「墓じまいを相談したら、寺院から数百万円の離檀料を請求された」「払わなければ手続きに必要な書類を出さないと言われた」。このようなご相談が近年増えています。
結論からいえば、離檀料に法的な支払い義務はなく、法外な高額請求に応じる必要はありません。また、離檀料の支払いを拒んだからといって、墓じまいそのものができなくなるわけでもありません。
この記事では、離檀料の法的な性質、高額請求を受けたときの考え方、「書類を出さない」と言われた場合の具体的な対処法まで、弁護士がわかりやすく解説します。
支払う前に、一度ご相談ください。減額交渉の代理や、手続きを進めるための方法をご提案できます。
▶ アークレスト法律事務所の無料相談はこちら
結論|離檀料に法的な支払い義務はない

離檀料とは、檀家が寺院との関係を終える(離檀する)際に、寺院に対して支払う金銭です。その性質は、長年の供養に対する感謝を示す「お布施」「謝礼」であり、法律で支払いが義務づけられているものではありません。したがって、法外な金額を提示されたとしても、その金額を支払う義務は原則としてありません。
背景として、墓じまいを検討する人自体が急増しています。厚生労働省の衛生行政報告例によれば、2024年度の改葬件数は17万6,105件と過去最多を記録しました。それに伴い、寺院とのトラブルも増加傾向にあります。
離檀料とはどのような費用か

相場は10万〜30万円程度といわれるが、明確な基準はない
離檀料には全国共通の基準がありません。よく挙げられる目安は10万円から30万円程度で、閉眼供養(魂抜き)のお布施をもって離檀料とする寺院もあります。地域の慣習や、これまでの寺院との関係によって幅があります。
墓地使用契約書に明記されている場合は例外
お墓を建てた際に取り交わした墓地使用契約書や墓地使用許可証に、離檀料に関する定めが明記されている場合には、契約に基づく支払い義務が生じる可能性があります。もっとも実務上、離檀料が明記された契約書はほとんど見られません。まずは手元の書類を確認しておくとよいでしょう。
管理費の滞納がある場合は別問題
なお、離檀料とは別に、墓地の管理費や護持会費に未納がある場合は、その未納分については支払い義務があります。離檀料の交渉とは切り分けて考える必要があります。
高額請求の実態|数百万円が請求されるケースも
報道されている事例では、墓じまいを申し出たところ「離檀料は1,000万円」と告げられたケースや、遺骨1体あたり150万円を求められたケースなども確認されています。「代々の大檀家だから」「本堂の改修に協力していないから」といった理由を挙げて高額な金額を提示されることがあります。
こうした請求を受けると、多くの方が「先祖代々お世話になった寺院と争いたくない」「地元で揉めたくない」という気持ちから、納得できないまま高額な金額を支払ってしまうことがあります。実際に、数百万円を支払って墓じまいをしたという事例も少なくありません。
「払わなければ埋蔵証明書を出さない」は通用するのか

離檀料トラブルで最も多い圧力が、「離檀料を払わなければ、改葬に必要な埋蔵証明書を発行しない」というものです。しかし、これは必ずしも決定打にはなりません。
埋蔵証明書とは何か
墓じまい(改葬)をするには、市町村長から改葬許可を受ける必要があり、その申請には、墓地の管理者が作成した「埋蔵の事実を証する書面」(埋蔵証明書)の添付が原則として求められます。寺院がこの書面の発行を拒むことで、手続きを止めようとするわけです。
「これに準ずる書面」で代替できる場合がある
ここで重要なのが、墓地、埋葬等に関する法律施行規則2条2項1号の定めです。同号は、埋蔵証明書の添付を原則としつつ、「これにより難い特別の事情のある場合にあつては、市町村長が必要と認めるこれに準ずる書面」でよいとしています。つまり、寺院が証明書を出さない場合には、市町村長が認める代替書類によって改葬許可申請を行う道が残されているのです。
この点については、昭和30年2月28日付けの厚生省環境衛生課長回答(衛環第22号「墓地改葬許可に関する疑義について」)が、管理者は埋葬や納骨の事実の証明を拒むべきではないとしたうえで、それでも拒まれた場合には「これにかわる立証の書面」をもって取り扱って差し支えないとしています。あわせて、そうした場合にも管理者が証明書を出せるよう極力指導すべきであるとも述べています。厚生労働省は、令和8年1月23日付けの事務連絡で、代わりに添付する書面として、埋蔵証明書を提出できない経緯を記載した申述書や墳墓の写真などを例に挙げています。
墓埋法13条|正当な理由なく拒むことはできない
また、墓地埋葬法13条は、墓地等の管理者は埋葬・埋蔵・収蔵等の求めを受けたときは「正当の理由がなければこれを拒んではならない」と定めています。宗派が違う、寄付の要求に応じないといった理由だけでは、原則として正当な理由にはなりません。
高額な離檀料請求が問題となり得るケース
離檀料自体は、双方が納得して授受されるかぎり問題のあるものではありません。しかし、次のような態様の請求は、法的に問題があると評価される可能性があります。
- 社会的に見て著しく高額で、実質的に離檀を妨げる目的と見られる請求
- 「祟りがある」など、不安をあおって支払いを迫る言動
- 遺骨の引き渡しや必要書類の発行を拒むことを交渉材料とする請求
- 「埋蔵証明書の発行手数料」などの名目で、実質的に高額な離檀料を求める請求
こうした請求について、公序良俗違反(民法90条)などを理由に効力が否定される可能性を指摘する見解もあります。個別の事案での評価は、請求の金額・経緯・態様を総合して判断されます。
請求されたときにやってはいけないこと

