開示請求

IPアドレスの開示請求は警察で対応してもらえる?手続き方法や相談窓口を紹介

2021.11.02
IPアドレスの開示請求は警察で対応してもらえる?手続き方法や相談窓口を紹介

爆サイや5ちゃんねるなどのネット掲示板やSNSで誹謗中傷を受けた場合、加害者のIPアドレスから投稿者を特定できれば、損害賠償請求や示談交渉に持ち込むことができます。

悪いことをした人なら、警察が取り締まるのが筋ではないかと思うかもしれませんが、実際は必ずしも警察が出動するとは限りません。そこで本記事では、IPアドレスの開示と警察の対応について解説していきます。

IPアドレスの開示請求は警察で対応可能?

IPアドレスの開示請求は警察で対応可能?

結論から言うと、名誉毀損などの事実があれば、警察が捜査の中でIPアドレスの開示を関係サイトなどに請求する可能性はあります。ただし多くの場合は被害者地震で開示請求をすることが必要です。

削除依頼や開示請求は原則個人で対応が必要

ネット記事の削除依頼を警察に対応してもらうことは、原則できません。警視庁のホームページには、インターネット上で誹謗中傷等の被害を受けたときの対応に関して、下記のように記載されています。

「誹謗中傷を受けたり、自分のメールアドレスや電話番号などの個人情報が載せられたような場合は、その掲示板のアドレスを確認し、当該掲示板の管理者、もしくはサーバ管理者に削除依頼をする」

引用元:警視庁
https://www.keishicho.metro.tokyo.jp/sodan/nettrouble/jirei_other/slander.html

これはつまり、「ネット上の誹謗中傷や個人情報暴露は、自らサイト管理者やプロバイダ(通信業者など)に削除依頼して解決するように」ということです。基本的に掲示板やSNSなどに書き込まれた投稿の削除依頼は、自分自身で、あるいは弁護士を通してすることになります。

犯罪にかかわる場合は警察署で対応可能

ただし、あわせて下記のようにも記載されており、書き込み内容が犯罪に関わるときは、警察で対応してもらえる可能性があります。

「名誉毀損や業務妨害等の犯罪に該当するような場合は、お住まいの地域を管轄している警察署で相談する。」

引用元:警視庁
https://www.keishicho.metro.tokyo.jp/sodan/nettrouble/jirei_other/slander.html

ネット上で名誉毀損や業務妨害などの被害を受けた場合、地域の警察署に相談が可能です。刑事事件化した場合は、警察の捜査過程で書き込みをした犯人が特定され、逮捕や起訴の段階で住所・氏名が公になります。

警察に相談が可能なケース

警察に相談が可能なケース

警察が動くのは書き込みに犯罪性が疑われるときです。警察でIPアドレスの開示請求の対応ができる可能性のある例をいくつか紹介します。

名誉毀損罪、侮辱罪

ネット上のトラブルでよくあるので、名誉毀損罪や侮辱罪に当たる内容の書き込みです。名誉毀損罪は事実を摘示して他者を貶める内容に適用されるのに対し、侮辱罪は事実を摘示せずに中傷した場合に該当します。

  • 名誉毀損罪:「〇〇は経理部長と不倫関係にある」、「〇〇会社は欠陥を隠蔽している」など
  • 侮辱罪:「経理部の〇〇は無能で役に立たない」など

上記のような書き込みに対して、証拠とともに被害を警察に訴えれば、捜査をしてもらえる可能性があるでしょう。しかし、罪を立件するのは難しいため、民事で解決するように警察から促されるケースも多いです。

脅迫罪

ネット上で、生命や身体、財産、名誉などに危害を加えると脅された場合、脅迫罪が成立する可能性があり、刑事事件の対象となります。例えば、以下のような書き込みがなされた場合です。

  • 「お前の顔写真を5ちゃんねるにアップしてやる」
  • 「お前の家族を海に沈めてやる」

威力業務妨害罪

威力(暴力や脅しなど)を用いて業務を妨害するのが、威力業務妨害罪です。例えば、下記のような無差別殺人や放火の犯行予告は威力業務妨害罪に当たる可能性があります。

  • 「〇〇店にガソリンを撒いて放火してやる」
  • 「〇〇駅構内で今日大量殺人をする」

こういった書き込みを見つけたら、すぐに警察署に相談するようにしてください。面白半分で書き込む人もいますが、過去には予告通りに実行した犯人もいるため、放置しておくのは危険です。

