ネットトラブルナイトワーク系のトラブル

ナイトワークで個人情報を晒された時の対応方法を弁護士が解説します!

2025.11.06
ナイトワークで個人情報を晒された時の対応方法を弁護士が解説します!

キャバクラや風俗店などのナイトワークでは、勤務先や源氏名、連絡先などの個人情報が顧客に知られてしまうことも多く、トラブルのリスクが高い業界のひとつです。そのリスクのひとつが、自分の個人情報がインターネット上に晒されてしまうというものです。このような、個人情報の流出は放置すると深刻な被害に発展する恐れがあります。
ネット上での個人情報の拡散は、一度広まると完全に削除するのが難しいケースもあるため慎重に対応しなければなりません。

仮に投稿者や運営が投稿を削除しなくても、法的な手段を活用すれば、情報の削除や投稿者の特定、損害賠償請求といった対処が可能です。今回は、「個人情報を晒された」場合の削除対応・損害賠償・訴訟の流れを解説します。

個人情報を晒される危険性

ネット上に個人情報が晒された場合のリスクは想像以上に大きなものとなります。特にナイトワークでは、勤務先や顔写真、源氏名などが特定されやすいため、拡散による被害や精神的苦痛が発生しやすい環境にあります。ここでは、起こりやすい被害の例を解説します。

不正利用・なりすまし

ネット上で個人情報が拡散されると、この情報が投稿者だけでなく、投稿を見た第三者によって情報が悪用される可能性があります。たとえば、名前や電話番号を使ってネット上のサービスに登録されてしまったり、SNSのなりすましアカウントを作成されたりするといった被害が発生することもあります。

特に、なりすましによる被害は、本人の信用の失墜や風評被害につながりやすいものです。これを放置すると業務や日常生活に支障をきたすケースも少なくありません。また、ナイトワークのキャバクラ・風俗店では源氏名での営業が多いため、望まない身バレ等の深刻な影響を及ぼすことがあります。

ストーカー被害

電話番号やSNSアカウント、勤務先の店名などがネット上に晒されると、見知らぬ人物からの連絡が急増することが考えられる上、更に住所まで書かれたりすれば、待ち伏せなどのストーカー被害に発展するリスクもあります。これは、ナイトワーク特有の「顧客との距離感」が背景にあるため、一般的な職場よりも危険性が高いといえます。

こうした被害は、情報拡散の初期段階で削除依頼などの適切な対処を行うことで被害を最小限に抑えることが大切です。

個人情報が晒されたらどうする?対処法は?

個人情報がネットに晒されてしまった場合、とにかく迅速な初動対応が求められます。放置する時間が長いほど書き込まれた情報が拡散してしまうため、できるだけ早く対応しなければなりません。

まずは冷静になって、投稿された情報を記録・保全し、削除依頼などの手続きに進む必要があります。
(ただし、開示手続を考える場合、投稿の削除の時期は慎重に検討する必要があります。)

証拠をスクリーンショットなどで残す

ネットに個人情報が晒されていることに気づいたら、まずは証拠を残しましょう。インターネット上の情報であるため、投稿者が削除すると痕跡が消えてしまう可能性があります。そのため、スクリーンショットなどで保存し、さらに、URL・投稿日時・サイト名・アカウント名などを記録してください。

こうした証拠は、後に裁判になった場合に、損害賠償請求の根拠として役立つ可能性が高い重要なものとなります。

削除依頼を出す

証拠を保全したら、サイトやSNSの運営者に対して削除依頼を行います。多くのサイトでは、個人情報の流出や誹謗中傷に関する専用フォームや問い合わせ窓口が設けられているため、そこから削除依頼をしましょう。

削除依頼では「どの書き込みが」「どのように」「どんな権利を侵害しているのか」を明確に示すことがポイントです。感情的にならずに冷静に削除を求めましょう。ここで、法的な根拠や状況説明を添えることで、運営側が迅速に対応する可能性が高まります。

