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5ちゃんねる(5ch)で書き込みをした投稿者を特定する流れと用語解説|弁護士監修記事
2020.02.13
国内最大級のインターネット掲示板5ちゃんねる(5ch)や2ちゃんねる(2ch.sc)では、日々多くの書き込みが投稿されており、中には個人名を挙げて誹謗中傷するものも少なくありません。
5ちゃんねる(5ch)の誹謗中傷の書き込みは、速やかに削除しなければまとめサイトへの転載やSNSでの拡散により、多くの人の目に触れてしまいます。しかし、それだけでは、根本的な解決とはいえません。誹謗中傷を書き込んだ投稿者に慰謝料を請求したい、刑事罰を受けてもらいたいと考えるのは当然のことです。また、二度と他人を誹謗中傷しないようにと、反省を促したいと考える方も多いと思います。
そのために必要なのは、「投稿者の特定」です。5ちゃんねる(5ch)は匿名掲示板で、書き込みだけでは個人を特定することはできません。
そこで今回は、5ちゃんねる(5ch)で誹謗中傷を行った投稿者を特定する方法
を解説します。
目次
目次
1.投稿者を特定したいケース
5ちゃんねる(5ch)の完全匿名という特徴を逆手にとって、悪質な誹謗中傷の書き込みを投稿する投稿者が非常に多い傾向があります。一度の投稿で満足する人もいますが、多くが「荒し」といって同じスレッドに何度も同じ投稿をしたり、複数のスレッドに投稿する「マルチポスト」を行うなど、執拗に誹謗中傷を繰り返します。放置しておくと問題が沈静化するどころか、より深刻になるケースも少なくありません。問題の書き込みを慎むようにと進言した第三者に対して、「本人降臨」などといって、怒りを煽るような発言をするなどモラルに欠けている投稿者も存在します。
このような問題行動が著しい場合は、書き込みを削除するだけでなく投稿者を特定して法的措置を辞さない強硬な姿勢で問題に対峙する必要があります。
では、具体的に投稿者を特定した方がよいケースを確認してみましょう。
- 長期間にわたって、誹謗中傷の投稿が繰り返されている
- 5ちゃんねる(5ch)以外の掲示板やSNSなどにも、同様の書き込みが行われている
- まとめサイトやSNSなどで、拡散されつつある
- 誹謗中傷の投稿によって、精神疾患を発症して仕事に行けなくなった
- 誹謗中傷の投稿によって、店舗や企業の売上が減少した
- 個人情報を書き込まれているため、投稿者を特定したい
- 秘密にしていることが書かれているため、親しい人が投稿している可能性がある
- 自社の従業員と思しき人が機密情報や業務上知り得た情報を書き込んでいるため、懲戒処分を検討したい
- 名誉毀損罪や侮辱罪などでの告訴を検討している
- プライバシー権を侵害されているので、慰謝料を請求したい
- 自身の著作権が侵害されている
- 犯罪予告等の脅迫を受けている
以上のようなケースでは、刑事告訴や慰謝料請求などの検討の余地があります。どちらの場合も、投稿者の氏名や住所、連絡先が必要ですので投稿の削除を求めるととともに、投稿者を特定する手続きを進めなければなりません。
2. 5ちゃんねる(5ch)の投稿者特定の手順

それでは、5ちゃんねる(5ch)の投稿者を特定する手順を解説します。
2-1.サイト管理者にIPアドレスの開示請求
まずは、5ちゃんねる(5ch)のサイト管理者にIPアドレスを開示するように求めます。この手続は任意で行われますので、サイト管理者が応じない可能性も大いにあります。
2-2.発信者情報開示請求仮処分手続を行う
サイト管理者への任意の情報開示請求が認められなかった場合は、被害者が裁判所に対して「発信者情報開示の仮処分命令」を申し立てます。発信者情報開示の仮処分とは、簡単にいうと投稿者の情報を開示するように裁判所からプロバイダに命じてもらうための手続です。
