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【弁護士監修】ネット上で著作権侵害になるケースとは?削除や対処の方法
2019.08.03近年はSNSや動画サイトなどの利用が一般的となり、誰でも簡単に写真や動画、文章をアップロードできるようになりました。企業だけでなく個人のクリエイターも情報発信が容易となり、様々なコンテンツがあふれています。創作・制作側、読者・ファンともに便利ではあるものの、気軽にアップロードできるため「著作権侵害」も発生しやすくなっております。そこで、今回は著作権の概要や著作権侵害に該当するケース、そして著作権侵害に遭った場合の3つの対処法を解説いたします。
著作権とは?どんなものに著作権がある?
著作権とは、文化的な創造物を保護するための権利です。著作権はありとあらゆる「著作物」に存在します。では著作物とはなんでしょうか。著作権法では以下のように定義されています。
著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであって文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
1.著作権を主張できる著作物
代表的な著作物の具体例を確認しておきましょう。
言語の著作物 | 小説、脚本、俳句、論文、エッセイ、講演の内容 |
音楽の著作物 | 楽曲、楽曲の歌詞 |
舞踊・無言劇の著作物 | ダンスや舞踊などの振り付け |
美術の著作物 | 絵画、漫画、版画、彫刻、書道、美術工芸品 |
地図、図形の著作物 | 地図、模型 |
映像の著作物 | 映画、テレビドラマ、ゲーム、CM、動画 |
写真の著作物 | 写真 |
プログラムの著作物 | コンピュータープログラム |
インターネット上アップロードされているほとんどの画像や動画、曲や文章が著作物と言えます。著作物を創作した人は「著作者」と呼ばれます。著作権は著作物を保護することで、著作者の権利を守っているのです。ちなみに、著作権は創作した瞬間に発生しますので、著作者が手続きなどを行う必要はありません。
著作権が保護される期間は、著作物の名義によって異なります。
実名で公表している著作物であれば「死後70年」、無名もしくは変名(ペンネームなど)で公表していれば「公表後70年もしくは死後70年」です。
企業名義の著作物の保護期間は「公表後70年もしくは創作後70年以内に発表されていなければ創作後70年」と規定されています。
2.著作物を自由に使える例外
著作権法では以下のようなケースで、著作物を自由に使える例外が認められています。ただし例外に該当するケースでも、出所の明示が必要になることがあります。
- 家庭内で仕事以外の目的のために使用する
- 学校教育の目的上必要と認められる限度で教科書に掲載する
- 入学試験や採用試験などの問題として著作物を複製する
- 営利を目的とせず、観客から料金をとらない上演等 など
※参考:文化庁ホームページ
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/gaiyo/chosakubutsu_jiyu.html
ネット上で著作権侵害に該当するケースとは
ではどのような行為が著作権侵害に該当するのでしょうか。具体的な著作権侵害の実例を確認してみましょう。
1.人気邦楽の歌詞をブログに掲載する
歌詞は著作物の1つなので、著作権が発生します。音楽関係の著作権は、JASRACが統括して管理していることが多いため、歌詞を「引用」の手順を踏まずにJASRAC等の許可なく掲載すると著作権侵害です。
2.Twitterなどの投稿をコピペして自分で投稿する
TwitterなどのSNSの書き込みにも著作権は発生しています。ご自身の書き込みが、許可の申請・引用の手順も踏まれずに、丸ごとコピー&ペーストして投稿されていたら著作権侵害となります。
3.録画した映画やテレビ番組、音楽をYouTube(ユーチューブ)などにアップロードする
映画やテレビ番組、音楽を録画・録音して、YouTube(ユーチューブ)などの動画投稿サイトに投稿する行為も著作権侵害となります。
4.カラオケ動画をYouTube(ユーチューブ)にアップロードする
YouTube(ユーチューブ)はJASRACと著作権の包括契約を結んでいるため、個人がギターやピアノなどの楽器でアーティストの楽曲を演奏している動画をアップロードすることは、違法ではありません。
しかし、民間企業のカラオケ音源を使った歌唱は、カラオケ配信会社への著作権侵害となります。
5.漫画等のアップロード
漫画や小説などの著作物を、不特定多数の人が見られる状態にしておくことも著作権侵害となります。
6.他人の写真を無断転載する
インターネット上には、個人が撮影した無数の写真がありますが写真も著作物です。引用の手順を踏まずに無断で公開したものは、著作権侵害となります。
著作権侵害にあった場合の3つの対処法
