逮捕ニュース削除の判断基準と方法|記事本体・検索結果を消すには

逮捕された事実が実名で報道され、その記事が削除されずインターネット上に残り続けると、半永続的に不特定多数の人に逮捕歴を知られることになりかねません。そうなると、就職や結婚など、社会生活上の様々な場面で支障をきたすこともあるでしょう。

しかし、逮捕記事は状況により、削除できることがあります。

今回は、逮捕記事を削除できるかどうかの判断基準と、削除する方法を弁護士が分かりやすく解説します。

目次

検索結果に逮捕記事が残る「現実的な被害」

「昔のことだから大丈夫だろう」と放置していると、以下のような深刻な不利益が生じるリスクがあります。

  • 就職・転職への影響: 採用時の「コンプライアンスチェック(リファレンスチェック)」で実名検索され、内定取り消しや不採用の原因となる。
  • 信用情報の毀損: 賃貸契約の入居審査や、住宅ローンの審査において、ネガティブ情報として参照され、契約を断られる可能性がある。
  • 結婚・家族への影響: 婚約者の家族が検索し、破談になる。または子供がいじめの対象になる。

ネット上の逮捕記事は削除できる?

【前提】逮捕記事の削除には2つの異なる対処がある

「ネット上の逮捕記事を消したい」と一口に言っても、削除には2つの異なる対処があります。どちらを目指すかで依頼先・手続・成功可能性が大きく変わるため、最初に違いを押さえておくことが重要です。

対処の種類 内容 依頼先 効果と限界
① 記事本体の削除 逮捕記事を掲載している媒体(新聞社サイト・ニュースサイト・まとめサイト等)から、記事そのものを削除してもらう 記事を掲載しているサイトの管理者(運営会社・編集部・問い合わせ窓口) 完全削除が可能。ただし報道機関は社会の知る権利を理由に応じない場合が多く、ハードルは高い
② 検索結果の削除 記事自体は媒体に残ったまま、Google等の検索エンジンの検索結果から表示されないようにしてもらう 検索エンジン運営会社(Google・Yahoo!等) 検索結果からは見つけにくくなるが、元記事は残存。直接URLや別経路でアクセスは可能

①は元データそのものに対するアプローチで、②は「検索で見つけられる範囲」を狭める対処です。どちらかを単独で進めることもありますが、被害の状況によっては両方を併用するケースもあります。

関連記事:犯罪歴が就職に及ぼす影響や支援制度について徹底解説

実名による逮捕記事は個人のプライバシー権等を侵害するものであるため、削除を請求できます。 ただし、実名報道の逮捕記事を公表することには一定の公益性もあるため、報道機関等の表現の自由も尊重されます。

プライバシー権と表現の自由は、どちらも憲法で保障された基本的人権です。両者の利益が衝突する場合にどちらが優先されるかは、記事の内容など様々な事情を考慮し、ケースバイケースで判断されます。

削除可否を決める「公共性・公益性・真実性」

削除判断において重要となるのが、以下の3つの要素です。

  • 対象者の属性:一般私人か、著名人や公人か
  • 対象者側の当該情報保護に対する期待:プライバシー情報の中でもセンシティブなものか、抽象的か具体的か
  • 公共性:表現内容が社会の正当な関心事であるか

個別の事案において、これらの要素を検討してもなお、 「公表されない利益(プライバシー保護)」の方が優先されると認められる場合 には、ネット上の逮捕記事を削除することが可能です。

逮捕記事を削除できるかどうかの判断基準

逮捕された事実の性質及び内容

逮捕された事件の内容が重大犯罪や社会的な関心が高いものであるなど、公共の利害の関わりの程度が大きい場合には、投稿を一般の閲覧に供し続ける理由が優越する一つの根拠になるでしょう。

一例として、凶悪で残忍な殺人事件や、巨額の脱税や横領などの事案などが挙げられます。

一方で、 少額の窃盗や一般人同士の喧嘩による軽微な傷害事件など、軽微な犯罪事実に関する事案 では、逮捕事実を公表されない法的利益が優越する根拠の一つとなるでしょう。

記事の目的や意義

逮捕記事が公表される場合、その目的や意義は様々に異なることがあります。 ニュース記事でも速報的なものであったり、SNSや掲示板サイトなどで興味本位に拡散する目的で投稿されたものであったりする 場合は、逮捕事実を公表されない法的利益が優越する根拠の一つとなるでしょう。

