示談交渉をするべき
トレントの違法利用により著作権者の権利を侵害した場合、著作権者に対する賠償義務が生じます。著作権者からの請求を無視していても訴訟を提起され、最終的に預貯金や給料などを差し押さえられるリスクがありますので、発信者情報開示請求をされたときはすぐに示談交渉に着手するべきです。
ただし、著作権者からの請求額が適正なものであるかは、一般の方では判断が難しいため、示談交渉をするなら弁護士に相談・依頼するのがおすすめです。
トレントの利用で著作権を侵害したときの示談金相場
トレントの違法利用による著作権侵害をしてしまったのが事実であれば、著作権者との示談交渉により示談するのが得策です。その際に、著作権者に支払う示談金の金額は、個別の事情によって変動しますが、一般的な相場としては以下のとおりです。
・1作品あたり20~30万円程度
・複数の著作権侵害がある場合は50~100万円程度
複数の作品の著作権を侵害していた場合、まとめて示談交渉することで示談金を減額できる可能性もあります。
トレントで開示請求されたときの示談交渉を弁護士に依頼すべき理由

トレントの違法利用により著作権者から開示請求をされてしまったときは、以下のような理由から弁護士に示談交渉を任せるのがおすすめです。
発信者情報開示請求に係る意見照会書への対応をアドバイスしてもらえる
トレントの違法利用により著作権者がプロバイダに対して発信者情報開示請求訴訟を提起すると、あなたのもとに「発信者情報開示に係る意見照会書」が送られてきます。
意見照会書が届いたときは、同意または不同意の回答をしなければなりませんが、トレント利用が身に覚えがあるかどうかなどの事情によって回答すべき内容が変わってきます。適切な回答をするには専門家である弁護士のアドバイスが不可欠ですので、意見照会書が届いたらすぐに弁護士に相談するようにしてください。
著作権者との交渉を任せることができる
トレントの違法利用を理由とする発信者情報開示請求が認められると、あなたの情報が著作権者に開示され、著作権者からは損害賠償請求がなされます。
不慣れな方ではどのように対応すればよいかわからず、誤った対応をして不利な結果になるリスクが高いため、著作権者から損害賠償請求の通知が届いたときは弁護士に対応を任せるべきでしょう。弁護士に依頼すれば、あなたに代わって弁護士が相手との交渉をすべて対応しますので、負担を大幅に軽減することが可能です。
適正な示談金相場を踏まえて示談ができる
トレントの違法利用による著作権侵害があった場合、著作権者に対して賠償金の支払いが必要になりますが、示談金の金額には一定の相場があります。
弁護士であれば個別具体的な事情を踏まえて適正な金額で示談をまとめることができますので、不利な条件で示談させられるリスクを回避することができます。また、複数の権利侵害がある場合でもまとめて示談交渉をすることで示談金を減額できる可能性がありますので、すべての対応を弁護士に任せた方がよいでしょう。
まとめ
トレントの違法利用により著作権者から発信者情報開示請求がされた場合、開示請求が認められる可能性が高いでしょう。そのため、発信者情報開示に係る意見照会書が届いたときは、すぐに著作権者との示談に向けて動くのが得策といえます。
トレントの違法利用による示談交渉には、専門的な知識と経験が必要になりますので、自分で対応するのではなく、まずは弁護士法人アークレスト法律事務所までご相談ください。

監修者
野口 明男(代表弁護士)
開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。
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