株式会社全東信の破産について

株式会社全東信について、大阪地方裁判所より破産手続開始決定が下されました。
同社の決済代行サービスは多くの加盟店(報道によると全国20万店に上るとされています。)にて利用されており、今後について大きな不安を抱えている加盟店が多いと思います。
弁護士の視点から、今後の手続等についてご説明します。

目次

売上代金の見通し

まず、全東信から入金されるはずであった加盟店のカード売上は、破産手続開始とともにストップされるため、加盟店は売上の入金を失うことになります。
各加盟店は破産手続の債権者として債権届出を提出し、破産手続の進行に伴い配当金を受領することが考えられる今後の対応です。

もっとも、一般論として破産手続における配当は、そもそも配当が存在しないか、たとえ存在しても配当率(債権額に対して債権者が受け取る金額の割合)は非常に僅少な割合(1%など)となってしまうことが通常です。
そのため、店舗運営のためにこの配当金を頼ることは現実的ではないことになります。

したがって、加盟店側としては、カード売上の入金をひとまず度外視して店舗運営する必要に迫られます。

訴訟その他の法的手続による回収の可能性

本来入金されるべき全東信からの入金がない以上、裁判などの法的手続を通じて回収することを計画される加盟店も少なくないはずです。被害者の会を結成したいなどとの声も聞かれました。

ですが、破産手続開始決定の時点で法的手続は全てストップすることになるため(破産法42条、44条)、法律的なプロセスを通じた債権回収は不可能です。

弁護士の視点からも、債権の十分な回収に向けた実効的な方法は残念ながら存在せず、後述する債権届出及び配当金受領についてお伝えせざるを得ないことになります。

加盟店側の今後の対応

破産手続開始決定を踏まえ、加盟店側で必要となる対応は以下のとおりです。

(1)全東信の決済端末機を通じた決済の即時ストップ

カード決済の端末機はそもそも使用不能になっているかもしれませんが、もしも使用できたとしても、当該端末機を使用してカード決済することは直ちにストップしてください。そのカード決済の決済代金は入金されないため、傷口を広げてしまうことになります。

(2)代替となるカード決済手段の確保

全東信を通じたカード決済の未入金分は入金されないことが確実で、今後、同社のカード決済サービスは利用不可能です。そのため、全東信の決済代行サービスを利用していた加盟店にとっては、代替となるカード決済手段を確保することが必要不可欠です。

もっとも、新たに決済手段を確保することができても、その入金はどうしてもかなり先のことになってしまうため、各加盟店はその間の運営資金確保を迫られることになります。

(3)債権届出・配当金受領

各加盟店は破産手続で配当金を受けるため、裁判所が定める債権届出期間内に、債権届出を行う必要があります。
破産手続の具体的な進行や債権届出書の提出等については、後述の参考情報「破産管財人からのお知らせ」に記載されている破産管財人の連絡先にお問い合わせください。

破産手続が進行した時点で、配当金がもしも存在すれば、配当金を受領することが可能です。

(4)貸倒損失の損金計上

未入金のカード売上は、貸倒損失として所得税や法人税の申告において損金算入ができる可能性があります。
詳しくはご担当の税理士の先生にご相談ください。

(5)運転資金の確保

過去のカード売上は入金の見通しが立たないこと、及び、今後代替のカード決済手段も売上入金がかなり先となってしまうことから、各加盟店は、カード売上の入金再開まで当面の資金繰りを迫られることになります。

金融機関からの借入や株主等からの追加出資(法人の場合)など、必要な資金の手当てを模索する必要があります。

最後に

今回発生したクレジットカード決済手段の破綻は、全国20万店にも及ぶとされる膨大な加盟店の大多数にとってあまりに想定外であり、かつその影響も数カ月にわたりカード売上の見通しが立たなくなりかねない非常に深刻なものです。
連鎖的な経営破綻も強く懸念されます。

当事務所は、加盟店の皆様の経営上の打撃や心理的負担について、可能な限りお力になれればと考えておりますので、お気兼ねなくお問い合わせくださいますようお願い申し上げます。

参考情報

破産管財人からのお知らせ
http://www.zentoshin.com/img/news/important_Notice.pdf

食団連「【緊急・注意喚起】 株式会社全東信の破産手続開始について(第1報)」
https://shokudanren.jp/activities/KEpkzbyY

食団連「【第2報】全東信破産に関する支援策のご案内」
https://shokudanren.jp/activities/6AE-g1RA

野口 明男 弁護士

監修者

野口 明男(代表弁護士)

開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。