ただし、削除依頼に関しては確実に削除してもらえるというわけではありません。この時点で投稿を削除するかは運営側の判断であり、削除依頼をしても削除されないケースもあります。また、削除依頼をしてから対応されるまでには時間がかかるケースもあり、その間、個人情報が晒され続けることになります。

※ただし、投稿の削除によって、投稿者特定のための情報が消えてしまう可能性もあります。開示手続を考えている場合、投稿の削除の時期は慎重に検討する必要があります。

仮処分命令の手続き

削除依頼を出しても対応が遅い、あるいは削除を拒否された場合には、裁判所に仮処分命令を申し立てるという方法があります。仮処分とは、通常の訴訟とは別の手続きで、緊急性がある場合に迅速な救済を図るための制度です。

特にナイトワークにおける個人情報の流出は、営業やプライバシーへの影響が大きく、裁判所も緊急性を認めやすい傾向があります。

手続きが煩雑ですが、弁護士に依頼すれば、必要書類の準備や申立てをスムーズに進められます。

個人情報を晒すのは違法

ネット上で個人情報を晒す行為は、違法とされる可能性が極めて高いものといえます。個人情報を不特定多数に対して表示することは、明確に法律で保護されている権利を侵害する行為であり、特に民事上の責任を問われる可能性があります。

プライバシー侵害

他人の個人情報を許可なく公開する行為は、プライバシーの侵害にあたります。民法709条に基づく不法行為として、損害賠償請求の対象となります。

例えば、勤務情報や顔写真、個人の連絡先などはすべて個人情報として扱われる可能性があります。これらがネットで不特定多数に晒されることで、生活や仕事に直接的な損害が発生する可能性があるため、慰謝料が認められるケースも少なくありません。

名誉毀損

書き込まれた内容に名誉毀損に該当する内容が含まれている場合は、「名誉毀損罪」に該当する可能性もあります。名誉毀損は刑事罰の対象となるため、投稿者は罰金刑や懲役刑を受けるリスクがあります。

名誉毀損罪では、人の「外部的名誉」を保護法益としています。保護法益とは「守られるべきもの」のことです。つまり、個人情報だけでなく本人の社会的な評価を下げる内容が、公になっている場合は名誉毀損罪に該当する可能性があるのです。
その書き込まれた内容が、事実であっても、公共性や公益性が認められない場合には違法とされる可能性があります。

個人情報を晒された場合にできること

個人情報を晒されたとき、泣き寝入りする必要はありません。法的な手段で投稿者の責任を追及できます。場合によっては、民事と刑事の両面で法的措置をとることが可能です。ここでは主な2つの方法を紹介します。

民事での損害賠償請求

個人情報を晒されたことにより精神的苦痛や営業上の損害が発生した場合、民法709条に基づいて損害賠償請求を行うことが考えられます。

この場合、請求できるのは精神的苦痛に対する慰謝料だけでなく、実際に発生した経済的損失も含まれます。

たとえば「個人情報を晒されたことで退店に追い込まれた」など、売上の減少や営業機会の喪失が発生した場合には、それが具体的な損害として算定される可能性があります。

民事訴訟については、個人情報が晒された時点で損害賠償請求ができるケースもあります。

刑事事件として告訴

前述したとおり、投稿の内容によっては名誉毀損罪が成立する可能性があります。その場合は、刑事事件として告訴することが可能です。もし、起訴されれば相手は刑事裁判を受けて責任を追及されることになります。

