悪徳業者から被害に遭ったら?具体的な対処法や相談窓口を解説
はてなブログでの誹謗中傷記事を削除する2つの方法
2019.06.26ブログはときに、特定の人や企業を誹謗中傷する道具になります。誰でも簡単に審査もなく開設できるブログを使えば、インターネット上に「悪口」を量産することも可能です。
その一方で、被害者が悪意のあるブログを排除することは簡単ではありません。ブログサービスの運営会社は、問題のあるブログ記事を削除する方法を用意していますが、手続きが複雑で手間がかかります。
著名なブログサービスのひとつ「はてなブログ」でも、実際に削除されるまで、申し立て、審査、調査、判断、処理などいくつもの工程を経なければなりません。
個人や企業が、はてなブログで誹謗中傷されたときの処置方法について紹介します。
1.はてなブログの特徴
はてなブログの特徴を紹介します。
1-1.運営会社は株式会社はてな
はてなブログを運営しているのは、京都市に本社を置く株式会社はてなです。同社は2001年に設立され資本金は約2億円です。はてなブログのほか、マーケティングやIT技術支援などの事業を展開しています。
1-2.誰でも無審査、無料で開設可能
はてなブログは誰でも無審査で、かつ無料で開設することができます。ブログを開設するには以下のURLにアクセスしてユーザー登録しなければなりませんが、必要なのはメールアドレスだけです。
したがって、無料のメールサービスで獲得したメールアドレスを使って匿名で登録すれば、身元を隠したまま個人や企業を攻撃することができてしまいます。
▲はてなブログのユーザー登録ページの一部
https://www.hatena.ne.jp/register
1-3.クオリティが高く、拡散支援も行う
はてなブログが多くのブロガー(ブログの開設者、執筆者)から支持されるのは、操作性がよくクオリティが高いからです。
はてなブログにはさまざまな編集機能が搭載されていて、記事執筆や写真や動画の貼り付け、ツイッターからの引用などが簡単に行えます。さらに画面のデザインパターンを数多く用意しているので、公式ホームページのような見映えのよいページをつくることができます。
サイトのデザインには、「正しい内容の記事を掲載している」と錯覚させる力があります。フェイクニュース(偽情報)を流す者にとっては、はてなブログのクオリティの高さは好都合です。
さらに株式会社はてなは、はてなブログの拡散にも力を入れています。「はてなブックマーク」というサイトを設け、NHKや講談社などの有力メディアが発信しているニュースのリンクと一緒に、はてなブログのリンクを貼っています。
このように並べられていると、はてなブログ記事がNHK記事並の価値を持っているかのように映ります。
はてなブログの拡散を支援する、はてなブックマーク。NHKなどのニュース記事のリンクと一緒に、はてなブログのリンクも貼られています。
2.はてなブログで起こりうるトラブル
はてなブログを使って特定の個人や企業を毀損することは難しくありません。個人情報や社内限定の情報をブログに掲載すれば十分な威嚇効果を持ちます。
また企業が保有するコンテンツや商標を無断ではてなブログに掲載すれば経済的な損害を与えることもできます。
さらに、個人が開設しているはてなブログに、コメント機能を使って攻撃することもできます。悪意ある投稿者が誹謗中傷コメントを残せば、ブログ開設者はダメージを受けるでしょう。
はてなブログの開設者は寄せられたコメントを公開しないこともできますが、開設者自身は少なくとも1回はそのコメントを読むことになります。それはブログ記事の執筆意欲を著しく減退させるでしょう。
個人ブログに迷惑コメントを投稿する者は、ブログの更新が止まるだけで達成感を得るはずです。
3.はてなブログの運営は削除に消極的?
