SNSの誹謗中傷・書き込み削除

ツイッターからIPアドレス開示請求が届いたら|開示請求の流れと対処法

2021.10.07
ツイッターからIPアドレス開示請求が届いたら|開示請求の流れと対処法

誰でも気軽に利用できる、無料SNSのツイッター(Twitter)。意見を投稿したことで、ツイッター社からIPアドレスの開示請求に関して連絡が来ることがあります。開示請求のお知らせが届くのは、多くの場合、あなたの投稿内容が誹謗中傷にあたると感じた人が法的手続きに入ったためです。

放置していると訴訟に発展し、高額な慰謝料を支払う事態に陥る可能性もあるため、できるだけ早く対策を講じる必要があります。この記事ではツイッターから見慣れない連絡が届いた場合について、詳しく解説します。

ツイッターから開示請求が届いたらどうなる?

ツイッターから開示請求が届いたらどうなる?

ツイッター社から「法的文書を受領しました」といった内容のメールが届いたら、被害者がツイッター社に投稿者の個人情報の開示を求め、その請求が裁判所に認められたことを意味します

ツイッターの投稿による風評被害を受けた場合、被害者は裁判所に対して、問題の投稿をした人のIPアドレスを開示する仮処分命令の申し立てをします。ツイッター社からのIPアドレス開示請求は、その申し立てが認められた状態です。被害者はその後、経由しているプロバイダを特定し、最終的に投稿者を特定することになります。

IPアドレス開示仮処分の申し立てから開示請求までの流れ

IPアドレス開示仮処分の申し立てから開示請求までの流れ

IPアドレスの開示請求は、被害者が投稿者を特定するまでのフローのひとつです。被害者は、まずツイッターアカウントのIPアドレス開示の仮処分命令を申し立て、次にプロバイダに対する発信者情報開示請求をします。

ツイッター社からの通知が届くまでと、その後の流れを解説します。

IPアドレス開示までの流れ

IPアドレス開示までの流れ

ツイッターで誹謗中傷を受けたと感じ、投稿者になんらかの責任や対処を問う場合、まずIPアドレス開示のための仮処分命令の申し立てが必要です。ツイートした人のIPアドレスが開示されるまでの流れは以下のようになります。

IPアドレス開示仮処分の申し立て

被害者は、裁判所に対して投稿者のIPアドレスを開示するように仮処分の申し立てを行います

ただし、ツイッターの運営会社は国外の企業であり、日本法人は開示請求に対応する権限を有していません。そのため仮処分の申し立ては東京地裁に対して行われます。

債権者面接

仮処分の申し立てが受理されると、裁判所で「債権者面接」が行われます。債権者となる被害者が、裁判所に出頭して訴訟内容を説明する手続きのことです。

米国ツイッター社の呼び出し

裁判所は双方審尋出(民事訴訟手続きにおける口頭弁論のこと)のために、アメリカからツイッターの運営会社を呼び出す手続きを行います。EMS(国際スピード郵便)を利用して呼び出すため、双方審尋出が設定されるのは通常2~3週間後です。

双方審尋出

双方審尋出の期日に被害者側とツイッター社の代理人が裁判所に出頭し、1~2週間おきに、交互にそれぞれの主張や反論などを行います

ただし、新型コロナウイルス感染拡大以降、ツイッター社側はあまり反論しなくなっており、双方審尋出が1回だけで終わるケースが増えているようです。

発令

双方審尋出の終了後、裁判所が情報開示を認めた場合に仮処分命令が発令されます。この命令を受けて、ツイッター社は被害者側に投稿者のIPアドレスを開示します。

IPアドレス開示

IPアドレスが実際に開示されるのは、仮処分命令が発令されてから概ね1週間後です。ツイッター社から被害者へメールが送付され、該当アカウントの約2ヶ月分のログインIPアドレスが共有されます。

この段階で、ツイート投稿者にもIPアドレス開示の決定がメールで知らされます。

IPアドレス開示後の流れ

ここからは、ツイッター社から開示請求の通知が届いた後の流れです。

被害者は、投稿者のIPアドレスから投稿者の経由プロバイダ(インターネット会社やモバイル会社など)を特定し、プロバイダから投稿者の氏名や住所といった情報を開示してもらうための手続きを行います。

ログ保存請求

被害者側はまず、プロバイダが保存している投稿者のログ(アクセス履歴など)の保存請求を行います。ログは通常、一定期間が経過すると削除されてしまいます。ログがないと投稿者を特定できなくなるため、このような手続きをとるわけです。

プロバイダへの発信者情報開示請求

ログ保存の要請に応じてもらえたら、被害者からプロバイダに「発信者情報開示請求」が行われます。

開示請求を受けたプロバイダは、契約者であるツイート投稿者本人に情報開示の可否を尋ねます。投稿者のもとにプロバイダからの開示請求が届くため、応じるか拒否するかの返信をしましょう

