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爆サイで誹謗中傷に遭った場合の慰謝料はいくらが相場?参考となる判例も紹介
2021.10.26
地域の口コミが広く集まる匿名掲示板「爆サイ」には、日々さまざまな話題のスレッドで口コミが投稿されています。なかには心ない投稿により誹謗中傷の被害に遭うケースも少なくありません。爆サイをはじめとするネット上で誹謗中傷の被害に遭った場合に、民事訴訟を提起して相手方に損害賠償請求を行えるケースがあります。
加害者の特定と慰謝料の請求は、再犯の防止にも効果的です。ここでは、爆サイで誹謗中傷に遭った場合に慰謝料を請求する方法や、受け取れる慰謝料の金額などを解説していきます。
目次
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爆サイで誹謗中傷に遭った場合の慰謝料はいくら?

爆サイで誹謗中傷に遭った場合、投稿の内容が被害者の権利を侵害していることが認められれば、慰謝料を請求することが可能です。金額は被害内容や状況に応じて異なりますが、爆サイに誹謗中傷を書き込まれた場合の慰謝料の目安はおおよそ次の通りです。

慰謝料請求を行う場合の弁護士費用
慰謝料を請求するには裁判を含む一連の手続きが必要です。慰謝料を受け取れるとはいっても、弁護士費用がかかりすぎるのではないか、と不安になるかもしれません。
一般的な民事事件においては、勝訴・敗訴にかかわらず弁護士費用は自己負担が原則です。したがって、裁判では受け取った賠償額から弁護士費用を差し引いた金額が実際に手元に残る金額となります。
ただし、誹謗中傷のような不法行為に基づく損害賠償請求の場合には、例外的に弁護士費用の一部も請求の対象として認められています。投稿内容が不法行為に当たる場合には、弁護士費用を含めた請求が可能でしょう。
なお、弁護士費用の相場は以下のとおりです。実際の費用は事務所やケースに応じて異なるため、詳細は各法律事務所に確認してください。

慰謝料の参考になるネット誹謗中傷の判例

それでは、実際にネット上で誹謗中傷を受けた例では、どのくらいの慰謝料請求が認められたのでしょうか。誹謗中傷について争われた判例と慰謝料の金額をご紹介します。
判例①根拠のない誹謗中傷
平成25年8月29日に行われた仙台地方裁判所の判決です。
事件のあらまし
被告は「原告が過去に発表した論文にねつ造や改ざんがある」として、原告が総長を務める大学への告発状を、運営しているホームページ上に掲載。そのホームページは「原告の研究不正疑惑の解消を要望する会(フォーラム)」と名づけられました。
裁判結果
ホームページで指摘された論文のねつ造や改ざんといった不正行為を裏付ける証拠が不十分だったため、裁判では名誉毀損が認められました。その結果、被告は慰謝料100万円の支払いと弁護士費用10万円(計110万円)の支払いを命じられています。
参考:裁判例結果詳細 | 裁判所 – Courts in Japan
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=83796
判例②第三者によるなりすまし
平成29年8月30日大阪地方裁判所の判決です。
事件のあらまし
被告が原告の顔写真と名前(アカウント名)を用いて原告に成りすましたうえで、掲示板に第三者を罵倒するような書き込みがなされました。
裁判結果
裁判では被告がなりすまし行為を行ったかどうかが争点となりましたが、被告自身が投稿を行った旨の回答があったことや、それに対する反証もなかったため、名誉毀損が認められました。被告には慰謝料60万円に、弁護士費用として特定手続きのための費用58万6,000円と本訴訟の12万円(計130万6,000円)の支払いが命じられています。
参考:裁判例結果詳細 | 裁判所 – Courts in Japan
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=87071
判例③ツイッター上での名誉毀損
平成25年7月16日東京地方裁判所の判決です。
事件のあらまし
原告は著名な漫画家であり、被告は原告が描いた似顔絵を原告に無断で画像投稿サイトに投稿。原告が削除依頼をしたところ、被告はいったん削除に応じたものの、その後になってツイッター上で「原告から殺害予告をされた」という旨の投稿をしたというものです。
裁判結果
原告があたかも被告へ殺害予告をおこなったかのように見せることで、原告の社会的信用を低下させたとして、名誉毀損が認められています。なお、実際には被告のツイート上では「〇害予告された」などと伏字にしていましたが、一般のネットユーザーであればこれが「殺害予告」を意味するのは明らかであると判断されました。
被告には、名誉毀損に対する慰謝料30万円と、あわせて争点となっていた著作権侵害に対して20万円の支払いが命じられました。
参考:裁判例結果詳細 | 裁判所 – Courts in Japan
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail7?id=83416
誹謗中傷の慰謝料額が決まる仕組み