無断で遺骨を移動させる
改葬許可を受けずに遺骨を移動させることは、墓地埋葬法違反となるおそれがあります。寺院への不満があっても、正規の手続きを飛ばして進めてはいけません。
感情的に決裂させてしまう
「法的義務がないのだから一円も払わない」と一方的に通告して関係を断つと、その後の交渉が極端に難しくなります。相手にも面子があるため、対立が長期化しかねません。
提示された金額を即座に全額支払う
一方で、慌てて全額を支払ってしまうと、後から「高すぎた」と気づいても、返還を求めることは容易ではありません。支払う前に、金額の根拠と内訳を確認することが重要です。
高額請求を受けたときの対処ステップ
STEP1|金額の根拠と内訳を確認する
まず、提示された金額の根拠と内訳を、できるかぎり書面で示してもらいます。「離檀料」なのか「未納の管理費」なのか「工事費」なのかを切り分けることが第一歩です。
STEP2|手元の契約書類を確認する
墓地使用契約書や使用許可証に、離檀料に関する定めがあるかを確認します。定めがなければ、契約上の支払い義務はないと考えられます。
STEP3|第三者を交えて交渉する
当事者同士では感情的になりやすいため、第三者を介するのが有効です。宗派の本山や檀家総代への相談が有効なケースもあります。それでも解決しない場合は、弁護士に交渉を依頼することを検討してください。
STEP4|自治体の窓口に相談する
埋蔵証明書が発行されない場合は、改葬許可申請の窓口となる市町村に事情を説明し、代替書類による申請が可能かを相談します。
弁護士に依頼するメリット
本人に代わって減額交渉ができる
先祖代々の関係がある相手だからこそ、ご本人が直接「高すぎる」と言うのは難しいものです。弁護士が代理人として交渉に入ることで、感情的な対立を避けながら、金額の適正化を目指すことができます。
法的な整理を示して交渉できる
離檀料の法的性質、契約書の有無、代替書類による手続きの可否といった点を法的に整理して示すことで、交渉の見通しが立ちやすくなります。
手続き全体を見据えて対応できる
離檀料の交渉だけでなく、改葬許可申請、遺骨の引き渡し、必要に応じた法的手続きまで、墓じまい全体を見据えて対応方針を立てられます。
「支払わない」以外の選択肢を検討できる
なお、離檀料は慣習として一定額が授受されてきた実態もあり、裁判になった場合、著しく高額でなければ支払いが認められる可能性を指摘する見解もあります。「一円も払わない」という対応が常に最善とは限らないため、円満な解決を含めた選択肢の比較が重要です。
よくある質問(FAQ)
まとめ
離檀料はお布施・謝礼としての性質を持つもので、法律上の支払い義務はありません。数百万円という法外な請求に、納得できないまま応じる必要はありません。
また、「払わなければ埋蔵証明書を出さない」と言われても、墓地埋葬法施行規則には市町村長が認める代替書類による手続きが用意されており、墓じまいそのものが不可能になるわけではありません。
とはいえ、先祖代々お世話になった寺院を相手に、ご本人が直接交渉することは精神的な負担が大きいものです。高額な離檀料を請求されてお困りの場合は、支払う前に弁護士にご相談ください。






