犯罪歴・逮捕歴

日本版DBSの対象は?施行はいつから?事業者の義務についても解説します

2025.08.29
日本版DBSの対象は?施行はいつから?事業者の義務についても解説します

2026年に施行される見通しとなっている「日本版DBS」をご存じでしょうか。「DBS」は、「Disclosure and Barring Service」の略で、子どもへの性加害を未然に防ぐために作られる制度です。

日本版DBSでは、過去に性犯罪を犯した前歴がある人が子どもと直接関わる職業に就くことを制限するというのが主な目的です。この制度により、子どもを対象にした性犯罪を防止するさまざまな社会的な仕組みが導入されます。

この記事では、この制度の対象となる人や職業、対象期間や制度の問題点について解説します。

日本版DBSの対象

2026年に施行される予定の日本版DBSの目的や対象、そして、この制度のあらましについて解説します。

子どもへの性犯罪防止が目的

この制度の目的は「子どもを性被害から守る」ことです。
子どもをターゲットにした性犯罪がなくならないなかで、子ども達を性犯罪から守ることが社会的にも求められているのです。

特に、教育や保育の現場では、子どもと密接に関わる機会が多く、そして、これまでも教職員や関係者による性的な加害はたびたび社会問題となってきました。
こうした事件を未然に防ぐために、加害歴のある人物が再び子どもと関わる業務に就くことのないよう、制度をつくるというものです。

子どもと接する職業が対象に

この制度では、子どもと直接接する職業が対象になります。一例として、学校の教職員があげられますが、広く「子どもと日常的に接する機会のあるすべての職種」が対象となります。

特に、近年は民間事業者による保育や教育サービスの多様化が進んでいるため、教職員や保育士だけではなく幅広い職種が対象となります。

学校、児童福祉施設等

日本版DBSでは、学校や児童福祉施設、認可保育所、幼稚園や認定こども園の職員については、過去の犯罪歴のチェックなどの対応が義務化されます。
施設に課される義務は以下の通りです。

● 教職員などの性犯罪歴の確認
● 研修
● 面談の態勢を整備
● 性暴力が疑われる場合の調査
● 被害が発生した場合の被害者の保護

該当する事業者は上記の義務を果たす必要があります。これは、該当する事業者で働く場合は、自分の性犯罪の前歴を確認されるということでもあります。

民間教育保育等事業者

「民間教育保育等事業者」とは、国や地方自治体が正確な実態の把握をできていない教育・保育関連の民間事業者のことです。
こうした業者については、認定を受けることで制度の対象となります。

  • 一時預かり
  • 病児保育サービス
  • 認可外保育園
  • 専門・専修学校
  • 学習塾
  • サークル
  • 学童保育

上記の施設については、日本版DBSの対象事業者として認定を受けることで義務が発生し、「対象事業者」として登録されます。認定を受けている事業者であることが公表され、ホームページやパンフレット等で「認定済み」であることを表明できます。

制度の適応対象であることを公開することで、安全性が高い施設であることを周知できるようになります。

対象期間について

日本版DBSで注目されている、対象となる職業につく人物の性犯罪歴の確認ですが、対象期間が定められます。「いつの犯罪歴まで遡るか」が明確に設定されるのです。

刑の種類対象期間(刑の終了から)
拘禁刑(実刑)20年間
罰金刑10年間
※執行猶予判決の場合、裁判確定日から10年間

過去に性犯罪で有罪となりすでに刑を終えている場合は、その刑の終了から最大で20年間が確認対象となります。
性犯罪は再犯率が高い傾向にあるため「すでに刑を終えていても、再犯のリスクが高い期間」については、子どもと関わる職に就くことが制限されるということです。

参考:こども性暴力防止に向けた総合的な対策の推進https://www.gender.go.jp/kaigi/sonota/pdf/kyouka/10/01.pdf

日本版DBSはいつから?法整備の背景とは

日本版DBSは、子どもをターゲットにした性加害事件がなくならないことに対する社会的要請を背景に導入される制度です。海外ではすでに制度が運用されている国もあり、日本でもその導入は急務とされてきました。

ここでは、日本版DBSの制度導入の時期と法整備の背景について解説します。

2026年度中の施行が予定されている

日本版DBSは、2026年度中に施行される予定となっています。2024年に日本版DBSを導入するための法律が可決成立しています。

今は、この法律の施行に向けて自治体や事業者、教育機関に対する説明などが行われる段階となっています。法律が施行されると、対象事業者は法律上の義務を負うことになるため、早めの対応とルールの理解が急務となるでしょう。

イギリスの制度を参考に導入

日本版DBSは、イギリスで導入されている制度をベースにして構築されました。このように、過去の性犯罪歴を事業者や本人が確認できる制度は、イギリスやフランス、ドイツでもすでに導入されています。

