逮捕歴を履歴書に書かなければいけないケースを分かりやすく解説
逮捕歴を履歴書に書かなければいけないケースを分かりやすく解説
2025.04.01
逮捕歴があっても履歴書に書かなくてもよいケースと、書かなくてはいけないケースがあります。基本的には、前科か前歴かで申告義務の有無が決まりますが、職種によって異なることもあります。
また、前科があっても刑の言い渡しが効力を失った場合は、履歴書での申告は不要です。 ここでは、逮捕歴を履歴書に書かなくてはいけないケースを紹介するとともに、書かずに隠したときのリスクについて解説します。
目次
履歴書に記載が必要?そもそも逮捕歴とは?

過去に逮捕された経験がある方は、「履歴書に記載する必要があるのだろうか」と悩むことがあると思います。以下では、そもそも逮捕歴とは何か、逮捕歴と前科・前歴との違いについて説明します。
逮捕歴とは?
逮捕歴とは、被疑者として捜査機関に身柄を拘束された履歴のことをいいます。過去に何らかの罪を犯して、警察に逮捕されたことがある人は、逮捕歴があるということになります。
捜査の結果、不起訴処分になった場合や裁判で無罪になったとしても、逮捕されたという履歴がなくなるわけではありませんので、逮捕歴は残ります。
前科・前歴との違い
逮捕歴と混同しやすい用語に「前科」や「前歴」というものがあります。
前科とは、刑事裁判で有罪判決を受けて、その判決が確定した履歴をいいます。刑の種類には、死刑、懲役、禁錮、拘留、罰金、科料がありますが、どの種類の刑罰であっても有罪となれば前科になります。また、執行猶予が付いたとしても、前科になる点に注意が必要です。
前歴とは、捜査機関に犯罪の嫌疑をかけられて、捜査の対象となった履歴をいいます。逮捕歴は、捜査機関に「逮捕」されたときにつきますが、前歴は、逮捕の有無にかかわらず捜査対象になっただけでつきますので、前歴の方が広い概念といえるでしょう。
逮捕歴を履歴書に書かなければいけないケース

逮捕歴に加えて前科があるケース
逮捕歴を履歴書に書かなければいけないのは、逮捕歴に加えて前科があるときです。
具体的には、刑事裁判で有罪になり、以下のような刑罰を科された場合には、履歴書への記載が必要になります。
- 懲役刑
- 禁錮刑
- 拘留
- 罰金刑
- 科料
なお、執行猶予が付いていたとしても、有罪判決であることには変わりありませんので、履歴書への記載が必要です。
履歴書に賞罰欄が設けられているケース
逮捕歴があり前科が付いていても、履歴書に書かなくてもよい場合もあります。逮捕歴を書かなければいけないのは、履歴書に賞罰を記入する欄があるときです。賞罰欄がなければ、申告の義務はありません。
自分で履歴書を用意するときは、賞罰欄のないタイプを選ぶことも可能です。その場合も、面接で逮捕歴について聞かれたら前科があることを申告する義務があります。前科があるのに履歴書の賞罰欄で申告しなかったり、面接で虚偽の申告をしたりすると、就職が決まっても内定取り消しや解雇となることがあるので注意しましょう。
逮捕歴があっても履歴書に書かなくてもよいケース
逮捕歴は、履歴書に記載が必要な「賞罰」にはあたりませんので、逮捕歴があっても履歴書に記載する必要はありません。また、以下のようなケースも逮捕歴と同様に履歴書への記載は不要です。
不起訴処分になったケース
履歴書に記載が必要になるのは、有罪判決が確定した場合です。そのため、そもそも起訴されなかった場合には、刑罰が科されたわけではありませんので、逮捕歴があったとしても履歴書への記載は不要です。
裁判で無罪判決が確定したケース
起訴されて刑事裁判になったとしても、無罪判決が確定したケースであれば、逮捕歴があったとしても履歴書への記載は不要です。
なぜなら、無罪判決が確定すれば、刑罰が科されることはありませんので、履歴書に記載が必要な「賞罰」には該当しなくなるからです。
現在裁判中で刑罰が確定していないケース
刑事裁判になったとしても、有罪判決が確定していないのであれば、履歴書に記載する必要はありません。
たとえば、就職活動をしている時点では刑事裁判中で、まだ判決の言い渡しを受けていないといったケースがあります。裁判中という事情も履歴書に記載すべき項目ではありませんので、現在裁判中なら逮捕歴を含めて何も記載する必要はありません。
執行猶予期間が過ぎているケース
有罪判決が確定したとしても執行猶予が付き、執行猶予期間が経過した場合には刑の言渡しは効力を失いますので、履歴書への記載は不要になります。
交通違反を犯して反則金を支払ったケース
スピード違反などの交通違反を犯した場合、警察から反則金の支払いを求められることがあります。反則金の支払いをした人の中には、「罰金を支払ったため、前科が付いた」と考える人も少なくありませんが、反則金は前科にはなりません。
反則金は行政処分、罰金は刑事処分という違いがあり、行政処分である反則金は、履歴書への記載が必要な「賞罰」にはあたりません。そのため、交通違反を犯したとしても、「罰金」ではなく「反則金」であれば、履歴書に記載する必要はありません。
ただし、トラックやタクシーの運転手など車を扱う職種では、告知義務が生じますので、面接時に正直に伝えた方がよいでしょう。
逮捕歴を履歴書に書かずに隠し続けるリスク

