風評被害・誹謗中傷

風評被害で問われる罪とは?4つの刑罰と立証可能時の対応策を解説

2021.12.06
風評被害で問われる罪とは?4つの刑罰と立証可能時の対応策を解説

もし、自社の悪評がネット掲示板やSNSに掲載されるようなことがあったら、投稿者をどのような罪に問うことができるのでしょうか。刑事告訴をして、投稿者の責任を追及する場合、具体的な刑罰を知らないと対処するのは難しいでしょう。そこで、本記事では風評被害で問うことができる罪について詳しく解説していきます。

風評被害を受けた場合、加害者に問える罪は?

風評被害を受けた場合、加害者に問える罪は?

風評被害を引き起こした加害者は、刑法上の罪に問われる可能性があります。悪評の流布が犯罪になることを理解するために、どのような罪に問われるのかを見ていきましょう。

名誉毀損罪

風評被害を引き起こした場合、刑法230条の「名誉毀損罪」という犯罪に該当する可能性があります。名誉毀損罪は書き込まれた内容が事実であるかどうかにかかわらず、特定の人物の社会的地位や名誉を低下させるような内容であった場合に適用されます。

名誉毀損罪が成立した場合の刑罰は、「3年以下の懲役若しくは禁固又は50万円以下の罰金」です。

侮辱罪

具体的な事実を摘示することなく、誰かを侮辱した場合は、刑法231条の侮辱罪に該当する可能性があります。

侮辱罪になりうるのは、「あいつは嘘つきだ」とか「暴利を得ているらしい」とかというように、何を根拠にそう結論付けるのかを示さずにレッテルを貼るような内容の投稿です。侮辱罪で有罪になったときは、「拘留又は科料に処する」と規定されています。

信用毀損罪

信用毀損罪は、刑法233条に規定されている犯罪です。真実ではない情報を不特定多数の人に広めることで、人の信用を低下させた場合に適用されます。信用の低下とは、経済的側面での社会的評価が下がることです。

例えば「あいつはもう借金を返済できない」、「あの会社の商品は有害物質を使っている」などと噂を流すと、この罪に問われることがあります。

流布された情報が客観的に真実であれば、信用毀損罪には問われません。適用された場合、「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」が科されることになります。

業務妨害罪

業務妨害罪は、刑法233条と234条に規定されており、「偽計業務妨害罪」と「威力業務妨害罪」に分けられます。どちらも罪になる行為は業務(商売や事業)の妨害です。

2つの業務妨害罪の違いは妨害の方法にあります。偽計業務妨害罪は嘘の情報を流して業務を妨害することで、威力業務妨害罪は有形・無形の力を用いて妨害することです。フェイクニュースは前者に、嫌がらせやクレームは後者にあたる可能性があります。この犯罪に該当した場合の刑は、信用毀損罪同様、「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。

風評被害で罪が立証できる場合の対応策

風評被害で罪が立証できる場合の対応策

風評被害に遭い、その原因となった投稿が上記犯罪に該当すると立証できる場合、被害者は以下の手続を取ることが可能になります。

警察に届け出る

ネット掲示板やSNS上の投稿が原因で風評被害に遭った場合の対応策として、まずは風評被害に遭っていることを申告し、最寄りの警察に被害届を提出しましょう。

被害届が受理され、その投稿が犯罪に該当すると警察が判断した場合、刑事事件として扱われ捜査が開始されます。もし、どうしても投稿者に処罰を受けさせたい場合は、被害届ではなく告訴状を作成して刑事告訴を行いましょう。

損害賠償請求

風評被害の原因となる投稿をした人物が特定できれば、民事訴訟を提起して損害賠償を請求することが可能です。しかし、匿名性の高いネット上での投稿が原因の場合、投稿者を特定するためにはいくつかの段階を踏む必要があり、時間が掛かるということも念頭に置いておきましょう。

風評被害の対応策については、より詳しく書かれた記事がありますので、そちらも参照してみてください。

風評被害ってどんなもの?企業に及ぶ影響と5つの対策方法をわかりやすく解説

風評被害の罪を問う前に行っておくべきこと

風評被害の罪を問う前に行っておくべきこと

風評被害に遭った際、先述した罪に該当する場合でも、すぐに刑事告訴できるわけではありません。刑事告訴をするにしても、民事訴訟を提起するにしても、加害者の氏名を特定するなどの事前準備が必要になります。

加害者本人の特定

ネット掲示板やSNSへの投稿によって風評被害に遭ったことを理由に、損害賠償請求や刑事告訴をする際には、投稿者の住所や氏名が必要とされることが通常です。

加害者を特定するためにはまず、投稿されたサイトの管理者に対して、投稿者の「IPアドレス」の開示請求を行います。管理者が開示を拒否した場合、裁判所に対して発信者情報開示の仮処分申立てをして、裁判所の命令で発信者情報を開示してもらうことになります。

投稿者のIPアドレスの開示請求をするのは、IPアドレスから投稿者が使用したプロバイダが分かるからです。IPアドレスがわかったら、プロバイダ特定サイトなどを利用し、そのIPアドレスを管理しているプロバイダを特定します。

その後、プロバイダに対して、投稿者に関する情報を請求していきます。

違法性を立証できる資料を保管

加害者の特定をするのと同時に、風評被害の原因となった投稿を証拠として保全しておきましょう。

その際、ウェブページを印刷して保存する場合は、ヘッダーやフッターの部分にURLが末尾まできちんと表示されるようにしなければなりません。知的財産高等裁判所の判例の中でも言及されている事項ですので、URLが末尾まで入っているかどうかの確認はしっかりしておきましょう。

声明文の発信

テレビや新聞などのマスメディアによる誤報や事実無根の情報の拡散、誤解に基づく噂話などによって風評被害が発生した場合、早急に事実に基づいた正確な情報を発信しましょう。方法としては、記者会見や声明文の発表などがあります。

また、ステークホルダーに対して素早く正確な情報を発信するために、クライシスコミュニケーション(緊急時に被害を抑えるために行う対外的なコミュニケーション)の準備を社内で整えておく必要があるでしょう。

被害の元となった口コミや投稿を削除

風評被害の原因となった投稿をネット上から消すには、投稿者を罪に問うのとは別に、サイト管理者に投稿の削除を要請しなければなりません。

サイトの問い合わせフォームなどから削除要請できますが、対応してもらえない場合は、裁判所に仮処分の申立てをするなどして投稿の削除を求めていくことになります。

弁護士への相談

風評被害に遭った場合、弁護士に相談することも選択肢のひとつです。刑事告訴や損害賠償請求はもちろん、発信者情報開示請求も法的手続きに当たります。一連の風評被害対策の中で、法律実務家のアドバイスが必要になる場面は必ず出てくるでしょう。

風評被害の原因となった投稿の削除を行うにも、その投稿者に責任を取らせる際にも、弁護士であれば最終的に法的な手段を行使することが可能です。

風評被害対策のご相談はアークレスト法律事務所へ

風評被害対策のご相談はアークレスト法律事務所へ

アークレスト法律事務所は、ネット上での誹謗中傷や風評被害の対策に鋭意取り組んできた法律事務所です。

ネット上のネガティブな書き込みの削除はもちろん、IPアドレスの開示請求や投稿者の特定から、その後の損害賠償請求や刑事告訴に至るまで、適切な解決策をご提案いたします。ほかにも、ネット上の誹謗中傷・風評被害に関する様々なトラブルに対応いたしますので、お気軽にご相談ください。

野口 明男 弁護士

監修者

野口 明男(代表弁護士)

開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。