ネット記事を削除するなら!個人情報や誹謗中傷、犯罪歴が公開されたときの対処法
ネット風評被害の口コミは削除可能?4つの具体策を解説
2025.10.24
爆サイや転職会議、OpenWorkなど、個人が自由に口コミを投稿できるサイトは数多く存在しています。そして、XやThreadsなどのSNSの利用も一般的になり、多くの人が自由に情報発信できる時代になりました。コミュニケーションツールや情報収集ツールとして便利である一方で、悪意ある書き込みが短期間で広がり、企業の信用や売上に深刻なダメージを与えるケースも少なくありません。
ネット上の口コミは、企業や個人の評価やイメージに直結します。そのため、万一風評被害が発生した際には、迅速に削除依頼などの対応を講じることが不可欠です。
この記事では、ネット上に投稿された口コミや書き込みを削除するための方法と、企業が平時から備えておくべき対策と弁護士に相談するメリットについて詳しく解説します。
目次
ネットの風評被害の口コミは削除できる?

ネット上に風評被害を引き起こす可能性がある投稿を見つけた場合、放置するのは得策ではありません。口コミは書かれてしまったらどうにもできないというものではなく、正当な理由があれば、ネット掲示板や口コミサイト、SNS管理会社などに削除依頼をすることができます。専用の削除依頼フォームが用意されているサイトも多く、削除依頼の手続は比較的簡単に行えるものが多くなっています。
削除依頼は可能だが必ず成功するわけではない
前述のとおり、ネットの投稿や口コミは削除依頼ができます。ですが、依頼をすれば必ず削除されるわけではありません。
サイト運営者は「表現の自由」や「利用者の発言権」という観点を重視するため、単に不快感や印象が悪くなるというだけでは削除されないケースが多くなります。判断基準は運営者に委ねられているのですが、「法的に問題があるかどうか」はひとつの基準となります。
例えば、名誉毀損・プライバシー侵害・誹謗中傷など、法律上の権利を侵害していると判断できる場合は削除が認められやすくなります。
誹謗中傷の対象となる個人・法人名が伏せられている
削除請求が認められるためには、問題となる投稿が「誰について書かれているのか」が明確である必要があります。例えば「最近の営業はやる気がない」といった漠然とした表現では、対象となる人物や法人を特定できないため、名誉毀損として認められる可能性は低いです。
一方で、「○田商店の営業担当者は怠け者だ」「○橋×太郎は顧客をだましている」など、伏字やペンネームを用いていても、一般に誰を指しているかが分かる場合は、削除の対象になることがあります。つまり「名指しされているかどうか」が大きなポイントとなります。人物や法人が特定されている場合には風評被害や誹謗中傷で受ける被害が深刻であると判断基準されるため、削除に応じてもらいやすいのです。
削除依頼をする際は「対象が特定されていること」「どのような権利侵害が生じているのか」をできるだけ具体的に説明し、客観的な証拠を提示することが成功のポイントとなります。
被った損害が明確ではない
さらに重要なのが「損害の有無」です。実名や会社名が明記されている書き込みであっても、被害が抽象的な場合には削除が難しいことがあります。たとえば「Xさんは仕事が遅い」といった表現は、個人を傷つける可能性はあるものの、現実に経済的損失や社会的信用の低下を立証するのは困難です。
これに対し「ここの製品は2、3回使うと必ず故障する」といった虚偽の投稿がきっかけで売上が減少した場合や、「X氏はZ大学に裏口入学した」といった根拠のない中傷で本人や大学の信用が大きく揺らいだ場合には、具体的な損害が生じたと判断されやすいため、削除に応じてもらえる可能性が高まります。
ですが「Xは頭が悪い」「Yは間抜けだ」といった書き込みは内容が抽象的なので、名指しされていたとしてもその本人に損害が発生する可能性はあまり高くないと考えられます。
つまり「誰を対象としているのか」「どのような被害が出ているのか」という二つの要素がそろってはじめて、削除依頼が法的に認められやすくなるのです。逆に言えば、個人・法人名を挙げて書き込んでいる場合も、どんな被害を被ったのかが客観的に証明できない場合は、削除が認められないことがあります。
風評被害の原因となる口コミや書き込みの削除方法

