ログ保存期間

ログ保存期間とは、各プロバイダにおいて通信記録(アクセスログ)を保存する期間です。「接続ログ保存期間」といわれるケースもあります。ログは、投稿者を特定するために必要となる重要な情報です。

ログ保存期間とは具体的にはどのようなものなのでしょうか。以下では、「ログ」に関する基本事項とログ保存期間の目安について説明します。

そもそも「ログ」とは

ログとは、ネットワーク機器やソフトウェアなどで、どのようなアクセスや処理がなされたのかを記録したものをいいます。正式名称は「アクセスログ」といい、「接続ログ」と呼ばれることもあります。

アクセスログには、経由プロバイダのログとコンテンツプロバイダのログがあります。
経由プロバイダのログには、IPアドレス、アクセス日時、使用者を識別する番号などが記載されています。コンテンツプロバイダのログには、IPアドレス、アクセス日時などが記録されています。

なお、発信者情報開示請求では、主に経由プロバイダのログ保存期間が問題となります

ログ保存期間とその目安|3か月~6か月

ログ保存期間とは、先述したとおり、各プロバイダにおいて通信記録(アクセスログ)を保存する期間をいいます。

ログ保存期間については、法律的に規制されているものではありません。そのため、各プロバイダが自社基準によりログ保存期間を定めています。各プロバイダが社内基準で定めるログ保存期間は、外部には公表されていませんので、正確なログ保存期間は不明ですが、一般的には、3か月から6か月がログ保存期間の目安といわれています。

たとえば、ドコモやKDDI、ソフトバンクなどのモバイル系プロバイダの場合には約3か月、ビッグローブやソネットなどの通信系のプロバイダの場合には半年程度となるケースが比較的多くなっています。ただし通信系プロバイダでも1か月や1年という事業者などもあり、各社の対応はばらばらです。

発信者情報開示請求におけるアクセスログ保存の重要性

アクセスログは、投稿者を特定する手続である発信者情報開示請求との関係で重要となります。以下、発信者情報開示請求の流れを説明いたします。

発信者情報開示請求の流れ

掲示板などに誹謗中傷の書き込みがなされた場合、発信者情報開示請求という手続によって違法な投稿をした人の特定を行うことができます。発信者情報開示請求は、以下の2段階の方法により行うのが一般的です。

・コンテンツプロバイダに対する発信者情報開示請求
・アクセスプロバイダに対する発信者情報開示請求

コンテンツプロバイダに対する発信者情報開示請求によりIPアドレスが判明したら、次の段階としてアクセスプロバイダに対する発信者情報開示請求を行います。アクセスプロバイダに対する発信者情報開示請求が認容されれば、アクセスプロバイダから投稿者の住所・氏名といった情報の開示を受けることができます。

アクセスログが削除されてしまうと投稿者の特定はできない

コンテンツプロバイダは、IPアドレス・タイムスタンプとアクセスログを照合することで発信者を割り出します。アクセスプロバイダに対する発信者情報開示請求は、コンテンツプロバイダから開示を受けたIPアドレスやタイムスタンプに基づき行います。つまり、アクセスログが保存されていなければ発信者を特定することができません。

コンテンツプロバイダでは、発信者を特定するために必要なアクセスログ情報の保管が義務付けられていません。したがって、ログ保存期間が過ぎたらアクセスログ情報を削除してしまいます。
したがって、発信者開示請求を行う際は、アクセスプロバイダに対してログの保存を請求することが重要になります。

ログを保存するための手続

投稿者を特定するためには、アクセスプロバイダにログの保存を請求することが重要になりますが、どのような方法でログの保存を求めていくのでしょうか。以下では、ログを保存するための手続について説明します。

任意のアクセスログ保存要請

ログ保存を請求するもっとも簡単な方法は、アクセスプロバイダに対してログの保存を要請する方法です。

アクセスプロバイダには、アクセスログの保存要請にしたがってアクセスログの保存をする義務はありませんが、保存に協力してくれるアクセスプロバイダも多く存在しています。アクセスプロバイダごとに対応が異なりますが、まずは書面やフォーム等からアクセスログの保存要請をしてみるとよいでしょう。

発信者情報消去禁止の仮処分命令の申立て

コンテンツプロバイダによるログ保存の協力が得られない場合に備えて、任意の請求と並行して、裁判所に対し、ログ保存仮処分(発信者情報消去禁止仮処分の申立)を行う場合があります。
仮処分の申立後は、以下のような流れで手続が進みます。

・債権者面接
・双方審尋期日
・供託
・仮処分命令発令、決定正本の交付

裁判所から発信者情報消去禁止の仮処分命令が発令されたら、アクセスプロバイダに対して、アクセスログの保存を求めれば基本的には応じてくれるはずです。

ログ保存期間内に投稿者を特定するには専門家のサポートが不可欠

掲示板などで誹謗中傷の書き込みがあった場合は、発信者情報開示請求により投稿者を特定することが可能ですが、発信者情報開示請求には、ログ保存期間という時間制限があります。

時間をかけて手続をすれば一般の方でも発信者情報開示請求は可能かもしれません。しかし、ログ保存期間が過ぎたらアクセスプロバイダはアクセスログを削除してしまいますので、投稿者の特定ができなくなってしまいます。そのため、発信者情報開示請求はスピード勝負といえます。このことから、投稿者を特定するためには、発信者情報開示請求に詳しい専門家である弁護士のサポートが不可欠です。

ご自身に関する違法な投稿を発見した場合には、ログ保存期間内に発信者情報開示請求を進めるためにも、早急に弁護士に相談しましょう。