マッチングアプリの相手が「なりすまし」だった・自分の写真を勝手に使われたときの対処法を弁護士が解説

マッチングアプリで知り合った相手に勧められて投資をしたら、連絡が取れなくなった。独身だと言っていた交際相手が、実は結婚していた。知らないうちに、自分の写真を使った偽のプロフィールがアプリに登録されていた。マッチングアプリが出会いの場として広がる一方で、こうした「なりすまし」の被害も増えています。

結論からいえば、相手がなりすましだった場合は、詐欺なら口座の凍結などで被害の回復を目指せることがあり、既婚者の独身偽装なら慰謝料を請求できる可能性があります。自分の写真を勝手に使われた場合も、削除を求められます。

この記事では、マッチングアプリのなりすまし被害を「相手がなりすましだった場合」と「自分がなりすまされた場合」に分けて、取れる手段と、被害にあったときにまずすべきことを、弁護士がわかりやすく解説します。

マッチングアプリのなりすまし被害でお悩みの方へ

詐欺の被害も、偽のプロフィールも、時間がたつほど対応が難しくなります。ひとりで抱え込まず、早めにご相談ください。
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目次

結論|「なりすまし」の被害は2種類。まずどちらかを確認する

マッチングアプリの「なりすまし」には、大きく2つの被害があります。

  • 相手がなりすましだった:偽の写真や身分で近づかれ、投資や暗号資産の詐欺にあった、既婚者に独身だと偽られて交際した
  • 自分がなりすまされた:自分の写真や名前を勝手に使われ、偽のプロフィールを作られた

どちらの場合も、まず相手のプロフィールややり取りの画面を保存し、証拠を残すことが大切です。詐欺でお金を振り込んだ場合は、すぐに振込先の金融機関と警察に連絡してください。早く動くほど、取れる手段が広がります。

マッチングアプリのなりすまし被害の実態

マッチングアプリは、いまや一般的な出会いの手段です。こども家庭庁の2024年の調査では、直近5年以内に結婚した人の出会いのきっかけは、マッチングアプリが25.1%で最も多くなっています。

その一方で、アプリが詐欺の入口になっています。警察庁によると、2025年のSNS型ロマンス詐欺は5,645件、被害額は546.4億円にのぼりました。

  • 犯人と最初に接触したツールは、マッチングアプリが32.7%で最も多い(Instagram、Facebookを上回る)
  • 被害にあったときの連絡ツールは、LINEが93.8%
  • 被害者は男性が約6割で、40〜60代が中心

「アプリで知り合い、すぐにLINEに誘われ、投資を勧められる」という流れが典型です。2026年9月には、副業として約280人の女性をマッチングアプリに登録させ、男性のLINEのIDを集めていたとされるグループが、詐欺の疑いで逮捕されたと報じられています。

【相手がなりすましだった】ロマンス詐欺・投資詐欺の場合

よくある手口

ロマンス詐欺では、犯人は魅力的な写真や肩書きを使って近づき、すぐにLINEなどアプリの外でのやり取りに誘います。親しくなったところで、次のような話を持ちかけてきます。

  • 「一緒に将来のために資産を増やそう」と、投資や暗号資産のサイトに誘導する
  • 「最初は少額で」と小さな利益を見せ、追加の入金を求める
  • 「出金するには税金や手数料が必要」と、さらにお金を払わせる

警察庁の統計では、2024年のロマンス詐欺で、お金を求める名目は「投資」が73.1%を占めました。会ったことのない相手から投資を勧められたら、詐欺を疑ってください。

お金を取り戻せるか

ロマンス詐欺などの被害に遭ってしまった場合、その被害金の取り戻しは、たとえ弁護士に依頼しても取り返せる可能性が非常に低いことが通常であり、弁護士費用をかけて被害金を取り戻すことは費用倒れになってしまう可能性が高いです。そのため、よほど特殊な事情でもない限り、被害金の取り戻しは諦めざるを得ないのが実情です。振込め詐欺救済法による救済手続が制度としては整備されているものの、詐欺師が被害金をいつまでも銀行口座に入れたままにしておくとは考えにくく、実効的な対処ではありません。

