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ホスラブ投稿で逮捕もあり得る!?実際にあった事件・裁判事例
2025.03.26
ホストラブ(ホスラブ)は、キャバクラやホストクラブなど、ナイトワークについて情報交換ができる掲示板です。利用者は月間200万人と多く、匿名での書き込みや閲覧ができます。
情報交換の場として、利用者が多いことはメリットです。しかし、悪口・誹謗中傷が、拡散しやすくなるデメリットもあります。誹謗中傷を書き込むことで、裁判に発展したり逮捕されたりした事件もあるので、注意が必要です。
ホスラブ投稿で逮捕されるケースと、実際の事件事例、逮捕されたときの対応について説明します。
目次
ホストラブ(ホスラブ)とは?
ホストラブ(ホスラブ)とは、どのようなものなのでしょうか。以下では、ホスラブの概要とホスラブ掲示板の特徴について解説します。
(1)ホスラブとは?
ホスラブとは、正式名称を「ホストラブ」といい、当初は、ホストクラブに特化した情報交換サイト(掲示板)として開設されました。その後、ホストクラブ以外の水商売や性風俗にも対応するようになり、現在では、ホストクラブ、キャバクラ、ガールズバー、性風俗店など水商売業界を網羅するコミュニティサイトとして発展しています。
なお、ホスラブは、水商売や性風俗関係の情報を含むため、規約上、18歳未満の利用が禁止されています。
(2)ホスラブ掲示板での投稿の特徴
ホスラブは、その性質上、水商売関係者の利用が多いという特徴があります。すなわち、ホスト、キャバ嬢、風俗店経営者、利用客などがホスラブの主な利用者層になります。
ホスラブでは、男女の色恋や性といった話題を取り扱う匿名の掲示板であるため、ホストや風俗嬢などへの悪口、誹謗中傷、個人情報の掲載などが行われ、トラブルになることが多いです。インターネット上の掲示板への書き込みがなされると、あっという間に情報が拡散してしまいます。それにより、水商売や風俗店の売上が低下したり、個人に対する重大な権利侵害が発生するおそれがあります。
ホスラブ投稿で逮捕されるケースとは
ホスラブ投稿の誹謗中傷に対して、被害者が警察に告訴状を出す場合があります。告訴状が警察に受理されると、刑事事件として逮捕されることもあるので注意が必要です。
ここでは、ホスラブ投稿で逮捕されるケースについて解説します。
(1)名誉毀損にあたる投稿をしたケース
ホスラブで名誉毀損にあたる投稿をした場合、名誉毀損罪で逮捕される可能性があります(刑法230条1項)。名誉毀損とは、不特定または多数人が知ることができる状態で、他人の社会的評価を低下させる具体的事実を摘示することをいいます。
不特定多数の人が閲覧するホスラブで、以下のような投稿をした場合には、名誉毀損罪が成立する可能性が高いでしょう。・○○は過去に罪を犯した犯罪者だ
・○○は客と枕営業をしている
・○○は既婚者の客と不倫関係にある
このような名誉毀損罪が成立した場合、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金に処せられます。
なお、ホスラブの投稿で逮捕されるのは、誰に対する投稿であるのかが明確な場合です。氏名はもちろん、住所や勤務先、源氏名でも個人が特定できる場合は、逮捕され罪に問われる可能性があります。
(2)個人への侮辱にあたる投稿をしたケース
ホスラブで個人に対する侮辱にあたる投稿をした場合、侮辱罪で逮捕される可能性があります(刑法231条)。侮辱罪は、不特定または多数人が知ることができる状態で、他人を侮辱した場合に成立する犯罪です。名誉毀損罪との違いは、「事実の摘示」が要件とされていない点です。
たとえば、ホスラブで以下のような投稿をした場合には、侮辱罪が成立する可能性があります。・○○はバカで仕事ができない上にブスだ
侮辱罪が成立した場合、1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料に処せられます。
(3)個人に対して危害を加える内容が投稿されたケース
ホスラブで個人に対して危害を加える内容が投稿された場合、脅迫罪が成立する可能性があります(刑法222条1項)。脅迫罪は、生命・身体・自由・名誉・財産に対して、危害を加える旨を告知することで成立する犯罪です。
・○○を殺す
・○○の自宅に火をつける
・○○の後をつけてレイプする
このような脅迫罪が成立した場合、2年以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。
書き込み内容を実行するつもりがなくても、書き込むだけで犯罪行為にあたりますので注意が必要です。
(4)お店の営業を妨害したケース
ホスラブでお店の営業を妨害するような投稿をした場合、信用毀損罪(刑法233条前段)または偽計業務妨害罪(刑法233条後段)が成立する可能性があります。信用毀損罪と偽計業務妨害罪は、虚偽の風説の流布や偽計を手段とするという点で共通しています。このような手段により信用を毀損した場合には信用毀損罪が、業務を妨害した場合には業務妨害罪が成立します。
