【改正風営法】無許可営業、名義貸し、メンズエステ禁止区域営業の罰金強化
【改正風営法】接待飲食店営業の遵守事項と禁止行為の追加
2025.05.23
近年、ホストクラブの利用客が高額な売掛金による借金を背負い、返済のために売春するなどの事案が多数報告されており、深刻な社会問題になっています。このようなホストクラブによる悪質な取り立てを規制するための改正風営法が、2025年5月20日衆院本会議で可決、成立しました。
改正風営法では、接待飲食店営業の遵守事項として「料金の虚偽説明の禁止」「恋愛感情を利用した色恋営業の禁止」「客が注文していない飲食等の提供の禁止」などを追加し、新たに行政処分の規定を設けています。
改正風営法は、ホストクラブだけではなく、キャバクラ、ガールズバー、ボーイズバー、コンカフェなどの風営法関連業種に深く関わってきますので、内容をしっかりと理解しておくようにしましょう。
今回は、改正風営法のうち接待飲食店営業の遵守事項と禁止行為の追加について解説します。
目次
改正風営法の概要

ホストクラブを利用した女性客が売掛金等の名目で多額の債務を負担させられ、ホストやホストクラブ経営者からその支払のために売春することや性風俗店で稼働することなどを要求される事案が発生し、社会問題化しています。
改正風営法の概要としては、以下のとおりです。
①接待飲食営業に係る遵守事項 ・禁止事項の追加 ・料金の虚偽説明の禁止 ・恋愛感情を利用した色恋営業の一部禁止 ・注文していないドリンクなどの提供禁止 ②接待飲食店営業の禁止行為の追加【罰金刑の新設】 ・売掛金を支払わせる目的で威迫、困惑させる行為の禁止 ・威迫等をして料金支払いのための買春、風俗、AV出演等の要求の禁止 →6か月以下の拘禁刑、100万円以下の罰金刑 ③性風俗店のスカウトバックの支払い禁止【罰金刑の新設】 ・6か月以下の拘禁刑、100万円以下の罰金刑 ④無許可営業、名義貸し、メンエス禁止区域営業等の罰則強化【罰則強化】 ・【改正前】2年以下の懲役→【改正後】5年以下の拘禁 ・【改正前】200万円以下の罰金→【改正後】1000万円以下の罰金 ・【改正前】法人の罰則 200万円以下の罰金→【改正後】3億円以下の罰金 ⑤風俗営業の欠格事由の範囲拡大【欠格事由の追加】 ・親会社等が許可を取り消された法人 ・警察による立入調査後に許可証の返納(処分逃れ)をした者 ・暴力的不法行為等を行うおそれがある者がその事業活動に支配的な影響力を有する者 |
このような改正風営法は、ホストクラブだけではなく、キャバクラ、ガールズバー、ボーイズバー、コンカフェなどの風営法関連業種に深く関わってきますので、風営法違反にならないようにするためにも改正法の中身をしっかりと把握しておくことが大切です。
なお、本コラムでは、改正風営法のうち接待飲食店営業の遵守事項と行政処分の新設について解説します。
接待飲食店営業の遵守事項の追加|行政処分の新設

改正風営法では、ホストクラブやキャバクラなどの接待飲食店営業に関して、以下のような遵守事項を追加しています。 これらの遵守事項に違反しても罰則はありませんが、行政処分の対象になります。
料金の虚偽説明の禁止
改正風営法で接待飲食店営業の遵守事項として追加されるものの1つ目は、料金の虚偽説明の禁止です。実際の料金に対して、事実と異なる説明や、料金を誤認させるような説明が禁止されます。
たとえば、入店時に「初回3000円です」と説明しておきながら、会計時になって高額な飲食代金を請求するような行為がこれに該当します。
料金の虚偽説明は、ホストクラブの利用客が高額な利用料金を背負う原因の一つであることから、接待飲食店営業の遵守事項の一つとして定められることになりました。
恋愛感情を利用した色恋営業の禁止
改正風営法で接待飲食店営業の遵守事項として追加されるものの2つ目は、恋愛感情を利用した色恋営業の禁止です。
客がキャストに恋愛感情を抱いている状況や、キャストが自分に好意を抱いていると誤信している状況を利用して、色恋営業をすることが禁止されます。
たとえば、「今月の営業成績が一番になれないともう会えなくなってしまう」「付き合いを続けたいなら、ボトルを入れてほしい」などと告げ、客の恋愛感情につけ込んで高額な飲食をさせるような行為がこれに該当します。
ホストクラブは、一般的に疑似恋愛を体験できるサービスを提供していますが、ホストの中には客の恋愛感情を不当に利用し、高額な飲食代金を請求したり、依存状態を助長するなどの悪質なケースも存在しています。
これもホストクラブなどの利用客が高額な売掛金を背負う原因の一つであることから、接待飲食店営業の遵守事項の一つとして定められることになりました。
客が注文していない飲食等の提供の禁止
改正風営法で接待飲食店営業の遵守事項として追加されるものの3つ目は、客が注文していない飲食等の提供の禁止です。
たとえば、ホストが勝手にドリンクの注文をして、「頼んでいない」と断ろうとしても「もう作ってしまったから今更キャンセルできない」などと困惑させて飲食の提供をするような行為がこれに該当します。
一般的な飲食店であれば注文していないものが届いても「頼んでいない」と言って断ることは容易ですが、ホストクラブなどの接待飲食店営業では、雰囲気やホストなどとの関係性によっては断りづらいこともあります。これも利用客が高額な売掛金を抱える原因の一つとして指摘されているため、接待飲食店営業の遵守事項の一つとして定められることになりました。
接待飲食店営業の禁止事項の追加|罰金の新設