令和4年6月24日の最高裁判決では、問題となったX(旧Twitter)の投稿が速報的なものであり、長期間にわたって公表され続けることは想定されていないことを逮捕事実を公表されない法的利益が優越する根拠の一つとしています。

記事が伝達される範囲

逮捕記事の内容が拡散される範囲が広いことは、逮捕事実を公表されない法的利益が優越する根拠の一つとなるでしょう。

具体的被害の程度

記事の公表によりどの程度、具体的な被害を生じたのかも、考慮事情の一つとなっています。

対象者が逮捕歴や犯罪歴を知られたことで仕事や家族を失うなど、実害が生じている場合 には、逮捕事実を公表されない法的利益が優越する根拠の一つとなるでしょう。

本人の社会的地位や影響力

対象者の社会的地位が公的立場であるかどうかも、考慮事情の一つとなっています。

政治家や警察官などの公務員や教員など公的立場の人が起こしたとされる事件の情報は、公益性が高く、投稿を一般の閲覧に供し続ける理由の一つとなるでしょう。

一方で、会社員や自営業者のように一般私人で、公的立場にはない人が起こしたとされる事件については、逮捕事実を公表されない法的利益が優越する根拠の一つとなるでしょう。

投稿がなされた時の社会的状況とその後の変化

逮捕からどれくらいの時間が経過したかという点も、重要な事情です。長期間経過するほど、公共の利害の関わりの程度が小さくなり、逮捕事実を公表されない法的利益が優越する根拠の一つとなるでしょう。

これを「 時の経過による公益性の減衰 」といいます。逮捕直後は報道価値があっても、刑の執行を終え更生している段階になれば、社会がその情報を共有し続ける必要性は薄れ、個人の「更生する権利」や「忘れられる権利」が優先されるようになります。

上記最高裁判例では、逮捕から約8年が経過し、刑の言い渡しはその効力を失っており、ツイートに転載された報道記事も既に削除されていたことなどから、公共の利害との関わりの程度は小さくなってきているとされています。

削除できる可能性が高いケース・低いケースの比較

上記の判断基準を実務に当てはめると、以下のように分類できます。

削除が認められやすいケース 削除が困難なケース
・不起訴処分(嫌疑不十分・起訴猶予)になった ・無罪判決が確定した ・執行猶予期間が満了した ・刑の執行終了から5〜10年以上経過している ・未成年の時の犯罪(少年法適用) ・軽微な犯罪(痴漢、盗撮、万引き等) ・誤認逮捕であった ・実刑判決を受け、現在も服役中 ・政治家、公務員、大企業の役員など公的立場 ・殺人、強盗、巨額詐欺などの重大犯罪 ・社会的に耳目を集めた歴史的事件 ・逮捕から間もない(数ヶ月〜1年程度)

【媒体別】削除の難易度マップ

一口に「ネット記事」といっても、掲載されているサイトの種類によって削除のアプローチと難易度は大きく異なります。

媒体の種類 削除難易度 特徴と対策
大手新聞社・TV局 ニュースサイト 「報道の自由」と「記録の保存」を強く主張するため、任意の削除要請に応じることは稀です。基本的には半年〜1年程度で自動的に記事が消えるのを待つか、Google検索結果からの削除(インデックス削除)を目指します。
匿名掲示板 (5ch, 爆サイなど) サイトごとの削除ガイドラインが存在します。逮捕から時間が経っていなくても、「個人情報の晒し」として削除されるケースがあります。
まとめサイト・個人ブログ アフィリエイトサイト 低〜中 PV稼ぎ目的の転載記事が多く、公益性の主張が弱いため、弁護士からの通知で比較的スムーズに削除に応じることが多いです。サーバー管理会社への送信防止措置依頼も有効です。
SNS (X, Facebookなど) 投稿ポリシー違反による通報や、最高裁基準に照らした削除請求を行います。拡散性が高いため、早急な対応が必要です。

弁護士に依頼する前に|自力で管理人に削除依頼を出すときのポイント

内容が比較的軽微な記事や、被害の程度がそれほど深刻でないケースでは、まず自力でサイト管理者に削除依頼を出すことから始める選択肢もあります。自力依頼を行う際に押さえるべきポイントは以下のとおりです。

