デジタルタトゥーとは、インターネット上に一度公開された情報が長期間残り続ける状態を指します。軽い気持ちで投稿した写真や動画、発言、逮捕報道、誹謗中傷などが検索結果やSNS、まとめサイトを通じて拡散され、就職・転職、結婚、人間関係などに影響を与えることがあります。
投稿者が削除しても、第三者によって転載されたりスクリーンショットといった形で情報が残り続けるケースは少なくありません。こうしたデジタルタトゥーのリスクは有名人だけの問題ではなく、一般人にも起こりうるものです。
この記事では、デジタルタトゥーの有名な事例・事件を紹介したうえで、なぜ消えないのか、どのような法的リスクがあるのか、被害に遭った場合の対処法までわかりやすく解説します。
デジタルタトゥーとは何か

デジタルタトゥーとはそもそもどのような状態のことなのでしょうか。まず、デジタルタトゥーの意味について解説します。
デジタルタトゥーとは何か
デジタルタトゥーとは、一度、インターネット上に流した、または、流された発言や画像、動画などが長期間にわたって残ってしまうことをいいます。たとえ、 元の投稿を削除したとしても、第三者がスクリーンショットなどで保存していたり、保存した情報を別のサイトに転載したりすると、情報は残り続けます。
そして、デジタルタトゥーは単に「ネット上に何かが残ること」を指すのではなく、投稿や報道、画像、動画などが本人の意思に反して長期間残り続け、現実の生活に影響を及ぼす状態でもあります。
ここで問題となるのは、本人にとって忘れたい過去や、すでに終わった出来事であっても、ネット上で容易に掘り起こされてしまう点です。過去の発言や、トラブル情報が残ることで生活上の不利益につながるケースもあります。
どうして情報が残ってしまうのか
デジタルタトゥーとして情報が残ってしまう理由は、一度、拡散された情報があらゆるところで保存されてしまうからです。
元の投稿を消したとしても、スクリーンショットなどで保存されていたものが、再度投稿されてしまうこともあります。そして、再投稿されたものがさらに別の第三者によって保存されるというケースもあります。
スマートフォンやPCで簡単に情報を保存できるため、一度、拡散されたものをなかったことにすることは現実的に不可能です。
デジタルタトゥーの有名な事例・事件

