風評被害・誹謗中傷

新型コロナの風評被害対策~誹謗中傷・損害賠償の対応~

2020.04.01
新型コロナの風評被害対策~誹謗中傷・損害賠償の対応~

新型コロナウイルス感染症の蔓延により社会全体に不安が広がっています。ネット上のサイトやSNSでデマ情報が流れるリスクも高まっているので、各企業は「風評被害対策」に注意が必要です。

今回は新型コロナウイルス感染症関連で会社が風評被害を受けたときのリスクや対応方法について、ネット誹謗中傷トラブル対策に積極的に取り組んでいる弁護士が解説します。

1.新型コロナウイルス感染症関連の風評被害の例

新型コロナウイルス感染症関連の風評被害の例
新型コロナウイルス感染症に関連した風評被害の例として、以下のようなパターンが考えられます。

1-1.「コロナウイルスが流行った」という虚偽の情報を流される

ネット掲示板や口コミサイトなどで「〇〇社ではコロナウイルスに感染した従業員がいる」などと虚偽の投稿をされると、情報が広まって風評被害が発生するリスクが高まります。自社従業員が差別的な扱いを受けたり、自社商品・サービスが売れなくなってしまったりする可能性があります。

1-2.「コロナ対策をしていない」といわれる

SNSやブログ、口コミサイトなどで「〇〇社ではテレワークも導入しておらず、コロナ対策がまったくできていない」「ウイルスをまき散らしている」などと書き込まれると、企業イメージが低下して売上げが減少するおそれがあります。評判が低下すると新たな人材の採用も難しくなってしまうでしょう。

1-3.コロナと名のつく商標(社名、商品名、サービス名)の風評被害

コロナビール、大阪コロナホテル、コロナ(住宅設備メーカー)など、社名や商品名、サービス名に「コロナ」とついている場合、イメージが低下して風評被害に遭うリスクがあります。たとえばネットで自社名を検索したとき「コロナ 感染」などのサジェストワードが表示されると、検索者は「〇〇社でコロナ感染者が出たのか」と勘違いしてしまう可能性もあります。

2.風評被害を放置するリスク

風評被害を放置するリスク

新型コロナウイルス感染症関連で風評被害が発生したとき、放置していると以下のようなリスクが発生します。

2-1.売上げ減少

風評被害によって自社へのイメージが大きく低下し、商品やサービスが売れにくくなって売上げが減少するリスクです。特に一般消費者をターゲットとするBtoCの会社ではダメージが拡大しやすく注意が必要です。

2-2.株価の低下

上場会社の場合、新型コロナウイルス感染症関連の風評被害を受けると株価が低下するリスクがあります。ただでさえ世界的に経済状況の懸念から株価が不安定となっているところに、そういったマイナス要因が発生するのは大きなリスクと言えるでしょう。

2-3.人材不足

新型コロナウイルス感染症関連で悪い噂が立つと、就職希望者は集まりにくくなります。既存の従業員も不安を感じて辞めるものが出てくるかもしれません。退職までしなくてもモチベーションが下がり生産性が落ち込む可能性があります。

2-4.社会的な非難

新型コロナウイルス感染症対策をきちんとしていない、感染者が出たなどの虚偽情報が大きく拡散されると、社会から非難を受けるおそれがあります。いったん悪いイメージがつくと払拭が難しくなるので、情報が広がる前に適切な対応をとるべきです。

3.新型コロナウイルス感染症の風評被害への対応方法

新型コロナウイルス感染症の風評被害への対応方法

もしも自社に対して新型コロナウイルス感染症関連の風評被害が発生したら、以下のように対応するようお勧めします。

3-1.削除請求

ネット上で新型コロナウイルス感染症関連の誹謗中傷や悪質なデマの投稿が行われたら、まずはその削除を検討しましょう。放っておくと大きく拡散され、取り戻しのつかない損害が発生する可能性があるからです。

削除するには以下の手順を踏みます。 まずはサイトの管理者へ不当な投稿の任意的な削除を要請します。それでも対応してもらえない場合には裁判所で「仮処分」という手続きを行います。仮処分の手続き内できちんと権利侵害や権利保全の必要性を説明できれば裁判所からサイト管理者へ記事や投稿内容の削除命令を出してもらえます。

3-2.投稿者の特定と損害賠償請求

「あの会社ではコロナ対策していない」「コロナ蔓延にはあの会社が関与している」など悪質な嫌がらせの投稿をされたら、投稿者に対して損害賠償請求を行うべきです。企業が風評被害対策に負われて費用を支出せざるを得なくなった場合、経済的損失の賠償を求めることも可能です。

ただしネット上の投稿はたいてい匿名で行われているので、損害賠償請求を行うには投稿者を特定しなければなりません。そのためには裁判所での発信者情報開示仮処分や訴訟などの手続きが必要になるケースが多数です。

投稿者を特定したい場合、下記の記事に詳しく書いてあるのでご参照下さい。

投稿者を特定できたら連絡を入れて、交渉を進めて賠償金を支払わせましょう。投稿者が支払いに応じない場合には損害賠償請求訴訟を起こして強制的に取り立てる方法も検討可能です。

慰謝料・損害賠償請求をしたい場合、下記の記事に詳しく書いてあるのでご覧下さい。

企業が風評被害を受けたとき、削除や投稿者の特定、損害賠償請求を進めるには仮処分や訴訟などの法的対応が必要となるケースが多数です。自社のみでは適切な対処が難しくなりがちですし、素人対応では初動が遅くなって手遅れになってしまうリスクも高まります。ネット誹謗中傷や風評被害対策は、専門の弁護士に任せましょう。

当事務所では企業の風評被害対策に非常に力を入れています。新型コロナウイルス感染症関連での風評被害にお悩みの企業経営者さまは、情報が拡散される前にお早めにご相談下さい。

野口 明男 弁護士

監修者

野口 明男(代表弁護士)

開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。