著作権侵害の削除請求方法を解説!企業がとれる3つの対応策
ホスラブへのIPアドレス開示請求の方法を弁護士が分かりやすく解説
2026.01.09
ホスラブは、夜の仕事であるホストクラブやキャバクラなどを中心的な話題として取り扱う匿名掲示板であり、正式名称は「ホストラブ」といいます。
ホスラブは匿名で気軽に投稿できることもあり、ホスト、キャバ嬢、風俗嬢など、特定の個人に対する書き込みが日々行われています。
ホスラブで誹謗中傷コメントを書き込まれる被害にあった場合、投稿者を特定して慰謝料請求を試みることが可能です。投稿者を特定する際にまず必要となるIPアドレス開示請求の方法について解説いたします。
目次
- 1 1.ホスラブへのIPアドレス開示請求の方法
- 1.1 1-1.IPアドレスから「わかること」と「わからないこと」
- 1.2 1-2.【技術解説】ホスラブにおける投稿ログの保存形式
- 1.3 1-3 【チェックリスト】ホスラブへの開示請求に必要な資料
- 1.4 1-4 ホスラブ特有の投稿形式による「開示難易度」の違い
- 1.5 1-5 裁判所がIPアドレス開示を認める「3つの違法性判断基準」
- 1.6 1-6 【重要】第1段階と第2段階で異なる「開示のハードル」
- 1.7 1-7 なぜ「3ヶ月」を過ぎると特定が困難になるのか?
- 1.8 1-8 裁判所はここを見る!判例に基づく「開示可否」の決定要素
- 1.9 1-9 注意!開示請求が認められない「3つの失敗ケース」
- 1.10 1-10.ホスラブへの法的手続(仮処分・開示命令)の実務
- 2 2.開示成功後のステップ|犯人を特定した後にできる3つのこと
- 3 3.まとめ
1.ホスラブへのIPアドレス開示請求の方法

投稿者を特定するためには、ホスラブの管理者に対して問題となる投稿に係るIPアドレスの開示請求をする必要があります。
1-1.IPアドレスから「わかること」と「わからないこと」
IPアドレスとは、投稿に使用されたパソコンや携帯電話等に個別に割り当てられた識別符号であり、インターネット上の住所ともいえるものです。IPアドレスから投稿者を特定するためには次の2つの段階を経る必要があります。
第1段階として必要となるのが、投稿に利用されたIPアドレスの開示を求める手続です。IPアドレスは掲示板等の管理者が保有しているため、ホスラブの場合にはホスラブの管理者に対して開示請求をする必要があります。投稿に利用されたIPアドレスの開示を受けられれば、IPアドレスをもとに投稿者が利用したインターネットサービスプロバイダ(携帯電話会社等)を特定できます。
第2段階として、インターネットサービスプロバイダに対して投稿をした契約者の情報開示を求めます。会員登録が必要な掲示板でない限り、管理者は投稿者の個人情報を保有していません。これに対し、インターネットサービスプロバイダであれば通常は投稿者が利用契約を締結しているため投稿者の情報を保有しています。
「IPアドレスが開示されれば、すぐに相手の自宅や名前がわかる」と誤解されがちですが、実際には、IPアドレスのみでは個人を特定することはできません。
| 項目 | 判明する内容(わかること) | 判明しない内容(わからないこと) |
| IPアドレスから | 投稿に使用された端末の識別番号、経由したプロバイダ(ドコモ、SoftBank等) | 投稿者の氏名、住所、電話番号、メールアドレス |
| 契約者情報から | 投稿者の氏名、住所、電話番号(プロバイダが保有する情報) | (特になし) |
なぜIPアドレスだけでは特定できないのか
IPアドレスは、いわば「インターネット上の住所」ですが、それはあくまで「どの通信網を通ったか」を示すものです。その通信網を「誰が契約して使っていたか」は、プロバイダ(携帯電話会社など)が持つ契約者名簿と照合しなければ判明しません。
そのため、ホスラブへの開示請求(第1段階)の後に、プロバイダへの開示請求(第2段階)という「二段階の手続」が必要になるのです。
1-2.【技術解説】ホスラブにおける投稿ログの保存形式
なぜホスラブの投稿者は特定可能なのか。その裏側には、掲示板システム特有のログ管理メカニズムがあります。
① Webサーバーログとデータベースの紐付け
ホスラブへの投稿が行われると、サーバー内には「書き込み内容(データベース)」とは別に、「アクセスログ(Webサーバー側)」が記録されます。