デジタルタトゥーは実際の炎上や事件を通じて社会に知られるようになりました。特にSNSが普及しはじめてからは、不適切な投稿や動画は強烈なインパクトがあることもあって、瞬く間に拡散され、本人や勤務先、家族にまで大きな影響を与えるケースも増えています。
バイトテロ事件
いわゆるバイトテロとは、アルバイト従業員などが勤務先での不適切な行為を動画や画像にして、その様子をSNSに投稿して炎上する事例を指します。例えば、食品を不衛生に扱う、店舗設備で遊ぶ、悪ふざけを撮影して公開するといった行為です。
こうした投稿は、本人の軽率な行動として批判されるだけでなく、勤務先の信用を大きく損なうものとなります。こうした投稿は削除しても、ニュース記事やまとめサイトに残ることで、長く検索可能な状態が続くことがあります。
迷惑行為動画
飲食店や公共交通機関、商業施設などでの迷惑行為動画も、デジタルタトゥーの代表的な事例といえるでしょう。本人にとってはちょっとした悪ふざけのつもりで撮影された動画ですが、これがSNSで拡散されると、短時間で多くの人に共有され、本人の氏名や学校、勤務先などが特定されることがあります。
迷惑行為動画はインパクトが強く、炎上しやすいため拡散速度が非常に速い傾向があります。元動画が削除されても切り抜き動画や静止画が出回り、別のプラットフォームに再投稿されて情報が長期間残ることもあります。
リベンジポルノ
交際相手や元配偶者などが、私的に共有されていた性的な画像や動画を無断で公開するという、リベンジポルノはデジタルタトゥーで最も深刻な被害のひとつといえるでしょう。
バイトテロなどの迷惑行為とは異なって、被害者に落ち度がないにもかかわらず性的な動画や画像がデジタルタトゥーとして残ることで精神的苦痛も大きくなります。
特に性的な画像や動画は、一度流出すると完全な削除が極めて難しく、海外サイトや匿名掲示板などにも広がりやすいというリスクがあります。こうした被害の深刻さから、単なる炎上や拡散とは異なり、重大な権利侵害として早急な対応が必要です。
デジタルタトゥーの怖さ
デジタルタトゥーは、単にネット上に情報が残るというだけでなく、本人の社会的評価や日常生活にまで影響を与え、しかも完全に消し去ることが難しいというものです。
ここでは、デジタルタトゥーがなぜ深刻な問題になりやすいのかを解説します。
急速に拡散される
SNSなどでは、問題のある投稿や動画は短時間で拡散されやすい傾向があります。インパクトが強いため注目を集めやすく、瞬く間に拡散されてしまいます。
SNSの設計上、リポストや引用で拡散範囲が一気に広がるため、投稿者本人が問題の大きさに気づいたときにはすでに多数の人が情報を保存していることもあります。
また、インターネット上の拡散は時間差で再燃するケースもあります。一度落ち着いた話題であっても、別のタイミングで再び注目されてしまうこともあるのです。
社会的なダメージ
デジタルタトゥーによって生じる社会的ダメージは小さくありません。それは、単に本人の印象が悪くなったり白い目で見られたりするというものではなく、社会的な信用問題にもつながることがあります。
また、本人だけでなく家族や関係者にまで問い合わせや中傷が及ぶこともあり、問題が周囲にも広がるケースがあります。
精神的なダメージ
忘れたい過去の出来事や、投稿、画像がデジタルタトゥーとして残り続けることは、本人にとって強い精神的負担になります。すでに反省している出来事であっても、何年も前の情報が繰り返しネットに投稿されることで、不安や恐怖を感じたり、抑うつ状態につながることがあります。
これは、単なる不快感や嫌悪感にとどまらず、日常生活や仕事に支障を来すケースもあります。
デジタルタトゥーでどんな不利益が想定されるのか

デジタルタトゥーは、本人の生活や、場合によっては人生にさまざまな不利益をもたらすおそれがあります。とくに、就職や転職、結婚、人間関係のように、相手からの信用や評価が重視される場面で影響が表れることがあります。
ここでは、デジタルタトゥーによってどんな不利益が想定されるかを確認しましょう。
就職・転職・結婚などでの不利益
採用選考や転職活動では、応募者の名前をネット検索することもあるかもしれません。そして、その際に過去の炎上、迷惑行為、トラブル投稿などが見つかれば、人物評価に影響する可能性はあります。たとえ現在すでに解決した事案であっても、不信感をもたれやすい情報であることは間違いありません。
また、結婚や交際といった場面でも、過去の投稿や報道が相手やその家族に見つかることで、関係が悪化したり、反対されたりすることがあります。
このように、デジタルタトゥーは、将来の選択肢を狭めるリスクをはらんでいるのです。
嫌がらせや誹謗中傷
デジタルタトゥーとして残ってしまった情報をきっかけに、嫌がらせや誹謗中傷を受けるリスクもあります。SNSアカウントへの攻撃的なコメント、匿名掲示板での攻撃、勤務先や家族への嫌がらせなど、被害の形はさまざまです。
一度拡散された情報が消えずに残るということは、攻撃の対象にされやすいということでもあります。
デジタルタトゥーは法的にどんな問題があるのか