この手続は、「プロバイダ責任制限法」によって認められた「発信者情報開示請求権」に基づいて行われます。インターネットの書き込み等によって権利を侵害された人が発信者情報の開示を求めることができるとしているのが、発信者情報開示請求権です。裁判所の仮処分手続によって仮処分が認められるためには、書き込みが以下の条件を満たしている必要があります。
発信者によって、被害者の権利が侵害されていることが明らかなとき
具体的には、「●●は大学を裏口入学している」、「××会社に勤務する●●は××会社の金を横領している」、「△△高校の●●は△△高校の生徒に手を出した」など、名誉毀損や侮辱などが疑われる書き込みです。投稿内容から、その投稿が誰を対象人物としているのか明確に理解できることが必要です(同定可能性)。単に氏名が書かれているだけでは、同姓同名の人物と区別できず同定可能性が認められないことも少なくないため、プラスアルファの情報が必要となります。実名でなくハンドルネームのみが書かれている場合は難しい判断となるため、弁護士への相談が望ましいでしょう。
発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき
発信者情報の開示を受けるべき正当な理由とは、投稿者に対する損害賠償請求や刑事告訴を検討していることなどです。ほかにも、名誉回復措置を求めようとする場合にも、その請求に投稿者の情報が必要ですので、正当ながある理由といえます。
2-3. IPアドレスが開示されたらプロバイダを特定する
裁判所がIPアドレスを開示することを命じる処分を言い渡したら、5ちゃんねる(5ch)の運営者に対して投稿者のIPアドレスと日時等を開示するように求めます。5ちゃんねる(5ch)からIPアドレスが開示されたら、プロバイダを特定します。
IPアドレスからのプロバイダの特定は、個人でも可能です。無料のインターネットサイトからも特定することもできます。
2-4.プロバイダに発信者情報開示請求を行う
プロバイダを特定したら、プロバイダに対して発信者情報開示請求を行います。プロバイダは発信者情報開示請求を受けたら、投稿者に「発信者情報開示に係る意見照会書」という書面を送ります。この意見照会書に記載されている事項はこちらです。
- 発信者情報開示を請求した人物の名前、企業名、団体名
- 掲載された情報
- 請求者の侵害された権利と侵害された理由
これらの情報を基に、「この人物にあなたの情報を知らせてもよいですか?」と情報開示の意思を投稿者に確認することが、「発信者情報開示請求に係る意見照会書」の目的です。投稿者が「イエス」と回答すれば、請求者に投稿者の情報が開示されます。これに対し、投稿者が不同意と回答した場合は、プロバイダから請求者に対して発信者情報開示請求に応じない旨が通知されます。投稿者が回答しなかった場合は、プロバイダが発信者情報を開示するかどうかを判断します。
投稿者が、「自分に落ち度がある」と把握している場合は、この時点で投稿者サイドが被害者サイドに連絡をして、慰謝料等を支払うことで和解が成立することもあります。
2-5.プロバイダに対して発信者情報開示請求訴訟を提起する
プロバイダに発信者情報開示を拒否された場合は、プロバイダに対して発信者情報開示請求訴訟を提起します。その投稿が、名誉毀損や著作権侵害、侮辱などに該当し権利侵害の明白性があると判断されると、裁判所はプロバイダに対して発信者の情報開示を命じる判決を言い渡します。
プロバイダは、裁判所の命令に従って投稿者の住所や氏名を請求者に開示しますので、ようやく被害者は投稿者の氏名や連絡先を知ることができるのです。
3.自分で投稿者を特定する場合の注意点

ご自身で投稿者を特定する際は以下の点に注意しましょう。
3-1. IPアドレスだけで投稿者の個人特定できるわけではない
発信者情報開示請求では、投稿者のIPアドレスの入手が必須です。サイト管理者が任意での情報開示請求に応じなければ裁判所に仮処分を申し立てなければなりません。慣れない方にとっては非常に難しい手続を経て、ようやくIPアドレスが開示されることになりますが、これは投稿者特定の第一ステップであり、それだけでは投稿者を特定することはできません。IPアドレスからわかることは、投稿者が投稿時に用いた「プロバイダ」だけです。