改正風営法では、上記の遵守事項に加えて接待飲食店営業に対して、以下の禁止事項を追加しています。遵守事項の違反であれば罰則の適用はなく行政処分のみでしたが、禁止事項に違反した場合、6か月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金もしくはこの両方が科されます。
客に注文や料金の支払等をさせる目的での威迫の禁止
改正風営法で接待飲食店営業の禁止事項として追加されるものの1つ目は、客に注文や料金の支払等をさせる目的での威迫の禁止です。
これに該当する可能性のある行為としては、以下のようなものが挙げられます。
・高額な飲食の注文を無理やりさせる
・飲食の注文を断る客をキャストが取り囲んでプレッシャーをかける
・支払いを拒否する客に対して、大声で怒鳴る、脅すなどの脅迫的な態度をとる
・「料金を支払わないなら親に伝えて返済させる」などと脅す
・「自宅や職場まで取り立てに行くぞ」と脅す
改正風営法では、「売掛金」や「つけ払い」は規制対象にはなっていませんが、売掛金等を支払わせるために威迫して困惑させる行為が禁止されています。
威迫や誘惑による料金の支払等のための売春、性風俗店勤務、AV出演等の要求の禁止
改正風営法で接待飲食店営業の禁止事項として追加されるものの2つ目は、威迫や誘惑による料金の支払等のための売春(外国での売春も含みます)、性行為、性風俗店勤務、AV出演等の要求の禁止です。
悪質なホストクラブでは、高額な売掛金を抱えた女性客に支払いをさせるために、売春、性行為、性風俗店勤務、アダルトビデオ出演などを強要することも多く、深刻な社会問題となっています。
改正風営法では、このような問題を規制するために、売春、性風俗店勤務、アダルトビデオ出演等の要求を禁止しています。実際に売春等をしていなかったとしても「要求」をした時点で違法となり、風営法違反として処罰対象となります。
キャバクラやホストクラブが風営法に違反した場合のリスク

キャバクラやホストクラブが風営法に違反すると以下のようなリスクが生じます。
刑事処分
風営法違反に該当する行為をすると、以下のような刑事罰を科される可能性があります。
① 2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金またはこれらの併科
・無許可営業(特定遊興飲食店営業の無許可営業も含む)
・偽りその他不正な手段による許可の取得
・名義貸し
・営業停止命令に違反
・禁止されている場所での営業
これらの行為は風営法違反の中でももっとも重い刑罰が科されます。深夜酒類飲食店営業の届出をして営業するガールズバーやボーイズバーでは、「接待行為」が禁止されていますので、接待行為をすると無許可営業として重い処罰を受ける可能性があります。
② 1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金またはこれらの併科
・承認を受けずに設備変更を行った
・不正な手段で構造または設備変更の承認を受けた
・不正な手段で特殊風俗営業の認定を受けた
・18歳未満の者に客の接待をさせた
・午後10時から午前6時までの時間帯に18歳未満の者に接客業務をさせた
・18歳未満の者を客として立ち入らせた
・20歳未満の者に酒類またはたばこを提供した
③ 6か月以上の懲役もしくは100万円以下の罰金またはこれらの併科
・客引き行為をした(客引きのための立ちふさがりも含む)
・性風俗関連特殊営業を無届で営業した
・マージャンやゲームセンターの商品として現金を提供した
④ 100万円以下の罰金
・風俗環境を害する方法で広告、宣伝を行う
・従業員名簿の不記載や虚偽記載
・警察職員の立ち入り拒否
⑤ 50万円以下の罰金
・許可申請書の虚偽記載
・管理者の不選任
・深夜酒類飲食店営業の無届営業
行政処分|指示処分、営業停止、営業許可の取り消し
風営法に違反する行為が発覚すると、「指示処分」「営業停止」「許可取消し」という行政処分を受ける可能性があります。
・指示処分……違法行為を改善するための指示 ・営業停止……営業の全部または一部の停止を命じる処分 ・許可取消し……許可が取り消され、今後5年間新たに許可を受けられない |
改正風営法では、接待飲食営業に係る以下の遵守事項が追加されています。
・料金の虚偽説明の禁止
・恋愛感情を利用した色恋営業の一部禁止
・注文していないドリンクなどの提供禁止
これらの行為をすると行政処分の対象になりますので注意が必要です。
改正風営法を踏まえた対策をするには弁護士に相談を

改正風営法は、2025年5月20日に衆議院本会議で可決・成立しました。接待飲食営業に係る遵守事項については公布から1か月後に施行されるため、今から改正風営法を踏まえた対策を講じる必要があります。
風営法を遵守した風俗店等の営業をするには、風営法に詳しい弁護士によるサポートが不可欠になりますので、まずは弁護士に相談することがおすすめです。
弁護士に相談すれば改正風営法を踏まえてどのような対策が必要になるか具体的にアドバイスしてくれますので、弁護士のアドバイスに従って対策を講じていけば風営法違反になるリスクを最小限に抑えることができます。
まとめ
ホストクラブの利用客が、店に対して多額の債務を背負い、売春や性風俗などで働かされるなどの事案が社会問題となっていることを受けて、悪質なホストクラブ等を規制するために風営法が改正されました。
ホストクラブやキャバクラなどの接待飲食店営業では新たな遵守事項や禁止事項が追加され、行政処分や刑事罰が科される可能性がありますので、十分に注意が必要です。
風営法違反を防ぐには弁護士による継続的なサポートが有効ですので、まずは弁護士法人アークレスト法律事務所までお気軽にご相談ください。

監修者
野口 明男(代表弁護士)
開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。
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