コラムIPアドレス開示と投稿者の特定弁護士インタビュー

ネット上の風評被害における予防と対策【後編】|発信者情報開示と削除の方法

2020.01.28

ネット上での炎上トラブルは、ひたすら静観して鎮火!
士業がとるべきSNSでの立ち振る舞いとは?
弁護士法人アークレスト法律事務所代表弁護士の野口明男氏に聞く。

もし、ネット上に自分の悪評事実と異なる情報を書かれてしまったら、対処としては投稿の削除請求発信者情報開示請求があります。悪評等が顧客の目に触れるダメージを防ぐという観点では、サイトの管理者に削除してもらうのが直接的な対処です。ただし、削除は病気の対症療法のようなもので、再度投稿されればイタチごっこが続く可能性があります。根本的な解決を望むのであれば、発信者情報開示請求で投稿者を特定したうえで、投稿者に法的制裁を与えたり、二度と投稿しないことの誓約書を書かせることが最も有効な手段でしょう。

二度と投稿しないことの誓約書を書かせることが最も有効な手段

発信者情報開示請求のプロセスは、第1ステップとして、サイトやSNS、掲示板の管理者に投稿者のIPアドレスの開示を請求し、必要に応じて裁判所に仮処分を申し立てます。第2ステップは、IP開示後、そのIPを管理するプロバイダに、投稿者の住所氏名の開示請求をするのですが、プロバイダは裁判所の判決なしでは開示しないことが多く、訴訟が必要なため時間と費用がかかります。

また、発信者情報開示は、サイトやプロバイダにアクセスログが残っていないと手詰まり。まさに時間との勝負です。弊所にも開示の相談自体は毎日のようにありますが、実際に開示を進める件数は月に10件ほど。いくら酷い投稿でも時間切れで開示請求のしようがないケースが多いのです。

時間との勝負

では、自分の写真や動画、言動を拡散されるなど炎上に巻き込まれてしまった場合、どうするか。弱腰に映るかもしれませんが、とにかく炎上が収まるまでは静観です。炎上に反論するのは最悪ですが、一方で、非を認めて謝ることもリスクです(社会的責任ある大企業等は別)。さらに、開示にせよ削除にせよ、炎上の対象人物が行動を起こしたという痕跡すらも、新たな火種になるのです。まずは炎上が落ち着くまで放置し、削除したい場合は自然鎮火後に着手すべき。発信者情報開示は自然鎮火を待つ時間の余裕もないですが、そもそも何百人何千人が群がる炎上のさなかで、投稿者を一人二人開示しても焼け石に水です。

士業は、何かと炎上に巻き込まれやすい職業かもしれません。弁護士や会計士による投稿というだけで社会的な注目度も高く、拡散されやすくなります。これは弁護士の悪い癖ですが、批判されると脊髄反射的に反論しちゃうんですよね(笑)。士業の小難しい言葉使いや口調も、世間からは「偉そう」、「高圧的だ」といった見方をされがちです。SNSで発信する際には、士業は一般人以上に、謙虚を肝に銘じ、細かな言い回しにも心を配る必要があります。

士業が炎上に巻き込まれたら、その事件はクローズアップされます。一番迷惑を被るのはお客様だということを忘れてはいけません。士業自ら、火に油を注ぐことのないよう気を付けたいものです。