風俗店での本番強要・盗撮被害|弁護士に相談できる性被害の法的対応
風俗店での本番強要・盗撮被害|弁護士に相談できる性被害の法的対応
2025.11.13
風俗業界で働く人々が直面するトラブルの中でも、「本番強要」や「盗撮被害」は深刻な性被害に該当します。こうした被害は、単なる業務上のトラブルではなく、刑事事件として扱われる可能性がある重大な人権侵害です。被害に遭った際は、泣き寝入りせず、性被害に強い弁護士に相談することで、法的な保護と適切な対応を受けることができます。
そこで本コラムでは、風俗店で働く人々が本番強要や盗撮の被害に遭った際に、弁護士はどのような法的対応が可能かについて詳しく解説していきます。
風俗店での「本番強要」とは

風俗店では、法律上「本番行為(性交渉)」は禁止されています。これは売春防止法や風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(略称:風営法)に基づく規制であり、店舗側が本番行為を提供することは違法です。しかし、現場では客や店側から「本番をしろ」と強要されるケースが後を絶ちません。
本番強要は、以下のような犯罪に該当する可能性があります。
不同意性交等罪(旧・強制性交等罪、刑法第177条第1項)
風俗店で働く女性に対し、客や店側が本番行為(性交)を強要することは、刑法上の重大な性犯罪に該当する可能性があります。2023年の法改正により、「強制性交等罪」は「不同意性交等罪」に改められ、暴力や脅迫がなくても、相手の自由な意思に基づく同意がない性交等行為は処罰対象となりました。
たとえば、以下のようなケースが該当する可能性があります。
ア 「本番をしないとクビにする」「指名しない」などの圧力で断れない状況に追い込まれた場合
イ 店舗の雰囲気や客の態度に恐怖を感じ、拒否の意思を示せなかった場合
ウ 酩酊状態や疲労で判断能力が低下していた場合
このような状況下で行われた本番行為(性交等)は、不同意性交等罪として5年以上の拘禁刑が科される可能性があります。また、未遂罪も処罰されます。
不同意わいせつ罪(旧・強制わいせつ罪、刑法第176条第1項)
2023年の刑法改正により、「強制わいせつ罪」は「不同意わいせつ罪」に改められました。これにより、暴力や脅迫がなくても、相手の自由な意思に基づく同意がないわいせつ行為は処罰対象となりました。風俗店での勤務中に、たとえ、本番行為には至らなかったとしても、客や店側から同意のない身体接触や性的な言動を受けた場合、以下のような状況下では不同意わいせつ罪が成立する可能性があります。
ア 拒否すると不利益があると感じ、断れなかった
イ 恐怖や困惑で拒否の意思を示せなかった
ウ 店の雰囲気や相手の態度に圧倒され、受け入れざるを得なかった
以上のような行為は、6か月以上10年以下の拘禁刑の対象となる重大な犯罪です。未遂罪も処罰されます。
強要罪(刑法第223条第1項)・脅迫罪(刑法第224条第1項)
風俗店で「本番をしないとクビ」「金は払わない」などと脅された場合、暴力がなくても強要罪や脅迫罪に該当する可能性があります。
強要罪とは、義務のない行為を無理やりさせた場合に成立するもので、3年以下の拘禁刑が科される可能性があります。
一方、脅迫罪は、害を加えると告げて相手を怖がらせた場合に成立し、2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処せられるものになります。
風俗店での「盗撮被害」とは

盗撮は、風俗店で働く人々にとって非常に多い被害のひとつです。特にデリヘルなどの派遣型サービスでは、客の自宅やホテルに設置された隠しカメラによる盗撮が問題となります。
盗撮行為は以下の法律に違反する可能性があります。
迷惑防止条例違反
都道府県ごとに規定されていますが、たとえば、東京都では、迷惑防止条例により盗撮行為が明確に禁止されています。
具体的には、公共の場や人が衣服を着けない場所で、下着や身体を撮影したり、撮影目的で機器を向けたり設置する行為が処罰対象となります。
風俗店の個室やホテルの浴室なども対象となるため、盗撮は条例違反として立件される可能性があります。
軽犯罪法違反
軽犯罪法では、「正当な理由がなくて、人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服を着けないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」(同法第1条23号)は拘留又は科料に処されるとされています。これは、いわゆる「のぞき見」行為を処罰するものですが、盗撮行為もこの「のぞき見」に準ずる行為として処罰対象となることがあります。特に、風俗店の個室やホテルの浴室・更衣室など、利用者が裸になる可能性のある場所での盗撮は、この規定に該当する可能性が高いです。
名誉毀損・プライバシー侵害
盗撮された映像がネット上に拡散された場合、被害者の社会的評価や私生活が侵害されるため、名誉毀損やプライバシー侵害として、加害者に対して損害賠償請求が可能です。
顔が映っていなくても、個人が特定できる情報が含まれていれば違法性が認められることがあります。投稿者が不明な場合でも、弁護士を通じて発信者情報開示請求を行い、責任を追及することができます。
性被害に強い弁護士に相談するメリット