インターネット上で風評被害を引き起こす口コミや書き込みを削除する方法は、大きく分けて4つ挙げられます。どの方法を選ぶかは、被害の深刻度、投稿の性質、スピード感などによって異なります。以下では、代表的な4つの削除方法について具体的に解説します。
サイトのフォームを通じてサイト運営者に削除依頼
最も簡単な方法は、口コミサイトや掲示板に用意されている「削除依頼フォーム」や「問い合わせ窓口」を利用することです。これは、自分でも対応しやすい方法といえます。
大手口コミサイトには、一般ユーザーから削除依頼を受け付けるための専用ページがあり、そこから対象URLと削除理由を記載して送信できます。
ただし、依頼すればすぐに削除されるわけではなく、各サイトが設けているガイドラインに照らして個別に判断されます。たとえば「特定の人物・企業を名指しして虚偽の情報を流布している場合」や「公序良俗に反する内容」が含まれている場合は削除の可能性が高いですが、単なる批判や感想にとどまる内容は削除されることは難しいのが実情です。
実際、運営者側も「表現の自由」と「利用者の発言権」を尊重する立場を取っているため、冷静で客観的な証拠があると認められやすくなります。例えば、証拠資料を添付したり、被害の具体例(売上減少や顧客離れなど)を示すことで削除に応じてもらえる確率が高まります。自分で削除依頼する際には、この点を十分に意識することが重要です。
ただし、ガイドラインに抵触するかどうかを判断するのは運営者であり、サイトのフォームを通じて削除依頼をしても、簡単には依頼に応じてもらえないことが多いのが現状です。
送信防止措置依頼の手続
送信防止措置依頼は、情報プラットフォーム対処法に基づく手続です。
これは、法的な手続であるため削除依頼より強い方法となります。サイトの運営者やドメイン登録会社、サーバー管理会社(これらをまとめて「プロバイダ」と呼んでいます)に対して、権利侵害にあたる投稿の削除を求めるものです。
手続の流れは以下の通りです。
1.依頼書の送付
投稿が権利侵害にあたることを記載した「送信防止措置依頼書」を作成し、郵送やメールでプロバイダに送付します。弁護士が代理人として対応する場合は、郵送のみ受け付けることもあります。
2.プロバイダから投稿者へ意見照会
依頼を受けたプロバイダは、投稿者に「意見照会」をします。ここで、投稿者が削除に同意すれば削除されますが、反論があった場合には削除が見送られることもあります。
3.プロバイダの最終判断
最終的にはプロバイダの裁量で削除の可否が決まります。投稿者の反論があっても、違法性が明白であれば削除に踏み切るケースもあります。
プロバイダは最終的に自己の判断で該当の投稿を削除するかどうかを決定します。
裁判所を通じて削除の仮処分
裁判所を通して削除請求を行うこともできます。ただし、通常の民事訴訟によると時間がかかるため、より迅速に対処できる民事保全法上の仮処分手続を利用するのが一般的です。
これは、具体的には民事保全法第23条2項に基づく「仮の地位を定める仮処分命令」の申立てです。いわゆる「仮処分」と呼ばれている方法です。
1.裁判所に対する仮処分命令の申立て
被害者は、投稿が権利侵害にあたることを示す証拠(スクリーンショットなど)を提出し、「保全の必要性」を裁判所に説明します。これは、被害者が提出するもので、民事保全法第13条が求める「保全すべき権利関係及び保全の必要性を疎明」する資料を提出します。
仮処分命令であるため、正式な裁判で求められる「証明」に比べて要件が緩やかな傾向があります。
2.審尋
審尋とは、被害者とプロバイダが裁判所に意見を述べる機会です。裁判所は被害者とプロバイダ双方の意見を聞いた上で、仮処分を出すかどうか判断するのです。
仮処分が認められる場合、被害者は担保金(通常10〜50万円程度)を供託する必要があります。これは後に仮処分が取り消された場合に備えるための制度です。一時的に供託するものであるため、所定の手続を経て被害者に還付されます。
3.仮処分命令の発令・執行
仮処分命令が出ると、多くのプロバイダは投稿を削除します。ですが、もし削除に応じない場合は「間接強制」によって金銭的ペナルティを課すことも可能です。
加害者本人に対する削除依頼
もうひとつの方法として、加害者本人に直接削除を求めるケースがあります。これは、情報プラットフォーム対処法に基づく「発信者情報開示請求」を行い、投稿者を特定した上で削除を要請するものです。
手順は以下の通りです。
1.加害者の氏名と住所を特定
2.証拠の保全
3.内容証明郵便の送付
まず、発信者情報開示請求を行ってサイト管理者から投稿時のIPアドレスを開示してもらい、そのIPをもとにプロバイダを特定します。
次にプロバイダに対して氏名・住所の開示を請求し、投稿者を特定します。その後、証拠のスクリーンショットとともに、内容証明郵便で「一定の期限内に削除を求める」旨を通知するという流れです。
加害者本人に対する削除依頼は、投稿者が自発的に削除に応じる可能性がある一方で、逆に反発を招くリスクもあります。そのため、対応は慎重に行う必要があり、弁護士の助言を受けながら進めるのが望ましいでしょう。
風評被害対策は口コミ削除だけでは不十分!企業がとるべき事前対策