3-2. IPアドレスは短期間で削除されることもある
IPアドレスは、5ちゃんねる(5ch)のサイト管理者に保存されていますが、早ければ1か月、遅くとも6か月ほどでログが削除されてしまいます。ログが削除されてしまうとIPアドレスの開示を受けることができなくなり、損害賠償も不可能になってしまいます。問題となる書き込みが投稿されてから2か月以上経過している場合は、IPアドレスが削除される危険性があるため、早めにIPアドレス特定手続に着手しましょう。
3-3. 1人で投稿者を特定するのは非常に困難
ここまでお話ししたように、発信者情報開示請求の手続はフローが複雑です。また場合によって、2回は裁判所での手続が必要となります。1度目はサイト管理者に投稿者のIPアドレスを開示するように求める場合です。IPアドレスが開示されたら、プロバイダに投稿者の氏名や住所などの情報を開示するように求めますが、これが2度目の手続です。つまりこれだけの手続を行うために、2度も裁判所で手続を行わなければならないのです。
裁判所での手続は法的な専門知識が求められます。特に発信者情報開示請求においては、被害者の権利が侵害されていることを論理的に説明する必要があるため、弁護士に委任するのが最適です。
4.投稿者の特定を弁護士に依頼するメリットと弁護士の選び方

5ちゃんねる(5ch)の投稿者の特定を弁護士に依頼する場合のメリットと、特定を成功に導くことができる弁護士の選び方を解説します。
4-1.特定を弁護士に依頼するメリット
5ちゃんねる(5ch)の投稿者の特定を弁護士に依頼するメリットがこちらです。
- 手間をかけずに、投稿者を特定可能
- 投稿者特定に慣れている弁護士であれば、迅速に特定することができる
- 投稿者の特定から損害賠償請求までもワンストップで依頼できる
投稿者の特定作業は非常に手間がかかり複雑です。何度も手紙を往復させたり裁判所に書類を提出したりと、日頃法律に関わっていない方にとっては、ハードルが高いものばかりです。しかも投稿者特定はアクセスログの保存期間の関係で、スピード勝負という側面もあります。個人で行うと、手続をしている間に保存期間が過ぎてアクセスログが削除されてしまい、投稿者の特定が不可能になってしまいます。
また投稿者を自分で特定できたとしても、その先の損害賠償請求については弁護士に依頼することが望ましいので二度手間です。
ところが、投稿者特定の時点で弁護士に依頼すれば、弁護士が迅速に投稿者特定の手続を行います(ただし実際に特定が可能かどうかは案件によって異なります。)。投稿者が特定できれば、慰謝料請求等の手続もそのまま依頼できますので、ほとんど手間がかかりません。
迅速に投稿者の特定を行いたい場合は、弁護士に依頼するのが得策です。
4-2. 5ちゃんねる(5ch)投稿者特定を依頼する弁護士の選び方
それでは、どのような弁護士に投稿者特定を依頼すればよいのでしょうか。投稿者特定の弁護士選びに失敗しないための選び方を解説します。
4-3. 5ちゃんねる(5ch)の削除、投稿者特定実績が豊富な弁護士
弁護士にも専門とする分野があります。特に5ちゃんねる(5ch)の投稿者特定はスピードが重要ですので、削除や投稿者特定の実績が豊富な弁護士による迅速な作業が求められます。弁護士の得意分野は法律事務所のホームページに記載されているので、確認してみましょう。「5ちゃんねる(5ch)の書き込みの削除実績が豊富」、「ネットの投稿者特定実績多数」などと記載されている弁護士が望ましいでしょう。
4-4. ITに強い弁護士を選ぶ
5ちゃんねる(5ch)の投稿者投稿の手続は、弁護士の取り扱い分野の「IT」に分類されるものです。IT分野は独特の用語がありますし、手続に迅速さが求められますので、IT分野は取り扱わないとしている弁護士も少なくありません。