誹謗中傷に対する慰謝料の金額は、ケースによって大きな幅があります。例えば車を壊された事例であればその車の価値や修理費用、といったように損害を被った金額がわかりやすいのですが、慰謝料は精神的苦痛に対し支払われるもののため、損害額を算定するのは困難です。
そこで、民事訴訟法では以下のように定められています。
第二百四十八条 損害が生じたことが認められる場合において、損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。
引用元:民事訴訟法 | e-Gov法令検索
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=408AC0000000109
誹謗中傷被害の慰謝料は「立証することが極めて困難」な事例にあたります。そのためここまでに紹介してきた判例の慰謝料金額は、裁判所の裁量により判断したものです。
具体的には、
- 誹謗中傷の内容が悪質か
- その投稿がどの程度伝播するか
- どういった範囲に影響をおよぼすか
などが考慮され、金額の多寡を決定しているようです。
爆サイで誹謗中傷に遭ってから慰謝料請求するまでの流れ

ここからは、爆サイで誹謗中傷に遭って加害者に「慰謝料を請求したい」と考えた場合、どのような手続きが必要になるか解説します。爆サイのような匿名掲示板の場合、訴訟を起こす前に投稿者本人を特定しなければなりません。投稿者特定のための手続きから裁判に至るまでの流れをステップごとに解説します。
1.爆サイにIPアドレスとタイムスタンプの開示を求める
最初に、「爆サイ」へIPアドレスとタイムスタンプの開示を請求します。
IPアドレスとは、サイト投稿に用いるスマートフォンやパソコンに割り振られる個別の識別符号のこと。タイムスタンプは爆サイに投稿した時刻に関する記録です。ここではまだ投稿者の個人情報は一切わかりませんが、これらの開示を受けることで、「いつ、どのパソコンやスマートフォンから投稿が行われたのか」を特定することが可能になります。
爆サイにはログ開示をするための依頼フォームが設定されているため、まずはそこから問合せましょう。
2.加害者が利用したプロバイダを特定する
次は取得したIPアドレスを用いて、加害者の利用したプロバイダを特定します。IPアドレスがわかれば、プロバイダはすぐに割り出すことが可能です。
プロバイダとは、インターネットへの接続サービスを提供する事業者を指します。固定回線を設置している業者や、携帯キャリアがプロバイダです。プロバイダは加害者と直接ネット回線の契約を交わしているため、投稿者の氏名や住所といった情報を持っています。
3.プロバイダに加害者の個人情報開示を求める
プロバイダに対して加害者の個人情報開示を求めることで、ようやく誹謗中傷の投稿をした人物の身元を特定できます。
また、ここまでの手続きには時間がかかるため、プロバイダに対してログを保存するよう要請することも必要です。というのも、プロバイダに残されているログは保存期間が決まっており、だいたい3カ月~半年ほどで「誰がいつ、どのサイトにアクセスしたか」といった記録が自動的に削除されるためです。
ログが消えると個人を特定することもできなくなるため、慰謝料を請求するためにはプロバイダを突き止めるまでのスピード感も求められます。
4.個人情報をもとに民事訴訟を起こす
投稿者本人を特定できたら、民事訴訟の提起です。名誉毀損などを理由とする不法行為に基づき、損害賠償請求を行います。
加害者側が裁判に応じてくれるか不安に思われるかもしれませんが、万が一被告が無視して欠席を続けるなどした場合、原告の主張を自白したものとみなされることが民事訴訟法第159条第1項にて定められています。被害者側が主張したとおりの要求が認められやすいため、無視される心配はないでしょう。
民事訴訟を提起して慰謝料を請求することは、きちんと責任を追求したい被害者にとって加害者を強制的に事件に関与させることができる点もメリットと言えます。
爆サイ上のトラブルで慰謝料を請求するなら弁護士へ相談を

爆サイに誹謗中傷の口コミを投稿されてから慰謝料請求をするまでには、爆サイへのIPアドレス開示請求に始まりプロバイダへのログ保存請求、開示請求と様々な手続きを踏む必要があります。さらに、爆サイの運営者やプロバイダが開示請求に応じるかどうかは任意のため、慰謝料請求の前にも裁判所を通した手続きが必要になるケースがほとんどです。
こうした煩雑な手続きを円滑に進めるためにも、被害に気づいたら早い段階で弁護士へ相談されることをおすすめします。アークレスト法律事務所は、開示請求や投稿の削除請求手続きなど、インターネットトラブルの解決に関して豊富な実績を有しています。誹謗中傷被害にお悩みの方は、ぜひご相談ください。

監修者
野口 明男(代表弁護士)
開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。