被害金を取り戻せず悔しい気持ちは弁護士も十分理解しており、なんとかお力添えできることは力を尽くしたいのですが、取戻しそれ自体よりも、相手を刑事告訴するなどして懲役などの制裁を与えることが弁護士の役割となります。

【相手がなりすましだった】既婚者の独身偽装・身分の偽りの場合

慰謝料を請求できる

結婚していることを隠し、独身だと偽って交際した場合、相手は、交際するかどうかを自分で決める権利(貞操権)を侵害したとして、慰謝料を支払う責任を負うことがあります。報道によると、マッチングアプリで知り合った相手の独身偽装をめぐり、次のような判決が出ています。

  • 2025年12月・東京地裁:婚姻歴を尋ねられて独身と答え、約4か月交際した男性に、約150万円の支払いを命じた(被害者の適応障害の発症なども考慮)
  • 2026年7月・名古屋地裁:結婚の意思を示していた男性に、121万円の支払いを命じた

慰謝料の額は、交際の期間や、結婚を約束していたか、妊娠や心身への影響があったかなどによって変わります。

相手を特定するには

慰謝料を請求するには、相手の本名と住所を知る必要があります。LINEのIDしか分からない場合、相手を特定するのは難しいのが実情です。一方、相手の電話番号や住所が分かっていれば、請求できるケースがあります。

たとえば、携帯電話の番号が分かれば、弁護士が弁護士会を通じて携帯電話会社に契約者の情報を照会し(弁護士会照会)、本名や住所が判明することがあります。交際中に知った勤務先や車のナンバーなども、手がかりになることがあります。

SNSでさらすのは逆効果

裏切られた怒りから、相手の名前や写真をSNSに投稿したくなるかもしれません。しかし、内容が事実であっても、相手の社会的評価を下げる投稿をすれば、名誉毀損として逆に損害賠償を求められるおそれがあります。相手の責任は、法的な手続きで問うようにしましょう。

【自分がなりすまされた】写真や名前を勝手に使われた場合

何の権利の侵害になるか

自分の写真を勝手に使われると、肖像権の侵害を思い浮かべるかもしれません。ただ、裁判例では、本人が自らSNSで公開していた写真を使われただけでは、肖像権やプライバシーの侵害が否定されたものがあります(大阪地裁平成28年2月8日判決)。

一方で、なりすましたアカウントで、本人の評判を落とすような言動をした場合は、名誉権や肖像権の侵害が認められた裁判例があります(大阪地裁平成29年8月30日判決)。なりすましによって本人になりきること自体についても、「アイデンティティ権」の侵害として法的に保護されうると言及した裁判例がありますが、それだけで侵害を認めた例は見当たりません。

つまり、偽のプロフィールで何をされたか(性的な内容や、本人の評判を落とす内容が書かれていないか、他人をだますのに使われていないか)によって、取れる手段が変わります。

削除と投稿者の特定

まずは、偽のプロフィールの画面を保存したうえで、アプリの通報機能や問い合わせ窓口から、なりすましであることを伝えて削除を求めます。本人確認書類の提出を求められることもあります。

偽のプロフィールを作った人物を特定し、損害賠償を求めるには、アプリの運営会社に投稿者の情報の開示を求める裁判所の手続きが必要になります。ただ、マッチングアプリのプロフィールは会員しか見られず、やり取りも1対1が中心であるため、開示の手続きが使えるかどうかはケースによります。対応の見通しは、弁護士にご確認ください。

XやFacebookでのなりすましについては、当事務所のコラム「X(旧Twitter)のなりすましの見分け方と通報方法|詐欺アカウントの特徴を弁護士が解説」「『なりすまし』とは何か?被害の現状と通報方法~フェイスブック編」でも解説しています。