また、名誉毀損罪以外にも、脅迫罪、ストーカー規制法違反などが該当するケースもあります。刑事告訴を行うことで、投稿者の処罰とともに、犯罪抑止にもつながります。

ただし、刑事事件に該当するかは状況によって異なります。すべてのケースが名誉毀損罪に該当するというわけではないため注意が必要です。

刑事手続きは専門的な知識が必要なため、弁護士に相談して進めることが望ましいです。

個人情報を晒した人を訴えるなら

個人情報を晒されたときに「投稿者を特定して損害賠償を請求したい」という場合、法的な手続きを踏む必要があります。

仮に、SNSや掲示板における匿名投稿であっても、プロバイダへの開示請求を経て投稿者を特定することが考えられます。

弁護士に依頼して手続を進めるのが一般的

インターネットに投稿した人物を特定し、損害賠償請求を行うことが考えられます。

ただし、法律的な知識が必要であるため、自分ですべて完結するのはかなり難易度が高くなります。弁護士に依頼すれば、開示請求から訴訟まで一貫してサポートしてもらえます。

また、弁護士を通じた交渉で示談が成立するケースも少なくなく、裁判を経ずに解決できる可能性もあります。

訴訟の流れ

個人情報を晒された場合の手続の一般的な流れは以下のとおりです。

開示請求

サイトの管理者に対するIPアドレスの開示請求、開示されたIPアドレスをもとにプロバイダに対して投稿者の情報開示請求をします。

投稿者の特定

提供された情報によって、実際の投稿者を特定します。
(様々な要因により、特定できる場合と特定できない場合があります。)

慰謝料等の請求

特定に成功した場合、投稿者に対して損害賠償を請求します。示談交渉または裁判によって解決します。

訴訟提起をする場合は、相手を特定する開示請求に加えて、証拠の整理、請求額の算定、交渉、書類の作成や裁判所での手続きなど多くのステップがあります。
特にプロバイダ情報開示請求は期限(保存期間)があるため、早急な対応が求められます。

そして、開示された情報から投稿者を特定した後は、多くの場合、弁護士が代理人として示談交渉を進めるか、または訴訟提起して損害賠償を請求します。示談の場合は比較的早期に解決するケースもありますが、裁判になると半年〜1年以上かかることもあります。証拠の有無や投稿の悪質性によって賠償額も変動します。

さらに、損害賠償請求に先だって、削除請求や削除の仮処分の申立てを併用することで、被害の拡大を防ぎながら法的責任を追及することが可能です。

弁護士に依頼するメリット

個人情報に関するトラブルは、削除請求・開示請求・訴訟など、複数の法的手続きを進める必要があります。もちろん、すべて自分で対応することもできます。ですが、法律や手続きの知識がなければ難しいのが現状です。

弁護士に依頼することで、証拠の整理や法的書面の作成、プロバイダとの交渉、裁判所への申立てといった複雑な手続きを一括して任せることができます。

また、弁護士が代理人として動くことで、投稿者との直接的なやり取りを避け、精神的な負担を軽減する効果もあります。示談交渉においても、法的根拠を踏まえた適切な損害賠償請求が可能となり、スムーズな解決が期待できます。

さらに、弁護士が関与することで、相手方に法的手続も辞さない強い姿勢が伝わり、削除対応や示談が早期に進む場合もあります。

アークレスト法律事務所には、個人情報のトラブルや名誉毀損のトラブルに強い弁護士が在籍しています。もちろん、法律事務所は個人情報をしっかりと守ります。トラブルがあったときは、1人で悩まずに気軽にご相談ください。

まとめ

キャバクラや風俗店といったナイトワークでは、個人情報が流出した場合の被害が一般企業よりも深刻化しやすい傾向があります。個人情報を不特定多数の人に対して晒す行為は違法となり得ますが、その場合、法的な手段によって削除・損害賠償・刑事告訴が可能です。また、ストーカーなどの被害が発生する可能性もあるため、迅速な対応が被害を最小限にとどめるポイントとなります。

被害に遭ったときは、まず証拠を確保し、そのうえで、弁護士に相談し、開示請求や訴訟によって投稿者に責任を取らせることが重要です。また、削除依頼や仮処分で情報の拡散を食い止めましょう。

「ナイトワークだから仕方ない」と諦めることはありません。あなたのプライバシーは法律で守られています。早めの対応が、被害を最小限にとどめるカギです。

野口 明男 弁護士

監修者

野口 明男(代表弁護士)

開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。