- 記録内容: 接続元IPアドレス、ポート番号、User-Agent(ブラウザやOSの情報)、そして1000分の1秒単位のタイムスタンプです。
- 特定への影響: これら複数のデータが一致して初めて、裁判所で「投稿者の同一性」が認められます。
② 掲示板独自の「ID」とIPアドレスの関係
ホスラブでは、一見匿名に見えても、内部的には投稿ごとのIDやIPアドレスが一定期間保持される設計になっています。
- ログの揮発性: ホスラブは書き込み量が膨大であるため、古いスレッドのログは優先的にアーカイブ(または削除)される傾向があります。これが「スピード勝負」と言われる技術的理由です。
③ プロキシ・VPN利用時の技術的障壁
一部の投稿者はIPアドレスを隠蔽するためにVPN等を経由しますが、ホスラブのサーバーログにはその「出口IP」が記録されます。
- 弁護士の対応: 海外プロバイダを経由している場合でも、国内の代理店や関連通信ログを解析することで、特定を試みることが可能です。
1-3 【チェックリスト】ホスラブへの開示請求に必要な資料
弁護士がホスラブの管理者や裁判所に対して手続を行う際、以下の資料が揃っているほど、特定までのスピードと確実性が向上します。ご自身でスクリーンショット等を保存する際は、以下の項目が漏れなく含まれているか確認してください。
① 投稿URL(アドレス)
掲示板のどのスレッドの、どの発言かを特定するために不可欠です。
- 注意点: スレッドの一覧画面ではなく、当該投稿が表示されている個別のURLを正確に記録してください。
② 投稿番号
ホスラブ上の各レス(書き込み)に割り振られた数字です。
- 重要性: 大量の書き込みがある中で、どの発言を対象とするかを法的に特定するために必要です。
③ 投稿日時(秒単位まで)
いつ書き込まれたかの記録です。
- 重要性: IPアドレスは一定時間で切り替わるため、特定には「年・月・日・時・分・秒」の正確な情報が求められます。
④ ログの取得状態(スクリーンショット)
ブラウザで表示されている画面を画像として保存します。
- 推奨事項: 前後の文脈がわかるように保存してください。また、スマホの画面キャプチャだけでなく、PCサイト版の表示も保存しておくと、裁判手続においてより証拠能力が高まります。
1-4 ホスラブ特有の投稿形式による「開示難易度」の違い
ホスラブは他の掲示板と異なり、独自の構造を持っています。そのため、投稿の形式によって開示請求の難易度が大きく変わるのが特徴です。
① 複数板への「コピペ・派生投稿」のケース(難易度:中)
ホスト個人のスレッドから、地域別の店舗板や「雑談板」へ中傷が拡散するケースです。
- 特定への影響: 各スレッドごとに管理者への開示請求が必要になるため、対応が遅れるとログが消失するリスクが高まります。
- 対策: 拡散元となる「親投稿」を迅速に特定し、一括して法的手続を行う必要があります。
② スレッドを跨いだ「執拗な連投」(難易度:高)
短時間に何度も投稿を繰り返すケースです。
- 技術的課題: ホスラブでは、短時間の連続投稿においてIPアドレスが変動しない場合もあれば、VPN(仮想専用線)や公衆Wi-Fiを使い分け、意図的にIPを隠蔽する悪質な投稿者も存在します。
- 弁護士の視点: 単一の投稿だけでなく、一連の投稿を「ひとつの権利侵害」として構成し、裁判所へ主張するノウハウが求められます。
③ 匿名性が高い「レス番指定」の中傷(難易度:低〜中)
直接名前を出さず、「>>100(レス番号)は枕営業している」といった形式の書き込みです。
- 特定への影響: 主語がなくても、文脈から特定の個人を指していると客観的に判断できれば特定可能です。
- 対策: 前後の投稿を含めた「文脈の証拠化」が重要になります。
1-5 裁判所がIPアドレス開示を認める「3つの違法性判断基準」
ホスラブ側に開示を強制するには、単に「嫌なことが書かれた」だけでは足りず、法的な**「権利侵害」**が認められる必要があります。裁判所は主に以下の3つの観点から違法性を判断します。
① 名誉毀損
「事実」を示して、その人の社会的評価を下げる投稿です。
- 基準: 「枕営業をしている」「薬物を使っている」など、真実ではない具体的事実を摘示していること。
- 重要点: 単なる感想(例:「ブサイク」「性格が悪い」)よりも、具体的な事実に触れている方が開示の成功率は高まります。
② 侮辱・業務妨害