イギリスのDBSでは、犯罪歴の確認が徹底して行われており、特定の犯罪を犯した場合は警察からDBSに対して情報提供がされて、自動的にリストに掲載されます。このリストに掲載された人物は教育・保育分野には就業できません。

日本でも、性犯罪歴のある人物が子どもと接する職業に就かないようにすることで、教育現場の信頼性と安全性を高めることが期待されています。

日本版DBSでの事業者の義務

日本版DBSの制度が施行されると、教育・保育関係の事業者や法人には、新たな義務が課されることになります。

過去の犯罪歴のチェックだけでなく、研修や必要に応じた配置変更の対応、そして、被害が発生してしまった場合の対処などです。こうした対応が義務化されることで、事業者側の負担となるケースもあるため、制度への正しい理解と備えが不可欠です。

犯罪の予防

日本版DBSが施行されると、事業者に対して、採用時に性犯罪歴の有無を確認する義務が生じます。対象となる人物については、国や自治体が管理するDBS情報をもとに照会を行うという仕組みです。

また、事業者自身が研修を行い、犯罪のリスクを回避するための社内基準や体制の整備も求められるようになります。

対象者の配置転換

日本版DBSでは、既存の職員についても過去の犯罪歴のチェックを行う義務が生じます。そして、もし性犯罪歴が確認された場合には、速やかに業務体制の見直しが必要となります。具体的には、該当する職員を子どもと接するポジションから外す、または配置転換を行うなどの措置が求められます。

この点に関しては、雇用契約との関係や、実務的な問題、そして、労働者の権利保護との兼ね合いもあるため法的な知識を持つプロからのアドバイスがあると安心です。

被害者の保護

できる限り対策をしていても、被害が発生するケースもあるでしょう。そのような場合には、事業者には被害者を保護する義務が発生します。
具体的には以下のような対策を行います。

● 児童相談所・警察など関係機関への報告
● 被害者のメンタルケア
● 安全確保
● 再発防止

被害が発生した場合には、できるだけ迅速に対応することが求められます。被害の隠蔽や過小評価をすると事業者の義務違反となります。

日本版DBSの問題点

日本版DBSの施行は、子どもの安全を守る制度として有効といえるでしょう。ですがその一方で、新たな課題もあります。それは、プライバシーの保護、個人の人権、運用コストなどです。ここでは、日本版DBSの問題点について解説します。

プライバシー保護の問題

日本版DBSでは、過去の犯罪歴という非常にデリケートな経歴を確認することとなります。非常にセンシティブな情報であるため情報管理の徹底とプライバシー保護に関する配慮が必要です。

この点に関しては、誰が、どのような方法で情報を管理し確認するかが問題となります。もちろん、個人情報の取り扱いに関する法律との整合性も求められますし、情報漏えいのリスクについても配慮が必要です。 ここで注意したいのは、仮に該当する犯罪歴があったとしても、必ずしも再犯するわけではないこと。そして、人権については最大限配慮されるべきであるという点です。

とくに、誤情報や誤照会、守秘義務違反によって不利益を被る人が出ないよう、厳格に情報管理された体制が不可欠です。

職業選択の自由とのバランス

DBSの制度を運用すると、刑の終了後であっても職業制限が続くということになります。これは子供を守るために有効な制度である一方で、憲法で保障されている「職業選択の自由」とのバランスで問題が生じる可能性があります。

特に、真面目に更生を目指す者にとって、社会復帰の場が狭まるという課題も含んでいます。つまり、犯罪歴がある人間を単に排除するだけではなく、適切な制限をかけつつ、更生の機会を奪わないというバランスが求められます。

事業者の負担が大きくなる可能性

span class=”deco_bold_linear_yellow”>日本版DBSが施行されると、事業者の負担が大きくなる可能性があります。新しく職員を採用する時と既存職員の犯罪歴のチェックと対応、研修制度など、事業者の負担が増加します。
特に、小規模な民間保育園などでは、人手不足や法に関する知識の不足が起こるケースが想定されるため、国や自治体による支援体制の整備が必要です。

まとめ

日本版DBSは、子どもを性加害から守るために導入される新たな制度です。学校や保育施設にとどまらず、幅広い事業者が対象となり、職員の過去の性犯罪歴が確認されるようになります。

この制度は2026年度中の施行が予定されており、今、運用に向けた準備が進められています。子どもを対象にした犯罪を未然に防ぐために有効な制度である一方で、プライバシー保護や職業選択の自由、事業者への負担といった複雑な問題を含むため、慎重な制度設計と社会全体での理解が求められています。

野口 明男 弁護士

監修者

野口 明男(代表弁護士)

開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。