株式会社はてなは「はてな情報削除ガイドライン」を設け、ユーザーや閲覧者に削除する基準を示しています。以下のURLで確認することができます。
▲はてな情報削除ガイドラインの一部
https://policies.hatena.ne.jp/deletion-guideline
しかしこのガイドラインからは、はてなブログに掲載された誹謗中傷記事を積極的に撲滅していこうという気概を感じることはできません。例えば次のように書かれてあります。
- 株式会社はてなは情報の監視義務を負わない
- (削除などの)送信防止措置を行うにあたり、株式会社はてなは必要最小限度の防止措置を行う
- (株式会社はてなから情報発信者に送った)連絡を受信できなかったために被った不利益については、株式会社はてなは一切責任を負わない
責任を負わない条件を繰り返し述べている印象を受けます。
さらにプライバシーについては、未成年者のプライバシー侵害については「即時削除」を明記していますが、一般個人の氏名、勤務先、自宅住所、電話番号、メールアドレスについては「緊急性が認めらない場合、原則として削除手続きを進める」としているだけです。これは、一般個人の個人情報がはてなブログにさらされても、「緊急性が認められる時、例外扱いできるときは削除手続きを進めないこともある」と読むこともできます。
そして、インターネット上に自分から氏名、勤務先、自宅住所、電話番号、メールアドレスを公開している場合は、はてなブログに同じことが書かれてあっても原則、削除しないとしています。
したがって公式ホームページを持っている個人が、悪意あるはてなブログの標的になり、事実無根の誹謗中傷記事に本名や自宅住所が記載されても、株式会社はてなは削除依頼に応じない可能性があるわけです。
公式ホームページに載っている情報をわざわざはてなブログ記事から削除する必要はない、と考えているのかもしれませんが、公式ホームページの読者と誹謗中傷記事の読者が異なることもあるにもかかわらず、運営側の姿勢には消極的な印象を受けます。
4.はてなブログ記事を削除する2つの方法
はてなブログに掲載された誹謗中傷記事を削除するには、1)株式会社はてなに削除を依頼する方法と、2)弁護士に削除を依頼する方法の2通りがあります。
そして、もし被害が甚大な場合、弁護士に協力要請することを強くおすすめします。なぜなら、はてなブログの削除手続きは煩雑なうえに、確実に削除される保証がないからです。また、仮に削除が実施されたとしても時間がかかるからです。
4-1.株式会社はてなに削除を依頼する方法は煩雑かつ不確実
株式会社はてなに削除を依頼する方法は下記のURLに詳しく記されていますが、ここでは要約して紹介します。
▲はてな情報削除の流れの一部
https://policies.hatena.ne.jp/deletion-flow
削除までの流れは次のとおりです。
- 被害者が削除の申し立てをする
- 株式会社はてなが申し立て内容に不備がないか確認し、不備がなければ受理する
- 株式会社はてなが侵害されたとする情報について調査する
- 調査結果に基づき、削除などの対処を行う
被害者による削除の申し立ては、文書の送付、メール、ファックスで行います。連絡先は上記の「はてな情報削除の流れ」のページに明記されています。
申し立てをするには、被害者は次の内容を明示しなければなりません。
- 住所
- 氏名
- 連絡先
- 該当箇所の情報(掲載されているURL/掲載されている情報/侵害されたとする権利/権利が侵害されたとする理由)
- 著作権侵害の場合以下の各情報(申立者が著作権者、あるいはその代理人である事が確認できる資料/権利侵害の確認可能な方法/著作権等の保護期間が経過していることを窺わせる事情が存在する場合は、保護期間内である事を裏付ける証拠/申立者が発信者に対して権利許諾をしていない旨の記述)
- 送信防止措置を希望する意思表示
- 発信者への氏名開示の可否
- 申立内容の公開の可否
個人情報をすべて明かすことが求められていますし、「侵害されている情報についての各情報」や「著作権侵害の場合以下の各情報」の記述内容は、かなりのボリュームになります。
しかも、申し立て内容に不備があれば、株式会社はてなは被害者側に、あらためて申し立てをするよう求め、その求めから7日以内に再度の申し立てがなければ、株式会社はてなは損害賠償請求を負わない、としています。
こうした手続きをクリアできても、株式会社はてなが問題があるブログ記事を削除するのは、不当な権利侵害が行われたと信じるに足りる相当の理由があった場合か、はてな利用規約に違反すると判断した場合だけです。いずれも同社の判断によって決まるので、確実に削除される保証はないと言わざるを得ません。
4-2.早期の削除には弁護士の力を借りよう
はてなブログの誹謗中傷記事による被害を最小限にとどめるためにも、そして確実に問題の記事を削除させるためにも、弁護士の力を借りることは有効です。
インターネットの権利関係に強い弁護士であれば、株式会社はてなの削除に関する権限を持つ者に直接アプローチすることができます。弁護士はブログ運営会社が対応すべきことを熟知しているので、それを株式会社はてなに求めることができます。
株式会社はてなは、弁護士の登場によって被害の深刻さを理解するでしょう。
ブログの虚偽や事実無根の記事は閲覧者が増えるほど、信頼性が増し、拡散すると嘘か誠かの判断は重要でなくなり、「誹謗された人」「中傷された企業」だけが事実として残ってしまいます。
そうならないためにも、早めに弁護士にご相談ください。
監修者
野口 明男(代表弁護士)
開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。
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