悪徳業者から被害に遭ったら?具体的な対処法や相談窓口を解説
e戸建ての悪質な発信者情報開示請求や名誉毀損の口コミ削除方法
2021.07.09匿名掲示板「e戸建て」に、社名や個人名を明記した悪質な投稿をされた場合、会社の利益に大きな損害を与える危険性があります。名誉毀損にあたる投稿は、速やかに削除しなくてはなりません。
しかし投稿の削除は、e戸建ての運営者の判断で決められます。運営者の判断によっては、悪質な投稿を削除してもらえない場合もあるため、適切な対応方法を知っておく必要があるでしょう。
今回はe戸建てに、悪質な投稿をされたときの削除方法と発信者情報開示請求の方法を詳しく解説します。
目次
目次
1.e戸建ての投稿削除は可能
匿名掲示板e戸建てに投稿された悪質な投稿は、削除可能です。
投稿者でなくても、投稿ごとに削除依頼ができます。ただし、すべての投稿を無条件で削除できるわけではありません。削除依頼はe戸建ての管理者へと送られ、削除されます。
e戸建ての利用規約に反する投稿について、サイト管理者が「削除が必要」と判断した場合に削除されます。そのため、依頼を出せば必ず削除されるわけではなく、削除するかの判断はe戸建ての管理者に委ねられている点を理解しておきましょう。
2.e戸建ては戸建て購入希望者のための口コミサイト
e戸建てとは、戸建ての購入を検討している人のための口コミサイトです。
工務店やハウスメーカーなどの評判や、おすすめの業者を知りたい場合に、スレッドと呼ばれる掲示板を作成することで、口コミやアドバイスを集められます。匿名掲示板のため、スレッドの作成者や投稿者の個人情報は明かされません。
基本的にはスレッド内で誰でも自由に発言できますが、e戸建てでは以下のような投稿を禁止しています。[注1]
- 利用者が不快に感じる内容
- 特定の投稿者を攻撃する投稿
- 個人や団体の名誉を著しく毀損しているもの
- 倫理的観点に問題がある者
- 第三者に不利益を及ぼすもの
上記以外にも、物件の批判や事実と異なる内容である投稿は「投稿者の同意なしに削除される可能性がある」と利用規約に明記されています。利用の際は、利用規約に従いましょう。
3.名誉毀損にあたるe戸建ての投稿例
刑法230条では、名誉毀損を「事実を摘示して人の名誉を毀損すること」と明記しています。事実の摘示とは、内容が具体的に記されていることです。投稿がデマであっても、名誉毀損は成り立ちます。
また名誉毀損では、人あるいは企業の名誉を毀損しているかが重要です。伏字やイニシャルでも、第三者が誰を指しているのかがわかる内容は名誉毀損にあたります。
e戸建ての投稿で名誉毀損にあたる具体的な例は、次のとおりです。
○○社は自社商品が地震に強いとうたっているが、実際にはリコール対象の部品を使っている。
上記の投稿例は、実際の企業名を明記し、施工品質について悪評を書き込んだものです。
リコール対象の部品を使っている証拠や根拠が記載されておらず、書き込まれた企業の損失につながる内容といえます。個人や企業の名誉を毀損し、社会的評価を下げる投稿は名誉毀損です。
以下の投稿例では、事実の摘示がないため、名誉毀損ではなく侮辱罪にあたります。
〇〇社営業の○○はバカだからもう頼まない。
抽象的な誹謗中傷は、具体的な事実ではないため、名誉毀損にはあたりません。ただし侮辱罪であっても、削除対象や訴訟対象です。
4.名誉毀損にあたらないe戸建ての投稿例
e戸建ての投稿で名誉毀損にならないのは、違法性阻却事由にあたるときです。
違法性阻却事由とは、投稿が公共の利害に関する事実である場合を指します。たとえば、次のような投稿例です。
○○社の家を購入したら、新築なのに壁のひび割れや水漏れがあった。検討している人は、契約前にちゃんと確認したほうがよいですよ。
ほかの人の損害を防ぐため、広く知らせるべき正当な理由があれば、社名を公表した口コミは名誉毀損にあたりません。ただし内容が事実であり、根拠となる証拠がある場合に限られます。
5.e戸建ての悪質な投稿を削除する方法
e戸建てに書き込まれた悪質な投稿をそのままにしておくと、企業イメージに傷がつき、経営に大きな影響を及ぼす危険があります。悪質な投稿は放置せず、削除しておきましょう。
ただし、e戸建ての投稿は自分では削除できません。運営者へ削除依頼を出して、投稿を削除してもらう必要があります。
5-1.サイト内で削除依頼をする場合
e戸建てでは、投稿ごとに削除依頼フォームへのリンクが設置されています。
悪質な投稿を削除してほしいときは、該当の投稿の削除依頼フォームから削除を依頼します。削除依頼フォームで入力が必要な項目は、次のとおりです。
- 削除申請者の氏名
- 削除理由
- 立場
上記のほかに、コメント欄が設置されています。