具体的な事実がなくても、受忍限度(我慢できる範囲)を超える内容は侮辱に当たり得ます。
- 基準: 「死ね」「ゴミ」などの過度な罵倒や、お店の営業を妨害するような悪質なデマ。
- 重要点: ホスラブ上の激しい言葉遣いであっても、執拗な連投や悪質な内容は権利侵害と認められるケースがあります。
③ プライバシー権・肖像権の侵害(個人情報の暴露)
他人に知られたくない個人情報を勝手に公開する行為です。
- 基準: 本名、住所、電話番号、源氏名と本名の紐付け、隠し撮り写真の掲載など。
- 重要点: ホスト・キャストは職業柄、一定の情報を公開して活動していることが多いですが、私生活に踏み込む内容は明確な権利侵害となります。
1-6 【重要】第1段階と第2段階で異なる「開示のハードル」
投稿者の特定には、ホスラブ(サイト運営者)への請求と、プロバイダ(通信事業者)への請求の2ステップがありますが、実はそれぞれで「裁判所に認められるための条件」が異なります。
第1段階:ホスラブ(サイト運営者)への請求
目的は「投稿者のIPアドレスとタイムスタンプ」を得ることです。
- 主な開示要件: 「権利侵害の明白性」 その投稿によって、あなたの権利(名誉やプライバシー)が侵害されていることが客観的に明らかである必要があります。
- 弁護士の視点: ホスラブ側は、投稿内容そのものが「違法かどうか」のみで判断されるため、証拠(スクリーンショット)の精度が勝負を分けます。
第2段階:プロバイダ(通信事業者)への請求
目的は「契約者の氏名・住所」を得ることです。
- 主な開示要件: 「権利侵害の明白性」+「正当な理由」 違法であることに加え、なぜ個人情報を開示させる必要があるのかという「正当な理由(例:慰謝料請求のため、刑事告訴のため)」が厳格に問われます。
- 弁護士の視点: プロバイダは顧客の個人情報を守る義務があるため、第1段階よりも慎重に審査されます。特に「意見照会(投稿者への確認)」が行われるため、反論を想定した的確な法的書面が必要です。
1-7 なぜ「3ヶ月」を過ぎると特定が困難になるのか?
ホスラブでの誹謗中傷被害において、最も注意すべきなのは「ログ(接続記録)の保存期間」です。これを過ぎてしまうと、どれだけ悪質な書き込みであっても、弁護士でも特定することは物理的に不可能になります。
① ホスラブとプロバイダの「二つの期限」
特定が困難になる理由は、主にプロバイダ(通信事業者)側の事情にあります。
- ホスラブ側(サイト運営者): 投稿ログを比較的長く保持している場合があります。
- プロバイダ側(ドコモ、au、SoftBank等): 投稿者が「どのIPアドレスをいつ使ったか」というログを、通常3ヶ月〜半年程度で自動的に削除します。
② ホスラブ特有の「短期ログ」リスク
ホスラブは膨大な書き込みが行われる巨大掲示板であるため、サーバー負荷を軽減するために古い投稿データの管理が厳格です。特に以下のケースでは、3ヶ月以内であっても特定が難しくなる「実務上の壁」が存在します。
- 古い投稿へのレス: 1年以上前のスレッドに新しく書き込まれた場合、過去のログが整理されており、プロバイダ側の記録がすでに消えている。
- 公衆Wi-Fiや格安SIMの利用: 一部のプロバイダは、通常のキャリアよりもログの保存期間をさらに短く設定しているケースがあります。
③ 特定できない理由:IPアドレスは「使い回し」されている
IPアドレスは、世界中で数が限られているため、同じ番号が数時間〜数日単位で別のユーザーに割り当て直されます。プロバイダ側のログが消えてしまうと、「その瞬間に、誰がそのIPを使っていたか」を証明する証拠がこの世から消滅してしまうのです。
1-8 裁判所はここを見る!判例に基づく「開示可否」の決定要素
ホスラブでの投稿が開示されるかどうかは、過去の裁判例から導き出された「特定の要素」をクリアしているかで決まります。
① 名誉毀損:その書き込みに「真実性」はあるか?
抽象的な悪口ではなく、事実を摘示している場合、以下の要素が検討されます。
- 公共性・公益目的: 投稿内容が、社会の利益に関わるものか(個人の痴話喧嘩や誹謗中傷のように社会一般の関心事とはいえないものであれば、開示が認められやすくなります)。
- 真実性・真実相当性: 書き込まれた内容が真実に基づいているか。根拠のないデマ(例:理由の無い犯罪者扱い)は、高い確率で開示対象となり得ます。
② プライバシー侵害:その情報は「公知」か「秘密」か?
