リベンジポルノを拡散させないための対策とは|ポイントを弁護士が解説
リベンジポルノを拡散させないための対策とは|ポイントを弁護士が解説
2025.08.06
リベンジポルノとは、元交際相手や配偶者、関係を持った相手やインターネット上の友人などが、性的な画像や動画などのデータを本人の許可を得ることなくインターネット上などに公開する行為です。
※リベンジポルノの詳しい定義は下記の記事をご確認ください。
https://j-jurist.com/column/column-53-revenge-porn/
元交際相手などによって公開された写真はインターネット上を漂い続けるデジタルタトゥーとなり、あなたの将来に多大なる悪影響を与える可能性があります。
そこで、本記事ではリベンジポルノの被害に遭った女性が、行うべき対策について解説します。今現在リベンジポルノの被害に悩んでいる方は、ご一読した上ですぐにしかるべき対応を取ることを強くおすすめします。
目次
リベンジポルノを削除せずに放置することで想定できるリスクとは

リベンジポルノによって、性的な画像や動画などがアップロードされた場合、まずやるべきことは「証拠の確保と削除の手続き」です。迅速に行えば被害は最小限で済み、実生活にそれほど大きな影響は出ないと考えます。
では、放置すると何が起きるのでしょうか。まずはリベンジポルノの被害を放置したことで想定できるリスクについて説明します。
掲示板やSNSの拡散力によりインターネット上に痕跡が残る
対策を取らずに放置しておくと広く拡散されてしまい全てのデータを削除することがほぼ不可能になるリスクがあります。昨今は、掲示板やSNSなどで簡単に画像や動画をシェアできます。シェアボタンによる拡散や、転載などによりあっという間に複数のサイトに画像や動画が掲載されてしまうのです。
知人が、その画像や動画を見れば本人だとわかります。さらに、将来の就職活動や結婚などにも拡散された画像や動画は悪影響を与えます。拡散されて多くの人々の目に晒されると、顔を見ただけで「あの画像の女の子だ」と露見してしまうこともあり、さらなるセクハラなどの二次被害を招来する危険性もあります。
また、その画像や動画などを用いて、本人になりすまし、出会い系サイトや掲示板などに書き込む行為も想定できます。
これらの被害は、放置すればするほど拡大しますので、リベンジポルノの被害に遭っていることがわかった時点ですぐに証拠の確保や削除に向けて対策を取らなければなりません。
インターネットだけでなく個人の情報端末にも保存される
平成30年に、トイレの盗撮画像をインターネット上で販売したとして逮捕された事例では、犯人のパソコンには1000人以上の動画が保存されており、売り上げは約2700万円にも上ったという事例もあります。
購入者のスマートフォンやパソコンには被害者の性的な動画が保存されていることが想定でき、犯人が逮捕されても動画が拡散されない保証はありません。早く対応しなければ、画像や動画がより多くの人の目に触れ保存・拡散されてしまいます。
掲示板等に投稿された場合も同様で、閲覧者が自分の端末に保存して、後日再投稿してシェアされるケースも考えられます。インターネット上への露出時間が長ければ長いほど、多くの端末に保存されてしまい、一生再投稿のリスクに怯えることになりかねません。
リベンジポルノの被害に遭ったら証拠確保の上即座に削除依頼を

