オフィス移転で高額な原状回復費用を請求されたときの対処法を解説
退去費用のトラブル4選!高額な退去費用を請求されたときの対処法
2025.04.18
アパートやマンションなどの賃貸物件を退去する際に、退去費用として高額な請求をされることがあります。長期間賃貸物件で生活していると汚れや傷などが発生しますので、ある程度の退去費用の負担は仕方ありません。しかし、不当に高額な退去費用を請求されたときはそのまま支払うのではなく、適正な内容かを確認し必要であれば賃貸人と減額交渉を行うようにしましょう。
今回は、退去費用に関するよくあるトラブル4選と高額な退去費用を請求されたときの対処法について解説します。
目次
賃貸物件における退去費用とは

賃貸物件における退去費用とは、賃貸物件を退去する際にかかる修繕費用のことをいいます。
賃借人には、賃貸借契約終了時に借りた部屋を元の状態に戻して賃借人に返還する義務があります。これを「原状回復義務」といいます。賃借人には、このような原状回復義務があるため、退去時に退去費用の支払いが必要になるのです。
賃借人の故意または過失により生じた汚損については、賃借人負担で原状回復をしなければなりません。通常は契約時に敷金を預けていますので、退去費用は敷金から充当されますが、退去費用が高額になると敷金だけでは足りず、追加で請求をされてしまうこともあります。
賃貸物件でよくある原状回復や退去費用のトラブル4選

賃貸物件の原状回復や退去費用に関しては、さまざまなトラブルが発生します。以下では、賃貸物件でよくある原状回復や退去費用のトラブルを紹介します。このようなトラブルに心当たりがある方は、3章で説明する対処法を検討してみるとよいでしょう。
高額な原状回復費用を請求される
賃借人の故意または過失で発生した汚損については、賃借人負担で原状回復を行う必要がありますが、経年劣化や通常消耗に基づく汚損は、原則として賃借人の負担とはならず、賃貸人の負担となります。
しかし、賃貸人によっては賃借人の無知や経験不足に乗じて経年劣化や通常消耗に基づく汚損に関する原状回復費用を請求することもあり、結果的に退去後に高額な退去費用を請求されてトラブルになるケースがあります。
借りる前からあった傷や汚れまで原状回復を求められる
原状回復は、借りる前の状態に戻すことをいいますので、賃借人が当該物件を借りる前からあった傷や汚れについては賃借人ではなく、賃貸人の負担で修繕しなければなりません。
しかし、賃貸人によっては入居前からあった傷や汚れであるかがわからないなどの理由で入居前からある傷や汚れの修繕費用も賃借人に請求することがあります。賃借人は、「自分がつけた傷ではない」「入居時からあった汚れである」などと主張して、その部分の退去費用の支払いを拒むことができますが、主張の裏付けとなる証拠がなければ賃貸人が納得しない場合も少なくありません。
そのため、賃貸物件に入居する際に傷や汚れに気づいたときは、賃貸人に指摘するとともに写真を撮って証拠に残しておきましょう。
退去費用に通常損耗や経年劣化部分が含まれている
賃借人が負担すべき原状回復の範囲は、賃借人が故意または過失により通常の使用を超えて損耗・毀損した部分(特別損耗)になります。
【退去費用に含まれるもの(特別損耗)】 ・ものを落としてできた床の傷やへこみ ・液体をこぼして染みついた床やカーペットの汚れ ・家具などをぶつけたことによりついた床や壁の傷 ・喫煙による壁紙の変色(ヤニ汚れ) ・結露を放置したことにより発生したカビ ・清掃を怠ったことで取れなくなった水回りの汚れ ・床や壁紙の落書き ・ペットがつけた傷やにおい |
他方、賃借人が普通に生活する中で生じた傷や汚れは、経年劣化・通常損耗にあたりますので、退去費用には含まれません。
【退去費用に含まれないもの(経年劣化・通常損耗)】 ・壁紙に画びょうを刺した跡(程度によっては特別消耗になる可能性があります) ・家具や家電の設置により生じた床のへこみ ・直射日光による床や壁の日焼け跡 ・冷蔵庫の設置による壁の電気焼け ・経年劣化による壁紙の剥がれ |
このような原状回復のルールは、国土交通省が公表している原状回復ガイドラインに定められていますが、賃借人の無知や経験不足に付け込み経年劣化や通常損耗についても退去費用に含めて請求されることがあります。
退去時のハウスクリーニング代として法外な費用を請求される
退去時のハウスクリーニング費用は、本来であれば賃貸人が負担しなければならない費用になりますが、賃貸借契約書に「クリーニング費用は賃借人の負担とする」との記載がある場合には、賃借人がクリーニング費用を負担しなければなりません。
賃借人がクリーニング費用を負担しなければならないケースであっても、あまりに法外なクリーニング費用だった場合には、負担すべき範囲などを巡ってトラブルになることがあります。
賃貸物件で高額な退去費用を請求されたときの対処法

