悪徳業者から被害に遭ったら?具体的な対処法や相談窓口を解説
誹謗中傷
誹謗中傷(ひぼうちゅうしょう)とは、他人をけなし根拠のない情報を触れ回ってその名誉を傷つけることです。
誹謗とは他人をそしる(誹る)こと、すなわちけなすことを意味します。中傷は根拠のないことを言いふらして他人の名誉を傷つけることです。この2つの言葉を合わせたものが「誹謗中傷」です。
ネット上では根拠のない悪口や嫌がらせの投稿が行われるケースが多く、実社会よりも「誹謗中傷」が高頻度で行われる傾向があります。誹謗中傷は「名誉毀損罪」「侮辱罪」「業務妨害罪」「信用毀損罪」などの犯罪になるケースも多く、被害者による刑事告訴等の対応によって投稿者が逮捕・起訴され刑罰を適用される可能性があります。
誹謗中傷が原因で対象者が風評被害を受け、多額の経済的な損失を被るケースも少なくありません。名誉毀損や侮辱的な投稿が行われると被害者は大きな精神的苦痛を受けます。そこでネット誹謗中傷の被害者は投稿者に対し、慰謝料や経済的損失についての損害賠償請求も可能です。
根拠のない名誉毀損や侮辱などの誹謗中傷の投稿が行われた場合、被害者にはサイト運営者へその投稿の削除を求める権利も認められます。
誹謗中傷とは
誹謗中傷とは、他人を誹る(そしる)という「誹謗」という言葉と根拠のないことを言いふらして他人を傷つける「中傷」という言葉を組み合わせた用語です。法律用語ではありませんので、明確な定義があるわけではありませんが、他人をけなし根拠のない情報を触れ回ってその名誉を傷つけることを一般的に誹謗中傷といいます。
誹謗中傷に該当し得るものとしては、以下のものが挙げられます。
・「不倫をしている」、「前科がある」などと言いふらす
・「根暗」、「ブス」、「キモい」など性格や容姿を罵倒する
・「死ね」、「殺すぞ」、「消えろ」などと脅す
・インターネット上の掲示板に個人情報を書き込む
・口コミサイトで商品やサービスに対する悪意のある書き込みをする
誹謗中傷により成立する可能性のある犯罪
誹謗中傷の内容や態様によっては、以下のような犯罪が成立する可能性があります。
名誉毀損罪
名誉毀損罪とは、公然と事実を摘示して、他人の名誉を毀損した場合に成立する犯罪です(刑法230条)。
たとえば、インターネット上の掲示板で「〇〇は、職場で不倫している」、「〇〇は、違法薬物をやっている」などと具体的な事実を摘示して、他人の社会的評価を低下させるおそれのある事実を書き込んだ場合には、名誉毀損罪が成立します。
名誉毀損罪が成立すると、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金に処せられます。
侮辱罪
侮辱罪とは、公然と他人を侮辱した場合に成立する犯罪です(刑法231条)。
名誉毀損罪と似た犯罪ですが、名誉毀損罪が事実の摘示を要件としているのに対して、侮辱罪は事実の摘自が不要であるという点が異なっています。
たとえば、インターネット上の掲示板で「〇〇はブス」、「〇〇はバカ」などと抽象的な悪口を書き込んだ場合には、侮辱罪が成立します。
侮辱罪が成立すると、以下のいずれかの刑に処せられます。
・1年以下の懲役または禁錮
・30万円以下の罰金
・拘留
・科料
侮辱罪の法定刑は、以前は「拘留または科料」とされていましたが、誹謗中傷が社会問題となっているのを受けて、2022年7月7日から厳罰化となり上記の法定刑に変更されました。
脅迫罪
脅迫罪とは、他人の生命・身体・自由・名誉・財産に対して害悪の告知をすることにより脅迫した場合に成立する犯罪です(刑法222条)。
名誉毀損罪や侮辱罪は、公然性が要件とされていますので、不特定または多数の人が認識できる状態で行われることが必要になりますが、脅迫罪は、公然性が要件とはされていませんので、個別のメッセージのやり取りで害悪の告知がなされたときには脅迫罪が成立します。
脅迫罪が成立すると、2年以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。
業務妨害罪
業務妨害罪とは、虚偽の風説の流布、偽計または威力を用いることにより、他人の業務を妨害した場合に成立する犯罪です(刑法233条後段、234条)。
たとえば、飲食店の口コミサイトで「この店は衛生管理が杜撰で、厨房にはゴキブリが繁殖している」などと虚偽の内容を書き込んで業務を妨害した場合には、偽計業務妨害罪が成立します。
