犯罪歴・逮捕歴

逮捕歴があると就職に不利になる?気になる影響を詳しく解説

2024.01.17
逮捕歴があると就職に不利になる?気になる影響を詳しく解説

逮捕歴があると、就職で不利になるイメージを持っている人は少なくないでしょう。実は、逮捕歴があっても就職にはほとんど影響がありません。なぜなら、自分から逮捕歴を申告する義務はないからです。

ただし、経歴詐称など注意する点もあります。ここでは、前科と前歴の違いや就職に影響するか、また就職先にばれたときの対処方法を説明します。

1.そもそも逮捕歴とは?前科や前歴との違い

そもそも逮捕歴とは?前科や前歴との違い

そもそも逮捕歴とは、逮捕された記録のことです。最終的に有罪判決を受けるかどうかではなく、被疑者として捜査機関に身体拘束を受けた場合に逮捕歴が残ります。

逮捕されたあとの処遇により、前科になるか前歴が付くかが異なります。前科とは、逮捕後に起訴され裁判で有罪判決を受けた人に残る記録です。

一方、前歴になるのは下記の場合が挙げられます。

  • 被疑者として捜査機関の捜査対象になった人
  • 逮捕されたが不起訴処分となった人
  • 起訴されたが裁判で無罪判決を受けた人

つまり、前科と前歴の違いは裁判で有罪判決を受けたかどうかです。比較的罪の軽いスピード違反や器物破損でも、罰金刑が決まると前科が付きます。しかし、重犯罪の被疑者になったとしても、嫌疑不十分で起訴されなければ前歴調書に記録が残るだけで前科にはなりません。罪の重さで変わるわけではない点を理解しておきましょう。

2.逮捕歴は就職活動に影響を与える?

逮捕歴は就職活動に影響を与える?

自分に逮捕歴があった場合、就職活動にほとんど影響がないケースと、不利になってしまうケースがあります。具体的にどのような影響があるのか説明します。

2-1.逮捕歴があっても、前歴にとどまれば就職にほとんど影響しない

刑事事件で逮捕歴があっても、前科ではなく前歴にとどまるのであれば、就職にはほとんど影響がありません。なぜなら、就職面接や履歴書で前歴を自主的に申告する義務はないからです。

前歴だけの場合は、履歴書の賞罰欄への記載は不要です。ただし、面接で聞かれたときに虚偽の返答をすると、入社後に前歴が発覚したときに経歴詐称とされることもあります。自ら進んで逮捕歴を申告する義務はありませんが、虚偽の申告をしてはいけません。

これに対し、前科がある場合、履歴書や面接で前科の有無を虚偽報告すると、経歴詐称で解雇処分になる可能性もあります。賞罰を記入する欄がある履歴書を使うときは、前科を記載しなければなりません。

また、医師や弁護士などの国家資格は、前科があると資格が失効することもあります。

2-2.前職を懲戒解雇された場合は就職に不利になる可能性がある

逮捕を理由に前職を懲戒解雇されてしまった場合は、就職活動が不利になってしまう可能性があります。

懲戒解雇とは、会社の秩序を乱すほどの大きなトラブルを起こした人物に対して与えられる制裁です。懲戒処分の中でも特に重い制裁であるため、懲戒解雇を受けた人材を雇うことは企業にとってリスクとなります。

そのため、企業側は入念に求職者の情報を調べることが多く、調査により逮捕歴や懲戒解雇の事実が明らかになることがあります。懲戒解雇された理由を求職者が開示する必要はありません。しかし、企業側から尋ねられた時に回答拒否や虚偽の報告をすると、事実が発覚した際に大きなトラブルに発展する可能性があるので注意しましょう。

3.逮捕歴が就職先にばれる原因とそのときの対応

逮捕歴が就職先にばれる原因とそのときの対応

逮捕歴を申告せずに入社できても、就職先に発覚してしまう可能性はあります。ここでは、逮捕歴がばれる原因とその対応について説明します。

3-1.ネットの情報

就職先に逮捕歴がばれる原因のひとつは、SNSやネットニュースなどのネット情報です。

前科があり有罪判決を受けた場合、あるいは不起訴でも逮捕された場合には、名前がネットニュースに載ることがあります。実際に罪を犯していなくても、嫌疑がかかっただけでSNS上に情報が出回ることもあるのです。それらの情報は、年月が経っても残ります。

逮捕歴が就職先の同僚や上司の目に入れば、解雇まではされなくとも仕事を続けにくくなるかもしれません。そうなる前に、ネット上にある情報を削除することも選択肢に入れましょう。とくに、嫌疑がかかっただけで起訴されなかった場合などは、プライバシー権を根拠に情報の削除を請求すれば、依頼が認められることがあります。