ご自身の性的な画像や動画が投稿されていることがわかったら、すぐさまスクリーンショットなどで証拠を確保した上で、削除の手続きを行いましょう。
削除の方法は下記の通り複数存在しますが、被害拡大を阻止する観点でも、弁護士に相談の上削除を依頼することが最適な解決方法であると考えます。
掲示板やSNSに直接削除を依頼する
大手掲示板やSNSなどには、投稿の削除申請フォームが用意されていますので、そちらからご自身で削除を依頼することも可能です。ただし、個人の削除依頼にすぐさま応じるとは限りませんので、なるべく早く確実に画像や動画を削除したい方にはおすすめできません。
弁護士に削除と投稿者の特定を依頼する
リベンジポルノの画像や動画の削除は時間との戦いですので、インターネットトラブルに精通した弁護士に削除を依頼することを強くおすすめします。弁護士に依頼する大きなメリットは「個人で行うよりも削除の確実性が増し、途中経過が報告してもらえること」です。
先ほど解説した、自分で削除する方法は成功率が低いですし、セーフライン(インターネット上の違法・有害情報に関する情報提供を受け付け、削除を促したり、警察に通報を行う民間団体「一般社団法人 セーファーインターネット協会 (SIA)」のサービスのことをいいます。)では削除の経過が報告されないため、削除を依頼しても安心はできません。
また、削除だけでなく訴訟や刑事告訴などの対応を検討している場合は「発信者情報開示請求」が必須です。発信者情報開示請求とは、投稿IPアドレスを特定した上でインターネットプロバイダに対して、投稿者の下記情報開示を求めるものです。
・氏名
・住所
・電話番号
・メールアドレスなど
リベンジポルノの加害者は元交際相手が中心となっているものの、確証がなければ、訴訟や告訴はできませんので、投稿者を特定する「発信者情報開示請求」が必要不可欠です。
発信者情報開示請求は、被害者もしくは被害者の代理人が裁判所に申し立て、裁判所が加害者のインターネットプロバイダに開示の可否を照会するという手続きで進められます。個人で手続きを進めることも不可能ではありませんが、慣れない場合は時間がかかりますので、弁護士に一任した方がよいでしょう。
刑事告訴や慰謝料請求を望む場合の手続き

画像やデータの削除だけでなく、加害者への制裁を希望する場合は、先ほどお話しした発信者情報開示請求によって、投稿者を特定した上で、警察への被害届もしくは告訴状の提出を行います。それと同時に加害者には損害賠償請求を行い、慰謝料等の支払いを求めます。刑事告訴の前に、加害者に損害賠償請求を行えば、加害者は逮捕されることを回避すべく、示談交渉に応じる可能性が高いと考えられます。
リベンジポルノは、リベンジポルノ防止法だけでなく名誉毀損やストーカー防止法に抵触するケースもあるため、加害者は刑事手続きに発展する前に、示談を成立させようとする傾向があります。
慰謝料の請求だけでなくきちんと刑事罰によって償ってほしいと考えるのであれば、示談交渉には応じず警察に被害届や告訴状を提出することになります。加害者への対応をどうするかについては、弁護士と相談の上、ご自身が納得する形で解決できるようにしましょう。
リベンジポルノの加害者からの接触・脅迫があったときの対応と注意点

リベンジポルノの被害に遭った後、画像や動画の投稿だけでなく、加害者から直接連絡がくるケースがあります。「謝りたい」「削除したい」「示談したい」といった内容から、「告訴するなら報復する」「ネットにもっと拡散する」といった脅迫的なものまでさまざまです。
以下では、加害者からの接触があった場合にどのように対応すべきか、注意すべきポイントを詳しく説明します。
直接連絡を受けたらどうする?
加害者から電話やSNS、メールなどで連絡があった場合、その内容や態度にかかわらず、原則として「本人が直接対応しない」ことが重要です。なぜなら、加害者と直接やり取りすることで以下のようなリスクがあるからです。
・感情的な言い合いによる精神的ダメージの増大
・「削除する」と言われても実際には保存・再投稿される可能性
・被害者側の発言が録音・記録されて逆に不利に使われる可能性
・脅迫や恐喝、再犯につながるリスク
加害者からの接触は、証拠として重要な意味を持ちますが、対応は必ず弁護士に一任しましょう。受け取ったメッセージは削除せず、日時・内容がわかる形で保存しておくことが大切です。
「示談したい」と言われたときの注意点
加害者から「謝りたい」「示談金を払いたい」などと申し出があった場合でも、慎重に対応する必要があります。示談交渉においては、法律的な拘束力のある書面(示談書)を交わすことが重要であり、口約束やSNSでのやり取りだけでは、後に言い逃れを許してしまう可能性があります。
また、示談交渉を被害者が自ら行うことは精神的な負担も大きく、内容面で不利な条件を受け入れてしまうリスクもあります。そのため、示談交渉を行う際は、必ず弁護士に依頼し、「どのような条件で合意するか」「示談するべきかどうか」を専門的な観点から判断してもらうようにしましょう。
脅迫・嫌がらせを受けたらどうする?
加害者の中には「訴えたらもっと画像を拡散する」「お前の家族にも見せる」などと、被害者を脅して沈黙させようとする人物もいます。
このような脅しや嫌がらせを受けたときは、迷わず警察や弁護士に相談しましょう。その際には、以下の記録を残すことが重要です。
・SNSでの脅迫メッセージのスクリーンショット
・着信履歴、メールの保存
・郵送物や訪問などがあった場合の記録
・位置情報付きの録音や動画などの証拠保全
脅迫がエスカレートする場合には、弁護士から加害者に対して警告書を送付したり、仮処分(接近禁止命令等)を申し立てたりすることで対応できます。緊急性が高い場合には、すぐに相談するようにしてください。
加害者と絶対にしてはいけないNG対応
被害者が加害者に対してやってしまいがちなNG対応を以下にまとめます。知らずに行ってしまうと、逆に不利になる可能性があるため、注意しましょう。
・加害者と直接交渉する
・加害者に怒りをぶつけて脅迫と取られる発言をする
・SNSやブログで加害者の実名や内容を暴露する(名誉毀損の可能性)
・録音や証拠を取らずに削除依頼をしてしまう
・加害者の謝罪を受けて、証拠を破棄してしまう
たとえ謝罪を受けたとしても、証拠や記録は必ず保管しておきましょう。万が一再投稿があった場合や、追加の嫌がらせが生じた際に、重要な証拠として活用できます。
未然に防ぐには?リベンジポルノの予防策

