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【弁護士監修】遺産分割とは?死後、家族で揉めないための基礎知識

2022.09.27
【弁護士監修】遺産分割とは?死後、家族で揉めないための基礎知識

遺産分割とは 、法定相続人全員で話し合って遺産の分け方を決めることです。分割の方法に不公平感が出ると、なかなか協議が進まなかったり、のちのち面倒なことやトラブルになったりすることもあります。遺産分割の流れを知り、自分や家族の死後にトラブルが起きないよう、早めに準備を進めましょう。

遺産分割とは

遺産分割とは

遺産分割とは、相続人全員が話し合い(遺産分割協議)、遺産の分け方を決定することです。分割の方法には、下記の 4種類 があります。

  • 現物分割:財産をそのままの形で分ける方法。(不動産や株式、預貯金など)
  • 代償分割:相続財産に不動産が含まれる場合に使われる方法。具体的には、1人の相続人が相続財産を取得し、別の相続人にその取得した財産に見合ったお金を支払うこと。
  • 換価分割:相続財産を売却し、そこで得たお金を相続人で分配する方法。主に不動産を相続する際に使われる。
  • 共有分割 :不動産や有価証券などを複数の相続人の共有名義とする方法。売却には共有者全員の同意が必要となる。

遺産分割協議で話がまとまらな いときは、家庭裁判所に調停を申し立て、調停委員を加えて協議することになります。

遺産分割の流れ

遺産分割の流れ

遺産分割の手続きは先ほど述べたように遺産分割協議から始まりますが、そのためには事前準備が必要です。

1.遺言書にもとづいて法定相続人を確定する

まず故人が遺言書 を残しているかどうかを確認し、遺言書があれば、遺言書に言及されているとおりに故人の財産を分割します。遺言書がない場合や、すべての遺産について言及されていない場合は、遺産分割をすることになります。

遺産分割協議では法定相続人全員の同意が必要なので、民法の規定により決められた法定相続人を調査 しなければなりません。その際には、被相続人の戸籍謄本や除籍謄本などを取り寄せて調査していきます。

また、遺言書が自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合は、家庭裁判所による検認の手続きを受ける必要があります。検認とは遺言書の状態と内容を家庭裁判所が確認して、正式な遺言書と認める手続きです。遺言書が公正証書遺言か法務局の預かり制度を利用した自筆証書遺言 の場合、家庭裁判所の検認は不要です。

2.相続財産を調査する

次に分割する財産を調査します。不動産や預貯金のみならず、借金や借入金、未払いの税金 などマイナスの遺産も調査します。具体的な調査対象は、以下のとおりです。

  • 預貯金:残高証明書
  • 不動産:不動産登記簿謄本
  • 上場株式:残高証明書
  • 借金:信用情報

負債に関しては、信用情報開示請求だけではすべての負債が判明しない こともあるので、心当たりがあれば借用書や督促状を探す必要があります。

3.必要に応じて遺産分割協議 を実施する

遺言書がない場合は法定相続人を集めて遺産分割協議を行います。その際、民法で定められている遺産取得の目安である法定相続分を参考に協議を進めていきます。ただし、それはあくまでも目安であり、必ずそのとおりに遺産を分配する必要はない点には注意が必要です。

ほかにも法定相続人のなかに認知症など判断能力が不十分な人や未成年者が含まれている場合は、代理人の選任などいくつか事前準備も必要です。遺産分割協議は親族間の争いごとに発展するリスクがあるので、ときには法律事務所の活用も考えておくことをおすすめします。

4.遺産分割協議書を作成する

遺産分割協議 で合意に達したら、合意内容を遺産分割協議書という書面にします。作成の際は、相続人の実印を押すことが通常です。

遺産分割協議書はのちのち相続人同士で揉めないためにも重要ですが、不動産の相続手続きを行うときにも必要となるので必ず作成します。

5.協議がまとまらなかった場合は「遺産分割調停」の申し立て

相続人同士の話し合いで話がまとまらない場合に、考えられる解決策の1つが遺産分割調停 です。調停の場では、家庭裁判所の裁判官と調停委員で組織される調停委員会が各人の主張を聞き、具体的な解決案を提案します。