ホスラブでよくある「本名」や「過去の経歴」の暴露については、以下の3点がポイントです。
- 非公知性: 一般に知られていない事柄であること。
- 私事性:私生活上の事実又は事実らしく受け取られるおそれのある事柄であること
- 秘匿性:一般人の感受性を基準にして当該私人の立場に立った場合公開を欲しないであろうと認められる事柄であること
③ 侮辱:言葉の「攻撃性」が受忍限度を超えているか
事実の摘示がない場合、その表現が社会的に許容される範囲を逸脱しているかが問われます。
- 執拗性: 一回きりの暴言か、それとも数百回に及ぶ粘着質な連投か。
- 表現の卑俗さ: 性的な侮辱や、著しく品位を欠く表現が含まれているか。
1-9 注意!開示請求が認められない「3つの失敗ケース」
弁護士が介入しても、以下のようなケースでは開示が認められない(あるいは物理的に不可能な)場合があります。
- 特定性の不足(誰のことか分からない) 名前が伏せられており、文脈をたどっても「特定の個人や店舗」を指していると客観的に判断できない場合です。
- 被害の軽微性(受忍限度の範囲内) 「料理が口に合わなかった」「態度が少し冷たかった」など、主観的な感想の域を出ない不満は、表現の自由として尊重され、開示が認められない傾向にあります。
- ログの消失(時間切れ) 前述の通り、プロバイダ側のログ保存期間(約3ヶ月)を過ぎてしまった場合、裁判所が開示命令を出しても「データが存在しない」ため、特定は不可能です。
1-10.ホスラブへの法的手続(仮処分・開示命令)の実務
ホスラブの管理者は、任意の開示請求には応じないケースがほとんどです。そのため、裁判所を通じた以下のいずれかの法的手続を選択することになります。
① 発信者情報開示命令(2022年改正法による新制度) 2022年10月からスタートした、サイト運営者への請求とプロバイダへの請求を一つの裁判手続で行う「一体型」の手続です。
- メリット: 手続が簡略化され、特定までの期間が短縮されます。
- 適したケース: ログの保存期限に一定の余裕がある場合。
② 仮処分(迅速なログ保存を優先) 裁判所からホスラブ側に対し、「直ちにIPアドレスを開示せよ」という命令を出してもらう手続です。
- メリット: 通常の訴訟より極めてスピーディー(早くて1〜2ヶ月程度)に結果が出ます。
- 適したケース: 投稿から時間が経過しており、一刻も早くプロバイダを特定してログを保全する必要がある場合。
参考:インターネット上の違法・有害情報に対する対応https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/d_syohi/ihoyugai.html
2.開示成功後のステップ|犯人を特定した後にできる3つのこと

投稿者が特定されたら、そこが「解決のスタート」です。被害の内容やご希望に合わせて、以下のフローで責任を追及します。
① 示談交渉(警告書の送付)
弁護士名で、相手方に「二度と書き込まない旨の誓約書」や「謝罪」「解決金の支払い」を求めます。裁判をせずに迅速に解決したい場合に有効です。
② 民事訴訟(損害賠償・慰謝料請求)
相手が示談に応じない場合、裁判を起こして損害賠償を請求します。
- 請求できる費用の目安: 慰謝料に加え、特定にかかった弁護士費用の一部を請求できる可能性があります。
③ 刑事告訴(名誉毀損罪など)
投稿が著しく悪質な場合、警察に告訴状を提出し、刑事罰(罰金や拘禁刑)を求めます。
3.まとめ

3-1.慰謝料だけではなく誓約を求めることができる
インターネットサービスプロバイダから契約者情報の開示を受けることができれば、ホスラブで誹謗中傷をした投稿者の特定は完了します。特定されたホスラブへの投稿者に対しては、不法行為(民法709条)に基づき名誉毀損やプライバシー権の侵害等を理由として慰謝料請求ができます。インターネット上の誹謗中傷に対する慰謝料の相場は、投稿内容や相手の争い方によっても大きく異なりますが、一般的には数十万円程度が多いようです。
また、慰謝料請求をするだけでなく、投稿者本人に対して二度と同様の行為をしないことの誓約を求めたり、悪質な場合には刑事告訴をしたりといった対応をとることもあります。単に誹謗中傷のコメントを削除するだけだと、また同じような誹謗中傷のコメントを書き込まれてしまうことがあります。このため、誹謗中傷の被害を根本的に解決したい場合には投稿者を特定することが有効です。

監修者
野口 明男(代表弁護士)
開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。
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