被害にあったときにまずすること

証拠を保存する

  • 相手(または偽のアカウント)のプロフィール画面、アプリ内のIDや表示名
  • アプリやLINEでのやり取りの画面(相手のLINEのIDや電話番号が分かる画面)
  • 振込の明細、送金した暗号資産の取引記録、案内された投資サイトのURL

相手がアカウントを消すと、プロフィールややり取りが見られなくなることがあります。気づいたらすぐに、スクリーンショットで保存してください。

アプリに通報する

アプリの通報機能で、なりすましや詐欺の疑いがあることを運営会社に伝えます。ほかの利用者の被害を防ぐことにもつながります。

警察・金融機関・相談窓口に連絡する

  • お金を振り込んだ場合:すぐに振込先の金融機関と警察に連絡し、口座の凍結を求める
  • 警察相談専用電話「#9110」、各都道府県警察のサイバー犯罪の相談窓口
  • 消費者ホットライン「188」:投資の勧誘などのトラブルを相談できる
  • 違法・有害情報相談センター、法務局の人権相談:なりすましのプロフィールの削除について相談できる

弁護士に相談するメリット

  • 独身偽装について、慰謝料を請求できるか、見込める金額を判断できる
  • 電話番号などから、弁護士会照会などで相手の特定を目指せる
  • 相手との交渉や裁判の手続きを任せられ、直接やり取りする負担がなくなる
  • なりすましのプロフィールの削除や、投稿者の特定の手続きを任せられる

よくある質問(FAQ)

本人確認済みのアプリなら、なりすましの心配はありませんか?

マッチングアプリは出会い系サイト規制法の対象で、18歳未満でないことの確認が義務づけられていますが、独身かどうかまで確認する義務はありません。本人確認済みであっても、写真や職業、婚姻歴などのプロフィールが本当かどうかは分かりません。会ったことのない相手から投資を勧められたら、詐欺を疑ってください。

LINEしか知らない相手にも、慰謝料を請求できますか?

LINEのIDだけでは、相手の本名や住所を特定するのは難しいのが実情です。電話番号や住所、勤務先など、ほかに分かっている情報があれば、特定できる可能性があります。どの情報があれば請求できるかは、弁護士にご相談ください。

ロマンス詐欺の被害を警察に相談したら、動いてくれますか?

詐欺は犯罪なので、警察に被害を相談し、被害届を出すことができます。振り込んだ口座を凍結するためにも、警察と金融機関への連絡は早いほど効果的です。やり取りの画面や振込の明細を持参すると、相談がスムーズです。

「詐欺の被害金を取り戻せる」という業者に頼んでも大丈夫ですか?

注意が必要です。被害の回復をうたって費用を払わせ、何もしない、あるいは連絡が取れなくなるといった二次被害が起きています。弁護士でない者が報酬を得て、被害の回復のための交渉などを行うことは、法律で禁じられています。相談する際は、相手が弁護士かどうかを確認してください。

自分の写真を使った偽のアカウントを見つけたら、どうすればいいですか?

まず、偽のアカウントのプロフィール画面を保存し、アプリの通報機能で削除を求めてください。偽のアカウントで誰かをだましたり、あなたの評判を落とすような言動がされたりしている場合は、投稿者の特定や損害賠償の請求を検討できることがあります。

まとめ

マッチングアプリのなりすまし被害には、相手がなりすましだった場合と、自分がなりすまされた場合があります。ロマンス詐欺では、銀行振込なら口座の凍結で被害の回復を目指せることがありますが、暗号資産は取り戻すのが極めて困難です。既婚者の独身偽装では、慰謝料の支払いを命じた判決があり、相手の電話番号や住所が分かれば請求できるケースがあります。自分の写真を勝手に使われた場合は、アプリに削除を求めましょう。

どの場合も、相手のプロフィールややり取りを保存し、お金を振り込んだらすぐに金融機関と警察に連絡することが大切です。

相手の特定や慰謝料の請求、偽のプロフィールの削除でお困りの方は、弁護士にご相談ください。

野口 明男 弁護士

監修者

野口 明男(代表弁護士)

開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。