いくら優れた交渉能力を持っていたとしてもIT分野の実績がない弁護士やITが得意ではない弁護士に依頼すると、思うような結果が得られない場合もあります。投稿者特定を弁護士に依頼する場合は、IT分野を得意としている弁護士を選択しましょう。
5. 5ちゃんねる(5ch)の投稿者特定を弁護士に依頼した場合の費用

弁護士に投稿者特定を依頼するのがベストということはわかっていても、「費用がいくらかかるかわからないから」と躊躇してしまうものです。そこで、投稿者特定を弁護士に依頼する場合の費用の相場と、弁護士法人アークレスト法律事務所に依頼いただいた場合の費用を記載しております。
5-1.裁判外での発信者情報開示請求の場合
仮処分や訴訟ではなく、任意の開示請求で発信者開示請求を依頼した場合の費用の相場は、着手金が5万円から10万円程度、投稿者が特定できた場合の報酬金が20万円程度となります。
5-2.裁判所を経た発信者情報開示請求の場合
仮処分や訴訟での発信者開示請求を、弁護士に依頼した場合の相場は着手金が20万円程度、報酬金が20万円程度となります。
弁護士法人アークレスト法律事務所では、5ちゃんねる(5ch)に対するIPアドレスの開示請求が5万5000円・プロバイダへの発信者開示請求(任意)は着手金11万円、成功報酬22万円にて承っております。
IPアドレスの開示請求(任意) | 6万6000円〜 |
裁判所へのIPアドレス開示の仮処分の申立て | 22万円 |
プロバイダへの発信者開示請求(任意) | 11万円 |
発信者開示請求訴訟 | 22万円 |
6.投稿者特定後にできること

投稿者を特定することで、以下のような手続が可能となります。
6-1.書き込みの削除
通常は、発信者情報開示請求とともに裁判所に書き込み削除の仮処分申立てを行います。
6-2.慰謝料請求、損害賠償請求
投稿者を特定した場合、その投稿が名誉毀損罪や侮辱罪、著作権侵害などに該当するのであれば投稿者への慰謝料などを請求することができる可能性があります。それ以外にも弁護士費用と調査費用とを合計し、損害賠償金の総額としてインターネットの書き込みによる名誉毀損で200万円を超える損害賠償金が支払われた事例もあります。
悪質な書き込みに対しては慰謝料の請求を検討しましょう。
6-3.訴訟による慰謝料請求や損害賠償請求
投稿者が任意の交渉での慰謝料請求や損害賠償請求に応じない場合は、損害賠償請求訴訟を提起することも可能です。
訴訟の場合は、訴状を作成したり証拠を集めたりと専門的な知識が求められますので、弁護士にご相談ください。
6-4.刑事告訴
書き込みが刑法等に違反する場合は、刑事告訴も検討します。刑事告訴を行うことで、投稿者は警察などの捜査機関の取調べを受けることになります。告訴状を受理すれば、捜査機関は必ず捜査に着手しなければなりません。
5ちゃんねる(5ch)の書き込みによって考えられる犯罪は、名誉毀損罪や侮辱罪、業務後妨害罪や脅迫罪などです。また、著作権や営業秘密の侵害も考えられます。書き込みの悪質度が高い場合は、刑事告訴を検討しましょう。
7.まとめ
5ちゃんねる(5ch)の悪質な誹謗中傷の書き込みを行った投稿者を特定するための手続は、複雑です。5ちゃんねる(5ch)に対してだけでなくプロバイダに対しても手続を行わなければなりません。手続は煩雑で非常に時間がかかります。
また、5ちゃんねる(5ch)の発信者情報特定を成功させるためには、アクセスログの保存期間内に手続を完了させなければならず、時間との闘いです。
私たち弁護士法人アークレスト法律事務所では、数多くの5ちゃんねる(5ch)の削除実績と投稿者特定実績を基に、迅速に投稿者特定の手続を行いますので、お困りの方はぜひご相談ください。速やかに、投稿者特定に着手して、被害の拡大の防止に尽力します。

監修者
野口 明男(代表弁護士)
開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。