転職サイトの誹謗中傷・書き込み削除

転職会議の口コミ削除や名誉毀損の発信者情報開示を請求する方法

2021.07.09
転職会議の口コミ削除や名誉毀損の発信者情報開示を請求する方法

転職会議に誹謗中傷や悪評を書き込まれた場合、サイトからの削除依頼ができません。しかし投稿を放置すれば、企業イメージのダウンによって売上への影響も懸念されるでしょう。

実はプロバイダ責任制限法に則った手続きを踏むことで、名誉毀損にあたる投稿を削除してもらえる可能性があります。

今回は、転職会議で投稿・口コミを削除する方法と、投稿者を特定する方法について解説します。迅速な対応で、企業への影響を最小限にとどめるために抑えておきたい情報を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

1.転職会議はサイトからの投稿削除が原則できない

転職会議の口コミは、原則削除できません。

公式サイトのガイドラインによると、「転職会議では、口コミ投稿後の削除は受け付けていません。」と明記されています。ユーザー退会後も口コミは残り、削除はされません。

転職会議では、投稿の再編集が可能です。お問い合わせフォームから、投稿のID・再編集した投稿内容・満足度を編集できます。

ただし、投稿の再編集は投稿した本人しか依頼できません。退会した会員が再編集することもできないため、企業側から削除依頼は原則できない仕組みです。

転職会議では、サイト運営者が投稿・口コミをチェックして削除しています。ガイドラインによると、誹謗中傷を意図した投稿は削除対象です。そのためお問い合わせフォームから、誹謗中傷の指摘をすることで、投稿の削除を促せる可能性があります。

また、送信防止措置手続による削除依頼は可能です。送信防止措置手続の方法について、詳しくは後述します。

2.転職会議は企業の口コミ投稿・求人サイト

転職会議は企業の口コミ投稿・求人サイト

転職会議とは、株式会社リブセンスが提供する転職希望者向けの口コミ・求人サイトです。

300万件以上の口コミ情報を掲載し、会員数は700万人を超えています。また、求人情報は17万件以上を掲載しています。[注1]

転職を考える人が、企業の口コミを確認しながら求人情報を探せる人気の転職サイトです。無料会員制で、会員登録をすれば誰でも企業の口コミや評価が閲覧できます。登録しなくても、総合評価や年収分布など、一部の情報は確認可能です。

3.転職会議で名誉毀損にあたる投稿例

転職会議のガイドラインには、投稿に関する削除対象例が掲載されています。そのなかでも、名誉毀損にあたる例を紹介します。

3-1.個人の特定ができる投稿

個人の特定ができる内容の投稿は、プライバシーの侵害にあたります。投稿の内容が誹謗中傷であれば、名誉毀損の可能性もあります。

実名だけでなく、伏せ字やイニシャル、あだ名などでも個人が特定できる内容で「事実を摘示して人の名誉を毀損」すれば名誉毀損です。

ただし、転職会議では役職名での投稿、かつ内容が誹謗中傷でないものは原則削除対象になりません。

3-2.事実関係の確認が困難な投稿

事実確認の確認が困難な投稿も、削除対象や名誉毀損にあたる可能性があります。具体例は次のとおりです。

噂なので定かではありませんが、新卒へのイジメはひどく、顔に青タンができるほどの暴力を受けていたそうです。

引用:https://info.jobtalk.jp/policy/guideline

上記の例では、自分が受けた被害ではなく噂を記述しています。事実である根拠はなく、名誉毀損にあたる内容です。書き込まれた企業の社会的地位を貶める内容でもあり、悪質といえます。

3-3.誇張表現や断定的な批判

転職会議の投稿に、誇張表現や断定的な批判がある場合も名誉毀損と判断されるケースがあります。たとえば、次のような投稿です。

この会社は休日がない。

この例では、「休日がない」と断定しています。実際に休日のない証拠があれば、名誉毀損とはなりませんが、根拠を示せない限り名誉毀損となりうる投稿です。

また、「上司がまったく仕事をしていない」「キャリアアップができると聞いて入社したのに実際は不可能」など、誇張・断定する表現は名誉毀損にあたる可能性があります。投稿を見た人が真実だと思い込んで、応募者が減ったり企業イメージが落ちたりと、企業の不利益になるからです。

4.悪評を転職会議に書かれた場合の影響

悪評を転職会議に書かれた場合の影響

転職会議は700万人超の会員を抱えており、転職者にとって大きな情報源となるサイトです。

そのため、転職会議に悪評を書かれると求人への応募が減少する可能性も考えられます。企業イメージも大きく損なわれ、売上にも影響しかねません。

転職会議に悪口や悪評を書き込まれたら、削除や名誉毀損での訴訟を検討しましょう。訴訟を起こさない場合でも、投稿をそのまま放置すると不特定多数の利用者の目に触れ、経営に影響を与える原因になります。

