転職サイトの誹謗中傷・書き込み削除

転職会議での悪評口コミによる被害と、記事削除や投稿者特定について

2018.11.25
転職会議での悪評口コミによる被害と、記事削除や投稿者特定について

近年、働き方改革が注目される中、新たな働き場所を求める人は少なくありません。実際に、2人に1人が転職する時代へと突入しており、待遇面や職場環境など、どのような企業なのかを働いている人の口コミを調べることができるサイトも存在します。

その代表的なものが「転職会議」です。各企業の様々な情報を閲覧することができますが、中には誹謗中傷や根も葉もないことが書かれているものもあります。そこで本記事では、企業イメージを著しくダウンしてしまいかねない転職会議の問題点について解説します。

1.転職会議とは

転職会議とは

転職会議(てんしょくかいぎ)は、株式会社リブセンスによって運営されている転職者向けの企業口コミサイトです。閲覧するためには会員登録をする必要があり、企業で勤務している人や、過去に働いていた人のリアルな口コミが掲載されています。

1-1.国内最大級の口コミサイト

転職会議では、これまでに100万件以上の企業に関する口コミを掲載し、会員数は500万人以上(2017年11月時点)と、いずれも転職系サービスとしては日本最大級を誇っています。近年は働き方改革などの影響から転職市場が活発化しており、各企業の細かな情報を入手したい人が増えていることからも、転職系の口コミサイトの需要が高まっています。

1-2.口コミは掲載前にチェックされる

基本的に企業の情報であれば、自由に書き込むことが可能です。しかし、転職会議で投稿された口コミは、内容に問題がないか運営がチェック後に掲載される仕組みとなっています。しかし、実際には転職者にとって公益であると判断された情報は、企業の不利益なことであっても掲載を許しているのが現状です。

1-3.匿名性が高い

無料の会員登録をすれば自由に閲覧や書き込みができる転職会議ですが、誰が投稿したのかは分かりません。非常に匿名性が高く、仕事や人間関係の吐き口として利用している人もいるでしょう。このように、人物を特定されない気軽さからも、企業や個人に対して誹謗中傷を言いやすい環境になっていることも事実です。

2.転職会議で悪評を書かれる企業のデメリット

転職会議で悪評を書かれる企業のデメリット

本来、入社しないと知りえない情報を入手できることは、転職希望者にとっては非常に有益なものになるでしょう。しかし、企業にとってネガティブな情報は死活問題です。転職会議で悪評を書かれることにより、企業に降りかかるデメリットを考えてみましょう。

2-1.企業への誹謗中傷・悪評の例

転職会議で、企業に対する誹謗中傷や嫌がらせの口コミとして、
「○○はブラック企業」
「セクハラ・パワハラが横行」
「給与がしっかり振り込まれない」
「社長が不倫している」
などが挙げられます。その中には事実のこともあるでしょう。しかし、根も葉もないことが書かれることもあり、企業にとっては不利益です。こういった口コミが原因となり、採用活動に多大なる影響が出てくることも考えられます。

2-2.口コミは半永久的に残る

転職会議に書かれている情報が嘘であっても、それを閲覧した人は事実として受け止めることでしょう。さらに、インターネットに書かれている情報は半永久的に残ります。たとえ削除されたとしても、別のサイトに拡散されていることだって考えられます。それが過去のことであっても、現在進行形で捉えられてしまうのです。

2-3.企業イメージが著しく低下する

企業の口コミは転職者だけに影響するものではありません。転職会議では「欠陥商品を扱っている」といったものも書かれています。このような噂が広まれば企業イメージも著しく低下し、取引先との関係が崩れるだけでなく、売上にも大きく影響するでしょう。悪評を書かれた企業のダメージは想像以上の大きいのです。

3.転職会議で削除できる口コミとは

転職会議で誹謗中傷などの書き込みがあれば企業へのダメージが大きく、早急に削除対応してもらう必要があります。ただし、企業にとって不利益な情報であるからという理由で、すべての口コミが削除できるわけではありません。

3-1.削除対象は「法律違反」or「利用規約違反」

転職会議で削除できる口コミは「法律違反」または「利用規約違反」のいずれかに該当するものと、ガイドラインで定められています。実際に、口コミの中には企業にとって不利益な情報も掲載されています。しかし、企業側が誹謗中傷だと思っても、法律や利用規約に違反していないことが証明できなければ、削除依頼をすることはできません。

3-2.転職会議で削除対象となる口コミ

それでは、どのような口コミが削除対象となるのでしょうか。

  • 私生活に関する情報
  • 従業員などの実名
  • 外見的容姿など悪意ある表現
  • 乱暴な言葉遣い

たとえば、プライベートな情報が書かれている場合は削除可能です。しかし、働いている人でなければ分からないことは削除対象となりません。また、特定の人物を傷つけるような口コミなどは、実生活にも影響を及ぼすとして削除依頼することができます。

4.転職会議の口コミを削除できる可能性は低い

転職会議の口コミを削除できる可能性は低い

法律や利用規約に違反している口コミは削除することができます。

しかし、転職会議の口コミで掲載後に削除された投稿は極めて低いのが現状です。この数字は投稿者によって削除された情報であり、企業からの依頼によって削除された口コミに限定すると、さらに非常に低くなっております。

このように、転職会議で投稿された口コミを削除するのは容易なことではありません。また、企業からの依頼で削除されたとしても、部分的な削除にとどまることも。口コミにどんな問題があって削除して欲しいのかを、しっかりと伝える必要があります。

5.弁護士に削除をご依頼ください

転職会議の口コミに対して任意での削除依頼をしても、これを受け入れてくれることは少ないです。この場合、裁判所に仮処分の手続きを行い、裁判所から運営元に対して口コミの削除命令を出してもらう必要があります。

仮処分を行うと、裁判所で口コミ内容が削除すべきものかの確認されます。このような心理の結果から削除するべきと判断されると、サイト運営者によって対象の口コミは削除されます。仮処分から削除されるまでの期間は約1ヶ月程度です。

6.転職会議に中傷を書いた人を特定する方法

転職会議に中傷を書いた人を特定する方法

口コミによって売上の低下といった被害を受けた場合は、書き込みをした人に対して損害賠償請求をすることが可能です。しかし、記事削除請求をしただけでは書き込みをした人を特定することができません。

インターネット上で書き込みをした人を特定するための手続きを「発信者情報開示請求」と呼びます。プロバイダ責任制限法に基づいて認められる被害者の権利であり、手続きの流れは概ね以下の通りです。

  • 1.サイト運営者に投稿者のIPアドレスとスタンプを開示させる
  • 2.プロバイダに対して、記録の消去を禁止する裁判所の命令を出してもらう
  • 3.プロバイダから、契約者の氏名・住所を開示させ、投稿者を特定する

7.まとめ

転職会議に投稿された口コミを任意で削除することは、非常に困難であると思った方が良いでしょう。しかし、正しく手続きを踏むことで削除できる可能性は高いです。弁護士ならこういった風評被害に対するノウハウも持ち合わせていますので、ネット上の風評被害・誹謗中傷は、お気軽にご相談ください。

野口 明男 弁護士

監修者

野口 明男(代表弁護士)

開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。