【改正風営法】無許可営業、名義貸し、メンズエステ禁止区域営業の罰金強化
【改正風営法】性風俗店のスカウトバックの禁止と罰金新設
2025.05.23
ホストクラブを利用した女性客に対して高額な料金を請求し、それが支払えない女性客に対して、売春や性風俗店への斡旋、アダルトビデオへの出演の強要などが社会問題となっています。このような問題に対処するべく政府は、2025年5月20日衆院本会議で改正風営法を可決、成立しました。
このような悪質ホスト問題では、女性客を性風俗に斡旋するスカウト行為が問題とされているため、改正風営法でも性風俗店のスカウトバックが禁止され、それに対して罰金新設がなされています。
スカウトバックを規制する法律には、改正風営法以外にも職業安定法や組織犯罪処罰法などがありますので、違法なスカウトバックで摘発されないようにするためにも規制内容をしっかりと理解しておきましょう。
今回は、改正風営法のうち性風俗店のスカウトバックの禁止と罰金新設について解説します。
目次
【罰金新設】改正風営法により性風俗店によるスカウトバックが禁止される

改正風営法により性風俗店によるスカウトバックが禁止され、罰金が新設されました。以下では、風営法改正の背景と性風俗店によるスカウトバックの禁止規制の概要について説明します。
風営法改正の背景|悪質ホストクラブ問題
風営法改正の背景には、いわゆる「悪質ホストクラブ問題」があるといわれています。
悪質ホストクラブ問題とは、ホストクラブを利用した女性客が多額の売掛金や借金を背負わされ、その支払いのために売春をさせられたり、性風俗店で働かされたりするといった事案を指します。主に社会経験が未熟な女性や困難な問題を抱える女性の弱い立場につけ込んだ悪質な手口であり、大きな社会問題となっています。
ホストクラブに対する規制は、主に風営法が行っていますが、現行の風営法の規制だけでは実効性に乏しく不十分なものであることから、2025年3月7日風営法改正案を閣議決定し、2025年5月20日衆院本会議で可決、成立しました。
性風俗店によるスカウトバックの禁止規制の概要
改正風営法の規制内容にはさまざまなものが含まれていますが、女性客を性風俗店などで働かせることに対する規制としては、「性風俗店によるスカウトバックの禁止規制」があります。
性風俗店によるスカウトバックの禁止規制とは、性風俗店への求職者を紹介してくれたスカウトに対して性風俗店が紹介の対価として金銭の支払いをする行為を禁止するものです。
女性客がホストに対する売掛金を支払うために性風俗店で働くケースでは、ホストがスカウトに性風俗店への紹介を依頼して、スカウトが性風俗店に女性客を紹介し、性風俗店がスカウトに紹介料を支払うという「スカウトバック」という仕組みが問題視されていました。
風営法改正では、このようなスカウトバックを禁止し、違反者に対しては、6か月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金またはこれらの併科となります。
改正風営法にスカウトバックを規制する法律

スカウトバックに関しては改正風営法にも職業安定法、組織犯罪処罰法により規制がなされています。以下では、それぞれの法律の規制内容についてみていきましょう。
職業安定法
職業安定法とは、求人および職業紹介に関するルールを定めた法律で、有害業務に就かせる目的での職業紹介および労働者の募集などの行為を禁止しています。
具体的には、職業安定法63条において、以下の2つの行為が禁止されています。
①マインドコントロールにより精神的自由を拘束し、仕事を紹介すること ②性風俗や売春などの仕事を紹介すること |
①については、当事者同士の関係性に着目した規制ですので、紹介した仕事の属性にかかわらず職業安定法違反となります。
他方、②については、仕事の属性に基づく規制ですので、ソープランド、デリヘル、アダルトビデオへの出演、売春などの斡旋をした場合に職業安定法違反となります。
たとえば、以下のような行為が職業安定法違反になる可能性があります。
・駅周辺で「夜の仕事に興味ないですか。簡単に稼げるよ」などと声をかけ、性風俗店に勧誘する
・モデル志望の女性をAV制作会社に紹介する
・ホストが売掛金回収のため女性客に売春や性風俗の仕事をあっせんする
・女性客の恋愛感情につけ込んで、売掛金の回収のために仕事を紹介する
このような職業安定法違反となる行為をしたときは、1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金が科されます(職業安定法63条柱書)。
なお、職業安定法は、スカウトバックを支払った性風俗店への規制ではなく、スカウトバックを受け取った側に対する規制である点に注意が必要です。
組織犯罪処罰法
組織犯罪処罰法とは、正式名称を「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」といます。この法律は、一定の組織犯罪を行った場合の刑罰を重くし、組織犯罪により得られた収益の没収や追徴などを定めた法律になります。
性風俗店に女性客を紹介し、その見返りとして性風俗店からスカウトに支払われる「スカウトバック」は、組織犯罪処罰法の犯罪収益等収受の罪に該当しますので、7年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはその併科となります(組織犯罪処罰法11条)。
なお、組織犯罪処罰法もスカウトバックを受け取った側に対する規制になります。そのため、改正風営法により初めてスカウトバックを支払った側を規制できるようになります。
スカウトバックを犯罪収益と認定した裁判例|東京地裁令和6年12月19日判決
スカウトバックに関する最近の重要判例として東京地裁令和6年12月19日判決があります。
この事案は、ホストクラブで代表を務めていた男性(ホスト)が性風俗店のスカウトと共謀してホストクラブの女性客を性風俗店に紹介し、女性客が得た売り上げの15%に相当する約40万円を、女性による違法な売春の収益の一部と知りながら、性風俗店からスカウトバックとして受け取っていたというものです。
裁判所は、ホストに対してのスカウトバックが組織犯罪処罰法上の「犯罪収益」に該当するとして犯罪収益等収受の罪で有罪判決を言い渡しました。
悪質ホスト問題を受けて風営法の罰則が厳罰化されました。スカウトバックについても風営法の規制対象となりますので、今後は組織犯罪処罰法だけではなく風営法による処罰事案が増えていくことが予想されます。
スカウトバックで逮捕されたときに弁護士ができること