賃貸物件で高額な退去費用を請求されたときは、以下のような対処法を検討するようにしましょう。
退去費用の明細を確認する
賃貸人から高額な退去費用を請求されたときは、賃貸人に対して、退去費用の明細を請求するようにしてください。なぜなら、退去費用の明細がなければ、本来賃借人が負担すべき項目であるか、退去費用として適正な金額であるかが判断できないからです。
退去費用が高額なケースでは、本来賃貸人が負担すべき経年劣化や通常損耗を退去費用に含めて請求していることが多いため、退去費用の明細を確認することで適正な金額まで減額してもらえる可能性があります。
賃貸借契約書を確認する
退去費用の負担に関する基本的なルールは、国土交通省が公表しているガイドラインに定められています。しかし、ガイドラインは絶対的なルールではなく、賃貸借契約で特約が設けられている場合にはガイドラインよりも特約が優先するケースもあります。
そのため、退去費用の減額交渉をする前提として、まずは賃貸借契約書を確認して、特約の有無や内容をチェックすることが重要です。
なお、賃貸借契約書に退去費用に関する特約が設けられていたとしても、その特約が常に有効であるとは限りません。法的に有効な特約であるかどうかを判断するは知識や経験が不可欠となりますのでまずは弁護士に相談することをおすすめします。
賃貸人と減額交渉をする
退去費用の明細や賃貸借契約書を確認した結果、不当に高額な退去費用を請求されていることがわかったときは、賃貸人と退去費用の減額交渉を行います。
賃貸人と減額交渉を行う際には、賃借人が不当に高額だと思う根拠を示しながら話し合いを進めると、スムーズに減額に応じてもらえる可能性があります。
法的手段を検討する
賃貸人との交渉では、退去費用の減額に応じてもらえなかったときは、民事訴訟や民事調停等といった法的手段による解決を検討します。
訴訟の場合は、賃貸人側が訴訟を提起し、これに対して応訴することになるのが一般的です。交渉での解決が困難である場合は、賃貸人に対して、訴訟を提起するよう促し、訴訟を提起するかを検討してもらうことになります。
民事調停は、当事者同士の話し合いによる紛争解決手段になりますが、裁判所の調停委員が関与して紛争解決に向けた調整を行ってくれますので、当事者だけで話し合いをするよりもスムーズな解決が期待できます。
原状回復のガイドラインに違反するような請求であれば、調停委員から賃貸人を説得してくれますので、賃借人側に有利な結果になる可能性が高いでしょう。
もっとも、調停が成立するには当事者双方の合意が必要になりますので、賃貸人が退去費用の減額に応じてくれないときは、最終的に訴訟を提起しなければなりません。
退去費用のトラブルを弁護士に相談するメリット

以下のようなメリットがありますので、高額な退去費用を請求されたなどのトラブルに巻き込まれたときは弁護士に相談することをおすすめします。
賃貸人側の請求が法的に正当なものであるか判断できる
高額な退去費用を請求された場合、本来賃貸人が負担すべき費用を併せて請求されている可能性があります。
しかし、専門的な知識や経験が少ない一般の方では、賃貸人から請求された退去費用のどこが問題であるかを正確に把握することは困難です。
弁護士であれば、法的観点から退去費用の正当性を判断することができますので、まずは弁護士に相談するようにしましょう。
代理人として賃貸人と退去費用の減額交渉ができる
賃貸人から請求された退去費用が不当に高額なものであった場合は、賃貸人に対して減額交渉をすることができます。
しかし、交渉に不慣れな方では自分の希望や主張をうまく伝えることができず、減額交渉が上手く進まないことや、そもそも賃貸人が減額交渉に応じてこないことがあります。弁護士に依頼した場合には、弁護士が賃借人に代わって賃貸人との減額交渉を担当できますので、適正な退去費用まで減額できる可能性が高くなるでしょう。
交渉の負担やストレスを少しでも軽減するためにも、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
法的手段でトラブルを解決できる
賃貸人との減額交渉がうまくいかなかったとしても、弁護士に依頼すれば民事訴訟などの法的手段により退去費用のトラブルを解決することができます。
調停や訴訟の手続きは、知識や経験が少ない方では対応が難しいため、専門家である弁護士に任せた方がよいでしょう。
まとめ
賃貸物件の退去時には、高額な退去費用を請求されるなどのトラブルが発生することがあります。「退去費用が高すぎる」と感じるときは、本来賃貸人が負担すべき費用が退去費用に含まれている可能性がありますので、そのまま支払いに応じるのではなく、一度弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士法人アークレスト法律事務所では、賃貸人から提示された退去費用の妥当性を無料で査定していますので、退去費用が高いと感じた方は、退去費用のトラブルに強い当事務所までお気軽にご相談ください。

監修者
野口 明男(代表弁護士)
開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。
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