5.転職会議での投稿削除の方法

転職会議のサイト内では、削除依頼が原則できないため、ここでは送信防止措置手続で投稿を削除する方法について解説します。

5-1.【申立者】送信防止措置の申立

投稿の削除を求める場合は、送信防止措置の申立をします。

申立には、手続きのための書類が必要です。決められた様式はなく、投稿の情報と侵害された権利とその理由について記載すれば問題ありません。

違法・有害情報相談センターでは、「名誉毀損・プライバシー関係送信防止措置手続」の用紙がダウンロードできます。作成した申立書類は、簡易書留など記録の残る方法で郵送しましょう。

書類を書くときのポイントは、権利侵害とする理由を明確にすることです。名誉毀損となる理由を提示することで、投稿を削除してもらいやすくなります。

5-2.【サイト運営者】自主削除・発信者へ照会手続

送信防止措置手続の申立書類を転職会議のサイト運営者が受け取ると、自主削除あるいは発信者への照会手続きへと移ります。

該当の投稿が削除対象であれば、サイト運営者の判断で削除されます。しかし削除の判断ができない場合は、投稿した人(発信者)へ意見照会がおこなわれる仕組みです。

意見照会とは、プロバイダ責任制限法に則った手続きで、発信者に投稿を削除してもよいかを確認するためにおこなわれます。発信者に送られる意見照会書には、内容に「同意する」「同意しない」の選択と、その理由について記載する欄があります。

5-3.【サイト運営者】投稿の削除判断

転職会議のサイト運営者は、発信者から送り返された意見照会書で投稿削除の判断をします。

ただし発信者が削除に同意しなくても、転職会議のサイト運営者が必要であると判断すれば、投稿は削除されます。意見照会は、あくまでも発信者の主張を聞くための手続きです。

また7日以内に、発信者から意見照会書が返って来ない場合も、反論がなかったとみなされて投稿は削除されます。

5-4.【申立者】削除されない場合は仮処分の申立

投稿の削除が認められなかった場合は、申立者は裁判所に仮処分を申し立てられます。

仮処分とは、本裁判の結果を待つと申立者に不利益が発生する場合に、暫定的措置として認められる処分です。インターネット上の誹謗中傷は、時間が経つほど拡散されて消すことが難しくなります。本裁判になると、判決が出るまでに半年ほどかかることも珍しくないため、仮処分として投稿の削除が認められるケースもあります。

仮処分の申立から、裁判所が命令を出すまではおよそ1~3か月です。あくまで「仮」のため、本裁判では判決が覆される可能性はゼロではありませんが、仮処分が出るとほとんどの場合で投稿は削除されます。サイト運営者は、裁判で争っても負ける可能性が高いと判断するためです。

6.削除代行業者への削除依頼には注意

インターネット検索をすると、掲示板への投稿や口コミの削除を代行処理する削除代行業者が存在します。弁護士事務所ではないため、弁護士は所属していません。

投稿の削除依頼は法律業務のため、報酬をもらって削除代行をおこなうことは弁護士法違反です。代行業者を間に挟むことで、さらなるトラブルの原因にもなることから、投稿の削除依頼は専門家である弁護士に依頼しましょう。

7.転職会議の発信情報開示請求の方法

転職会議の発信情報開示請求の方法

転職会議への投稿が悪質なケースでは、名誉毀損やプライバシー侵害、侮辱罪などで訴訟を起こすことも視野に入れましょう。

訴訟を起こすためには、発信者の氏名や住所などの個人情報が必要です。刑事事件で告訴するときも、発信者の情報は告訴する側が調べなくてはなりません。

発信者情報を調べるには、転職会議のサイト運営者へ発信者情報開示請求をします。

発信者情報開示請求では、請求書と本人確認書類などをサイト運営者へ提出します。送信防止措置手続のときと同じように、発信者へ意見照会がおこなわれ、情報が開示される流れです。

サイト運営者が情報開示しないときは、開示請求訴訟を起こして裁判で争います。

8.転職会議で名誉毀損にあたる投稿があったときは早めの対応を

転職会議に悪評や誹謗中傷を書き込まれたときは、迅速な対応が必要です。

投稿が拡散すると、求人への応募者が減るだけでなく、企業イメージが損なわれてしまいます。大きな損害につながる可能性もあるため、できるだけ早く削除しましょう。

ただし転職会議では、原則サイトからの投稿削除ができません。投稿を削除してほしいときは、送信防止措置手続をおこないます。

手続き自体は難しくありませんが、削除を認めてもらうためには削除理由が重要です。名誉毀損である理由を明記しなくてはならず、法律に詳しくない場合は書くのが難しいかもしれません。

手続きの方法や書類作成に不安があるなら、弁護士に相談するのも1つの方法です。とくにネット上の名誉毀損を専門とする弁護士は、経験も豊富で適切なアドバイスをくれるでしょう。

[注1]転職会議
野口 明男 弁護士

監修者

野口 明男(代表弁護士)

開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。