偽計業務妨害罪

事実無根の指摘やデマで業務を妨害するような書き込みを見つけたら、偽計業務妨害罪の疑いで警察が動く可能性があります。例えば、以下のような書き込みです。

  • 「この店は、腐りかけの野菜や肉を使って調理している」
  • 「添加物を使用しているのに、完全無添加と謳っている」

警察に依頼する場合の連絡先

警察に依頼する場合の連絡先

前述の犯罪に該当する書き込みを見つけた場合や、それ以外でも警察への相談が適当だと判断した際は警察に相談してみてください。

最寄りの警察署を訪ねるほか、電話で相談することもできます。電話番号は全国共通で、短縮ダイヤル「#9110」です。事情を説明すれば、サイバー犯罪対策課につないでもらえるはずです。

なお、被害届を提出するときは必ず警察署に足を運ぶことになります。

警察に相談する際の準備

警察に相談する際の準備

警察に相談する際は、事前に名誉毀損や誹謗中傷を受けたことを証明するものを準備しておく必要があります。もし可能ならばパソコンで投稿をプリントアウトし、それが難しければ、スマホのスクリーンショットで画面を保存するなどして、提出できるように印刷しておくのがよいでしょう。

また、実際にネット上に該当の書き込みが存在するのかを確認してもらうために、サイトページのURLを控えておくことをおすすめします。

該当の書き込みがなされたサイト運営者に対して「ログの保存」を依頼しておくことも重要です。ネットにアクセスした際のログ情報は、一定期間を過ぎると削除されてしまうため、急がないと犯人を特定できなくなる可能性があります。

警察で対応が難しい場合のIPアドレス開示請求

発信者情報開示請求を行う流れ

警察で対応を断られた場合や前向きな返事をもらえなかった場合は、誹謗中傷に該当する書き込みをした犯人を自ら特定し、その責任を追及することになります。

その場合は、プロバイダ責任制限法に基づきサイト運営者にIPアドレスの開示を請求し、IPアドレスからプロバイダを割り出した後、投稿者の個人情報の開示をプロバイダに請求します。

1.開示可否の要件を確認する

投稿者の情報開示を求める際は、まず自分がどのような権利侵害にあったかが明確でなければなりません。権利の侵害があったことを証明できる証拠も必要です。

また、プロバイダに残されている投稿者に関する情報が一定期間を過ぎると削除されてしまうため、書き込みの日時が古くないかも確認しておきましょう。

2.IPアドレス開示請求を行う

投稿者の個人情報は、プロバイダ(投稿者が契約しているインターネット通信会社など)が保有しています。そのプロバイダを特定するために必要なのが、サイトにアクセスしたときの投稿者のIPアドレスです。

そこで、まずはサイト運営者に対して、投稿者のIPアドレス開示を請求します。

3.プロバイダにアクセスログ保存を要請する

問題となる書き込みをした人が利用したプロバイダを特定できたら、そのプロバイダにアクセスログの保存を要請します。一定期間を過ぎるとログ情報は削除されてしまう可能性があるためです。

なお、プロバイダに対してアクセスログの保存を要請する際は、以下の2つの方法が考えられます。

  • 書面を使った要請
  • 発信者情報消去禁止の仮処分命令の申立て

4.プロバイダに情報開示請求を行う

アクセスログ保存要請ができたら、プロバイダに投稿者の情報を開示するよう請求します。情報開示請求を行う方法は、以下の2点です。

  • 発信者情報開示請求書:書面を送付する
  • 発信者情報開示請求訴訟:裁判所に情報開示命令を出してもらうための手続を行う

プロバイダに投稿者の個人情報を開示するよう書面で要請しても拒否されることが多いため、結果的に「発信者情報開示請求」訴訟の判決で開示命令を出してもらうのが一般的です。

IPアドレス開示請求に警察が対応できない場合は弁護士へ

IPアドレス開示請求に警察が対応できない場合は弁護士へ

警察は犯罪捜査を行う機関であるため、悪質な書き込みであっても犯罪立件できない案件で捜査を進めることはほとんどありません。投稿者を特定するには、自分自身で発信者情報の開示請求を進める必要があります。

といっても、実際は弁護士に手続きを依頼するのが一般的です。なぜなら、IPアドレスや個人情報の開示請求は、損害賠償請求や示談交渉といった法的手続きのための準備に過ぎません。IPアドレスや個人情報の開示請求も、弁護士を通したほうがサイト運営者・プロバイダとスムーズにやりとりできるケースが多いです。

アークレスト法律事務所は、匿名掲示板やSNSをはじめとする様々なネット問題に取り組んできた弁護士集団です。ネットの誹謗中傷等でお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

野口 明男 弁護士

監修者

野口 明男(代表弁護士)

開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。