著作権侵害

著作権侵害で損害賠償請求されたらどうなる?対応フローや対処法を徹底解説

2022.02.03
著作権侵害で損害賠償請求されたらどうなる?対応フローや対処法を徹底解説

P2P型のファイル共有サイトを利用して他人の著作物をダウンロード・アップロードすることや、SNS上に投稿された他人の写真やイラストを無断で使用することは、著作権侵害行為に当たります。著作権を侵害しているという意識がなくても、損害賠償請求を受けてしまう可能性は否定できません。本記事では、著作権侵害で損害賠償請求をされたらどうなるかという点と、その対応フローや対処法を解説していきます。

損害賠償請求を受ける可能性がある著作権侵害行為

損害賠償請求を受ける可能性がある著作権侵害行為

どのような行為が損害賠償を受ける可能性のある著作権侵害行為の一例を紹介します。

まず、P2P型のファイル共有ソフト(WinnyやBitTorrent)を利用して動画や漫画をアップロードする行為が挙げられます。著作物を急速、広範囲に拡散する行為なので、このようなことをすると、高額の損害賠償請求をされる可能性があります。違法にアップロードされた動画や漫画へリンクを張るなどしてのアクセスを誘導する「リーチサイト」の公開も同様です

また、写真やイラストも著作物なので、インターネット上やSNS上に投稿されたものを無断で使用すると、複製権や公衆送信権を侵害することになり、著作権侵害となってしまいます。

著作権侵害をすると、損害賠償請求などの「民事上の責任」を負うことになるだけでなく、刑事上の責任を問われることもあります。また、刑事事件として報道されると社会的な信用を失うことになりかねません。

著作権侵害で損害賠償請求を受ける条件

著作権侵害で損害賠償請求を受ける条件

著作権侵害とは、著作物(音楽や映像、漫画、書籍、コンピュータープログラムなど)に対し、著作権者に無断で支分権の対象となる行為を行うことをいいます。ここでは、「著作物」と「無断」の法的な意味を詳しく解説します。

著作物に該当するかどうか

まず考えなくてはいけないのが、利用したコンテンツが「著作物」に当たるかどうかです。著作物と呼べるには、表現についてのオリジナリティ(創作性)が認められる必要があります。具体的には、音楽や映像のほかにも、漫画や小説、コンピュータープログラムなどです。当然ですが、憲法やその他の法令、条例などは著作物ではないとされています。

著作権の各支分権の対象となる行為を行っているか

著作権法には、著作物について著作権者が権利を持つ行為が定められています。例えば、著作物の「複製」や「公衆送信」を行うと、著作権者の持つ「複製権」や「公衆送信権」を侵害する可能性があります。

一方、例えばプログラムをコンピューター上で使用するだけであれば、そのプログラムが違法にインストールされたものであることを知っていた場合を除き、著作権侵害とはなりません。

著作権者から許諾を得ていたか

著作権者から許諾を受けて利用した場合は、著作権侵害には当たりません。著作物の使用の許可を得る方法としては、(1)著作者本人から使用の許可を得る、(2)著作物自体の譲渡を受ける、(3)著作権者の特定が難しいなどの場合で、文化庁長官の裁定を受けるなどがあります。

例外に該当しないか

著作権法においては、例外的に著作物の自由利用が許されるケースが定められています。例えば、私的使用のために複製して利用する場合です。また、観客から料金を取らずに非営利で演奏や上映をする場合のほか、図書館での複製、美術展での展示公開などは著作物利用の例外に該当し、著作権侵害とはなりません。

著作権侵害の損害賠償額の算定方法

著作権侵害の損害賠償額の算定方法

著作権侵害に該当し損害賠償請求を提起された場合、損害額はどのように算定されるのでしょうか。その算定方法について解説します。

損害額の推定

損害額を計算するとすれば、「著作権侵害を受けなければ著作者が得られるはずだった利益」を求めることになります。しかし、仮定を含んでいるため、その正しさを立証するのは非常に困難なことです。そこで、著作権法は損害額の推定規定を設けています。

単位数量あたりの利益と数量をかけた金額

著作権法114条1項は、違法著作物が販売された数量やダウンロードされた数量に、著作権者が販売によって得ることができた利益の額(1冊あたりの額)をかけた額を損害額とすることができるとしています。例えば、著作権侵害をした人物が、正規品で利益100円の漫画の海賊版を100万部販売した場合は、100円×100万部=1億円を損害額とすることができるのです。