ポイント 内容
① 削除を求める法的根拠を明示する 「不快だから消してほしい」では応じてもらえない可能性が高い。「名誉毀損」「プライバシー侵害」「肖像権侵害」など、該当する権利侵害の類型を明示し、どの記述・画像が問題かを具体的に特定して伝える
② 削除を希望する記事・URL・該当箇所を具体的に指定する 記事タイトル・URL・該当する記述部分(「○行目の××という表現」等)を明確に指定する。あいまいな指示では削除対象が伝わらず却下されやすい
③ 返信期限を設定し、応答がなければエスカレーション 「○月○日までにご回答をお願いします」と期限を示す。返答がない場合は、弁護士相談や仮処分申立てへのエスカレーションを検討する
④ やり取りはすべて記録に残す 送信した削除依頼文・受領メール・サイト管理者からの返信は、後の法的手続で証拠となる可能性があるため、すべて保存しておく

自力での削除依頼は、媒体側が比較的柔軟に対応してくれる小規模サイト・個人ブログ・まとめサイトでは奏功するケースがあります。一方、大手報道機関・大規模プラットフォームでは応じてもらえない場合が多く、その場合は弁護士による交渉(次のSTEP2以降)へ移行する必要があります。

逮捕記事の削除依頼・解決までの流れ

関連記事:実名報道は削除依頼できる?逮捕歴や前科の情報を消す4つの方法

実際に削除を進める場合の実務的なステップは以下の通りです。

STEP1:証拠の保全

記事のURL、掲載内容(スクリーンショット)、投稿日時、サイト運営者の情報などを記録します。

STEP2:弁護士による交渉(削除依頼)

サイト運営者に対し、法的根拠に基づいて削除を依頼します。 弁護士に対応を依頼し、法的観点から削除の必要性や、削除を求める法的根拠などを説明してもらうことで、スムーズに削除してもらえる可能性が高まります。

STEP3:裁判(仮処分・訴訟)

交渉により逮捕記事を削除できなかった場合は、裁判手続を検討することになります。

訴訟には時間がかかりますが、速やかに進めることができる裁判手続として、「仮処分の申立て」というものがあります。

仮処分は、訴訟など正式な裁判による解決を待たず、現に生じている損害や急迫の危険を回避するために一定の権利関係を暫定的に形成するものです。裁判所が申立てを認容すると、サイト運営者等に対して、逮捕記事の削除を命ずる仮処分命令を発令します。

STEP4:削除できない場合の「逆SEO対策」

報道機関の記事など、どうしても法的な削除が難しい場合や、削除までの期間のつなぎとして有効なのが「逆SEO」です。 これは記事そのものを消すのではなく、 Google等の検索結果の順位を下げる手法 です。本人の公式サイトやSNS、インタビュー記事など、ポジティブな情報を新たに作成・上位表示させることで、ネガティブ記事を2ページ目以降に追いやります。

弁護士による法的な「削除」と、Web技術による「逆SEO」を併用することで、社会復帰への障害を最小限に抑えることができます。

逮捕記事の削除依頼は弁護士に相談を

関連記事:逮捕歴を履歴書に書かなければいけないケースを分かりやすく解説

逮捕記事が公表されてしまうと、SNSやブログなどで拡散されてしまうため、仕事や日常生活に多大な支障をきたす恐れがあります。

ただ、個人で削除請求をしても、サイト運営者等から表現の自由などを理由として、任意には削除してもらえないことも珍しくありません。

そんなときには、弁護士を通じて対応してもらうことにより、削除されることがあります。なるべく早いうちに、インターネットトラブルに精通した弁護士に削除請求を依頼することをおすすめします。

弁護士法人アークレスト法律事務所には、インターネットトラブルを解決に導いてきた実績が豊富にございます。逮捕記事を公表されてお困りの方は、お気軽にご相談ください。

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よくある質問(FAQ)

不起訴になりましたが、記事は自動で消えますか?

自動では消えません。不起訴になったという事実は、警察発表と異なり報道機関が積極的に報じないケースが多いため、逮捕記事だけが残り続けることがよくあります。「不起訴処分告知書」を証拠として提出し、早急に削除依頼を行うべきです。

前科がつくと一生消せませんか?

いいえ、前科があっても削除は可能です。一定期間(刑の終了から5〜10年程度)が経過すれば、公表されない利益が上回ると判断される傾向にあります。

削除依頼をすると、逆に拡散されませんか?

感情的なクレームを入れると、掲示板等で晒されて炎上するリスクがあります。しかし、弁護士が法的根拠に基づいて冷静に事務的に手続を行う場合、そのようなリスクは最小限に抑えられます。

野口 明男 弁護士

監修者

野口 明男(代表弁護士)

開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。