デジタルタトゥーは、法的な権利侵害を伴うことがあります。状況によっては、名誉毀損や侮辱、プライバシー侵害、肖像権侵害などに該当する可能性があります。
そのため、被害を受けた場合には、問題点を整理したうえで対応することが重要です。
名誉毀損・侮辱・プライバシー侵害
ネット上の誹謗中傷で社会的評価を低下させる場合には名誉毀損が成立する可能性があります。また、具体的な事実を示さずに人格を攻撃するような表現であっても、侮辱罪にあたる可能性があります。
さらに、私生活上の情報や本人が公開を望まない情報を無断で広める行為は、プライバシー侵害となることがあります。例えば、住所、交際歴、病歴、家族の情報などが勝手に公開されるケースではプライバシーの侵害が問題になるでしょう。
肖像権侵害・著作権侵害・個人情報保護
本人の顔写真や動画を無断で公開・拡散した場合は、肖像権が問題になることがあります。そして、他人が撮影した写真や書いた文章、動画などを無断転載した場合には、著作権侵害が生じる可能性があります。
こうした行為は重大な権利侵害となる場合もあります。情報の内容や公開の態様によっては、民事責任だけでなく刑事上の問題が関係することもあります。
個人で情報を保存しているだけでは法的な問題にはなりづらい
デジタルタトゥーが長期間残る理由のひとつに「個人が情報を保存している」という点があげられます。スクリーンショットなどで保存されたデータが、個人のスマートフォンやPCに保管され、それが保管され続けているというケースは少なくありません。
ですが、個人で情報を保存しているだけであれば法的な問題にはなりづらいのが現実です。その情報を公開した場合は、前述した法的な問題が発生する可能性がありますが、個人で保存しているだけの状態であればどうすることもできません。
デジタルタトゥーの対処法

デジタルタトゥーは自然に消えていくことを期待して放置するべき問題ではありません。被害がある場合にはできるだけ早い対応が重要です。もちろん、感情的になるのではなく、証拠を確保し、どこに何が残っているのかを整理したうえで適切に対処する必要があります。
ここでは、デジタルタトゥーへの対応方法を紹介します。
削除依頼をする
デジタルタトゥーとして残っている情報を見つけた場合は、まず、投稿先や掲載先への削除依頼をします。SNS運営会社、掲示板管理者、まとめサイト運営者、検索エンジンなどに対して、問題のある情報の削除を求めるというものです。
削除依頼をする前には、どの投稿が問題なのか、どのような権利侵害があるのかを整理し、URLやスクリーンショットなどの証拠を準備しておくことが大切です。
ただし、削除依頼には強制力がないため、削除に応じてもらえるかどうかは相手の対応によります。また、削除依頼をしても対応や返答がされるまでに時間がかかることもあるため早期対応が求められます。
弁護士や警察に相談する
デジタルタトゥーでの被害が深刻な場合や、自力での対応が難しい場合、そして、誹謗中傷や名誉毀損などの法的な問題が発生しているという場合は、弁護士や警察への相談を検討すべきです。たとえば、誹謗中傷、脅迫、リベンジポルノ、個人情報の無断公開などは、法的措置が必要になることがありますし、刑事告訴、被害届の提出も検討対象になります。
弁護士に相談すれば、削除請求、発信者情報開示請求、損害賠償請求などの対応方針を整理しやすくなります。警察への相談が適切なケースもあるため、被害の内容に応じて窓口を選ぶことが重要です。
まとめ

デジタルタトゥーは、有名人の炎上や大きな事件に限ったものでありません。一般人であっても何気ない投稿から生じる可能性があるリスクです。そして、一度ネット上に拡散された情報は、削除しても転載や検索結果を通じて残り続けることがあり、人間関係・社会的評価に大きな影響を及ぼします。
また、デジタルタトゥーには、名誉毀損やプライバシー侵害などの法的問題が関わることもあります。デジタルタトゥーで被害を受けた場合は、証拠を確保したうえで、削除請求や法的手段など適切な対応を検討することが大切です。
もし過去のデジタルタトゥーで悩みを抱えているという場合は、弁護士法人アークレスト法律事務所にご相談ください。