著作権を侵害されたら著作者は自らの権利を守るべく、行動を起こさなければなりません。掲載媒体によっては、著作権侵害に厳しく目を光らせており随時削除などの対応をしているものもありますが、ほとんどは野放し状態です。著作者本人が対応しなければ、著作権は侵害されっぱなしとなります。
著作者やその関係者が著作権侵害に対処しなければ、著作物が無断で拡散されてしまい、経済的な損失を被る可能性もあります。例えば、自身の楽曲が無断でアップロードされて拡散されたら、CD等の売り上げが低下します。漫画や小説も同様です。経済的損失等を発生させないために、自身の著作権が侵害されていることが発覚したらすみやかに対処しましょう。
証拠を保存
著作権侵害を発見したらまずやるべきことは、「証拠の保存」です。サイトのURLだけでなく、スクリーンショットなどで撮影して、自身の著作物を他人が無断でアップロードしている証拠を確保してください。 著作権侵害は場合によっては民事上での損害賠償請求や不当利益返還請求も可能となります。そのために証拠は必ず保存しておきましょう。
対処法1:媒体側に削除を依頼
著作権侵害が発生している媒体に、著作者が削除を求めることができます。規模が大きいサイトであれば、削除依頼フォームが用意されていますので個人でも容易に申請できます。削除の理由も明確に、「著作権を侵害されているため」などと記載しておきましょう。 媒体にもよりますが、著作者による著作権侵害による削除依頼は比較的聞き入れやすい傾向にあります。ただし2ちゃんねるなど、削除に応じないことで有名な掲示板では野放し状態です。
対処法2:投稿者に削除を依頼
投稿を個人が削除できるサイトであれば、投稿者本人に削除を求めることもできます。投稿者本人が著作権を侵害している意識がない場合は、指摘することで削除に応じてくれるケースも少なくありません。 ただし、悪意をもってアップロードしているケースでは、スムーズに削除に応じない可能性もあります。
対処法3:弁護士に削除手続の代理を依頼
3つの対処法のうち一番確実、かつ他の手続きに移行しやすいのが弁護士への削除依頼です。弁護士は、投稿者や媒体が削除に応じない場合は、裁判所を通じた手続きも可能です。 また、弁護士は削除依頼と並行して刑事告訴や民事上の損害賠償請求の手続きも、視野に入れて行動します。 著作権侵害は、著作権法に違反している犯罪です。親告罪ですので、著作者が被害をうったえなければ警察は動きません。刑事上では証拠を確保して告訴状を提出することで、警察は捜査を開始します。 民事上でも損害賠償請求等が可能になります。
そのためには削除依頼だけでなく「発信者開示請求」が必要です。投稿した本人の住所や氏名などがわからなければ、刑事告訴も損賠賠償請求もできません。発信者開示請求は、裁判所に申し立てて、法廷で必要性が認められた場合のみ、投稿者本人の情報が開示されるものです。個人でも開示請求は可能ですが手続きが煩雑で時間がかかるため、弁護士に依頼することを強くおすすめします。
開示請求が認められれば、あとは、損害賠償請求や刑事告訴など念頭に手続きを進めます。その時点で相手から接触があり、示談を求めてくるケースも少なくありません。
開示請求により加害者の身元がわかった場合、加害者には刑事上・民事上の責任をそれぞれ求めることができます。
著作権侵害の刑事上の責任
著作権侵害は、著作権法に違反している犯罪です。親告罪のため、著作者が自ら証拠を確保して警察に告訴状を提出する必要がありますが、違反者に対する刑は以下のとおり法律で定められています。
著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者(中略)は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
引用元:著作権法 | e-Gov法令検索
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=345AC0000000048
著作権侵害の民事上の責任
著作権を侵害した者に対しては、主に下記の対応がとれます。
- 削除請求…著作権侵害にあたるコンテンツの公開を止めさせる
- 損害賠償請求…著作権侵害を受けなかった場合に得られたはずの利益の賠償を要求する
損害賠償請求に関しては、損害を被ったこととその被害額を具体的に立証する必要があります。また、必要に応じて、著作権を侵害していた事実やその経緯を公表するよう求めることも可能です。
まとめ
著作権は、ありとあらゆる創作物に発生する権利です。そのためインターネット上では多くの著作権侵害が横行していますが、放置しておくとご自身の利益を大きく損う可能性があります。著作権侵害の対処法は、「削除すること」です。削除方法は様々ですが、一番確実なのは弁護への依頼となります。強硬な法的措置を見据えた対応が可能なので、迅速に対応しましょう。
監修者
野口 明男(代表弁護士)
開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。
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