ストーカー規制法

ストーカー規制法とは、「つきまとい」や「ストーカー行為」を禁止する法律です。待ち伏せや押し掛け、監視していると告げる行為や面会・交際の要求などの個別の行為が「つきまとい行為」であり、つきまとい行為に該当する行為を繰り返していると「ストーカー行為」となります。 つきまといの被害者が警察に相談すると、警察は加害者へつきまといをやめるよう警告します。しつこい場合には禁止命令が下されます。禁止命令に違反した加害者は処罰対象となりますし、ストーカー行為をしている場合にも処罰されます。 被害者が刑事告訴をして加害者への処罰を求めることも可能です。 ネットでもストーカー被害が発生するケースが多いので注意が必要です。

ストーカー規制法で規制対象とされる行為

つきまとい等

ストーカー規制法で規制対象とされる「つきまとい等」の行為は、特定の者への恋愛感情や好意の感情、またはそれが満たされなかったことに対して怨恨の感情を満たす目的で行われるもので、具体的には以下のような行為が挙げられます。

・つきまとい:被害者の居住地、勤務地、学校等に繰り返し現れることや、被害者の行動を追跡する行為。
・待ち伏せ:被害者が通常利用する場所で繰り返し待ち伏せる行為。
・無言電話・メールの送信:繰り返し無言電話をかけたり、メールやSNSを通じての連絡を行うこと。これには執拗なメッセージの送信も含まれます。
・脅迫的行為:著しく粗野又は乱暴な言動をすること。
・名誉毀損:被害者の名誉を害するような虚偽の情報を流布すること。
・物品の送付:著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物品を繰り返し送付すること。


上記の各行為は、被害者本人だけでなく、被害者の家族や友人、職場の同僚など、周囲の人々に対して行う場合にも規制の対象となります。

ストーカー行為

ストーカー規制法で規制対象とされる「ストーカー行為」とは、これらのつきまとい等を一度だけでなく何度も繰り返し行う行為を指しており、この「ストーカー行為」に該当した場合、加害者には後述する罰則が定められております。

ストーカー規制法の警告と接近禁止について

ストーカー規制法における「警告」と「禁止命令」は、ストーカー行為に対して警察が取りうる重要な法的措置です。これらの措置は、被害者の安全を保障し、つきまといやストーカー行為を抑止するために設けられています。

警告

警告は、つきまとい等が確認された初期段階で警察が加害者に対して行うことができる措置です。この警告は、加害者に対してその行為がストーカー規制法に違反していること、そしてその行為を直ちに止めるよう要求するものです。警告を無視してストーカー行為が続けられた場合、より厳しい法的措置がとられる可能性があります。

禁止命令

禁止命令は、つきまとい等が継続またはエスカレートしている場合に公安委員会が発令することができる命令です。

禁止命令の効力は、1年間と定められており、この命令に違反した場合、加害者は懲役刑や罰金刑の対象となる可能性があります。

ストーカー規制法の罰則と罰金について

ストーカー規制法においては、ストーカー行為や法令違反に対して具体的な罰則が設けられています。以下は、ストーカー規制法に基づく主な罰則です。

ストーカー行為に対する罰則

懲役刑:ストーカー行為を行った者には、最大で1年以下の懲役が科されることがあります。
罰金:同じく、罰金刑としては100万円以下の罰金が課されることがあります。

禁止命令違反の罰則

懲役刑:禁止命令に違反した場合、2年以下の懲役が科されることがあります。
罰金:また、200万円以下の罰金が課されることがあります。

ストーカー規制法の施行経緯

ストーカー規制法の施行は、1990年代の日本で起きたいくつかの重大なストーカー事件がきっかけとなっています。これらの事件では、特に女性が元恋人や知人により長期間追跡され、嫌がらせを受け続け、最悪のケースでは命を奪われるという悲劇が発生しました。これにより社会に大きな衝撃が与えられ、ストーカー行為を抑止し、被害者を保護する必要性が急速に高まりました。

この背景を受けて、「ストーカー行為等の規制等に関する法律」が急ぎ立法され、2000年に施行されました。この法律は、ストーカー行為を明確に定義し、警察が警告や禁止命令を出せるようにすること、重大な犯罪への発展を防ぐ措置を講じることを主な目的としています。

施行以降、社会状況の変化に応じて法律は何度か改正されており、インターネットを通じたストーカー行為や被害者のプライバシー保護など、さまざまな問題に包括的に対応する体制が整えられています。

弁護士の立場とストーカー規制法の支援

弁護士はストーカー規制法の適用と被害者支援において重要な役割を果たしています。弁護士は法的知識を持ち、具体的な支援を提供することで被害者の権利を保護し、法的措置を進めるための支援を行います。以下は、弁護士がストーカー規制法の下で行う主な活動です。

法的アドバイスの提供

弁護士は、ストーカー行為の被害者に対して、法的なアドバイスを提供します。これには、ストーカー行為の法的定義、被害者が取るべき法的手続き、必要な書類の準備などが含まれます。

法的措置の実施

被害者の代理として、弁護士は公安委員会に対して禁止命令の申請を行うことができます。また、法的措置が必要な場合には、裁判を通じて加害者に対する制裁を求めることもあります。

代理交渉

加害者との間での話し合いが必要とされる場合、弁護士は被害者の代理人として交渉を行うことができます。これにより、被害者が直接加害者と接触することなく、問題を解決できるよう支援します。

裁判所への同行支援

裁判所での手続きは、特にトラウマを受けた被害者にとっては困難な場合があります。弁護士は裁判や聴聞会への同行支援を提供し、被害者が法的プロセスを理解し、適切に対応できるようサポートします。

プライバシー保護

被害者のプライバシーを保護するため、弁護士は機密情報の管理と保護に関するアドバイスを行います。また、必要に応じて情報漏洩を防ぐための措置を講じることがあります。

被害者の心理的支援

弁護士は法的な支援のみならず、心理的な側面からのサポートの重要性を理解しており、適切なカウンセリングやサポートグループを紹介することがあります。

弁護士はこれらの活動を通じて、被害者が法的な権利を理解し、適切な保護と支援を受けるための重要な存在です。被害者が自分の状況を法的に最も有効に扱うための支援を行い、ストーカーからの回復を助け、再発防止に寄与します。