ネット上での風評被害は、一度拡散されると完全になかったことにはできません。たとえ該当する投稿を削除できても、スクリーンショットやまとめサイト、SNS上の再拡散などによって情報が残り続けることは珍しくなく、いわゆる「デジタルタトゥー」として企業の信用に長く影響を及ぼします。
したがって、被害を受けてから削除対応を取る「事後対策」に加えて、普段から風評被害を未然に防ぐための「事前対策」を講じておくことが欠かせません。ここでは、企業が平時から取り組むべき具体的な対策について詳しく解説します。
従業員の教育と情報リテラシーの研修
風評被害は、必ずしも外部からのものとは限りません。実際には、内部の従業員による不適切なSNS投稿などが原因で炎上するケースもありました。
そのため、正社員だけでなくパート・アルバイト・派遣スタッフも含めた全従業員に対して、定期的に情報リテラシー研修を行うことが重要です。例えば「顧客情報や社内事情をSNSに投稿してはならない」「匿名アカウントでも社名や個人名が特定される可能性がある」など、具体的な注意点を示して教育を徹底する必要があります。
加えて、従業員が不適切な投稿をしてしまった場合のリスク(信用失墜、懲戒処分、法的責任など)を具体的に共有しましょう。
危機管理体制の整備
風評被害は「起きてから対応すればよい」ものではなく、発生直後の対応スピードが被害の拡大を大きく左右します。企業としては、いざというときに迅速な対応ができるよう、危機管理体制をあらかじめ整備しておくことが不可欠です。
具体的には、以下のようなガイドラインを作成しておくと効果的です。
● 誹謗中傷や風評を発見した場合に誰が最初に報告するのか
● 経営陣への報告ルート
● 発見したらすぐに責任者に報告できる体制づくり
● 広報・法務部門の対応の手順
● 弁護士や外部専門機関に連携を依頼する
こうした対応マニュアルを社内に共有しておくことで、初動対応の遅れを防ぐことができます。
モニタリング
風評被害を最小限に抑えるためには、早期発見が何よりも重要です。特にSNSや匿名掲示板では情報の拡散スピードが速いため、数時間の遅れが取り返しのつかない炎上につながることもあります。
企業が自社で全てをチェックするのは現実的に困難であり、担当者が手作業で監視するには限界があります。そのため、近年では自動監視ツール(風評監視システム)を導入し、リアルタイムでネガティブな投稿を検知できるようにしている企業も増えています。
例えば、アークレスト法律事務所が提供する風評監視システムでは、次のような機能を備えています。
● 風評の自動監視・チェック
● 毎日自動でWEB上の風評をモニタリング
● ネガティブワードの検知
● 検索エンジンやSNS、掲示板のネガティブワードをリアルタイムで検知・報告
このような仕組みを導入することで、問題の投稿が大きく拡散する前に把握でき、素早く削除依頼や広報対応に移ることが可能になります。
また、当事務所では以下の手続を一貫して対応することが可能です。
● 検索エンジンへの表示対策
● WEB上のSNS、掲示板への削除依頼
● IP開示・投稿者の特定
● 投稿者への訴訟
詳しくは当事務所までお気軽にお問い合わせください。
風評被害の口コミ削除や対策には弁護士に相談を

ネット上の風評被害は一度拡散すると完全な削除は難しく、放置すれば企業や個人の信用を長期間損なうおそれがあります。削除依頼は有効な手段ですが、それだけでは不十分であり、日頃から従業員教育・危機管理体制・監視システム導入・逆SEOなどの対策を行うことが欠かせません。さらに弁護士に相談することで、法的根拠を示した削除請求や発信者特定・損害賠償請求まで視野に入れられ、より確実で安心な対応が可能となります。
アークレスト法律事務所には、企業の風評被害対策を得意とする弁護士が在籍しています。投稿削除請求の手続をはじめ、風評被害を防ぐための社内体制づくりのアドバイスもいたします。風評被害対策の社内体制の構築をお考えの方は、ぜひアークレスト法律事務所にご相談ください。

監修者
野口 明男(代表弁護士)
開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。
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