性被害は、被害者の心身に深刻な影響を与えるため、専門的な配慮と法的知識が必要です。性被害に強い弁護士に相談することで、以下のような支援が受けられます。
被害届の提出サポート
風俗店での本番強要や盗撮被害に遭った場合、「警察に行くのが怖い」「どう説明すればいいかわからない」と感じる人も少なくありません。性被害の申告は精神的な負担が大きく、ひとりで警察に行くことに強い抵抗を感じるのは自然なことです。
弁護士に相談すれば、被害届の作成から提出、警察とのやり取りまでを全面的にサポートしてもらえます。具体的には、以下の点をしてもらうことが可能です。
ア 被害の内容を整理し、法的に有効な形で被害届を作成する。
イ 警察への被害届提出に同行し、事情聴取の場で同席し、又は助言する。
ウ 警察とのやり取りに関する不安や疑問に対応する。
エ 被害届の提出や告訴状の提出を支援する。
このように、弁護士が間に入ることで、被害者の負担を軽減しながら、確実に手続を進めることができます。被害を受けたときは、ためらわずに早めの相談をおすすめします。
損害賠償請求
風俗店での本番強要や盗撮被害は、被害者に深刻な精神的苦痛や社会的損失をもたらします。弁護士に相談することで、加害者や店舗に対して損害賠償請求を行うことが可能です。
請求できる内容には、以下のようなものが含まれます。
ア 精神的苦痛に対する慰謝料
イ 治療費や通院交通費などの実費
ウ 仕事を休まざるを得なかった場合の休業損害
エ ネット拡散による名誉毀損やプライバシー侵害への補償
また、投稿者が不明な場合でも、弁護士を通じて発信者情報開示請求を行い、責任の所在を明らかにしたうえで損害賠償を求めることができます。
このような請求は、法的根拠と証拠の整理が重要です。性被害に詳しい弁護士が関与することで、適切な金額と手続で進めることが可能になります。
ネット上の画像・動画の削除請求
盗撮によって撮影された画像や動画が、SNSや動画共有サイト、アダルトサイトなどに無断で掲載されてしまった場合、被害は一層深刻になります。こうしたネット上の拡散は、被害者のプライバシーや名誉を著しく侵害し、精神的苦痛を長期にわたって引き起こすことがあります。
このような場合、弁護士を通じてサイト運営者やプロバイダに削除請求を行うことが可能です。
労働問題への対応
風俗店での本番強要や盗撮被害は、刑事事件や民事トラブルとしてだけでなく、「労働問題」としても扱われることがあります。被害者が店舗に雇用されていたり、業務委託契約を結んでいた場合、働く人としての権利が侵害されている可能性があるからです。
たとえば、性被害を訴えたことでシフトを減らされたり、退職を強いられたりする場合は「不当解雇」や「不利益な取扱い」に該当する可能性があります。また、被害によって心身に不調をきたした場合は、労災として治療費や休業補償を請求できる場合もあります。
プライバシー保護
性被害の相談は非常にデリケートな内容を含むため、「誰かに知られるのでは」と不安を感じる人も少なくありません。特に風俗業界で働く人にとっては、職業上の偏見や社会的影響を心配して、相談をためらうケースもあります。
しかし、弁護士には厳格な守秘義務があり、相談内容が外部に漏れることはありません。プライバシーを守りながら安心して話すことができます。
また、早期に相談することで、証拠の確保や加害者への対応、ネット上の拡散防止など、被害の拡大を防ぐことが可能です。誰にも知られず、確実に対応したい方こそ、弁護士への相談が有効です。
被害に遭ったときの対応手順

性被害に気づいたときは、精神的に混乱してしまうこともありますが、早期の対応が被害の拡大防止と法的救済につながります。実際に被害に遭った際に取るべき基本的なステップは、以下の通りです。
安全の確保と状況の整理
本番行為の強要や盗撮などの性被害に気づいたら、まずはその場から離れて身の安全を確保することが最優先です。加害者との接触を避け、落ち着ける場所へ移動してください。
証拠の保全
盗撮された映像、加害者の発言、LINEやメールのやり取り、店内の状況など、被害を裏付ける証拠はできるだけ保存してください。具体的には、①スマホのスクリーンショット、②会話の録音、③店舗名や日時の記録、④防犯カメラの映像(可能であれば)が証拠として有効です。
弁護士への相談
性被害に詳しい弁護士に相談することで、刑事・民事・労働の各側面から適切な対応が可能になります。先ほども述べたとおり、弁護士には厳格な守秘義務が課されているため、プライバシーを守りながら安心して話すことができます。
警察への被害届・告訴の検討
性被害に遭った場合、加害者を刑事処分してもらうためには、警察に被害届を提出するか、告訴状を提出する必要があります。
被害届は事実の申告、告訴は処罰を求める意思表示で、どちらも弁護士のサポートを受けることで、内容の整理や提出手続がスムーズに進みます。
警察への同行や事情聴取への同席も可能で、被害者の精神的負担を軽減しながら、確実な対応が図れます。
損害賠償請求・削除対応などの民事手続
加害者や店舗に対して慰謝料請求を行ったり、ネット上に拡散された画像・動画の削除を求めたりするなど、弁護士は、民事上の対応も並行して進めることができます。発信者情報開示請求など、専門的な手続も弁護士が代行できます。
まとめ

風俗店での本番行為の強要や盗撮といった性被害は、どのような事情があっても被害を受けた側に責任はありません。これらの行為は明確な違法行為であり、被害者には法的に守られる権利があります。
「自分にも落ち度があったのでは」「仕事だから仕方ない」と感じてしまう人もいますが、そうした思い込みにとらわれる必要はありません。弁護士に相談することで、被害の内容に応じた適切な対応策を知ることができ、精神的にも安心して次の一歩を踏み出すことができます。
弁護士法人アークレスト事務所では、風俗店で働く皆さんの性被害に関するご相談をお受けしております。お話を丁寧にお伺いし、被害に遭われた方の立場に立って法的支援を行っており、プライバシーに配慮した相談体制を整えております。風俗店で働いている最中に本番強要をされた、又は盗撮という被害に遭われた方は、どうぞ安心してご相談ください。

監修者
野口 明男(代表弁護士)
開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。
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