たとえば、ホスラブで以下のような投稿をした場合には、信用毀損罪または偽計業務妨害罪が成立する可能性が高いでしょう。・○○店に爆弾を仕掛けた
・○○店では性病がまん延しているから行かない方がよい
・○○店はぼったくり店だ
このような信用毀損罪または偽計業務妨害罪が成立した場合、いずれも3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。
ホスラブ投稿による実際にあった事件・裁判事例
ホスラブ投稿が原因で逮捕される事件には、さまざまなパターンがあります。ここでは、実際にあった裁判事例を示します。
事例1 本人画像を無断使用して誹謗中傷した事件
SNSのプロフィール画像をホスラブに投稿し、誹謗中傷を書き込んだ事件です。書き込みをした人を特定するために、プロバイダに対して発信者情報開示請求が認められました。投稿の内容は侮辱表現を多用しており、侮辱罪に該当します。[注1]
[注1]裁判所:平成29年(ワ)第4222号 発信者情報開示請求事件
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/840/086840_hanrei.pdf
事例2 ホームページ画像を無断使用して悪口を書き込んだ事件
お店のホームページに載っていたプロフィール画像を、無断でホスラブに投稿し、誹謗中傷を書き込んだ事件です。画像の著作権侵害として、書き込んだ人物の発信者情報開示請求が認められました。[注2]
[注2]裁判所:令和2年(ワ)第7411号 発信者情報開示請求事件
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/733/089733_hanrei.pdf
事例3 SNS投稿を無断使用して誹謗中傷した事件
原告がSNSに投稿した画像を無断使用し、ホスラブの原告名スレッドにて誹謗中傷を投稿した事件です。
原告の氏名をもじって、個人が特定できる状態で虚偽の内容を投稿したとして、発信者情報開示請求が認められました。[注3]
[注3]裁判所:令和元年(ワ)第31972号 発信者情報開示請求事件
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/732/089732_hanrei.pdf
ホスラブ投稿で逮捕された場合の流れ
ホスラブに悪口や誹謗中傷の投稿をしたことで、逮捕されてしまった場合、以下のような流れで刑事手続きが進んでいきます。
(1)逮捕・取り調べ
ホスラブで名誉毀損罪などの犯罪を行った場合、突然、警察官が自宅を訪ねてきて逮捕されることがあります。罪を犯したとしても常に逮捕されるわけではありませんが、被疑者に逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれがある場合には、それらを防ぐために逮捕される可能性があります。
警察によって逮捕されると、警察署内の留置施設で身柄が拘束されます。その後、警察官による取り調べが行われ、取り調べの内容は供述調書という書面にまとめられます。
(2)検察官送致
警察は、被疑者を逮捕した場合、逮捕から48時間以内に被疑者を釈放するか、被疑者の身柄を検察官に送致します。
検察官は、被害者の身柄の送致を受けた後、取り調べを行い、検察官送致から24時間以内に、被疑者を釈放するか勾留請求するかを判断します。
(3)勾留
取り調べの結果、引き続き身柄拘束をする必要があると判断した場合、検察官は、裁判所に勾留請求を行います。この請求が認められると、勾留請求日から10日間身柄が拘束されます。勾留延長が認められるとさらに10日間身柄拘束が続きます。
(4)起訴または不起訴
検察官は、勾留期限が満了するまでの間に、事件を起訴するか不起訴にするかを判断します。起訴されれば刑事裁判が行われることになります。不起訴になればその時点で身柄は解放され前科も付くことはありませんが、前歴が残ることとなります。
ホスラブ投稿で逮捕されたときの対応
ホスラブに誹謗中傷を投稿してしまったら、事件として告訴状が出て逮捕されるかもしれません。ここでは、ホスラブ投稿で逮捕されたときの対応方法について解説します。
(1)逮捕されたらすぐに弁護士に相談する
逮捕されると、留置場で身柄を拘束され、警察から取り調べを受けます。取り調べで話した内容は、裁判で証拠として扱われることもあるため、慎重な対応が必要です。
取り調べ前に弁護士への相談が認められているので、必ず弁護士を呼びましょう。弁護士のつてがない場合でも、当番弁護士制度を利用して弁護士に相談できます。[注4]
[注4]日本弁護士連合会:逮捕されたとき
(2)裁判になる前に被害者と示談交渉を行う