リベンジポルノは一度発生すると、削除や拡散防止に多大な労力を要します。そのため、被害を受けないように事前に対策することが非常に重要です。以下では、リベンジポルノの予防策として効果的なものを紹介します。
撮影させない勇気を持つ
交際中や信頼関係があるときでも、性的な写真や動画を撮影することは、常に悪用されるリスクが伴います。別れた後の感情のもつれやトラブルによって、これらのデータが「復讐」の道具に変わることは珍しくありません。
「今だけだから」「記念だから」という言葉に惑わされず、撮影を断る勇気を持つことが最大の予防策です。
撮影済みのデータを削除させる
すでに写真や動画を撮影されている場合は、関係が良好なうちにデータを削除してもらうよう求めることが重要です。その際は相手に任せきりにせず、実際に削除したことを目で確認することをおすすめします。
スマホやクラウド、パソコンなど複数の保存先がある可能性もあるため、バックアップも含めて確認しておきましょう。
クラウドやSNSのセキュリティを強化する
クラウドストレージやSNSのアカウントからデータが流出するケースもあります。パスワードを複雑に設定し、2段階認証を有効にするなど、アカウントのセキュリティを強化することが大切です。共有アカウントを使う場合もアクセス権限やログイン履歴を確認する習慣を持つと安心です。
関係が悪化したときは警戒を強める
別れ話や喧嘩の後は、感情的になった相手が撮影データを悪用する危険が高まります。関係が悪化したときは早めにデータ削除を依頼し、難しい場合は弁護士に相談することも検討してください。
脅迫めいた発言がある場合は、すぐに証拠を確保し、法的対応を視野に入れることが重要です。
まとめ
リベンジポルノは、被害者の心に大きく傷を残す卑劣な行為です。
加害者を処罰したいと考えるのも当然のことですので、信頼できる弁護士にまずは相談しましょう。削除だけを依頼するのか、刑事告訴や損害賠償請求も視野に入れるのかも弁護士と話し合いながら判断することをおすすめします。
まずは、「証拠の確保」と「削除」を最優先に行動し、なるべく早くインターネット上からあなたの画像が削除されるよう対策を取らなければなりません。
将来への影響を最小限に抑え、平和な日常を取り戻すためには、なるべく早くご依頼いただくことが大切です。
お力になれるよう全力を尽くしますので、まずは弁護士法人アークレスト法律事務所までお気軽にお問い合わせください。

監修者
野口 明男(代表弁護士)
開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。
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