違法なスカウトバックを理由に逮捕されてしまったときは、以下のような理由からすぐに弁護士に依頼することをおすすめします。
迅速に面会して取り調べに対するアドバイスができる
違法なスカウトバックで逮捕されてしまうとそのまま警察署に連行され、取り調べを受けることになります。警察による取り調べで不利な供述調書を取られてしまうと、今後の処分決定や裁判にあたって不利な判断が出る可能性がありますので、取り調べでは不利な供述調書を取らせないことが重要になります。
弁護士に依頼をすればスカウトバックで逮捕された後すぐに面会に駆けつけてくれますので、取り調べに対するアドバイスをしてもらうことができます。弁護士からの適切なアドバイスに基づいて取り調べに臨めば不利な供述調書が取られるリスクを最小限に抑えることが可能です。
早期の釈放に向けたサポートが受けられる
違法なスカウトバックで逮捕されてしまうと最長72時間の身柄拘束を受けることになります。また、その後裁判所によって勾留が許可されると延長も含めて最長20日間の身柄拘束を受けることになります。すなわち逮捕・勾留を合わせると、最長で23日間にも及ぶ身柄拘束となるのです。
長期間に及ぶ身柄拘束を受けると被疑者の心身の負担も非常に大きくなりますので、早期釈放を実現することが重要です。弁護士に依頼すれば、再犯防止に向けた取り組みや捜査機関・裁判所への働きかけにより早期釈放を実現することが可能です。一日でも早い身柄解放を望むなら早めに弁護士に相談するようにしましょう。
有利な処分を獲得できる可能性を高めることができる
検察官により起訴されるとほとんどの事件が有罪になりますので、前科を回避するには不起訴処分を獲得する必要があります。また、起訴されたとしても罰金刑や執行猶予付き判決で済めば、刑務所への収監を免れることができますので、前科が付くものの通常の社会生活を送ることができます。
違法なスカウトバックで逮捕されたとしても、早期に弁護士による効果的な弁護活動をすることで有利な処分を獲得できる可能性がありますので、少しでも処分を軽くしたいなら一刻も早く弁護士に相談・依頼するべきです。
まとめ
2025年の風営法改正では、違法なスカウトバックを規制するために風営法でスカウトバックの禁止規定が新設されました。これにより従来はスカウトバックを受け取る側を処罰対象としていたものが、スカウトバックを支払う側も処罰対象に含まれることになります。
風営法を遵守した経営を行うには風営法に詳しい弁護士による継続的なサポートが不可欠となりますので、まずは弁護士法人アークレスト法律事務所までお気軽にご相談ください。

監修者
野口 明男(代表弁護士)
開成高等学校卒、京都大学工学部卒。
旧司法試験に合格し、平成17年に弁護士登録後、日本最大規模の法律事務所において企業が抱える法律問題全般について総合的な法的アドバイスに携わる。平成25年に独立し法律事務所を設立、平成28年12月にアークレスト法律事務所に名称を変更し、誹謗中傷対策を中心にネットトラブル全般に幅広く関わる。
弁護士と企業とのコミュニケーションに最も重点を置き、中小企業の経営者のニーズ・要望に沿った法的アドバイス及び解決手段の提供を妥協することなく追求することにより、高い評価を得ている。
単に法務的観点だけからではなく、税務的観点、財務的観点も含めた多角的なアドバイスにより、事案に応じた柔軟で実務的な解決方法を提供する。
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