業務妨害罪が成立すると、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。
信用毀損罪
信用毀損罪とは、虚偽の風説の流布や偽計を用いることで、他人の信用を毀損した場合に成立する犯罪です(刑法233条前段)。
人の信用とは経済的側面における人の評価と解釈されています。人には自然人のほか、法人その他団体も含まれています。
たとえば、インターネット上の掲示板で「あの会社は経営状態が悪く、倒産寸前だ」などと書き込んで会社の信用を毀損した場合には、信用毀損罪が成立します。
信用毀損罪が成立すると、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。
誹謗中傷により被害者に生じるリスク
インターネット上で誹謗中傷があった場合には、被害者には、以下のようなリスクが生じます。
結婚や就職に悪影響が生じる
インターネット上の掲示板などで誹謗中傷の書き込みがなされると、あっという間に拡散されてしまいます。書き込まれた内容が事実と異なるものであったとしても、書き込みを閲覧した人は真実であるかどうかを確かめることができませんので、真実であると信じてしまい、事実とは異なる憶測が広まってしまいます。
その結果、過去の誹謗中傷が問題となり、結婚や就職の機会を逃してしまうおそれがあります。
売り上げの減少
企業の商品やサービスに対して、根拠のない誹謗中傷がなされると、それを信じた顧客による買い控えなどが生じて、売り上げが減少するという不利益を受ける可能性があります。
多くの人が商品やサービスを選択する際には、口コミやレビューを参考にしていますので、誹謗中傷の口コミやレビューがなされると、企業としては大きなダメージを受けることになります。
採用活動に悪影響が生じる
求職者の多くは、インターネットやSNSを利用して企業の情報収集を行っています。企業に対する誹謗中傷により、企業のブランドイメージが低下すると、その企業への就職を希望する人が減少することで採用活動に悪影響が生じる可能性があります。優秀な人材が集まらなければ、企業の将来に大きな影を落とすことになるでしょう。
インターネット上の誹謗中傷に対する法的な対応方法
インターネット上で誹謗中傷があった場合には、以下のような法的対応を検討する必要があります。
削除請求
インターネット上での誹謗中傷の書き込みを放置しているとさまざまなリスクが生じますので、迅速に書き込みの削除を行う必要があります。
削除請求の方法としては、主に以下の方法が挙げられます。
・所定の削除フォームから削除依頼をする
・ガイドラインに基づく送信防止措置依頼をする
・書き込みの削除を求める仮処分・通常訴訟を申し立てる
なお、発信者情報開示請求や損害賠償請求を予定している場合には、証拠保全を行ってから書き込みの削除を行うようにしましょう。
発信者情報開示請求
発信者情報開示請求とは、インターネット上の掲示板などで誹謗中傷の書き込みをした人を特定するための手続きです。インターネット上の掲示板などは匿名で書き込みがなされるため、書き込み自体からは書き込んだ本人を特定することができません。投稿者への損害賠償請求や刑事告訴をするためには、投稿者を特定する必要があるため、発信者情報開示請求という手続きが必要になります。
発信者情報開示請求は、一般的には以下のような2段階の手続きによって、投稿者の特定を行います。
・サイト管理者に対する開示の申立て(裁判外手続き・裁判手続き)
・アクセスプロバイダに対する開示の申立て(裁判外手続き・裁判手続き)
損害賠償請求
発信者情報開示請求により投稿者が特定できたら、その人に対して、損害賠償請求を行います。誹謗中傷の被害者は、誹謗中傷の書き込みにより精神的苦痛を被っていますので、主に慰謝料を請求していくことになります。また、投稿者特定に要した費用も請求に上乗せすることができます。
刑事告訴
悪質な誹謗中傷に関しては、刑法上の犯罪が成立する可能性もありますので、刑事告訴を検討します。刑事告訴とは、加害者を処罰するよう捜査機関に対して申告することをいいます。
名誉毀損罪や侮辱罪は、親告罪に該当しますので、被害者からの刑事告訴がなければ加害者を処罰することができません。
また、親告罪の刑事告訴は犯人を知ってから6か月以内に行う必要がありますので(刑事訴訟法235条)、刑事告訴を行う場合には早く動く必要があります。
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