「削除理由」は選択制で、投稿を削除したい理由を選べるようになっています。名誉毀損の場合は「名誉毀損」の選択肢を選びましょう。
「立場」とは、削除依頼者の立場を指しており、たとえば投稿内容で名誉毀損を受けた企業の場合は「販売関係者」を選択します。「非回答」も選べるため、立場を明かしたくない場合も安心です。
e戸建て内の削除依頼フォームでは、スレッドの削除依頼も出せます。トピックを削除依頼することで、悪質なスレッド自体を消すことも可能です。
注意点は、削除依頼をすれば必ず削除されるわけではないことです。
削除の判断は、サイト運営者に委ねられていますので、削除依頼フォームから依頼しても投稿が削除されない可能性もあります。その場合は、後述する「送信防止措置手続」をおこなうことで削除を促せます。
5-2.「送信防止措置手続」で削除依頼をする場合
スレッド内の削除依頼フォームで依頼しても、悪質な投稿を削除してもらえない場合は、「送信防止措置手続」をおこなうことで削除を依頼する方法もあります。
送信防止措置手続とは、インターネット上に書き込まれた誹謗中傷を、プロバイダに削除してもらう手続きです。テレコムサービス協会のプロバイダ責任制限法ガイドラインに則った手続きで、任意の削除依頼よりも法的強制力があります。
送信防止措置を請求できるのは、誹謗中傷された本人(企業)と弁護士です。
テレコムサービス協会の「名誉毀損・プライバシー関係書式」をダウンロードして、内容を記載してe戸建ての運営者宛に郵送します。
会員制で投稿者の氏名・住所がわかっている場合は、サイト運営者から投稿者宛に意見照会書が送られ、削除の同意をとってから削除される流れです。e戸建ての場合は匿名制で投稿者の特定ができないため、意見照会書なしで削除されるケースもあります。
6.e戸建ての投稿に対して発信者情報開示請求をする方法
e戸建ての投稿を名誉毀損として損害賠償を請求する場合は、投稿者を特定しなくてはなりません。投稿者の特定には「発信者情報開示請求」を利用します。
発信者情報開示請求とは、権利侵害にあたる投稿発信者を特定するための開示請求です。ここでは、悪質な投稿に対して発信者情報開示請求する流れを説明します。
6-1.e戸建ての運営者に対してIPアドレスの開示請求をする
発信者が匿名の場合は、まずe戸建てにIPアドレスの開示を請求します。
IPアドレスとは、パソコンやスマートフォンなどのデバイスに割り振られた住所のような役割をする情報です。e戸建てのような匿名掲示板では、サイト管理者も投稿者の情報をもっていないため、IPアドレスから投稿者を特定します。
e戸建てが開示請求に応じなかった場合は、裁判所に仮処分を申し立てます。通常の訴訟をおこなっていると時間がかかって、通信ログが消えてしまう恐れがあるため、仮処分によってe戸建てへ開示命令を出してもらうのです。
6-2.インターネットプロバイダへ発信者情報開示請求をする
e戸建てでは、悪質な投稿をした人のIPアドレスとタイムスタンプなど、投稿に関する情報しか入手できません。IPアドレスから発信者を特定するためには、インターネットプロバイダへ開示請求する必要があります。インターネットプロバイダは、該当のIPアドレスを所有している人の氏名・住所・電話番号などの個人情報をもっているためです。
e戸建てにおこなったように、開示請求をして請求が通れば発信者が特定できます。開示請求を拒否された場合は、開示請求訴訟を起こす必要があります。
6-3.発信者情報開示請求訴訟を起こす場合
インターネットプロバイダが、発信者情報開示請求を拒否した場合は、訴訟の提起が必要です。e戸建てのときにように仮処分ではないため、一般的な裁判と同様に判決までに時間がかかることを覚えておきましょう。
訴訟で開示請求が認められれば、投稿者の住所や氏名が開示されます。
名誉毀損で刑事裁判や民事裁判を起こしたい場合は、さらに刑事告訴や民事訴訟を起こす必要があります。
7.削除してもらえない・発信者情報開示請求は専門家に相談
e戸建ての悪質な投稿は、削除可能です。
ただし送信防止措置手続は本人、あるいは弁護士しかおこなえません。法律案件のため、弁護士資格のない人や業者は請け負ってはいけない決まりです。「掲示板の投稿を削除する」との業者は違法なため、必ず弁護士へ依頼しましょう。
とくに発信者情報開示請求は自分でもできますが、訴訟になる可能性もあるため、最初から弁護士に依頼しておくと安心です。
[注1]e戸建て:利用規約監修者
野口 明男(代表弁護士)
開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。
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