ここで投稿者が情報開示を拒否したら、プロバイダ側も開示請求を拒否するのが一般的です。その場合、被害者側は発信者情報開示の訴訟を提起して裁判所の判断を待ちます。

ツイッターで名誉毀損罪や侮辱罪が成立する条件

ツイッターで名誉毀損罪や侮辱罪が成立する条件

投稿者が特定されると、投稿者は裁判で責任を問われることになります。ツイッター上での誹謗中傷は、名誉毀損罪(刑法230条1項)や侮辱罪(刑法231条)に当たる可能性があります。名誉毀損罪や侮辱罪が成立する条件についても確認しておきましょう。

名誉毀損罪が成立する条件と刑罰

名誉毀損罪は、
「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀き損した者」
に対して問われる罪です。以下の4点を満たす場合、名誉毀損罪が成立します。

  • 中傷したのが不特定多数の人に広がる可能性がある場所であること
  • 具体的な事実を示す内容であること
  • 実名や広く認知されているニックネームを記載するなど、誰のことであるかが特定できる内容であること
  • 不倫している、前科があるなど社会的評価を低下させる内容であること

名誉毀損罪で有罪になった場合、3年以下の自由刑(懲役または禁固)か50万円以下の罰金が科せられます

侮辱罪が成立する条件と刑罰

侮辱罪が成立するのは、
「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した」
場合です。

つまり、事実を示さずに相手の社会低下評価を低下させる行為をしたときは侮辱罪に相当します。例えば、ツイッター上で「〇〇は頭が悪い」、「〇〇はクソ野郎」などと他人を罵るような書き込みをした場合です。

なお、侮辱罪で有罪判決を受けた場合、拘留(30日未満の身柄拘束のこと)か科料(1万円未満の金銭を支払う刑罰のこと)に処されます。

ツイッターの誹謗中傷で請求される慰謝料の相場

ツイッターの誹謗中傷で請求される慰謝料の相場

個人や企業を誹謗中傷する投稿をした場合、刑法に定められた罰金とは別に被害者に対する慰謝料が発生する可能性があります。慰謝料請求額の相場は、次の通りです。

名誉毀損

名誉毀損をした場合の慰謝料の相場は、以下のとおりです。

  • 一般人:10~60万円程度(内容が悪質で影響力が大きい場合は、数百万円単位)
  • 事業者や有名人:50~500万円以上(被害者の知名度や損失によって異なる)

被害者の立場によって慰謝料は異なります。多くのフォロワーを抱えるインフルエンサーや芸能人などの有名人の場合、一般人よりも損失が大きいため、相場よりも高額な慰謝料を請求されることがあります

侮辱

ツイート内容が侮辱にあたる場合の慰謝料の相場は、以下のとおりです。

  • 一般人:1~15万円程度(期間や頻度、内容による)
  • 事業者や有名人:10~100万円程度(損失や知名度、投稿内容による)

ツイッターで侮辱した場合に請求される慰謝料は、名誉毀損よりは低くなります。ただし、内容の悪質さや損失の大きさによっては、相場以上の額が請求され、それを裁判所が認める可能性もあるため注意が必要です。

プライバシーの侵害

プライバシーの侵害の慰謝料相場は、侮辱罪と同等です。

  • 一般人:1~15万円程度(期間や頻度、内容による)
  • 事業者や有名人:10~100万円程度(損失や知名度、投稿内容による)

ただし、こちらも被害が大きくなる可能性が高い有名人や事業者が対象の場合、相場以上の慰謝料を請求されることは十分に考えられます。また、一般人の場合でも被害状況によっては請求される慰謝料が高額になるかもしれません。

プロバイダから開示請求が届いたときの対処法

プロバイダから開示請求が届いたときの対処法

ツイッター社から届く開示請求の通知は、ツイッター社がIPアドレスを開示する旨をお知らせするものであり、返信が求められるものではありません。その後、被害者側の手続きが進むと、プロバイダから発信者情報開示請求が届きます。こちらは期限内に何らかの対応が必要です。

納得がいかない旨を添えて返信する

開示請求の理由に身に覚えがない場合は、その旨を記載してプロバイダに返送します。

とはいえ、開示請求がされた以上、誤認に基づくケースは非常に稀です。本当に心当たりがないか、よく確認するようにしてください。

要求に応えて示談に望む

自らに非があると自覚している場合は、被害者側の要求に応じて示談を求めるのが望ましい対応です。無視したり、反論したりすることで、事態がより深刻化する恐れがあります。

真摯に対応して早期に謝罪することで、大事になる前に事態を収束させられるかもしれません。

弁護士に相談する

示談を進めたい場合はもちろん、身に覚えがないときや対応に迷っている場合でも、開示請求が届いたら、まずはインターネットやSNSに関する訴訟のノウハウを持つ弁護士へ連絡をとることをおすすめします。置かれた状況に応じて、意見書の提出や示談の交渉など、事態の早期収束を試みることが可能です。

弁護士法人アークレスト法律事務所は、ネット上のトラブルを解決してきた法律事務所です。ツイッターのトラブルにも適切に対処しますので、お困りごとがある方はぜひお気軽にご相談ください。

野口 明男 弁護士

監修者

野口 明男(代表弁護士)

開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。