示談は、民事事件のイメージが強いかもしれませんが、刑事事件でも行われます。刑事事件における示談は、被害者と慰謝料の取り決めをすることで、告訴を取り下げてもらう交渉をします。
裁判前に示談を成立させ、告訴を取り上げてもらうことは、前科が付く可能性を下げることに役立ちます。示談が成立したからとって、必ず前科が付くのを防ぐことができるわけではないことには注意が必要です。
ホスラブ投稿で逮捕されなくても民事事件として責任追及される可能性がある
ホスラブ投稿で逮捕されなかったとしても、民事事件として被害者から損害賠償請求をされる可能性があります。
(1)誹謗中傷の投稿は不法行為に該当する
名誉毀損罪や侮辱罪などに該当するような内容の投稿は、違法に被害者の権利を侵害するものですので、民法709条の不法行為が成立し、被害者は、加害者に対して、損害賠償請求をすることができます。
刑事事件で罰金刑などの刑罰を受けたとしても、それにより民事上の法的責任が免除されるわけではありませんので、投稿者は、民事上の賠償責任も負わなければなりません。
(2)被害者は発信者情報開示請求により投稿者の特定が可能
ホスラブへの投稿は、基本的には匿名で行われます。匿名で投稿すればばれるはずがないと考え、安易に誹謗中傷の投稿をしてしまうと、「発信者情報開示請求」という手続きによって、投稿者を特定される可能性があります。
被害者が発信者情報開示請求を行うと、プロバイダから「発信者情報開示請求に係る意見照会書」という文書が届きますので、それにより加害者は、発信者情報開示請求がなされたことを知ることができます。
(3)損害賠償請求には誠実に対応する必要がある
発信者情報開示請求により投稿者が特定されると、被害者(または代理人弁護士)から損害賠償請求が行われます。この場合、被害者(または代理人弁護士)からの請求を無視することなく、誠実に対応することが必要です。最初の対応を誤ってしまうと、被害者が示談に応じてくれない可能性があります。示談が成立しない場合、訴訟を提起され、最終的に預貯金や給料などの財産を差し押さえられてしまうリスクや、刑事事件にまで発展するリスクが高まります。
ホスラブ投稿で逮捕を回避するための対処法
ホスラブへの投稿内容によっては、被害者により刑事告訴がなされて、逮捕される可能性があります。逮捕されると長期間の身柄拘束による不利益や前科・前歴が付くリスクなどがあります。ホスラブ投稿で逮捕を回避するためにできることとしては、以下のような対処法があります。
(1)逮捕される前に書き込みを削除する
被害者の目に触れる前に誹謗中傷の削除をすれば、刑事告訴されるリスクが低くなります。仮に刑事告訴されたとしても、すぐに削除したという事情は被疑者にとって有利な事情として考慮してもらうことができますので不起訴処分になる可能性もあります。
そのため、誹謗中傷の投稿をしてしまったときは、そのまま放置するのではなくすぐに削除するようにしてください。
ただし、ホスラブの投稿は、自他問わず任意で削除できない仕様になっていますので、運営側に対して削除依頼を出して、受理されなければ削除してもらうことはできません。ホスラブの削除依頼で受理されなかった場合でも、弁護士に依頼して削除してもらうことが可能な場合があります。
なお、投稿時点で犯罪が成立してしまう以上、投稿を削除したとしても、罪に問われなくなるわけではありませんので、この点には注意が必要です。
「逮捕されるかもしれない」と心配な場合は、まずは弁護士にご相談ください。
(2)発信者情報開示請求がなされたときはすぐに弁護士に相談する
プロバイダから「発信者情報開示請求に係る意見照会書」が届いた場合、被害者側が加害者への責任追及を始めたということになりますので、そのまま放置していると刑事事件に発展してしまう可能性があります。
そのため、「発信者情報開示請求に係る意見照会書」が届いたときはすぐに弁護士に相談するようにしてください。
弁護士であれば投稿者の代理人として被害者との示談交渉を行うことができますので、刑事事件に発展する前に、トラブルを解決できる可能性があります。適切な条件で示談をするには、専門的な知識や経験が不可欠となりますので、自分で対応するよりも、専門家である弁護士に任せた方が安心です。
まとめ
ホスラブに誹謗中傷を書き込むことは犯罪です。書き込み内容によっては、民事事件として損害賠償請求されるだけでなく、刑事事件になって逮捕されることもあります。
このようなリスクを回避するには、すぐに弁護士に相談することが重要です。
アークレスト法律事務所は、ホスラブをはじめとした匿名掲示板やSNSなどのネット問題に取り組んできた弁護士集団です。投稿の削除や被害者対応を希望される方は、ぜひお気軽にご相談ください。

監修者
野口 明男(代表弁護士)
開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。
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