ただし、著作権者の能力により通常1万部程度しか売れていないのであれば、1万部を超えた分の損害賠償はできないことになっています。このケースに当てはめれば、求めることができる損害賠償額は100円×1万部=100万円までということです。

侵害者の利益額を損害額とする

著作権侵害行為によって侵害者が実際に利益を得ていた場合は、その利益額を損害額として推定します(著作権法114条2項)。この場合の利益は「限界利益」を指すとされています。限界利益とは、製品を追加的に売り上げる際、売上から変動費用を差し引いた額のことです。

例えば、1部100円で販売する製品を2,000部販売する際の紙代が1部5円、コピー代が1部10円の場合、1部追加販売にかかる追加費用は、1部15円です。この場合の限界利益率は85%となり、損害額は、100円×2,000部×85%(限界利益率)=17万円となります。

ライセンス料相当額を著作権者の損害額とする

ライセンス料に相当する額を著作権侵害の損害額とすることもできます(著作権法114条3項)。

「相当な損害額」の認定

認定額推定の規定によっても、損害額を算定することが困難な場合もあります。その場合は裁判所が口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づいて「相当な損害額」を認定します。これは、著作権法114条の5の規定によるものです。

人格権侵害の慰謝料の算出

著作権は財産権ですが、ほかにも著作者の人格的利益である著作者人格権という権利が存在します。悪質なケースなどで著作者に精神的苦痛を与えた場合は、著作者人格権を侵害したとして、精神的損害(慰謝料)が認められることがあります(民法710条)。

著作権侵害で損害賠償を請求された場合の対応方法

著作権侵害で損害賠償を請求された場合の対応方法

著作権を侵害したとして損害賠償を請求された場合には、どのような対応を取れば良いのでしょうか。ここでは、損害賠償請求をされた場合の対応方法を解説します。

損害賠償の内容や賠償額などを確認

損害賠償請求の方法としては、いきなり裁判を提起されるということもあり得ますが、まずは内容証明郵便などによって、任意の支払いを求められることが多いと思われます。損害賠償請求書が届いたら、内容を確認しましょう。請求の内容に心当たりがない場合、損害賠償を請求する事由に不満がある場合は反論します。

また、損害賠償額が妥当なものであるのかどうかも確認しておきましょう。金額に根拠がない場合や法外な金額である場合は、減額を求めていくことになります。

相手方と交渉を行う

内容証明郵便が送られてきたのであれば、相手方もできれば訴訟ではなく、交渉による解決を望んでいるものと考えられます。加害者としての責任を感じたとしても、相手の要求にすべて応じる必要はありません。相手方の要求を確認し、賠償額の減額を求めたいのであればその意思を伝え、必要であれば支払いの猶予ができるのかどうかを確認するようにしましょう。示談交渉には裁判に発展するのを防ぐ効果もあります。

訴訟での解決を目指す

相手との示談交渉がうまくいかず、決裂した場合は訴訟へと発展する可能性があります。訴訟になった場合、裁判所から訴状が届き、答弁書の提出を求められるので、期日までに必ず提出してください。答弁書を提出していると、どうしても出席できない場合などに、第1回口頭弁論期日に限って欠席が認められます。答弁書も出さず、裁判に欠席した場合は、相手方の主張がすべて認められて結審してしまいます。

訴訟では双方の正当性を主張し合いますが、その中で和解による解決の道が見えてくるかもしれません。

弁護士のサポートを得る

損害賠償請求をされた場合、反論や交渉には専門的な知識が必要になり、精神的な負担も大きなものになります。また、相手と揉めてしまい収拾がつかなくなってしまう可能性もあります。仮に、損害賠償額が支払えないような場合、支払いの分割を相手方に交渉することになりますが、このような交渉も難航する可能性が高いでしょう。少しでも良い解決を図ろうと思うのであれば、弁護士のサポートを求めることをおすすめします。

アークレスト法律事務所はネットトラブルによって、損害賠償請求を受けた際のサポートにも力を入れています。著作権侵害で内容証明郵便が送られてきた、損害賠償請求の訴訟を提起されているという場合でも、適切な対応が可能です。不安や心配に思っていることがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。

野口 明男 弁護士

監修者

野口 明男(代表弁護士)

開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。