遺産分割調停を利用することで、公平な解決、冷静な話し合い をすることが期待できます。一方、お金と時間がかかってしまうことが遺産分割調停の難点です。

相続人が調停委員会の解決案に合意すれば調停成立となり、遺産分割協議書を作成する流れとなりますが、合意に至らなかった場合は審判の手続きに進みます。審判では、当事者の主張・証拠をもとに、裁判所が最終的な判断を下します。当事者はこれに従わなくてはなりません。

【ケース別】遺産分割協議における注意点

【ケース別】遺産分割協議における注意点

家族構成や遺産の内容は、個別にさまざまな事情があります。遺産分割にあたって考慮しなければならない点を、よくあるケース別にご紹介します。

法定相続人に未成年者が含まれる

未成年者 は遺産分割協議に参加できません。この場合は未成年者の親が法定代理人となって遺産分割協議に参加するのですが、親も相続人であると法定代理人になることができません。

そういうときは、未成年者は親以外の特別代理人を立てることになります。家庭裁判所に申し立て、特別代理人を選任してもらいます。特別代理人には通常、相続人ではない叔父や叔母などの親族が選任されますが、状況によってさまざまです。

兄弟姉妹間の遺産分割

この場合は2つのケースが考えられます。1つ目は、親が亡くなり、その子ども(兄弟、姉妹)で遺産を分ける場合です。法律では兄弟間の遺産相続割合は平等というルールがあるので、遺言書に遺産分配割合が明記されている場合を除いて、兄弟姉妹間では平等に分配します。

2つ目は、故人に子や親がいなかった場合、故人の妻と第3順位の法定相続人である兄弟姉妹が相続人となります。2つのパターンで決定的に異なるのは、後者の場合は兄弟姉妹に遺留分(ある一定の相続人に保証されている最低限の遺産相続分)の権利が認められていないことです。

一部の相続人が介護・看護を担っていた

故人の介護や看護を担っていた相続人は、他の相続人よりも多少遺産を多く相続することが公平であると思うことでしょう。民法にはこうした考えを遺産相続に反映させる寄与分という制度があります。

例えば介護による貢献度(寄与分)を計る場合は、特別寄与の要件を満たしているかどうかが重要となります。単にデイサービスの送り迎えや食事の世話をしていただけでは、特別寄与は認められません。親の介護にかかる費用を自分が払っていた、仕事を辞めて介護に専念していたなどの貢献度があれば、特別寄与と認められる可能性が高くなります。

一部の相続人が生前贈与 などを受けていた

生前の故人から事あるごとに贈与を受けていたり、起業のためにお金を援助してもらっていたりする場合、「特別受益」が認められることがあります。

特別受益とは、生前贈与や遺贈、死因贈与があった場合に、法定相続人同士の平等を担保するために、贈与を受けていた相続人の相続分を少なくする制度です。特別受益分は相続財産の一部と見なして遺産分割を行います。

遺産に不動産や株式が含まれる

不動産や株式は現金と違って分割することが難しいため、売却して現金化したほうが遺産分割はスムーズに進むでしょう。

株式の場合、まずは評価額を調べる必要があります。上場株式は取引残高証明書にて容易に確認できますが、非上場株式は自分で計算しなければなりません。

不動産の評価額に関してはさまざまな評価方法があるため、どの評価価格を用いるかも慎重に検討しましょう。

>>不動産の相続方法まとめ|手続きの手順や注意点を徹底解説

遺産分割はアークレスト法律事務所にご相談を

トラブルを未然に防ぐためには、相続人が遺産分割の流れや手続き方法を理解しておくことが大切です。また被相続人となる可能性がある人は、事前に遺言書等の準備をしておきましょう。遺産分割は場合によっては複雑な手続きや判断を要することがあるため、遺産分割を得意としているアークレスト法律事務所にぜひご相談ください。

野口 明男 弁護士

監修者

野口 明男(代表弁護士)

開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。