履歴書に賞罰欄がなく、面接でも逮捕歴について聞かれずにそのまま就職が決まったら、どんなリスクがあるのかを説明します。
逮捕歴がばれると信用が落ちる
就職後に逮捕歴がばれると、上司や同僚からの信用が落ちるかもしれません。たとえ有罪判決を受けていなくても、「逮捕された=罪を犯した」というイメージが強いからです。
なお、逮捕歴がばれると「会社から懲戒解雇されてしまうのではないか」と不安になる方もいるかもしれません。しかし、逮捕歴があったとしても、前科に該当しなければ逮捕歴のみを理由として懲戒解雇をされることはありません。万が一、逮捕歴を理由に懲戒解雇されたとしても、無効な処分といえますので、しっかりと争っていけば処分の無効が認められるはずです。
罪悪感や発覚の恐怖でストレスを感じる
逮捕歴を隠して就職しても、隠しているという罪悪感や、ばれるのではないかという恐怖心を抱えながら働くことになります。罪悪感や恐怖感で仕事に支障が出たり、精神的な負担になったりするかもしれません。
逮捕歴を隠しながら働いてばれるリスクを考えると、最初から申告をしておく方が気持ちよく働けるかもしれません。履歴書に書かなくても、面接で事実を伝えれば、誠意として受け取ってもらえる場合もあるでしょう。
逮捕歴を履歴書に書くときのポイントと注意点

逮捕歴があり、有罪の前科がある場合には、履歴書の賞罰欄への記載が必要になります。以下では、履歴書への逮捕歴(前科)の記載方法と、刑の消滅による注意点について解説します。
具体的な年月と正式な刑罰名を記載する
逮捕歴を履歴書に書くときは、刑を受けた年と月を記載します。「刑を受けた」とは、刑が確定した日です。日付までは必要ありません。
また、受けた刑罰名を書きます。たとえば、高速道路走行中に時速40㎞以上で罰金刑になった場合は、「道路交通法違反(速度超過40㎞以上)で罰金刑」です。懲役や執行猶予を書くときは、何年の判決を受けたのかも記載します。さらに、刑期を終了した場合は「刑期終了」と加えましょう。[注1]
[注1]埼玉県警察:交通違反の点数・反則金等の一覧表(その1)
刑の消滅後は記載しなくてもよい
有罪判決を受けたとしても、逮捕歴の申告義務が生じない場合があります。それが、刑が消滅したときです。
刑が消滅するのは、以下のときです。
- 禁錮刑と懲役刑では、刑の執行後10年を経過したとき
- 罰金刑では、 刑の執行後5年を経過したとき
どちらも、期間中に罰金刑以上の刑に処せられていないことが条件です。上記の法律は、前科のある人がその刑に服したあとに更生を妨げることのないように作られました。刑が消滅した前科は、前歴と同じように扱われ、履歴書の賞罰欄への記載は必要ありません。[注2]
[注2]刑法(刑法三十四条の2)
https://www.japaneselawtranslation.go.jp/ja/laws/view/3581#je_pt1ch6at5
履歴書に逮捕歴が必要なのは基本的には「前科」があるとき
逮捕歴を履歴書に書かなくてはいけないのは、前科があり、刑が消滅していないときです。例外として、車の運転手など車を扱う職種以外のスピード違反(普通道路で超過が時速30㎞未満、高速道路で超過が時速40㎞未満)は履歴書に書かなくてもかまいません。
また、履歴書に賞罰を書く欄がないときも申告義務はありません。
ただし、逮捕歴を隠したときのリスクを考えると、履歴書や面接で自ら申告し、先方に納得してもらったうえでの就職が望ましいでしょう。

監修者
野口 明男(代表弁護士)
開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。
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