有罪判決を受けたときは、そのネット情報に公益性が認められることが多く削除が難しくなります。しかし、事件から時間が経過していたり、事件とは関係ないプライバシーに関する内容であったりする場合、削除が認められる可能性があります。まずは、ネット情報の削除に詳しい法律事務所に相談してみるとよいでしょう。

就職後に逮捕歴がばれても、逮捕歴だけでは解雇の理由になりません。就業規則に前科や前歴が解雇事由になると明記されていない、経歴詐称をしていないなどといった場合であれば、たとえ解雇されてもその解雇を不当として無効主張することも可能です。

3-2.関係者からの情報

前職を逮捕歴により懲戒解雇となっていた場合、その情報が関係者を介して就職先に伝わる可能性も考えておかなくてはいけません。同じ業種であれば、就職先にも逮捕歴がばれる可能性が高いでしょう。

しかし、前科や前歴などの個人情報を漏洩することは許されません。もし、関係者が逮捕歴を漏らしたとすれば、プライバシーの侵害や個人情報保護法違反の問題があります。この場合も、法律事務所に相談しましょう。

4.逮捕歴の影響を受けずに就職を行う方法

逮捕歴の影響を受けずに就職を行う方法

逮捕歴が企業にばれなければ就職活動にほぼ影響がないとは言え、可能な限りリスクを排除したいところでしょう。ここで、逮捕歴のある人も影響を受けずに就職する方法をご紹介します。

4-1.就職支援を活用する

犯罪歴がある人を対象とした、「コレワーク」を始めとする就職支援を活用すると、逮捕歴があってもスムーズに就職活動を行える可能性があります。

地域によっては、前科のある人が社会復帰できるように就労をサポートするNPO団体や公的機関が設置されています。団体や機関の中には、就職先の紹介以外に、就職活動の支援や企業への啓蒙活動などを行うところもあります。これらの就職支援活動へ賛同している企業は、逮捕歴がある人の雇用にも前向きです。

また、「身元保証制度」という、身元保証人を確保できない保護対象者を雇用した際に、企業へ適応される制度があります。労働者が損害を与えた場合に企業へ見舞金が支払われるもので、雇用のしやすさにもつながっています。

4-2.信用度向上につながる資格を取得する

自身の信用度を上げるために資格を取得するという方法があります。資格を有することで信用度が上がり、就職で有利に働く可能性があるでしょう。

ただし、前科の有無によって取得できない資格も存在するので注意してください。一般的に国家資格は欠格事由に前科の有無を定めているケースが少なくありません。前科の有無で取得に制限がかかる資格例は以下のとおりです。

信用度向上につながる資格を取得する

資格には国家資格以外にも、民間の企業や団体が認定する民間資格もあります。民間資格は、前科の有無に関係なく取得できるケースが多いです。民間資格でも、知識や技術に対して一定の信用度を高める効果に期待できます。

4-3.雇用されずに働く選択肢を見つける

逮捕歴のある人が働いて収入を得る方法には、企業に雇われる方法以外にも様々な選択肢が存在します。会社員以外に収入を得る選択肢の例には、以下のものが挙げられます。

  • 起業して自分で事業を経営する
  • 会社に属さずフリーランスで仕事をする

自ら事業を起こせば、逮捕歴に関係なく仕事で収入を得ることが可能です。ただし、起業は事業や経営のノウハウが必要となるので、初心者が準備なしで挑戦するのは難しい場合があります。その際はフリーランスで仕事を始めてみると良いかもしれません。

フリーランスは会社に属さず、自分の知識や技術を活かして仕事をする働き方です。Webライターや動画編集・投稿、プログラミングなど幅広い業種でフリーランスという働き方が浸透しています。仕事につながる知識やスキルがあれば、フリーランスとして働くことは難しくないでしょう。

このように、会社に就職する以外の選択肢を検討することで、逮捕歴に左右されずに自分の働く場所を確保することも可能です。

5.逮捕歴を削除したい・逮捕歴を理由に解雇された場合は弁護士に相談

逮捕歴を削除したい・逮捕歴を理由に解雇された場合は弁護士に相談

逮捕歴があっても、ほとんどの場合は就職には影響しません。経歴詐称をしなければ、就業規則で前科や前歴を問われない限り申告の義務はないからです。

ただし、就職先に逮捕歴がばれてしまう可能性もあります。そうなると、解雇されたり、仕事を続けにくい環境になったりするかもしれません。逮捕歴があるだけでは懲戒解雇の理由にはなりません。

ネット上の、事実とは異なる情報や古い逮捕歴の情報は削除依頼が認められることもあります。ネット上の情報を削除したいときや不当な解雇を受けた場合は、まずは弁護士に相談しましょう。

野口 明男 弁護士

監修者

野口 明男(代表弁護士)

開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。